※ 法律に興味のある人のみ、お読みください。
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スクショについては、文化庁が先に報告書を出した。「スクリーンショットは違法の対象となる」という趣旨。
文化庁が著作権法に関する最終報告書をまとめた。
文化審議会著作権分科会はこれまで、動画や音楽の違法ダウンロードが著作権侵害の対象になるとしていた。そこに今回、無断で投稿された「静止画」も違法の対象になると指摘。マンガや写真、小説、雑誌、論文などの“スクリーンショット”も対象になるという。
( → 新たに「スクショ」も違法対象に…著作権侵害の注意点 | AbemaTIMES )
これは、ツイッターにスクショがあふれている現状とは合致しないので、世間では不満の声があふれた。
一方、法律専門家は、主として法的理論の面から、違法性を指摘している。「批評などの正当な範囲内では合法だが、それ以外では違法だ」という基本的な解釈。
→ SNSでよく見るテレビ番組のキャプチャー画像、著作権上の問題は?
ただし、これは法を形式的に当てはめたものだ、とも言える。条文通り、と言ってもいい。
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さて。私はここで、まったく新たな法解釈を示したい。それは法の適用の本来の方針に則ったものだ。つまり、
「形式的解釈でなく、実質的解釈をする」
というものだ。
※ わかりやすい例で言うと、あの手この手で法律のがれをして、脱税した場合には、いくら形式的に合法に見えても、実質的に脱税したと見なされて、あっさり違法だと判断される、ということ。悪いやつは見逃さない、という法解釈。自己流の拡大解釈は許されない、ということでもある。
さて。「形式的解釈でなく、実質的解釈をする」という方針を取るなら、次のように判断していいはずだ。
「違法かどうかは、それによって(権利者に)損失が発生したかどうかで判断する」
たとえば、無断掲載によって、権利者に損失が発生したのだとすれば、それは一種の泥棒であるから、違法となる。
一方、無断掲載によって、(権利者には)損失が発生するどころか、利益が発生するのであれば、それは一種の泥棒であるとは言えないから、違法だとは言えない。特に、裁判となった場合には、「訴えの利益がない」ということから、違法性を訴えても棄却されることになるだろう。
では、権利者に(損失でなく)利益が発生するとは、どういう場合か? そのような無断掲載とは、どういうものか? それは、こうだ。
・ その番組は無償公開されている。
・ 無断掲載には、宣伝効果がある。(批判せず褒める)
・ 無断掲載した記事は、容易に転載可能だ。(retweet)
・ 無断掲載した者は、掲載によって利益を得ない。
・ 無断掲載した記事に、著作権を主張しない。(retweet)
細かく述べると、以下の3点だ。
(1) その番組は、無償公開されていることが条件だ。有償の番組は対象外だ。これは著作権法の趣旨からして当然だろう。
(2) 無償公開されている番組ならば、番組が宣伝されると、視聴率が上がって、利益になる。こうして「利益が発生する」という条件が満たされる。
ただし、それが宣伝効果(番宣効果)を持つためには、無断掲載の記事が番組を褒めていることが条件だ。(特に明白に褒める言葉はなくとも、全体として好意的であればいい。)
一方で、たとえ褒める言葉があっても、全体として批判的であれば、宣伝効果はないから、無断掲載は違法となる。
この場合には、著作権法の規定で、(批評などで)「正当な範囲でなら掲載可能」となるが、そのためには、「正当な範囲であること」が要件となる。それには、「引用物の解像度が低いこと」が絶対条件となる。場合によっては色を抜いてモノクロにすることも必要かも知れない。とにかく、作品自体の芸術的な価値がなくなって、単に作品を指示するだけの記号的な意味だけが残るような、小さな粗い画像にする必要がある。この場合のみ、「正当な範囲の引用」となる。
※ なお、この宣伝効果を大きくするためには、「転載の転載」が可能であるようにするべきだ。つまり、retweet 機能を備えるべきだ。
(3) 無断掲載をした者は、それによって利益を上げないことが必要だ。上記では、
・ 無断掲載した者は、掲載によって利益を得ない。
・ 無断掲載した記事に、著作権を主張しない。(retweet)
というふうに述べたが、これをまとめると、「ツイッターならば、この二点を満たすので、OK」と言える。
一方、ブログならば、この二点を満たすとは言えない。
・ 無断掲載をした者は、アフィリエイトの利益を得るかも。
・ 無断掲載をした者は、著作権を主張するかも。
(ブログ記事[本文]の無断転載を拒否するかも。)
というわけで、「ツイッターならば大丈夫だ。一方、ブログでは大丈夫だとは言えないし、むしろ違法だろう。」と言える。
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結局、ツイッターは規約によってさまざまな条件設定をすることで、ツイッター利用者の権利を制限し、一方で、スクショされた側の利益を守るような制度になっている。
だからこそ、無断掲載があっても、テレビ局の側は損をするどころか利益を得るし、「無断掲載を許さん」と思って訴えても、「訴えの利益がない」ということで棄却されがちだ。
そもそも、そんなふうに訴えたところで、賠償金などはまったく取れないし、一方で、弁護士の訴訟費用は莫大にかかる。大量のスクショを相手にそんな馬鹿げたことをやっていたら、「損をするために莫大な出費をする」という狂気の沙汰となる。だから、法的解釈がどうであろうと、もともとそんな訴訟が起こるはずがない。
そして、そういう馬鹿げたことのために、裁判所もいちいち関わってはいられないだろうから、訴えたところであっさり棄却されるのがオチなのである。
というわけで、有罪か無罪かという判断を出す前に、「棄却」という形で実質無罪になるはずだ……というのが、私の見解だ。
法学者の主張とはまったく異なる解釈だが、「物事の本質を考える」というふうにすれば、これが最も道理が通っている。
ゆえに、法的には異例の解釈にはなるが、
「テレビ番組のスクショは、ツイッターでやる限りは、実質的に合法だ」
というふうに判断していいだろう。(ただし、好意的な趣旨での掲載であることが条件。批判的な趣旨での掲載は駄目だ。)
※ 以上では特に記してないが、スクショの掲載にあたっては、出典(番組名など)を記すことが絶対に必要である。当り前ですね。
※ 正しいスクショの例。(かわいいは 無罪)
「乃木坂工事中」で、ハブ退治をした与田
— e8o (@e8o) 2019年5月1日
https://t.co/otKkUtEROF pic.twitter.com/MCiIhWXPDU
[ 付記 ]
以上は、ツイッターにおけるスクショの話だ。
一方、たとえツイッターであっても、有償販売のゲームについては、まったく事情が別だ。「無断引用で著作権法違反」ということで、あっさり片付いてしまう。
→ 今話題の「スクショNG」何でもかんでもNGというわけではないらしい。改めて、その線引きを見てみよう - Togetter
この点で、有償のゲームは、無償で放送されているテレビ番組とはまったく異なるわけだ。
一方、(ゲームでなく)テレビであっても、(無償でなく)有料放送の場合には、スクショは違法になるだろう。これも「無断引用で著作権法違反」ということで、あっさり片付いてしまう。