2019年05月04日

◆ 外国人施設に住民が反対?

 外国人施設の建設に住民が反対している、という報道があったが、ほぼ誤報だ。

 ──

 外国人施設の建設に住民が反対している、という報道があった。朝日新聞の記事で、「住民のエゴで、外国人を毛嫌いしているが、けしからん。もっと国際的になれ」という趣旨。
 約1500世帯が暮らすこの地区には、古くから代々続く家も多い。そこに外国人技能実習生を受け入れる監理団体が研修施設を計画し、反対運動が巻き起こった。計画によると来日直後の実習生に約1カ月間、日本語や生活習慣を教え、最大60人余りが暮らせる。
 昨年秋から6回開かれた説明会では、分譲住宅にするための土地が転売された経緯への不満や、外国人への不安の声が続いた。「地区の真ん中に外人がどんと来られたら困る」。
 反対運動を続ける住民の男性(63)は取材に対し、「不特定多数が出入りする施設を、住宅街の真ん中に建てる必要があるのか」と憤った。
 背景の違う人々への理解はどうしたら進むのか。
( → 外国人施設「反対」、遠い対話:朝日新聞

 要するに、住民を馬鹿扱いして、「もっと賢明になれ。おれ様のように」と諭しているわけだ。
 しかし、「不特定多数が出入りする施設を、住宅街の真ん中に建てる必要があるのか」というのが、反対側の意見だ。なのに、それを「背景の違う人々への理解が足りない」というふうに曲解する。この記者は、相手の言っていることをまったく理解できていない。
 住民が反対しているのは、「外国人だから」ではなく、「住宅地の真ん中だから」である。ここでは、「外国人施設」のうち、「施設」である点に反対しているのだが、それを「外国人だから反対している」というふうに曲解している。( ※ ま、一部の人は、「外国人だから」という理由で反対しているが、それはそれとして、この件の基本は「施設だから」である。間違えてはいけない。)

 実は、これと似た問題は、他の地域でも起こっている。
 「住宅街の真ん中に保育所を建設するのに、住民が反対する。騒音などが迷惑だから」」
 というものだ。この件は、前にも述べたことがある。
  → 保育園設置を住民が阻止: Open ブログ

 ここで、住民はなぜ反対したか? 保育園児や親が来ることに反対したのか? いや、「閑静な住宅環境が損なわれるから」だ。
 ここでは、住民の反発は当然だ。住宅街は住宅地として指定されているのに、そこに騒音や混雑の問題を起こす施設が建設されれば、住宅環境が損なわれるからだ。

 ここまで見れば、問題の本質がわかる。こうだ。
 「住宅街に施設を建設することを許容している法律に問題がある」


 具体的に見ると、次の規定だ。
  → 第一種低層住居専用地域 - Wikipedia

 読めばわかるように、第一種低層住居専用地域は、都市計画法第9条による用途地域の一つで、低層住宅の良好な住環境を守るための地域であり、13種類の用途地域の中で最も厳しい規制がかけられている。
 それにもかかわらず、ここには、保育園とか外国人の研修施設とか、そういう事業用の施設を建設することが可能となっている。そして、ひとたびそういう施設が建設されたなら、閑静な住宅地に自動車がひっきりなしに出入りする時間帯も生じるだろう。閑静な住宅環境は一挙に破壊される。これでは住民が反対するのも当然だ。

 要するに、現状の法律にバグがあるわけだ。そこで、「住宅以外の事業用施設は建設してはいけない」という規定のある法律を定めるべきだ。それによって、閑静な住宅街の住宅環境を守るべきだ。
 しかしながら、今の日本には、そういう法律はない。かろうじてあるのが、「住民同士の協定」だけだ。「小さく分割して売却するのは禁止」というふうな。
 ただし、これは単なる協定だから、遵守義務がなく、破られてしまうことも多い。そこで、自治体が介入して、この協定に公的な強制力を持たせることもあるようだ。たとえば、田園調布。
  → 4.1 環境保全及び景観維持に係わる規定 - 一般社団法人 田園調布会

 とはいえ、こういうのは、あくまで例外的だ。たいていの地域には、住民の協定もないし、自治体による介入もない。要するに、業者の側が「やりたい放題」だ。

 今回の外国人施設の場合には、もっとひどい。
 「地主に対しては、分譲住宅を建設する、と約束しておいたのだが、それを反故にして、外国人施設を建設する。事業主は、約束を守る必要などはない、と開き直っている」(要旨)

 こういう事情があるわけだ。
  → 出典

 要するに、嘘をついて土地を購入して、金儲けをする、というわけだ。詐欺も同然である。
 本来ならば、こういう研修施設は、第一種低層住居専用地域ではなく、他の地域(第一種住居地域・第二種低層住居専用地域など)に建設するべきだった。しかし、それらの土地は、地価が高めだ。そこで、地価が安い、第一種低層住居専用地域に建設して、金儲けをしよう、というわけだ。
 つまり、「騒音被害などの損失は他人にもたらし、地価が安いという利益は自分が頂戴する」というわけだ。「他人に迷惑をかけて、自分だけが利益を得ればいい」というエゴイズム。そのために、嘘をついて、だまして、土地を入手したわけだ。まさしく、詐欺師の手口。

 そして、こういう詐欺師の手口に気づかずに、「外国人を認めることは、国際的で素晴らしい。それに反対するのは、無知蒙昧の愚者だ」なんていう記事を書くのが、朝日新聞だ。これじゃ、詐欺師に操られる、操り人形も同然だ。


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 なお、今回の事業主は、外国人労働者の監理団体だが、この手の監理団体は悪質な業者が多いということで有名だ。「適正な労働環境であることを保証するために、いろいろと監理します」というふうに謳っているが、実際には監理料金と称して多額の金をピンハネし、その一方で、外国人労働者が劣悪な環境におかれても、見て見ぬフリ。悪を指摘したら、監理料金を取ることができなくなるから、悪を見逃して、悪人から金を取る。つまり、悪人同士がグルになって、外国人労働者の金をむしり取る。
 こういう 悪事がまかり通っているのだ。それというのも、「外国人労働者を薄給でこき使うのを容認しよう」という自民党の方針に合致するからだ。悪人と自民党と政府が一体化して、悪事がまかり通っている。そして最後に、朝日新聞が提灯持ちをする。かくて、悪事のシステムが完成する。

 ※ それを指摘するのが本サイトだが、いくら指摘しても、「またオオカミ少年だろ」と思って、人々は信じない。そのうちオオカミに食い殺されるだろう。
posted by 管理人 at 10:03 | Comment(1) | 一般(雑学)5 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
朝日新聞は反自民党で凝り固まっていると思ってましたが、知らずに提灯持ちをやっているという皮肉な現象ですね。
Posted by 京都の人 at 2019年05月05日 14:45
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