日産とルノーは統合すべきか? それには「イエス」と答えよう。(意外だが)
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まずは報道がある。ルノーがこれまでの方針を一転して、(ゴーン時代と同じように)日産との経営統合を要求しているそうだ。
→ ルノー、日産に統合再提案 日産は拒否へ:日本経済新聞
→ 仏ルノー、日産に経営統合を提案 態度を一変、緊張再び:朝日新聞
→ “豹変”ルノー、日産に統合突き付け 専門家「仏政府の意向」
日産や日本政府は否定的だが、その否定を押しのけても、ルノーは強引に経営統合を進めようとする。なぜか? それには、「どうしてもそうしなくてはならない」という事情があるからだ。
つまり、ルノーは現状のままでは非常にまずいことになりそうなので、どうしても日産との経営統合を進めたいのだ。「背に腹は替えられない」というような、せっぱつまった事情にあるのだ。それを解説しよう。
以下、4項目を列挙する。
(1) 電気自動車
環境規制によって、欧州や米国では炭酸ガスを排出しない電気自動車・燃料電池車の販売が強制される。
ところが、ルノーはその技術を(あまり)持たない。日産からもらい受けるしかない。しかし日産からもらい受けるには、技術料を払う必要があり、それだと収益を圧迫する。何としても日産の技術をタダで使いたい。そのためには、日産と経営統合するしかないのだ。
(2) ハイブリッド・PHV
電気自動車・燃料電池車が大幅に普及するのは、2030年ごろだと目されている。それまでは、当初は HV で、次いで PHV が普及すると見込まれている。
ところがルノーはその技術を持たない。日産の e-power や、三菱の PHV の技術をもらい受けるしかない。しかし日産や三菱からもらい受けるには、技術料を払う必要があり、それだと収益を圧迫する。以下、同様。
(3) 収益性の低さ
ルノーの収益性は低い。電気自動車や EV の開発をサボっていたのだから、そのための技術開発費用を浮かせた分、収益性は向上していいはずだが、実際には、収益性は低い。利益の4割は、日産からの配当収入である。自分で稼いでいる分は残りの6割でしかない。
これほどにも経営体質が弱体化しているのでは、企業としての存続もおぼつかない。経営基盤を強化するには、技術の日産から技術をもらい受けるしかない。しかし技術をもらい受けるには、技術料を払う必要があり、それだと収益を圧迫する。以下、同様。
(4) 将来の配当減
そもそも日産は、たいして利益を上げていない。それにもかかわらず、やたらと高額の配当を払っている。株価に対する配当の割合は、日本企業でも屈指のレベルだ。要するに、「経営状態がいいから高配当を払う」のではなく、「たいして儲けてもいないのに分不相応に多額の高配当を払う」という状況だ。
ではなぜ? もちろん、ルノーが配当収入で潤うためだ。しかし、こんなことをやっているせいで、日産は自社の企業体力を大幅にそがれることになった。せっかくの金を配当金に回しているせいで、自社で新モデルを開発するための開発資金に事欠くようになった。かくて日産はろくに新車を出していない。モデルチェンジをしないからだ。この件は、前に述べたとおり。
→ 日産自動車の没落: Open ブログ
→ 日産ゴーンの不正: Open ブログ
しかし、モデルチェンジもしないで高配当を払うというのは、いわば「タコが自分の足を食っている」ようなものだ。とうてい長続きはしない。やがては自分自身が痩せ衰えて死んでしまう。
これを避けるには、日産もモデルチェンジに投資するしかない。しかし、そのためには、(費用を払うので収益が悪化する分)高配当をやめるしかない。だが、そういうふうにすれば、ルノーの経営を直撃する。
フランス側としては、日産の将来なんかどうでもいいのだ。日産が将来的にシェアを落として倒産してしまおうが、そんなことはどうでもいい。とにかく今現在という時点で、ルノーは高配当を必要としているのだ。(正確には、ルノーの経営幹部と、マクロン大統領が、自分の保身のために利益を必要としている。将来のことなどは知ったことではない。あとは野となれ山となれ、だ。)
そして、このような「日産の焦土作戦」みたいなことを遂行して、自社の利益を図るには、ルノーとしては日産との経営統合を必要としているのだ。(正確には、自社の支配下に置いて、食い物にしたがっている。)
かくて、以上の (1)〜(4) で述べたように、ルノーの側は是が非でも、経営統合(というより日産の吸収ないし支配)を必要としているのだ。
これは、「そうしなければ自分が倒産しかねない」という喫緊の必要性を帯びている。ルノーとしては譲れない一線なのだ。
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以上のことから、(ルノーにとっての)「経営統合の必要性」は明らかになった。
しかし、それはあくまでも「ルノーの都合」であるにすぎない。日産の側としては、そんなことを飲むわけには行かない。
かくて、対立が生じた。
・ ルノーは経営統合を必要とする。
・ 日産は経営の独立性を保ちたい。
ここには対立がある。困った。では、どうする?
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「経営統合をするが、ただし、ルノー主導ではなく、日産主導とする。ルノーが日産を子会社化するのではなく、日産がルノーを子会社化する」
これは、逆転の発想だ。現状では、「日産はルノーの子会社である」というふうになっているから、それを前提として考える人が多い。しかしその前提をひっくり返して、逆転させればいいのだ。
そして、これなら、(威張りたがる気分は別として)実質的には妥協ができる。
・ 日産は自社の経営の独立性を保てる。(むしろ優位になる。)
・ ルノーは、事業の継続性が保証される。倒産の恐れもなくなる。
ルノーは(威張ることができなくなるので)名を失うが、実を取ることができる。
そもそも、ルノーは企業としては日産よりも格が1ランク落ちるのだから、日産の子会社になるのが当然なのだ。
逆に、ルノーが親会社になっていることの方が、「愚者が利口を指図する」というふうになるので、「ともに沈没する」というふうになりかねない。物事の本質からすれば、「ルノーが日産の子会社になる」ということの方が正当なのだ。
かくて、物事の本質を考えることで、「前提をひっくり返す」という形で、現状を逆転させる方針が出る。これが正解だろう。
( ※ こういう正解を取れば、どちらも正しく存続できる。逆に、それまでのなりゆきに縛られて、従来路線の継続を取ろうとすると、JDI みたいに最悪の道を取ることになるだろう。参考: → JDI が身売り )
[ 付記1 ]
日産の側には、ルノーに対抗する方法がいくつかある。
・ 代理を使って、ルノーの株を買い増しする。
・ ルノーの重役を追放・解任する。
・ ルノーの重役の命令を無視する。(サボタージュ)
・ ルノーに提供する技術を止める。(サボタージュ)
・ 配当金を極端に減らして、ルノーの経営を直撃する。
・ フランスにおけるマイクラの委託生産をやめる。
・「委託生産をやめるのはマクロンのせい」と宣伝する。
[ 付記2 ]
「代理を使って、ルノーの株を買い増しする」
とすぐ上に述べたが、ここで、うまい方法がある。こうだ。
「三菱自動車を代理として、ルノーの株を買い増しする」
三菱なら、うまい代理となる。三菱に委託して(資金は日産が融資して)、ルノーの株を 10% 買えばいい。
日産は 15% の株を持つから、三菱と合わせて 25%になる。これは三つの意味を持つ。
第1に、両方合わせて 25% なら、仏政府の 19%を上回り、筆頭株主になる。フロランジュ法では、「2年保有の株は権利が2倍」という規定があるが、当面はともかく、2年後には有効になるから、強い圧力をかけることができる。
第2に、日産の議決権は(契約により)無効化しているが、日産の株を三菱に譲渡すれば、三菱のもつ株の議決権は有効となる。三菱が 25%の筆頭株主になる。
第3に、三菱が 10%の株を日産に譲渡すれば、日産の保有する株が 25%になるので、(日本の会社法の規定で)親会社であるルノーの議決権が失効する。詳しくは下記。
→ 日産、仏政府の支配を断念させた伝家の宝刀
かくて、「三菱自動車を代理として、ルノーの株を買い増しする」という方法で、うまく対抗できるわけだ。
[ 付記3 ]
もうひとつ、うまい方法がある。日本政府の立法によって、状態を正常化すればいいのだ。具体的には、こうだ。
「外国政府の介入によって、日本企業の経営が過度に左右される場合には、政府が外国政府の介入を認定することによって、親企業の株式保有を無効化することができる」
こういうふうに立法化すればいい。具体的な適用は、ルノー・日産だけになるが。( ※ 外国政府の介入なんてことは、マクロン政権だけだからだ。)
2019年04月23日
過去ログ
「三菱自動車を代理として、ルノーの株を買い増しする」
と述べたが、このとき、うまい方法がある。
通常の方法でルノーの株を買い増しすると、情報が漏れて、株が暴騰して、買いにくくなるかもしれない。そこで、同時に、次の情報も流す。
「マイクラの委託生産をやめることを検討する」
こういう報道が出ると、ルノーの株は暴落する。そこでルノーの株を買えばいい。
それでもさらにルノー株が上がるかもしれないから、次にまた、こういう情報を流す。
「ルノーとの提携を解消することを検討する」
するとまた、ルノー株が暴落する。
さて。二度も暴落することが起こると、株主は危機感を持って、「この先とんでもなく暴落するかも」と思うかもしれない。そこで、前に買ったルノー株を売り浴びせて、本当に暴落させる。すると株主はあわてて、損切りしようと思って、どんどん売っていく。その底値で買えば、株をいっぱい買い占めることができるだろう。うまく行けば、安値で過半数を買い占めることができる。
うまく行かなくても、2〜3割ぐらいは買い占めることができそうだ。
※ 情報の前に買うのではなく語に買うので、インサイダー取引には当たらない。
※ 株価の不正な操作には当たらないと思う。別に株価で儲けることが目的ではないのだし。(どちらかと言えば、最終的には少し損をしそうだ。)
※ 目的は、株価で儲けることではなく、買い占めのときに高値づかみをする損を回避することだけだ。損を減らすだけであって、不正なことをするわけではない。
※ 三菱による株の買い占めということを、事前に公表しておけば、不正にはならないはずだ。