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政府がAI推進
政府は先日、AI教育の推進を決めた。4月18日。
政府は18日、総合科学技術・イノベーション会議を首相官邸で開き、今夏の策定を目指す「AI(人工知能)戦略」について協議した。議長を務める安倍晋三首相は、2025年までに情報通信技術(ICT)に精通した人材を全国の小中学校と高校に配置し、毎年100万人規模の児童・生徒が「AI教育」を受けられる体制を整えると表明した。
首相は専門人材の配置数について、外部から積極的に採用し、「小中学校4校に1人以上」「高校1校に1人以上」とする方針を発表。「第4次産業革命が進む中、子どもたちの誰もがデジタル時代の『読み、書き、そろばん』であるAIの活用力を身に付けられる環境を提供しなければならない」と強調した。
( → 100万人規模でAI教育=小中高に専門人材−安倍首相:時事 )
つまり、「AI技術者が足りないから、学校で養成すればいい」というわけ。
こういう泥縄的な対応には、批判が多い。「それより数学教育をしっかりやれ」というふうな。
→ はてなブックマーク
実は、これ以前にも、似たことがあった。「学校教育でプログラミングの必修」というやつだ。
2020年度から、小学校でプログラミング教育が必修化されます。また、大学入試センター試験に代わって導入される「大学入学共通テスト」では、プログラミングなどの情報科目の導入が検討されています。プログラミング教育の必修化には、2つの目的があります。
1つが今後不足することが予想される「IT人材の育成」。そして、もう1つが ……「プログラミング的思考の育成」です。
( → プログラミング教育必修化に漂う大きな不安 | 東洋経済 )
これもまた、泥縄的な対応だ。「プログラミング技術者が足りないから、学校で養成すればいい」というわけ。もちろん、同じ批判が当てはまるだろう。
そもそも、今の若者は、パソコンを使えないことが多い。スマホばかりやっていて、パソコンには馴染みがないのだ。キーボードのブラインドタッチ(タッチタイピング)なんて、なおさらだ。できる人は少数派だ。
だから、こっちの方で基礎力を磨く、というのが先決だろう。プログラミング技術は、そのあとでいい。
ま、プログラミング技術なら、まだわかる。文系でも有益で、就職に役立つからだ。「大学の文系の人もプログラムを学べ」ということは、私も前に書いた。(古典文学や哲学なんかより、就職に役立つ技術を学べ、という趣旨。)
→ 人文系学部を縮小するべきか?: Open ブログ
とはいえ、プログラムでなく AI技術となると、話は別だ。AI技術なんて、文系の人には扱いにくいことが多い。理系の人でさえ、ろくに知識がないことが多いのに、文系の人にまで必修化するというのは、やりすぎだろう。
どちらかと言えば、理系の人に、大学課程で必修化する方がいい。高校までは、基礎学力の充実の方が先決だろう。(そもそも教育する人材がいない。)
また、大学においては、専門家に頼るよりは、ネットで学ぶべきだろう。
Google Japanは本日(4月22日)、無償のデジタルスキルトレーニングプログラム「Grow with Google」を発表しました。日本国内で2022年までに1000万人に提供するとしています。
( → Google、無償の『デジタルスキルトレーニング』を国内1000万人に提供 - Engadget 日本版 )
→ はてなブックマーク (好評)
Preferred Networksは4月10日、自社で開発するオープンソースの深層学習フレームワーク「Chainer」に関する日本語の学習サイト「ディープラーニング入門:Chainer チュートリアル」を無償公開した。機械学習を勉強するために必要な数学や統計学、プログラミング言語Pythonなどを基礎から学べるという。
( → ディープラーニング初心者向けの日本語学習サイト、PFNが無償公開 )
→ ディープラーニング入門:Chainer チュートリアル
朝日の紹介記事
AIについて朝日の紹介記事がある。
→ 未来からの挑戦:4 トロント、30年でAIの街に:朝日新聞

カナダのトロントでは、30年前から AIを推進しているので、世界でもトップクラスになれたそうだ。ひるがえって、日本の現状は惨憺たる状態だそうだ。圧倒的な遅れがある。
記事の話はこう続く。
一方、高度なAI人材の数で9位、人口比では米加の10分の1に満たない日本も、ようやく動き始めた。
3月、政府が公表したAI戦略の有識者提案は、AIを使いこなす人材を年25万人育てる目標を掲げた。昨年末の時点では十数万人で検討されていたが、大きく引き上げられた。
しかし25万人という規模は、年間の大卒生の半分近くになる。理工系や医学部などの約18万人全員に、文系の18%に当たる約7万人も加えた。政府内からさえ「実現できるか分からない」との声が聞かれる。
経済産業省が23日にまとめた試算では、AI人材は30年時点で12万4千人、不足するという。
技術者が不足するのだとすれば、技術者の増員を求めた政府の方針は正しいのか?
記事にはこうある。
AI人材は国内でも争奪戦になっている。
リクルートキャリアによると、企業が18年に募集したAI関連の中途採用は5年前の約60倍に増えた。この2年で拍車がかかったという。
職種も、かつては自動車や家電といった製造業やIT関連企業などが中心だったが、最近は金融や流通、消費財などあらゆる分野に広がる。同社の転職サイト「リクナビNEXT」の藤井薫編集長(53)は「魅力的な報酬や活躍できる環境を約束できるのか、採用する企業側の本気度が試されている」と指摘する。
需要が増えたのはわかるが、供給はろくに増えていない。では、なぜか?
その理由は、例によって例のごとし。「給料が高くないから」である。これほど引く手あまたの技術者であれば、給料は高くていいはずだが、日本の情報技術者は世界的に見て給料が安い。AI人材も同様で、同じ技術を持つのなら、米国で働く方がはるかに給料がいい。
日本国内でさえ、国内企業よりも、外資の Google で働く方がずっと給料がいい。だから超優秀な NTT 社員がどんどん Google に転職していく。(はてなブックマークにはそういう話が多い。)
「AI技術を推進したいのであれば、まずはAI技術者の給料を上げろ」
というのが、私の勧告だ。それなしに技術者を養成しても意味がない。養成した技術者が国外に移転するだけだ。
(※ ちなみに、保育園の保育師も、大量に養成したあとで、給料が安いゆえに大量に辞職している。)
また、企業で養成するのであれば、技術者には技術を学ぶための勉強時間が必要なのに、無闇に長時間労働で時間を奪ったあげく、「勉強は自分でやれ。その時間の給料は払わない」という会社が多い。
こういう体制では、まともに技術者も育つまい。
政府が何かをやるのなら、学校で職業教育なんかをするよりは、企業が自前で技術者を養成できるように指導するべきだろう。そのためには、「低賃金・長時間労働」なんていうのは、技術者の養成とは正反対になる、と理解するべきだ。
なのに、政府は、「裁量労働制」という「定額残業させ放題」という制度を導入したがっている。何をやっているんだか。
政府は技術開発とは逆のことばかり推進しているのだ。そこに気づくべし。
[ 付記 ]
政府のトンチンカンさには、呆れるばかり。
たとえば、せっかくの金を無駄に使うばかりだ。「 Fラン大学の授業料の無償化」とか、「高額所得者向けに保育園の無償化」とか。
一方で、科学技術の研究開発費を削ることばかりを考えている。
こんな泥縄的なことでは、手遅れだ。周回遅れのまま、政府は何をやっても無効となりそうだ。いわば、電子機器の産業で、産業が衰退したあとで、企業を支援するようなもの。むしろ、衰退する前にやるべきだろうが。
というふうに、さんざん悪口を書くと、批判が来そうだ。
「悪口ばかりを言っているが、そういうおまえはどうなんだ?」
と。まあ、ごもっとも。実は、私は前からちゃんと言っていた。「AI技術開発を推進せよ」と。
人工知能研究の遅れ: Open ブログ ( 2015年06月23日 )
少なくとも、今のようにAIブームになる前に、私は振興すべきだと指摘していた。そのころなら、まだ遅れずに済んだかもしれない。
「 2015年じゃ遅すぎる。もっと早くやれ」
という批判もありそうだ。それ以前だと、産業振興よりは、研究開発の推進という話になる。で、それだったら、はるか昔の「第五世代コンピュータ」のころにさかのぼる。
このころから私はあれこれと思っていたが、その当時はまだインターネットもなかったし、パーソナル・コンピュータもあまり普及していなかったし、MS-DOS がどうのこうのという時代だったし、話が専門的で細かくなりすぎるので、ここに書いても意味がないだろう。
あまりにも早い技術は、世間で広く話題にはならないのである。
なお、このころには「人工知能学会」というのがあったのだが、それはまた別の話。
( ※ 「何それ。教えて」というリクエストがありそうだが、面倒なので、いちいち書きません。Wikipedia でも見てください。)
若い人はみんな中国とか外国にでて残された老人ばかりの限界集落ならぬ限界国家になるでしょうが
自民党は阿保だというのはいと容易いでしょう。
裁量労働制も自民党が積極的にやっているというより利益団体にドヤされてるようにしか見えないのです。
科学技術の研究開発費削減…これも自民党が積極的にやっているのでしょうか。
例えばiPS関連なんて素人でもこの分野には多額の投資が必要だとわかりますよね。
なぜ政府はこんなにも駄目なのか?というテーマで管理人さんにいつか記事を書いて頂きたいです。
(もちろんお時間のある時にです。)
そりゃ、目的の違いです。
政治家は、国のために仕事をしているんじゃなくて、自分の利益(権益)のために国を食い物にしている。犯罪者と同じですね。
謎があるとしたら、どうしてそういう連中を人々は支持するのか、ということ。
うーん。たぶん、詐欺師にだまされる人々と同様でしょう。だまされていることに気づかない。
だから私はしばしば、「詐欺師にだまされるな」というテーマで書く。