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暴走事故が2件あった。池袋と神戸市。
→ 高齢者の暴走運転には?: Open ブログ
→ 神戸市のバス暴走事故: Open ブログ
それぞれ、対策などを個別に考えたが、もっと根源的には、次の問題がある。
「アクセルペダルとブレーキペダルがもともと混同しやすい」
まったく別の操作(むしろ正反対の操作)が、似たような仕方で操作される。その位置をちょっと間違えただけで、重大なエラーが起こる。……そういう根源的な問題があるのだ。
このことは、前からたびたび話題となってきた。そこで、このたびあらためて根源的に考え直してみた。すると、二つの対策が思い浮かんだ。順に論じよう。
発進時の左足ブレーキ
神戸の事故では、運転手は次のように述べている。
「ブレーキを踏んで発進のための作業をしている際にバスが急発進した」
( → 運転手「ブレーキ中に急発進」 2人死亡の神戸バス事故:朝日新聞 )
これはつまり、「アクセルとブレーキの踏み間違いがあった」ということを意味する。
自動車の発進時には、(オートマチック車では)NポジションからDポジションに移す。そのとき同時に、ブレーキを踏んでからブレーキをはずす(足を引く)ことで、停止していた自動車が、クリープ現象で徐々に前進する。
だから、発進時には、ブレーキを踏むのが普通である。ところが、ここでアクセルとブレーキの踏み間違いがあると、ブレーキを踏んでいるつもりなのに、急激に発進してしまうわけだ。
この問題を回避する方法として、次のことが提案される。
「ブレーキは左足ブレーキにすればいい」
つまり、アクセルは右足手、ブレーキは左足で、というわけだ。しかし、これはよろしくないと自動車専門家が言っている。というか、メーカー自身が「左足ブレーキは禁止」と言っている。
→ 左足ブレーキは禁止
ここでは、主な理由は、「ブレーキペダルはもともと右足用に設計されていて、位置もそうなっている」ということのようだ。しかし私の考えでは、もっとはっきりした理由がある。こうだ。
「緊急時には、右足を離して、左足を踏む、という二重の同時操作は、困難である。右足と左足で別々の操作をしなくてはならないので、パニックになりがちだ。それよりは、単純に右足だけに集中して、右足だけでアクセルからブレーキに移る方が単純だし、操作も間違えずに済む」
つまり、(突発的な)緊急時の安全性からして、左足ブレーキは好ましくないのだ。
→ 参考記事1 、 参考記事2
ただし、である。それはあくまで緊急時のことだ。より一般的には、運転中でのことだ。
一方、発進時は、緊急時でもないし、運転中でもない。停止中だ。とすれば、「突発的な緊急の操作」などは必要ないので、上の問題は生じない。
そこで、新たにこう提案しよう。
「発進時のみ、左足ブレーキを使う」
これが最善だろう。発進時だけは、左足ブレーキを使う。この場合、アクセルとブレーキの踏み間違いは起こらない。なぜなら、左足でアクセルペダルを踏もうとしても、すでに右足がそこにあるので、左足でアクセルペダルを踏むことはできないからだ。
また、右足で「ブレーキペダルのつもりでアクセルペダルを踏む」ということもありえない。なぜなら、右足はもともとアクセルペダルの上にあるのだから、右足を操作することはありえないからだ。発進時には、左足でブレーキを踏むだけであって、右足は使わないのだ。そして、いったんクリープ現象で発進したあとでは、普通に右足でアクセルペダルを踏むわけだが、このときは、ごく軽く踏むだけだから、急発進することもありえない。
かくて、この方法ならば、アクセルとブレーキの踏み間違いは起こらないのだ。
・ 発進時のみは左足ブレーキ
・ 以後は右足ブレーキ
というのが、問題を解決する決定的な方法となるだろう。
※ 「常に左足ブレーキ」というのは駄目だが、「発進時に限って左足ブレーキ」ならば最善となるわけだ。新しいアイデア!
1ペダルと自動ブレーキ
上の方法は、神戸の事故の対策にはなるが、池袋の事故の対策にはならない。なぜなら池袋の事故は、発進時の事故ではなく、走行中の事故だからだ。走行中に、ガードレールにこすったりして、パニックになって、まともに運転操作ができなくなってしまったらしい。足が悪い空足の不具合かと思ったが、ハンドル操作もまったくしていなかった( → 出典 )ということなので、頭がパニック状態になってしまったと思える。
ただ、「アクセルが戻らなくなった」と述べていることからして、「アクセルとブレーキの踏み間違いがあったのだろう」と推定できる。
このような問題も、「アクセルとブレーキの踏み間違いが起こりやすい」という構造に根源的な原因があるとも言える。では、これを解決するには、どうすればいいか?
「アクセルとブレーキの踏み間違いがあるのなら、ペダルを一つにまとめてしまえ」
というのが、すぐに思いつく対策だ。その方式もいろいろとある。
(1) ナルセ・ペダル
ナルセ・ペダルというものがある。足の先(爪先)を右に傾けることでブレーキをかける、というもの。しかしこれは、操作法が特殊すぎて、普及はしていない。
→ 逆アクセルペダル: Open ブログ
(2) 逆アクセルペダル
逆アクセルペダルというものを私は前に提案した。普通のアクセルペダルと違って、
「踏むとブレーキ。引くとアクセル」
というもの。これはこれで問題ないはずだが、普通のアクセルペダルとは逆の操作というのは、慣れないと難しいので、実用化は困難であったようだ。また、心理的障壁も大きそうだ。
(3) 日産の1ペダル
日産のリーフやノート e-power では、「1ペダル」というものが実用化している。上の逆アクセルペダルと同様だが、方向が逆だ。つまり、
「踏むとアクセル。引くとブレーキ」
だ。これは、心理的には受け入れやすい。ただし、緊急時には危険度が増す。引くと急ブレーキがかかるようだと、足に踏む力がかかるので、ブレーキがかかるどころか加速してしまうのだ。緊急時にこのペダルに足を載せておくことは、きわめて危険である。
(4) 1ペダルと自動ブレーキ
結局、以上のどの方式も駄目である。困った。どうする? そこで困ったときの Openブログ。新たに次のようなものを提案しよう。
「基本的には1ペダルだが、足を引いて急ブレーキをかけると、1ペダルのアクセル機能が解除される」
具体的に言おう。
普通はアクセル(1ペダル)でアクセル操作をするだけだ。加速するときには、アクセルを踏めばいい。減速するときには、アクセルを踏むのを弱めて、エンジンブレーキを軽くかければいい。
緊急時に急ブレーキをかけたくなったら、右足をアクセルからはずす。このとき、エンジンブレーキがかかるだけでなく、フットブレーキもかかる。(つまり、自動的にブレーキがかかる。ブレーキペダルを踏む必要はない。)
と同時に、1ペダルのアクセル機能は解除される。いったん足をはずしたなら、もはやこのペダルはアクセルペダルとして機能しないのだ。このあといくらアクセルペダルを踏んでも、まったく加速しない。どんどん急激に減速するだけだ。「フェール・セーフ」機能が働いた状態となり、「緊急時には自動停止」という機能が働くことになる。一種の自動操縦状態だ。
この自動操縦状態を解除するには、自分でブレーキを踏めばいい。すると、こうなる。
「ブレーキペダルを踏むことで、自動操縦状態が解除される」
このとき、モードは自動操縦モードから手動操縦モードに切り替わる。つまり、元の状態に戻る。1ペダルのアクセル機能は、それまで解除されていたのが、復活する。アクセルを踏めば、きちんと加速するようになる。
まとめて言えば、こうだ。
・ 普段は1ペダルで、アクセルペダルだけで加減速をする。
・ 緊急時には、アクセルペダルから足をはずすだけで、急減速する。(自動モード)
・ アクセルペダルから足をはずしたあと、ブレーキペダルを踏めば、自動モードが解除されて、元のようになる。
ここで、操作のぎこちなさをなくすには、次のようにする。
「アクセルペダルから足を引いてから、自動モードに移行するまで、0.5秒ぐらいのタイムラグを置く」
この 0.5秒の間に、右足をアクセルペダルからブレーキペダルに移せば、特にどうということもなく、普通に操作できる。
この 0.5秒の間に、右足でブレーキペダルを踏むことがなければ、「右足を急激に引いた」という事実だけを認識して、0.5秒後に自動モードに移行して、フットブレーキが自動的にかかる。
以上のようにすれば、(1)(2)(3) のような難点を回避して、うまく問題を解決することができるだろう。
[ 付記1 ]
「足をはずす」というのは、アクセルペダルにかかるペダル踏力をゼロにして、速度ゼロを指定すること。足をちょっとだけ踏むのとは違って、踏む量をゼロにすること。
このとき、エンジンブレーキがかかるだけでなく、フットブレーキがかかる。
この状態で、フットブレーキがかかる量は、最大限ではない。「かなり強めのエンジンブレーキ」か、もうちょっと強めであるぐらいか。自動ブレーキが最大限にかかるのは、前方センサーで衝突を検知した場合(通常の自動ブレーキ装置が作動した場合)に限られる。
《 加筆 》
これとほぼ同等の機能は、日産リーフという電気自動車には搭載されている。つまり、アクセルを引くと、(エンジンブレーキのかわりに)モーターの回生ブレーキが作動して、かなり強い制動力を得られる。
一方、日産ノート e-power は、同等のことができない。なぜなら、搭載する回生ブレーキの機構が弱いからだ。これはコスト上の理由らしい。(トヨタ・プリウスならばもっとマシだが。)
[ 付記2 ]
本項で示したのは、ペダルの誤操作をなくすための方法だ。つまり、「ペダルの誤操作によって、アクセルとブレーキの踏み間違いが起こる」という問題をなくすための方法だ。根源的な対策でもある。
一方、「誤操作があったあとで被害を最小化する(できれば被害ゼロにする)」ということをめざす方法もある。これは対症療法的な対策だ。具体策としては、次のものがある。
・ 自動ブレーキ (単眼カメラ方式やレーダー方式など)
・ 衝突防止装置 (ソナー方式など)
これらについては、下記項目などで説明した。
→ 軽自動車の自動ブレーキ: Open ブログ
[ 付記3 ]
質問:
発進とは車庫からの始動のことですよね。
赤信号が多い道や一時停止が連続する道を通るときは停止から発進の度に足を入れ替えると混乱しそうです。
回答:
> 発進とは車庫からの始動のことですよね。
そうです。正確には「 Pポジションになっているとき」です。車庫からの発進や、駐車場からの発進。通常、エンジンをスタートさせた直後。
> 赤信号が多い道や一時停止が連続する道を通るとき
この場合は、「 Dポジションでフットブレーキを踏み続ける」というふうになります。
→ 信号待ちで停止中のギアはP・N・Dのどれを使うのが正しいの!?
最初に(走行中に)フットブレーキを踏むのは右足で、そのまま踏み続けるわけだから、当然、右足で踏みます。
なお、ブレーキを踏み続けると右足が疲れてしまうという難点がありますが、これを回避する方法もあります。
「信号待ちのときには、左足を並べて、両足でブレーキを踏む」
つまり、両足ブレーキだ。これがお薦めだ。(信号待ちで)
 ̄ ̄
実は、発進時にも両足ブレーキをするといい、という提案もある。のみならず、常に(走行中にも)両足ブレーキをするといい、という提案もある。
→ 【これで決着!ブレーキは右足か左足か】 意外な最善策は「両足」!?
無意識のうちに両足ともブレーキペダル上に移動する習慣を身につければ、万が一にも右足が踏み間違いを犯したとしても左足がブレーキ力を確保できるため、急激な加速は防げぐことができる。
しかし、ここまで極端に両足ブレーキを使う必要はないと思う。
「原則は右足ブレーキで、ときどき遅れてゆっくり左足を足してもいい」
というぐらいでいいだろう。
【 補説 】
(1) 神戸市
神戸市の事故では、運転手は糖尿病の治療中だったそうだ。
この場合、インシュリンを投与することで、低血糖状態になりやすく、意識低下が起こりがちである。糖尿病の患者は、このような意識低下が起こることが多いそうだ。(ググるとわかる。)
糖尿病の持病があり、日頃からインスリンを使用していたという。インスリンは使用後、意識が低下することもあり、県警が関連を調べている。
( → バス運転手、糖尿病の持病…意識低下の可能性も : 国内 : 読売新聞 )
ならば、このような人(糖尿病の高齢者)は、バスの運転のような危険な行為はさせるべきではあるまい。このような人は、普通の内勤ならば何の問題もなく勤務できるだろうが、バスの運転をするのは社会的な迷惑をもたらしやすい。
血糖値を下げる薬で低血糖がおきたり、糖尿病の慢性合併症がすすんだりすると、車を運転するのが危険なときがあります。
( → 糖尿病と車なと?の運転のはなし | 糖尿病情報センター )
2013年6月に改正道路交通法が成立し、車の運転に支障を及ぼす可能性がある病気の患者が、運転免許証の取得や更新時に虚偽申告をした場合の罰則規定が新設された。対象となる疾患には、無自覚性低血糖も含まれる。
インスリンや経口薬による薬物療法を続けており低血糖になるおそれのある人が、人為的にコントロールできれば運転免許の取得は問題はないが、コントロールする処置をあえてしないで運転し事故を起こした場合は問題になるというのが一般的な認識だ。
医師が「安全な運転に支障を及ぼす意識消失などの症状の前兆を自覚できている」と診断した場合や、「運転中の意識消失などを防止するための措置を実行できているので、運転を控えるべきとはいえない」と診断した場合には、運転免許を取得できることになる。
( → 低血糖と運転免許 安全に運転するための7ヵ条 | ニュース・資料室 | 糖尿病ネットワーク )
「運転免許を取得できる」というところまではいいが、大型バスの運転ではさらに高い特別な安全性が要求される。
そのことを理解できなかったという意味では、(勤務を許可した)医者と会社との双方に問題があったというしかない。
(2) 池袋
池袋の事故では、「足が不自由だった」というのが、本質的に原因だったと思える。この問題については、自動車の側で対処するよりは、「足の不自由な人には免許を認めない」ということの方が重要だろう。
→ 高齢者の暴走運転には?: Open ブログ の (3)
ただ、これだと「足の不自由な身障者が外出できない」という問題も生じる。この問題は、次の方法で回避できる。
「足の不自由な人向けの、身障者用の自動車」
これは、腕の操作だけで運転するものだ。
→ 自操式・手動運転装置車
とはいえ、この人に限って言えば、87歳という高齢だから、免許そのものを返上するのが筋だろう。「外出できなければ、タクシーを利用するか、介護施設に入る」というのが原則だ。
あるいは、「外出は妻に任せて、自分は外出しない」となる。
いずれにせよ、足が不自由なのに普通に運転するというのは、言語道断だろう。こんな判断ができないような頭であるとしたら、頭そのものが痴呆状態であるとも推認できる。
PレンジからDレンジに移動するときにフットブレーキを踏んでいなければ動かないようにすれば、今回のような発進時の急加速は防げますよ。
とくに路線バスのようなプロドライバーが運転することが前提ならばなおさらです。
神戸市のバス事故の車両にその手の機構が装備されていたのかは分からないですが,周辺車両のドライブレコーダー映像の解析結果から当該車両のブレーキランプは点灯してなかったようなので,運転手がブレーキを踏んでなかったのは明らかなようです.
オートマチックの仕様を根本的に変えてしまうというのは、ちょっとハードルが高い。また、新車限定。
赤信号が多い道や一時停止が連続する道を通るときは停止から発進の度に足を入れ替えると混乱しそうです。
代理のPブレーキを使うなら可能でしょうけど,A車の多くは左足専用のフットレバーを採用している。
ひとつ前のコメントへの回答。
機能は、極端に踏み込んだときに、アクセル解除でブレーキ作動。それ以外の機能はない。だったら、左足ブレーキの発進だけでも済む。こちらはコストゼロ。
stopペダルはコスパが悪い。どうせなら、自動ブレーキつきの車に乗り換えた方がいい。この方が大幅に性能が向上する。
池袋の事故では、「足が不自由だった」というのが、本質的に原因だった……という話。
ですが、
(右足での)アクセルとブレーキの踏み間違いということから始まった話題なのに、
それよりは、単純に右足だけに集中して、右足だけでアクセルからブレーキに移る方が単純だし、操作も間違えずに済む
では、おかしい気がするのですが、私の読み違いでしょうか?
というわけで,対策としてクラッチペダルを提案します。できれば電子制御ではなくワイヤードで。
オートマチック車であってもクラッチを切ったあと,ミートしないと進まない構造にする。失敗するとエンストで怒られる(笑)
昭和生まれの皆さんが懐かしいあの感覚です。
書いてある通りで、二重の同時操作が難しいだけです。
緊急時には、二重の同時操作をするのが困難です。(右足は引いて、左足は踏む。左足は利き足ではないので、瞬間的な動作は遅れるかも。)
一方、発進時には、二重の同時操作はしません。ゆっくりと左足を操作してから、ゆっくりと右足でアクセルを踏みます。一つずつ順にゆっくりやるので、難しいことはありません。
ここで「左足のブレーキを抜くと同時に、アクセルを踏む」のだとしたら、二重の同時操作になりますが、そういうことはありません。左足のブレーキを抜いたあとは、クリープ現象で進みます。その後に、右足でアクセルを踏みます。ですから、二重の同時操作はありません。
なお、アクセルとブレーキの踏み間違いは、位置の取り違えなので、操作の複雑さ・難しさとは別次元の話になります。これは「うっかり」操作の問題でしょう。
ついでですが、今は(走行中に)左足ブレーキをしているのなら、これからは両足ブレーキにするといいでしょう。