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最近の企業では、社員の座席を固定しないという「フリーアドレス」という制度が実施されることがある。
対話を促すため昨冬、社の移転にあわせ、社員の座席を固定しないフリーアドレス制を導入。通常とは逆に社員数より多い席を用意すると、社員と社員の間に空席ができ、話したい相手の隣にすぐ座れて、打ち合わせが迅速になったそうです。
( → カイシャの会議 上の人ほどルール守らない:朝日新聞 )

しかし、フリーアドレス制では、席を移転するたびに PC を持ち運ぶから、PC はノートPC にするしかない。帰宅するときや出社するときに PC を持ち運ぶのにも、ノートPC にするしかない。(デカいデスクトップ PC や、デカい液晶を持ち運ぶわけには行かない。)
すると、デスクトップPC ゆえのメリットを享受することはできなくなる。
・ 大画面の液晶
・ 打ちやすいキーボード(東プレなど)
・ 使いやすいマウス(かわりにタッチパッド)
これらが使えなくなると、大幅に能率低下してしまうので困る……という人も多いだろう。
また、フリーアドレス制でないのに、ノートパソコンを使っている、という人も多い。
→ オフィス内のノートPCの6割は“持ち運ばれない”ノートPC?
モバイルとして使わないモバイル、という矛盾した存在。「動かさずに使うノートPC 」というのは、双方の「悪いとこ取り」みたいなものだろう。
こうなると、メリットがないまま、上述のデメリットばかりをこうむることになる。
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で、どうすればいい? もちろん、「うまい方法」なんてものはない。モバイルを強制するか強制しないかの、二者択一である。すると、次のいずれかだ。
・ モバイルを強制する …… フリーアドレス制が可能
・ モバイルを強制しない …… フリーアドレス制が不可能
「強制する」なら、フリーアドレス制が可能だが、個人の仕事の能率は大幅に低下する。(低下していることに気づかない人も多い。能率アップさせる方法を最初から奪われている。)そのかわり、会社のデスクはスッキリとして、見栄えが良くなる。
「強制しない」なら、能率的には何も問題はないが、フリーアドレス制は不可能だ。会社のトップは、「カッコいいことをやっているぞ」というふうに威張ることができなくなる。個人の仕事の能率をアップさせることとはトレードオフで、会社のデスクは雑然とするし、見映えは悪くなる。
なお、フリーアドレス制だと、「席替え」も自由なので、その分のメリットもちょっとだけ生じる。しかし、こんなことよりは、デスクトップのスペースを広げることの方が有効だろう。
「いや。デスクトップのスペースを広げるほど、会社の面積に余裕がないから、フリーアドレス制にするんだ」
という意見もありそうだが、これはおかしい。フリーアドレス制にするには、
「通常とは逆に社員数より多い席を用意すると、社員と社員の間に空席ができ、話したい相手の隣にすぐ座れて、打ち合わせが迅速になる」
ということがあるからだ。(上記引用部)
「社員数より多い席を用意する」ということからして、かなり多くのスペースを食うことになる。これでは面積を節約する効果はない。
なお、別案として、次の方法もあるかもしれない。
「シン・クライアントにして、固定式のデスクトップPC を共有する。あとはログインしてから、クラウド上のデータにつなぐ」
しかし、こんなことをしたら、パソコンをカスタマイズできないので、上級者の能率は大幅に低下してしまう。私なんか、キーボードさえも物理的に改造してカスタマイズしている。キー配列も(ソフト的に起動時に)改造している。ここで、機械の共有なんかにしたら、著しい能率低下が生じる。機械の共有なんて、とんでもないことだ。また、機械をカスタマイズするような上級者でなくとも、使い慣れたキーボードを使えなくなるだけで、大幅に能率低下が起こるはずだ。
( ※ だから、機械の共有はできない。各人が自分の独自のハードを使うべきだ。)
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というわけで。
仕事の能率アップをめざすのであれば、フリーアドレス制というのは、とんでもないことだと思う。だから、やめた方がいいですね。
次の記事もある。
→ フリーアドレスはもう古い 働き方を根本から変える「ABW」の破壊力
一部抜粋しよう。
「ABW」は……さまざまな活動に適した空間をオフィス内に複数設け、その活動ごとに空間を使い分けることで、各活動の生産性を上げるのです。
組織から与えられた場所と決められた時間の中で働くのではなく、社員一人一人が働く場所や時間の使い方、仕事の仕方を自ら考えながら働くことをABWは目指しています。
フリーアドレスは、確かに執務をするデスクを選ぶことはできますが、基本的には同じデスクの上でほとんどの仕事をします。一方ABWは、個々の活動がベースになってくるので、一つのデスクに限らずさまざまな場所で働くことを選択できるのです。
これによると、「フリーアドレスは……基本的には同じデスクの上でほとんどの仕事をします」とされる。あらら。これじゃ、有名無実化している。というか、朝に場所を決めたあとでは固定されるということかな? これでは「毎日席替えをする」のというのと同じで、実際にはフリーアドレスになっていない。「悪いとこ取り」をしているだけで、メリットは何もないことになる。
こんなフリーアドレスなら、やらない方がマシですね。
なお、上記の「ABW」なら、問題はないけれど、複数のデスクを用意することになるから、オフィススペースを提供するコストは大幅にアップしそうだ。たとえば、オフィスの面積が5割増で、会社の借りるフロアの家賃も5割アップ。……都心のオフィスでは、すごいコストアップになる。日本では、実現しにくいですね。(金のない会社が多いし。)
となると、最終的に可能となるのは、昔ながらの「固定式デスク」しかなさそうだ。固定することに面倒があるのなら、月にいっぺんぐらい職場内で「席替え」でもすればいい。そのくらいなら何も問題ない。
というか、たいていは部課という制度の下で、一つの課ごとにまとまっていることが多いんだから、そういう状況で、フリーアドレスにすることの意義って、ほとんどなさそうですね。全社員がフリーアドレスにして、部課の垣根を越えて散在するのなら、まだわかるが。……しかそれだと、部課のまとまりがなくなるから、普通の会社組織では無理っぽいですね。
結論。
フリーアドレス制って、無意味っぽい。経営者の独りよがりであって、社員にとっては有害だろう。特に、熟練の上級技術者にとっては。
( ※ フリーアドレス制って、社員が ITの初級者であることを前提にしたシステムだ、と思える。初級者にとってはそれでいいが、上級者にとっては悲惨な環境を強いられる。)
【 追記 】
フリーアドレス制にしても、液晶とキーボードの持ち込みを認める、という会社も多いそうだ。これが推奨されているという。
→ 据え置き利用では考えられなかったポイントも!
ただしそのためには、専用の「備品置き場」を用意しておく必要があるそうだ。始業時にはそこから運んで、終業時にはそこに戻す。
→ 全社員フリーアドレスオフィスにおけるクリエイターの働き方
しかしそれだと、重いディスプレイを運ぶ必要があるので、女性には大変だ。落とすと壊れる。ディスプレイには、コネクトする手間もかかる。
だったら、「フリーアドレス制の仕組みだけ整えて、あとは固定したデスク」の方が便利そうだ。「固定的なフリーアドレス制」という、何やら矛盾した概念。「ときどき席替え」という意味かも。
なお、事例を見ると、パソコン本体(ノートパソコン)もそこに置いているようだ。つまり、パソコン本体も私物化されている。これだと、カスタマイズもやり放題だ。
( ※ ただし使うソフトがどこまでカスタマイズ可能かは、会社のシステムしだい。)
というわけで、液晶やキーボードに、私物を持ち込むのでなく、会社支給で任意の商品を選べるのなら、問題は少ない。
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ただ、クリエイティブな仕事の場合だと、個人の資料が多くなるので、固定的な机と引き出しは必要になりそうだ。ロッカーで済ませる手もあるが。でも、研究職だと、やっぱり固定した机は必要だと思うね。ゲイツやジョブズだって、専用の社長室を持っていたし。
→ https://irorio.jp/naotosasaki/20120622/14078/
良い実例を見つけた。
Google では、管理者が整頓されたデスクを強要することをやめて、社員が自分の好きなようにさせることで、各人が自分にとって最適な道を選ぶので、業務効率が向上するという。
→ https://zuuonline.com/archives/191333
・・・ソリューションベンダーによって色々呼称は異なるが、基本的には「シンクライアント導入」とのセットが基本となる。
シンクライアント環境では、端末側にストレージが無いのでセキュリティ上のメリットもある。
また、自宅から仕事をする場合も自宅のシンクライアント端末からVPN接続することで、会社と同等の作業環境が可能となる。
IT管理・インフラ担当者の敵だな。
大抵こうゆうユーザは
トラブルシュートでリモートアクセスする際に障害となる。
PCリプレースの際に(これがいい・あれは嫌だと)わがままを言い始める。
故障時に予備PCと交換した場合にごねる。
変なソフトを勝手に許可なくインストールする。→削除を求めると、いやだとキレる。
等々・・
でも、スーパープログラマとかスーパー技術者って、そういうものでしょ?
それを受け入れられない会社には、そういうスーパータイプの人は来ない、ということ。それはそれでいいんじゃない? 凡人だけを集めた会社ならば。
ついでだけど、キーボードの改造をしないでキーボードの大量打鍵をしていた勝間和代さんは、指が壊れてキーボードを打てなくなってしまった。一方、私は指が壊れそうになったとき、指が壊れないようにキーボードを改造したから、今でも指が健在だ。指への負担が大幅に減っているからね。
「会社名 オフィス」でググると、はてな や、Facebook を始め、シンクライアントではない会社がが多いようです。たいていは、各人が別々のハードウェアを使っている。大画面やら、縦画面やら、ノートパソコンやら、マルチモニタやら。
そうなの?
>キーボードの改造をしないでキーボードの大量打鍵をしていた勝間和代さんは、指が壊れてキーボードを打てなくなってしまった。
これが一般的にそれなりの確率で発生するのならばともかく・・・ごくごく一部の特殊な例を引き合いに出されても困るというかなんというか??
「VDT作業の労働衛生実務」の内容を遵守していないだけ・・・とか
なお、大量打鍵で指が壊れるというのは、一般的です。壊れない人は、大量打鍵していないからでしょう。
特に、キーボードでキータッチが硬いキーボードを使うと、指が壊れやすい。今はそういうキーボードが多いから、指が壊れる人も多いかも。……いや、逆に、高速打鍵できる人が減っているせいで、かえって患者数は減っているかも。
私が言っているのはあくまで、高速で大量打鍵する人だけです。人口比では、ごくわずか。1%もいない。スーパーレベルの人だけです。
の認識でOK?
"機械の共有はできない。各人が自分の独自のハードを使うべきだ。"はフリーアドレス導入時の対象者の範囲内での話と理解していたのだが
大体、スーパープログラマとかスーパー技術者の作業環境を考えればフリーアドレスの対象にする必要は無い。
別にこのような作業者以外でフリーアドレス化を検討すればいいだけの話。
会社としては "all or nothing" の考え方ではなく、効果のある部署にだけフリーアドレスを導入しますとするのはごく自然な対応でしょう。
です。スーパーレベルはごくわずかだけど、パソコン上級者はいっぱいいるでしょ。全体の1〜3割ぐらい。
うーん、ブログ主の考える会社の業務とは、もしかしてExcelやWordでガンガン資料を作っているといったイメージなのかな?
※ 全員に東プレを提供するなら別だが、そんな会社、ほとんどない。(例外は入力専門会社。)
フリーアドレスを導入した方がいい会社は、セキュリティの保持が、仕事の能率向上よりも優先される職場です。たとえば、防衛省みたいな。
あと、営業職もフリーアドレスが適する。デスクワークよりも対人折衝がメインなので、キータッチなんかは二の次となる。
まさかOASYSキーボードなんていわないよね?
寿限無の経験では、タッチタイピングする人で専用キーボードでないとだめだなんて人居なかったのが現実。
(せいぜい、ノートPCでDELキーとBSキーの位置が家のPCと違うので時々間違えるという人が若干名いた程度、それでも、慣れれば問題ないレベル。)
余談だけど、
今時、通常の会社業務でタッチタイピングでガンガン入力するなんて業務を行っている人なんて1割もいるの?
業務の効率化を目指せば、大企業ではERP他、中小企業でもソリューションベンダの提供する専用のパッケージソフトを導入する昨今、依頼書・報告書は定型化、”社外”への業務メールもひな形を元に作成が普通。
パソコン上級者と業務ができる人に相関関係なんてほとんどない。
タッチタイピングの出る幕は、企画書の"下書き"が"多少早く作成できる"程度でしょう。(グラフ・図・表を多用して文章は全体の1/3半分程度。入力より、データが正しいかの確認に時間を取られるのが現実。)
タッチタイピングが出来るか否かと企画書の中身は全然関係ないのはいわずもながである。
言い換えれば、フリーアドレスの是非はともかく、導入のデメリットに上げるにはちょっと無理があると思いますよ。
して頂きたい。
PC環境をそのままで机だけフリーにしてもメリットは少ないと思うし、ITの面ではネットワークの管理で+αが発生してしまう。
シンクライアントを導入すれば、長いスパンで考えれば効果が見込まれるが、初期投資を回収するには相当の期間が必要になる。企画書作成しても、相当周到に会社幹部に根回ししとかないとGOサインもらえなかった。(2008年に色々画策したが、その途中でリーマンショック発生、業績下方修正のあおり食らって投資枠圧縮でポシャッた思い出がある。)
ただ、ガンガン入力する上級者であっても、液晶やキーボードに私物を使える例もあるので、これならあまり問題ない。
ただ、あまり問題はないとは言っても、机の固定を排するようだと、「開発効率の低下」という問題は避けがたいようだ。
この件は、 【 追記 】 に記しておきました。
寿限無の中では、入力作業≒無駄作業なんですよ。
「手で入力する作業があれば、自動化を行い、その分有益な活動に時間リソースを割り当てる」
これが、業務の効率化の一端なんです。
プリントアウトした情報を入力するぐらいなら、対象システムにデータを取りに行く・データの吐出し/取込のバッチシステムを構築する。画像データならば、OCRを検討する。データ加工はシステム側のアドインで行う。
等々。
手書きの情報なんて入力業務を外注に出す場合もあるぐらいです。つまり価値の低い作業なんです。
これは機械のオペレーションでも一緒、機械に動作データを入力するのは無駄、上位システムからレシピを流し込むんです。そのためのキー情報も、ライン上のQRコード自動読み取りなんです。
プログラムの構築も同じ、プログラム作成者は、コード入力に時間なんて掛けたくないんですよ。だから、プログラム環境も入力支援を充実させて、キー入力作業を減らそうとするんです。
フロー図からスケルトンを作成する環境が話題に上がるのも入力作業から解き放たれたいんですよ、そんな時間があるなら、もっとシステムの質を上げる作業に使いたいんですよ。