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JDI は、中国・台湾の企業の買収されるはずだった。この件は、前に論じた。
→ JDI が身売り: Open ブログ
これで片付いたと思ったのだが、その後、トランプの対中制裁で、中国のIT企業が不振となり、中国に輸出する日本の部品会社も不振となった。このことで JDI の見通しも暗いなあ……と思っていたら、中国・台湾の企業もそう思ったらしく、新たな条件を突きつけてきた。(買収の提案をご破算にしようとしているらしい。)
経営再建中の液晶パネル大手ジャパンディスプレイ(JDI)が、出資の受け入れ交渉をしている中国・台湾の企業連合から、出資条件の見直しを要求されていることが分かった。JDIは4月、中台連合に最大800億円の資金を出してもらうと発表したが、中台連合は金融支援の条件として、新たな出資者を加えて資金調達をするよう求めている。JDIは債務超過寸前で、綱渡りの資金繰りが続いている。新たな出資者が見つからなければ、再建は暗礁に乗り上げる。
複数の関係者によると、中台連合がJDIの資産を査定したところ、想定以上に経営状況が悪く、追加の出資者を金融支援の条件につけたという。最大800億円の金融支援のうち数百億円を別の出資者から調達するよう求めており、この条件を満たさなければ交渉は進まないという。
JDIは海外の投資ファンドなどに出資を打診しているが、今のところ新たな出資者は見つかっていない。中台連合との交渉がまとまらなければ、今後1〜2カ月で資金繰りが行き詰まる可能性がある。
( → JDIに別の出資者の資金調達も要求 中台連合が新条件:朝日新聞 )
新たな出資者が出るわけもない。となると、会社清算が視野に入ってくる。株価も暴落しており、今や 57円だ。もすぐ紙屑同然になりそうだ。
ま、うまく行けば、債務だけを残して、本体をどこかに売却できるだろうが、本体を買ってくれそうなところはない。完全に消滅してしまうことになりそうだ。
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実は、2年前ならば、鴻海とシャープが JDI を引き受けてくれそうだった。
シャープの戴正呉社長は10日、堺市の本社で開いた記者会見で、経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)について「シャープが主導するなら(立て直しに)自信がある」と話し、支援に前向きな姿勢を示した。独占禁止法の問題もあり合併や直接出資はできないが、「色々な方法がある。すでに考えている」と含みを持たせた。
( → JDI再建「シャープ主導なら自信ある」 戴社長:日本経済新聞 )
なのに、「 JDI を台湾の会社に渡すのは絶対にいやだ」と言い張っていた経営者や(旧)産業革新機構のせいで、今回のような状況となった。
で、会社清算となると、技術者や労働者は路頭に迷うことになる。最悪の結果だと言えるだろう。
この件については、責任者を追及した記事もある。
→ 血税3千億円投入のジャパンディスプレイ、“経営破綻”を招いた歴代経営陣の敵前逃亡 (2019年5月16日)
この記事によると、本丸はどうやら、安倍首相と経産省らしい。
JDIが経営破綻すれば、アベノミクスの失敗の証明になりかねない。経産省は別働隊の革新機構を通じて、面倒を見ざるを得なかった。JDI側もそれを見越しており、本間氏などは記者会見で「革新機構の全面支援を取り付けている」と空手形を乱発した。経営破綻の責任は民間経営者に押し付けられ、首相官邸や経産相、同省の官僚が責任を取ることはない。
JDI を鴻海に(実質)売却しておけば、問題はなかったのだが、そうすると、長年の損失が表に出るので、アベノミクスの失敗だと言われかねない。それが怖くて、損失が表に出ないように、しきりに先延ばしにした。そのせいで、赤字がどんどん拡大して、最後には富がすっかり消えてしまった。つまり、処理を遅らせたことで、損失を最大化させた。
先に書いたとき(4月4日)には、「JDI が身売り」と記したが、このときはまだ富が少し残っていた。しかし処理が遅れているうちに、トランプの対中制裁が発動されて、事態は急変した。JDI の状況は最悪となった。もはや赤字以外には何も残らないありさまだ。投入した政府資金の 3000億円も消えてしまった。
無能の極み。(本サイトではこれまで何度も指摘してきたことなんだが。)
【 関連項目 】
前回記事。
→ JDI が身売り: Open ブログ
※ 過去記事へのリンクあり。