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本日の朝日新聞は、学校の死亡事故を特集としている。(連休でネタがないので。) 下記の多くは、無料で大部分を読める。
→ 部活、給食でなぜ…絶えない学校の事故300万件を分析 [学校の死角]:朝日新聞
→ 学校死亡事故、検証報告は1割未満 遺族に募る「なぜ」 [学校の死角]:朝日新聞
→ 卒業式前の大掃除で転落死 「息子の死、防げたのでは」 [学校の死角]:朝日新聞
→ (子どもたち、守れますか 学校の死角)我が子の死、事実知りたい 詳細報告1割、検証進まず:朝日新聞
具体的な事例は、二つある。
一つは、転落事故。
大掃除に取りかかった圭汰さんは、分担された1階のトイレを掃除。3年生の教室がある4階に戻ると、級友が廊下の窓から庇(ひさし)に出て窓の外側を拭いていた。庇の幅は 1.1メートル。手すりや柵はない。手伝おうとした圭汰さんは、庇に下りる際に転落。約9メートル下の2階テラスで全身を打った。
( → 卒業式前の大掃除で転落死 「息子の死、防げたのでは」 [学校の死角]:朝日新聞 )
もう一つは、溺れた事故。
■ 溺れて亡くなった息子
金沢市の松平忠雄さん(48)は、17年11月に石川県立高校1年だった航汰さん(当時15)を亡くした。野球部の試合中、近くの川に落ちたボールをすくおうとして転落し溺れた。
現場ののり面は傾斜が急で、過去に近くで小学生も亡くなっていた。それでも、落ちたボールを網で拾うのは野球部の慣習になっていた。
忠雄さんが事故原因などを学校に尋ねる中で、15年に野球部の監督がボールを拾おうとして川に落ち、マネジャーに救助されていたことが分かった
( → 学校死亡事故、検証報告は1割未満 遺族に募る「なぜ」 [学校の死角]:朝日新聞 )
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では、どうすればいいか? 専門家の話が記事にある。
名古屋大の内田良准教授は…… 10年ほど前、JSCのデータをもとに過去27年間に起きた転落死亡事故を分析。小学校は窓、高校は庇からの転落が多かったとして、論文などで事故防止策の重要性を指摘してきた。
これだけ事故が起きていることを国は真摯(しんし)に受け止めるべきだ」と話す。
屋根や庇に「乗るな」と注意するだけでなく、庇に落ちた物を取る道具を用意するなど具体的な対応が必要だと提案。窓の下を植え込みや花壇にし、転落しても衝撃を和らげるなどの安全対策も考えられるという。「『子供の不注意』『偶然』と片付ければ対策は進まない。
( → 卒業式前の大掃除で転落死 「息子の死、防げたのでは」 [学校の死角]:朝日新聞 )
ここには「窓の下を植え込みや花壇にし、転落しても衝撃を和らげる」という対策が示されている。なるほど、これは有効だ。しかし、こういうことを一つ一つ思い浮かべるのは、簡単ではない。専門家じゃあるまいし、学校教員や生徒がうまい対策を自動的に思い浮かぶわけではない。対策法はあるにしても、それを実行するのは容易ではないわけだ。
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困った。そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「個別の対策をする前に、一般原則を立てる。それは、フェイル・セーフという概念だ」
フェイル・セーフ。つまり、何らかの失敗があって、事故が起こったとしても、事故の被害を最小化するように、あらかじめ安全対策をしておけばいいのだ。
記事の例に当てはめれば、次のようになる。
(1) 窓の外での転落
・ 足を踏みはずしても大丈夫なように、ロープで結ぶ。
・ 転落しても被害を最小化するように、地上に植え込み。
(2) 川で溺れる水難
・ 川に落ちても大丈夫なように、救命用具を着ける。
(救命胴衣・救命浮き輪)
というわけで、「フェイル・セーフ」という概念を徹底することで、さまざまな場面で個別に適用することが可能となるわけだ。
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なお、このことを現実的に実行するには、次の二点が決定的に重要だ。
第1に、学校教育の場で、安全教育をする。「フェイル・セーフ」という概念を教えた上で、「では具体的にどうするか?」と、生徒にいろいろ議論させる。提案させた上で、実行する。(ロープを用意したり、窓際に警告書を記したり。)……これは、重要な教育なので、教育の一環として全校に必須とするべきだ。(時間数は多くなくてもいいが、体育祭なんかよりは重視するべきだ。)
第2に、全学校を横断的に統率する組織を設置して、情報を共有するべきだ。できれば、文科省に担当部門を置いて、そこで事故のデータや対策方法のアイデアを共有する。そしてネット上で誰でもアクセスできるようにするべきだ。この情報を元に、生徒たちが議論するのもいいだろう。
以上が、私の示す対策だ。朝日新聞が問題提起したので、私が回答を示した。