──
北本連系(線)はコスパが非常に悪いので無駄だ、と前に記した。
→ 北本連系(線)は無駄だ: Open ブログ
しかし残念ながら、このたび、これの実現が決まった。
経済産業省は16日、太陽光など再生可能エネルギーの電力を広い地域で効率的に利用するため、北海道・東北間と、東北・東京間を結ぶ送電網の増強費用を全国の大手電力会社で分担する仕組みを導入する方針を示した。費用は800億円に上る見通し。再エネ普及のため、全国一律で国が電気料金に上乗せして徴収している賦課金などを財源にする方向だ。
( → 再生可能エネルギー:送電網増強し融通、大手電力分担 経産省方針 - 毎日新聞 )
詳細説明は下記。
→ 北海道と本州つなぐ送電線の容量増強 費用は料金に上乗せへ | NHKニュース
わかりやすい図は下記。
→ 地域間の電力融通、強化へ全国で負担 電気料金に一部転嫁:朝日新聞
対比で示すと:
・ 北海道−東北: 30万kW で 430億円
・ 関東 −東北:455万kW で 1530億円
前者に比べて後者は、規模で 15倍、費用で 3.6倍。コスパで言うと、前者はコスパが 0.23 倍という悪さ。(後者の方が 4.3倍良い、と言い換えてもいい。)
後者はまだしも許容範囲だが、前者はコスパが悪すぎる。去年9月に北海道で起きた「ブラックアウト」の問題があるから対処する、とのことだが、たったの 30万kW では、焼け石に水であって、「ブラックアウト」の問題にはまったく対処できない。
では、どうすればいい? 何もしなければいいのか? いや、もっとうまい方法がある。こうだ。
「新規に 100万kW クラスの火力発電所を建設する」
つまり、ただの連系線なんかを建設するかわりに、発電所本体を建設してしまえばいいのだ。
すると、反論が来るかもしれない。
「新規の発電所なんて、コストがかかりすぎて、大変だ。それよりは、ただの通路である連系線だけにした方がいい」
しかし、そう思うかもしれないが、それは事実ではない。新規の発電所の方がコストは安く済むのだ。以下で説明しよう。
まず、北本連系線は、上記のように、30万kW で、430億円だ。
一方、 新規の火力発電所は、100万kW クラスなら 1000億円ぐらいである。
→ 第5章発電所の建設費(100万kW) - 東京都環境局(PDF:7357KB)
連系線に比べて発電所は、3.3倍の発電量で、2.3倍のコストだ。いくらかコスト的に有利だとわかる。1.4倍の有利さ。4割優位だ。
「でも、たったの4割か。それなら大差ないな」
と思うかもしれない。しかし、そうではないのだ。
新規の発電所の場合には、正規の電力施設だから、そのためのコストは電気料金にもともと含まれている。つまり、従来の電気料金で十分にまかなえる。
一方、連系線は追加費用となる。これはただの無駄な費用だ。かかったコストは、そっくりそのまま上乗せされる。
わかりにくいかもしれないが、連系線の場合には、1000億円の負担が浮くわけではない。経年劣化により、老朽化した電力施設があるので、それについては、やがて更新する必要がある。そのとき、上記の 1000億円の負担は必要となる。つまり、この 1000億円の負担は、どっちみち避けられないのだ。(本来の必要経費だ。)
なお、次のように思えるかもしれない。
「従来の古い設備だって、まだまだ使えるのに、新しい設備を購入するのは、もったいない。古いのを使いたい」
いやいや。そういうことにはならない。新規設備を購入したとしても、その新規設備は無駄に休んでいるわけではない。旧式よりも高効率で低コスト発電なので、常時稼働する。その一方で、低効率で高コスト発電の旧式設備がお休みする。その分は、いざというときのための予備電力として残される。
稼働するときには、新しいものから順に稼働して、古いものほど取り残される。一番古いものは、ほとんど稼働しないで、「万一の場合」のための予備となる。……そして、それこそ、北本連系線の役割と同じことだ。
北本連系線の役割は、一番古い旧式の設備がになえばいいのだ。「万一のときに備えて眠っている」という形で。そして、いざというときには、目を覚まして、稼働する。即時に稼働するというわけには行かないが、いくらかの準備時間を経たあとで、立派に稼働する。(そのために普段からきちんと整備・点検しておく。)
こういうふうにすればいいのだ。そして、そのためにかかる費用は、ほとんどゼロである。(古い設備を整備・点検する費用だけで済む。)
1000億円の新規発電所を建設するのに 1000億円の費用がかかるように見えるが、それはもともと掛かるはずの費用であるから、新規に余計にかかるわけではない。実質的にはコストゼロで、北本連系線と同じことができるのだ。
これが賢明な方法である。
[ 付記1 ]
関東と東北の間の連系線は、どうか?
やはり同じように、新規の発電所を建設する(そして古い発電所をバックアップの予備電力とする)のがよさそうだ。
ただ、そんなことをしなくても、すでにある分だけで十分に足りているとも思える。先の東日本大震災のときでさえ、激減した東北に関東から電力を融通することはできた。そのくらいの規模で足りそうだ。
逆に、関東で大震災が起きたら、東北の電力があると便利そうではある。ただ、そのために連系線を強化するくらいだったら、福島や茨城あたりに新型の火力発電所でも建設した方がマシだろう。その場合には、「高効率で低コスト」というメリットを享受できるからだ。同じような費用をかけるにしても、メリットを多く得ることができる。(うまく行けば、かかる費用の全額を回収できる。実質的にはコスト負担ゼロで、予備電力を得ることができる。)
[ 付記2 ]
「いざというときに働くだけの設備については、(日々の)運転コストは高くても、(初期投入の)設備コストが低いものを使う方がいい。そうすれば、トータルコストは低く済む」
というふうに言える。
滅多に使わない機器については、たとえ運転コストが高くても、古くてポンコツだが購入コストがゼロで済む古い設備を使う方がいいのだ。
逆に、毎日使うような設備については、たとえ購入コストが高くても、(日々の)運転コストが低い最新の設備を使う方がいいのだ。そうすれば、節約した運転コストで、最初の購入コストをまかなえる。
このことは、次の本に説明してある。(ベストセラー)
https://amzn.to/2HnL3Ve
[ 補足 ]
「再生エネのため」というのが、導入の名分だが、こういうのは、「エコのためなら無駄遣いをしてもいい」というもので、詐欺的な主張である。こういう詐欺論理で、どれほどの金が浪費されてきたことか。
実際は、エコのためであれば、同じ金をかけてもずっと有効に使う方法がある。なのに、今回は非常にコスパの悪い方法を採用して、小さな効果のために、巨額の金を投入する。……これはもう、ほとんど宗教的な妄想による巨額浪費である。
【 関連項目 】
新規の発電所を建設すればそれで済む……というわけでもない。建設するなら、それは札幌周辺にする必要がある。同時に、(現状のように)「苫東に発電力が集中する」という状況を改める必要がある。つまり、発電力を分散する必要がある。
この件については、前の項目で述べた。
→ 北本連系(線)は無駄だ: Open ブログ
太陽光発電などを設置して本州に売電しようとすると
送電網の増強などでさらに600億円程度は必要らしいよ
いやいや。たったの 30万kW しか通せません。量は焼け石に水で、価格はメチャクチャに高い。
北本連系線なんかなくても、再生エネは北海道内だけで消費できます。再生エネがあふれるほど余っているわけじゃない。しょせん上限は 30万kW だし。
なるほど、再生エネのポテンシャルはあるけれど、海辺や僻地から基幹電力網までつなぐ送電線がない。その負担まで考えると、発電コストは LNG の何倍もの超コスト高になる。
そのコストを、国の負担でやれば、国民の金を莫大に浪費することになる。それは道理が通らない。ならば、北海道内の電気料金を大幅に上げるしかないね。
そもそも北本連系線を国の負担でやるのがおかしい。これは全額、北海道電力の負担にするべきだった。その分、北海道電力の電気料金は値上げ。そうすれば、馬鹿馬鹿しさがわかるので、北海道民は全員が反対したはずだ。(今回は、国の負担が大きいから、馬鹿馬鹿しさが見えにくくなっている。)
量的にも送電路の長さからも、ほとんど意味がありませんから。
本音は、泊原発を再稼働させた際に、本州(究極的には関東)向けの予備電源として稼働できるように、ということなんじゃないでしょうか。
そもそも、最初に北本連系線を造った理由なんですから。
「北海道のため」なわけがありません。北電には何のメリットもありません。
無駄なのに造ろうとするのは、中央の都合に決まってます。首都圏にも火発は造っていますが、将来の東京地震の際には関東一体が被害を受けることが想定されるので、なるべく全国各地から電源を供給したい。全国に分散設置した各原発を連結すれば、それだけ安心だという理屈ではないでしょうか。
北海道民のせいにしないで、新潟や福島や青森に原発造って中央のリスク分散を図ってきた東京電力にこそ文句を言いたいものです。
欲しがっているのは、自民党の政治家だけでしょう。
この問題は、地方と中央との対立に帰するべきではない。連系線も原発も、誰も欲しがっていなかったのに、自民ばかりが熱中していた。しかも、安全に手抜きで。