2019年04月25日

◆ 日産の不振の原因は?

 日産自動車の業績が急激に悪化しているそうだ。では、その原因は?
 
 ──
 
 日産自動車の業績が急激に悪化しているという報道があった。朝日の記事だ。
 日産自動車は24日、2019年3月期の業績予想を下方修正し、営業利益が従来予想より 1320億円(29.3%)少ない3180億円、純利益は910億円(22.2%)少ない3190億円になる見通しだと発表した。
 売上高の予想も260億円(0.2%)少ない11兆5740億円とした。18年3月期実績と比べて、営業利益は約45%減、純利益は約57%減と大きく悪化する見通しだ。
 世界販売の3割を占める米国事業が想定を超える不振で、19年3月期の販売台数は前年同期より約10%減の144万4千台となる見通し。これが430億円もの減益要因となる。
 米国では品質問題も発生し、保証関連費用がかさんだ。現地で売った車で異音や振動の苦情が相次ぎ、12〜17年モデルの乗用車の一部、約300万台の無段変速機(CVT)の保証期間を5年から7年に延長することで、関連費用を660億円計上した。
 米国市場では、値引きに頼った販売で利益が出にくい構造になっている。
( → ゴーン氏の拡販戦略が裏目に? 日産、米で想定外の不振:朝日新聞

 業績が悪化しているというが、その原因は何だろうか? これについては、前に述べたことがある。
  ・ コストダウンによる品質の低下
  ・ CVT が良くない。


 前者については、下記で説明した。
 下記は、米国の自動車の耐久性(故障率の低さ)のデータだ。
     《 グラフ 》(略)
 見ればわかるように、日産・三菱・インフィニティが業界でも最低レベルのクラスだ。
 これは何を意味するかというと、日産の自動車技術の開発力の低さを意味するのではなくて、日産の使っている部品が粗悪品ばかりだということを意味する。
 というわけで、部品の品質を見ても、「日産車はコストダウンばかりを優先して、品質がひどく悪い」と言える。韓国車に比べると圧倒的に劣る。もしかしたら、中国車に近いレベルかもしれない。
( → 日産が駄目になったわけ: Open ブログ

 後者については、下記で説明した。
 日本車が米国で人気なのは、多段式トルコン AT の技術が優れているからである。特に、トヨタとホンダは優れている。
 一方、日産はダメだ。日産は FF 車ではまともな多段式トルコン AT の技術がなくて、インフィニティ・QX60 のような高級車でさえ CVT を使っているが、これでは、ドライバビリティが悪くて、評判が悪い。最新型のアルティマも、カムリやアコードよりも1年遅れで登場したのにもかかわらず、米国での評判ではカムリやアコードよりも1段下の評価しか得られていない。その理由は、変速機( CVT )だ。これが非常に質感が悪くて、安物という評価を与えられている。
( → 日本車が米国で売れるわけ: Open ブログ

 こうして、日産車が不評であることの原因は、すでに説明済みだとわかった。

 ──

 さて。今回の朝日の記事では、別の話もある。
 現地で売った車で異音や振動の苦情が相次ぎ、12〜17年モデルの乗用車の一部、約300万台の無段変速機(CVT)の保証期間を5年から7年に延長することで、関連費用を660億円計上した。

 ここから、次のことが読み取れる。
  ・ 異音や振動という問題が生じている。
  ・ CVT の修理を無償化している。

 この二つから推定されるのは、次のことだ。
 「 CVT が原因となる、異音や振動という問題が発生していて、苦情が続出している」

 はっきりとは断定できないが、その可能性が高い。(前に述べた CVT の不評とも合致する。)

 そこで、このことについて調べるために、英語でググってみた。
  → nissan claims noise
 これを見ると、ノイズに関する記事はいろいろとあるが、CVT について報告する記事がいくらか目立つ。

 そこでさらに、次の語でググってみた。
  → nissan cvt noise 
 これを見ると、CVT のノイズについて訴える苦情がたくさん見つかる。やはり、CVT に問題があるようだ。
 さらに、振動についても調べてみる。
  → nissan cvt noise vibration
 やはり、日産の CVT には、振動の問題もいっぱいあるようだ。

 ──

 結論。

 日産の米国における販売は大幅に悪化しつつある。その理由は、CVT の品質が非常に劣ることだ。これには二つの理由がある。
  ・ 部品全体の大幅な品質低下
  ・ トルコンを使わずに CVT を使うこと

 では、このようなことは、どうして起こったか? 日産の技術力が急激に低下したからか? 
 いや。違う。「大幅なコストダウン」を狙って、コストを削減したからだ。コストをどんどん下げれば、品質もまたどんどん下がるのは、自明の理と言えるだろう。

 日産は、当初は「ゴーン改革」で取引先企業を絞ることなどで、大幅なコストダウンに成功した。これは「無駄を減らす」という効果があった。ぜい肉を減らすようなものだ。
 しかし、その後も続けて、大幅なコストダウンを強いるようになった。これは、ぜい肉がなくなったあとでも、なおもダイエットを強いるようなものだ。当然、必要な筋肉も落ちて、筋力不足になる。……それが現在の日産だ。必要なコストをかけなくなったせいで、品質がどんどん悪化する。
 その一方で、(低品質で故障しやすい部品への)修理費の無償化みたいな余分なコストがどんどんかかっていく。安物の部品を使ったあとで、修理費を無償化するのでは、コストダウンした以上のコストがかかってしまう。いわば、コストを 1000ドル下げたあとで、修理費が 2000ドルかかったので、2000ドルの余分な出費が必要となる……という感じである。何をやっているんだか。愚の骨頂。
 おまけに、「低品質」という評判が立ったせいで、利益率がどんどん低下していく。「インセンティブ」という名の販売奨励金を多額に出して、値引きするしかないので、利益はどんどん減っていく。いわば、コストを 1000ドル下げたあとで、価値が 2000ドル下がったので、2000ドルの値引きが必要となる……という感じである。何をやっているんだか。愚の骨頂。
 結局、コストカットをすればするほど、どんどん損を出していく。これがつまりは、「コストカットのゴーン主義」の行き着く果てだ。

 《 加筆 》

( ※ どうしてこうなるか? 経営というものを、帳簿で考えるだけだからだ。「技術で品質を上げて、高い利益率を上げよう」という発想がなく、「帳簿で原価を下げれば、帳簿で黒字が出る」という帳簿の発想しかないからだ。文系脳がよくやる経営方針。MBA ふうかもね。……物事の本質を考えず、表面上のつじつま合わせばかりを考えると、こういう発想になる。「本質をはずれる」というのが、根本原因だ。)
( ※ そのまた根本原因は、ゴーンの好きなものは、車じゃなくて、金だ……ということだな。)



 【 関連項目 】

 (金をケチるせいで)新車開発費を出せないので、新車が出なくなっている……という話もある。長い年月、モデルチェンジなしの車が多い。ひどいものだ。これもまた、不振の一因だ。
  → 日産自動車の没落: Open ブログ
  → 日産ゴーンの不正: Open ブログ
 


posted by 管理人 at 23:08 | Comment(7) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に、200字ほど、加筆しました。 ( ※ ) という箇所が二段落。
Posted by 管理人 at 2019年04月26日 06:47
日産より先に、ホンダの四輪部門が赤字転落しましたね。
(日産の決算発表はまだですが)
ドイツビッグ3もメイン市場の欧州、中国が不振で大幅減益。
日産だけでなくほかの自動車メーカーの話も書いてはいかがでしょうか?
Posted by 細波 at 2019年05月09日 22:02
 ホンダが駄目になったのは、北米一本足打法と呼ばれる、極端に北米依存の経営方針のせい。優秀な トルコン AT があっても、それは北米以外では意味を持たない。(たいていはマニュアルか DCT か CVT だ。)
 ホンダを論じるなら、経営論になるので、本サイトみたいな理系のサイトの対象にはならない。誰も読みたがらないだろうし。まあ、何か読みたい人がいれば、こちらをどうぞ。
  → https://response.jp/article/2019/05/08/322092.html

 日産の場合は、ゴーンのコストカット方針が技術の劣化を招いていたので、ゴーン論の一環として AT も論じた。それだけのことだ。
 ゴーンがいなくなったら、日産を論じる意義もほとんどない。ゴーン以外の話は、もうほとんど言っていません。
 私は別に日産に恨みがあるわけじゃないし。そもそも私が一番好きな自動車は R380 なんだし。

 あと、私はホンダが好きじゃないから、「ホンダの業績が向上する方法」なんて、教えて上げたくない。そんなに親切じゃないの。
Posted by 管理人 at 2019年05月09日 22:33
この記事が引用している記事に書いた以下はこっちに書くべきでしたね。

>でも、2019年の記事である”日産の不振の原因は?”で「コストダウンによる品質の低下」の根拠として引用しているんですからデータは最新のものを使用しなければならないではないでしょうか?

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27135290Q8A220C1000000/
https://clicccar.com/2019/02/20/704552/

Posted by 細波 at 2019年05月09日 23:48
 なるほど。それもごもっとも。
 ご指摘ありがとうございました。

 ただ、長年にわたってずっと記憶にしみついた「日産の品質は悪い」という消費者の意識は、容易には消えないでしょう。
 さらに、「CVT が駄目だ」という新たな要因も加わった。
Posted by 管理人 at 2019年05月09日 23:54
>R380
プリンス自動車が開発したレーシングカーをご存知とは、懐かしいですな。
Posted by 寿限無 at 2019年05月10日 08:50
 日産の CVT はダメだ、という英文記事。
  https://www.carccelerate.com/should-you-trust-nissans-cvt/

 機械翻訳
  http://bit.ly/2WXquUl
Posted by 管理人 at 2019年06月23日 07:06
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