2019年05月19日

◆ 日産の新経営陣は?

 日産の新経営陣が固まったが、これでいいのか?

 ──

 日産の経営陣が固まった。次の株主総会の前に、取締役の候補を決定した。
 これを受けて、朝日の社説が論じている。
 新体制はこうした難局を乗り切り、新たな展望を切り開くという重責を担う。企業統治強化の「かたち」は整ったが、トップの続投がふさわしいことなのか、疑問が拭えない。
 現経営陣は東京地検の捜査と歩調を合わせ、ゴーン前会長を会社から追放した。業績悪化も、北米市場などでの「前会長の拡大路線」の失敗が主因だと強調している。だが、西川氏自身、前会長体制を支える一人だった。05年に取締役副社長に就き、11年からは代表取締役、17年4月から社長兼CEOを務めている。
 前会長を「重大な不正があった」と指弾するが、経営幹部としてそれを見逃してきた責任は免れない。
 日産では最近まで検査をめぐる不正が横行し、経営が生産現場の実態を把握できていないことも明らかになった。今の幹部はその責任も負っている。
( → (社説)日産新体制 難局を乗り切れるのか:朝日新聞

 日産の不正にはゴーンが関与していただけでなく、現経営陣も関与していたのだから、共同責任がある、というわけだ。
 一理あるが、これについては私は前に批判した。やはり、朝日の社説に反論するという形。
  → 日産経営陣の責任は?(ゴーン): Open ブログ
 いろいろと詳しく述べているが、一部抜粋すると、こうだ。

 今回、ゴーンの不正をただした重役陣は、内部告発をしたことになる。ただし、「自分の関与した分については免責する」というふうに免責を保証されている。免責されるからこそ、これまではあり得なかったような内部告発が可能となったのだ。(このことも朝日新聞で報道された。)
 なのに、内部告発者を「クビにする」(経営の刷新をする)というふうにしたら、内部告発者を処罰することになるので、内部告発それ自体を萎縮させる効果がある。
 不正を暴露した人が、褒められるのでなく処罰されるのであれば、誰も暴露したがらなくなるだろう。
 こんなことになったら、不正を告発する人はいなくなる。朝日新聞の主張は、「正直者が馬鹿を見る」ということであり、「不正は隠蔽するのが正解だ」ということだ。
 朝日社説の主張は、過剰に正義を求めている。そのあまり、小さな悪を許さないので、かえって大きな悪を見逃すことに結びつく。
 自分が善人だと過度に自惚れることで、かえって巨悪を見逃す結果になるのだ。

 朝日の社説に対する反論としては、以上のように述べることで済む。

 ──

 一方で、別の見地から考えよう。朝日は「現経営陣の責任追及」なんてことばかりを考えているが、もっと根本的に、「今回の新経営陣は、日産の経営者として妥当か?」ということがある。

 それに対しては、私は次の観点から判断しようとした。
 「このたびの経営陣は、経営能力があるのか? つまり、自動車とは何かを知っていて、どういうふうに会社が進むかを、技術的に理解しているか? つまり、理系の技術的な知識や判断能力があるのか?」

 
 端的に言えば、こうだ。
 「東大工学部卒レベルの技術知識があるのか?」

 
 ちなみに、この観点からすると、ゴーンは合格である。学歴からすれば、東大工学部卒と同等と言える。
 フランスの工学系グランゼコールの一つであるパリ国立高等鉱業学校を卒業
( → カルロス・ゴーン - Wikipedia
 
 一方、西川・現社長は落第である。
東京大学経済学部卒業。1977年に日産に入社。1999年以降、米国や欧州地域のマネジメント・コミッティ議長や、購買部門を統括する副社長、CCO(チーフ・コンペティティブ・オフィサー)、副会長を歴任。
( → 西川廣人 - Wikipedia

 東大卒ではあるが、経済学部だ。入社後の所属もずっと事務部門だったから、技術には理解がないはずだ。

 では、今回の新経営陣はどうか? じっくり見てみよう。
 氏名            現役職
 井原慶子         日産取締役
 豊田正和           同
 べルナール・デルマス   日本ミシュランタイヤ会長
 アンドリュー・ハウス   ソニー・インタラクティブ
               エンタテインメント元会長
 木村 康          JXTGホールディングス相談役
 永井素夫         日産常勤監査役
 ジェニファー・ロジャーズ アシュリオンジャパン・ホールディングス
                ゼネラル・カウンセル(アジア地域)

 ティエリー・ボロレ    ルノーCEO
 ジャンドミニク・スナール 日産取締役、ルノー会長
 西川広人         日産社長兼CEO
 山内康裕         日産COO

 ( → 日産:西川氏が社長続投、ルノーCEOは取締役就任−株総提案 - Bloomberg

 井原慶子は、
 法政大学経済学部卒業。レーシングドライバー、実業家。日産自動車株式会社独立取締役、株式会社ソフト99コーポレーション社外取締役、Lovedrive株式会社COO。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科特任准教授。
( → 井原慶子 - Wikipedia

 ということで、准教授という肩書きはある。だが、レーシングドライバーの出身で、法政大学経済学部卒だ。(笑うと失礼だが、笑っちゃう。)

 豊田正和は、
 東京大学法学部 卒
 経済産業省 商務情報政策局長
 内閣官房参与
( → 豊田 正和 - 日産自動車ニュースルーム

 ということだから、非常に優秀な官僚だったと言える。大臣や知事になってもおかしくない器だ。
 とはいえ、法学部卒だから、やはり技術には疎いはずだ。技術を管理することは得意らしいが、自分で技術をいじるようなことはまったくできないはずだ。

 永井素夫は、ただの監査役だから、経営よりは監査のためにいるのだろう。

 この3名を除くと、あとは、他の会社の社長・会長ばかりだ。これらはいずれも経営能力はあるだろうが、自動車会社の技術についてはろくに理解できまい。

 ──

 となると、以上から判断できることは、こうだ。
 「これらの新経営陣は、経営能力がない」

 つまり、経営能力のない経営者、というわけだ。ほとんど馬鹿げた存在だ。

 では、なぜこういう馬鹿げたことになったのか? その理由は、各記事を読めばわかる。どの記事にも、「ガバナンスの改善のため」と記してある。
 なるほど、ガバナンスのためであれば、今回の新経営陣は最強だろう。まるで全員が監査役みたいだ。つまり、全員がブレーキみたいだ。これなら、ゴーンみたいな人が強力にアクセルを踏んで暴走しかけても、ブレーキをかけることができるだろう。
 しかし、そこにはブレーキがあっても、アクセルがない。ゴーンのかわりに会社を引っ張る人がいない。これでは、暴走することもないが、正しい方向に進むこともない。単に停滞するだけとなりそうだ。

 ここに、今回の経営陣の根本的な難点がある。( 重要!) 

 ──

 では、どうするべきか? もちろん、こうだ。
 「技術について正しい理解を持っている人が、会社を正しい方向に引っ張っていく」


 具体的には、こうだ。
  ・ e-power と PHEV を推進する
  ・ 自動運転の技術を推進する
  ・ 上級車は CVT から、多段ロックアップAT へ移行する
  ・ 電気自動車には、冷却システムを採用する
  ・ 部品は耐久性のある高品質のものを使う


 これらをまとめて核心を言えば、こうだ。
 「コストダウンよりも、品質を重視する」


 その一環として、次のこともなす。
 「モデルチェンジを惜しまない。およそ4年ぐらいで必ずフルチェンジをする」


 換言すれば、こうだ。
 「コストダウンを最優先するゴーン主義とは決別して、正反対の方向を向く」


 つまり、会社の方向を 180度、逆方向に向けることが必要なのだ。それを理解している経営者こそ、今の日産には必要なのである。
 では、今回の新経営陣には、それを理解している人がいるか? いない。まったくいない。皆無だ。ブレーキをかける人ばかりがいて、アクセルを踏む人がいない。

 この意味で、今回の日産の経営陣は、まったく駄目だ、という評価になる。
 朝日新聞は、「西川氏の責任を追及せよ」なんてことを言っているが、そんな話はまったくの見当違いなのだ。日産の問題は、「悪い点をうまく消していない」ということではない。「良い方向に進む力がない」ということだ。
 そして、そのことを、今回の経営陣を決めた人々も理解していないし、朝日の社説執筆者も理解していない。誰も彼もがみんな明後日の方を向いているのである。(あっち向いてホイ)



 [ 付記 ]
 ついでに言えば、「英語の社内公用語化」なんていう馬鹿げた方針も、さっさと廃止するべきだ。この件は、前に述べた。
  → 英語の社内公用語化は?: Open ブログ
  → 日産が駄目になったわけ: Open ブログ
  → 日産を脱ゴーン化せよ: Open ブログ

posted by 管理人 at 11:55| Comment(0) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
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