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日産の経営陣が固まった。次の株主総会の前に、取締役の候補を決定した。
これを受けて、朝日の社説が論じている。
新体制はこうした難局を乗り切り、新たな展望を切り開くという重責を担う。企業統治強化の「かたち」は整ったが、トップの続投がふさわしいことなのか、疑問が拭えない。
現経営陣は東京地検の捜査と歩調を合わせ、ゴーン前会長を会社から追放した。業績悪化も、北米市場などでの「前会長の拡大路線」の失敗が主因だと強調している。だが、西川氏自身、前会長体制を支える一人だった。05年に取締役副社長に就き、11年からは代表取締役、17年4月から社長兼CEOを務めている。
前会長を「重大な不正があった」と指弾するが、経営幹部としてそれを見逃してきた責任は免れない。
日産では最近まで検査をめぐる不正が横行し、経営が生産現場の実態を把握できていないことも明らかになった。今の幹部はその責任も負っている。
( → (社説)日産新体制 難局を乗り切れるのか:朝日新聞 )
日産の不正にはゴーンが関与していただけでなく、現経営陣も関与していたのだから、共同責任がある、というわけだ。
一理あるが、これについては私は前に批判した。やはり、朝日の社説に反論するという形。
→ 日産経営陣の責任は?(ゴーン): Open ブログ
いろいろと詳しく述べているが、一部抜粋すると、こうだ。
今回、ゴーンの不正をただした重役陣は、内部告発をしたことになる。ただし、「自分の関与した分については免責する」というふうに免責を保証されている。免責されるからこそ、これまではあり得なかったような内部告発が可能となったのだ。(このことも朝日新聞で報道された。)
なのに、内部告発者を「クビにする」(経営の刷新をする)というふうにしたら、内部告発者を処罰することになるので、内部告発それ自体を萎縮させる効果がある。
不正を暴露した人が、褒められるのでなく処罰されるのであれば、誰も暴露したがらなくなるだろう。
こんなことになったら、不正を告発する人はいなくなる。朝日新聞の主張は、「正直者が馬鹿を見る」ということであり、「不正は隠蔽するのが正解だ」ということだ。
朝日社説の主張は、過剰に正義を求めている。そのあまり、小さな悪を許さないので、かえって大きな悪を見逃すことに結びつく。
自分が善人だと過度に自惚れることで、かえって巨悪を見逃す結果になるのだ。
朝日の社説に対する反論としては、以上のように述べることで済む。
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一方で、別の見地から考えよう。朝日は「現経営陣の責任追及」なんてことばかりを考えているが、もっと根本的に、「今回の新経営陣は、日産の経営者として妥当か?」ということがある。
それに対しては、私は次の観点から判断しようとした。
「このたびの経営陣は、経営能力があるのか? つまり、自動車とは何かを知っていて、どういうふうに会社が進むかを、技術的に理解しているか? つまり、理系の技術的な知識や判断能力があるのか?」
端的に言えば、こうだ。
「東大工学部卒レベルの技術知識があるのか?」
ちなみに、この観点からすると、ゴーンは合格である。学歴からすれば、東大工学部卒と同等と言える。
フランスの工学系グランゼコールの一つであるパリ国立高等鉱業学校を卒業
( → カルロス・ゴーン - Wikipedia )
一方、西川・現社長は落第である。
東京大学経済学部卒業。1977年に日産に入社。1999年以降、米国や欧州地域のマネジメント・コミッティ議長や、購買部門を統括する副社長、CCO(チーフ・コンペティティブ・オフィサー)、副会長を歴任。
( → 西川廣人 - Wikipedia )
東大卒ではあるが、経済学部だ。入社後の所属もずっと事務部門だったから、技術には理解がないはずだ。
では、今回の新経営陣はどうか? じっくり見てみよう。
氏名 現役職
井原慶子 日産取締役
豊田正和 同
べルナール・デルマス 日本ミシュランタイヤ会長
アンドリュー・ハウス ソニー・インタラクティブ
エンタテインメント元会長
木村 康 JXTGホールディングス相談役
永井素夫 日産常勤監査役
ジェニファー・ロジャーズ アシュリオンジャパン・ホールディングス
ゼネラル・カウンセル(アジア地域)
ティエリー・ボロレ ルノーCEO
ジャンドミニク・スナール 日産取締役、ルノー会長
西川広人 日産社長兼CEO
山内康裕 日産COO
( → 日産:西川氏が社長続投、ルノーCEOは取締役就任−株総提案 - Bloomberg )
井原慶子は、
法政大学経済学部卒業。レーシングドライバー、実業家。日産自動車株式会社独立取締役、株式会社ソフト99コーポレーション社外取締役、Lovedrive株式会社COO。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科特任准教授。
( → 井原慶子 - Wikipedia )
ということで、准教授という肩書きはある。だが、レーシングドライバーの出身で、法政大学経済学部卒だ。(笑うと失礼だが、笑っちゃう。)
豊田正和は、
東京大学法学部 卒
経済産業省 商務情報政策局長
内閣官房参与
( → 豊田 正和 - 日産自動車ニュースルーム )
ということだから、非常に優秀な官僚だったと言える。大臣や知事になってもおかしくない器だ。
とはいえ、法学部卒だから、やはり技術には疎いはずだ。技術を管理することは得意らしいが、自分で技術をいじるようなことはまったくできないはずだ。
永井素夫は、ただの監査役だから、経営よりは監査のためにいるのだろう。
この3名を除くと、あとは、他の会社の社長・会長ばかりだ。これらはいずれも経営能力はあるだろうが、自動車会社の技術についてはろくに理解できまい。
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となると、以上から判断できることは、こうだ。
「これらの新経営陣は、経営能力がない」
つまり、経営能力のない経営者、というわけだ。ほとんど馬鹿げた存在だ。
では、なぜこういう馬鹿げたことになったのか? その理由は、各記事を読めばわかる。どの記事にも、「ガバナンスの改善のため」と記してある。
なるほど、ガバナンスのためであれば、今回の新経営陣は最強だろう。まるで全員が監査役みたいだ。つまり、全員がブレーキみたいだ。これなら、ゴーンみたいな人が強力にアクセルを踏んで暴走しかけても、ブレーキをかけることができるだろう。
しかし、そこにはブレーキがあっても、アクセルがない。ゴーンのかわりに会社を引っ張る人がいない。これでは、暴走することもないが、正しい方向に進むこともない。単に停滞するだけとなりそうだ。
ここに、今回の経営陣の根本的な難点がある。( 重要!)
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では、どうするべきか? もちろん、こうだ。
「技術について正しい理解を持っている人が、会社を正しい方向に引っ張っていく」
具体的には、こうだ。
・ e-power と PHEV を推進する
・ 自動運転の技術を推進する
・ 上級車は CVT から、多段ロックアップAT へ移行する
・ 電気自動車には、冷却システムを採用する
・ 部品は耐久性のある高品質のものを使う
これらをまとめて核心を言えば、こうだ。
「コストダウンよりも、品質を重視する」
その一環として、次のこともなす。
「モデルチェンジを惜しまない。およそ4年ぐらいで必ずフルチェンジをする」
換言すれば、こうだ。
「コストダウンを最優先するゴーン主義とは決別して、正反対の方向を向く」
つまり、会社の方向を 180度、逆方向に向けることが必要なのだ。それを理解している経営者こそ、今の日産には必要なのである。
では、今回の新経営陣には、それを理解している人がいるか? いない。まったくいない。皆無だ。ブレーキをかける人ばかりがいて、アクセルを踏む人がいない。
この意味で、今回の日産の経営陣は、まったく駄目だ、という評価になる。
朝日新聞は、「西川氏の責任を追及せよ」なんてことを言っているが、そんな話はまったくの見当違いなのだ。日産の問題は、「悪い点をうまく消していない」ということではない。「良い方向に進む力がない」ということだ。
そして、そのことを、今回の経営陣を決めた人々も理解していないし、朝日の社説執筆者も理解していない。誰も彼もがみんな明後日の方を向いているのである。(あっち向いてホイ)
[ 付記 ]
ついでに言えば、「英語の社内公用語化」なんていう馬鹿げた方針も、さっさと廃止するべきだ。この件は、前に述べた。
→ 英語の社内公用語化は?: Open ブログ
→ 日産が駄目になったわけ: Open ブログ
→ 日産を脱ゴーン化せよ: Open ブログ
