2019年04月08日

◆ 共通テストに記述式

 大学入試の「共通テスト」に導入される予定の「記述式」で、問題が発生している。では、どうするべきか?

 ──

 大学入試の「共通テスト」に導入される予定の「記述式」で、問題が発生している。これについては、朝日の社説で論じられている。
  → (社説)共通テスト 「予行演習」をもう一度:朝日新聞
 
 その要旨は、こうだ。
  ・ 正答率が低すぎて、試験としての意味がない。
  ・ 問題を易しくすると、記述式の長所が消える。
  ・ 合否判定に客観性が保てない。

 一部抜粋すると、下記の通り。
 大学入試センター試験の後を継ぐ「共通テスト」まで2年を切った。だが2度の試行調査の結果、出題の仕方などに多くの課題があることが明らかになっている。
 数学や理科の一部科目の平均点は3割台にとどまり、現行センター試験の5〜6割よりかなり低かった。得点分布が固まると力の差が表れにくいため、選抜試験としての役目を十分に果たせなくなりかねない。
 各大学の個別入試が担うべきものまで盛り込んだことによる無理も生じている。典型は国語の記述式問題だ。表現力を測るといいながら、実態は与えられた条件に合うように短文を作るだけで、採点基準も機械的だ。
 加えて試行調査では、自己採点と実際の採点との「一致率」が7割程度にとどまるという結果も出た。この開きが大きいと出願先を決める際に混乱を招く。

 こういうふうに、いろいろと問題が生じている。より詳しい話は、朝日新聞の記事で詳細に報道されている。
  → 正答率、国語は改善も数学は… 大学入学共通テスト試行:朝日新聞
  → 記述式、数学また低正答率 本番へ試行終了 大学共通テスト:朝日新聞
  → (変わる大学入試2020)迫る入試本番、残る課題 共通テスト、試行調査終了:朝日新聞
  → 解答条件を工夫、正答率上昇 大学入学共通テスト、試行調査の国語採点結果:朝日新聞

 ──

 では、どうすればいいか? その解答も、社説で示されている。こうだ。
 各大学で小論文を課す方式を追求するほうが、受験生、大学双方にとってよいのではないか。

 たしかにそうだ。その方が合理的だし、上に掲げた三つの難点を解消できる。

 ただし、その方式(各大学で小論文を課す方式)では、各大学で採点の手間が増える。これでは「採点の手間を減らす」という共通テスト(センター試験)の本来の意義が消えてしまう。

 大学教員の負担の問題を訴える主張もある。
  → センター試験後継の新テストに「国語」の記述式問題を導入したときに起こる惨状
  → 試験監督に駆り出される立場からみると負担が増えるだけの新センター試験
  → 新共通テストにおいて記述式問題を導入することの9の問題点(11/23日追記版)
  → こんな問題と採点で大丈夫なのか?-新共通テスト 試行調査 国語の記述式問題について

 あちらが立てばこちらが立たず、という状況だ。困った。

 ──

 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「各大学の二次試験で、小論文を課する。ただし、答案のすべてを採点しないで、一部の受験生の答案だけを採点する」


 具体的には、こうだ。
 「合否のボーダーラインの受験生についてのみ、小論文を採点する。それ以外の受験生については、すでに合否が決まっているので、小論文を採点しない」


 たとえば、次のような配点だとする。
  ・ 他科目の配点合計が 440点
  ・ 小論文の配点が   40点


 ここで、ボーダーラインが 250点ぐらいだとする。このとき、他科目の採点で、得点が 230点〜 269点 の受験生のみを選んで、小論文の答案を採点する。これなら、採点の対象が大幅に減じるので、小論文を採点する手間は激減する。
 
 なお、それ以外の受験生については、次のようになる。
  ・ 270点以上 …… 全員が合格
  ・ 230点未満 …… 全員が不合格

 こうなるので、これらの受験生の小論文については、採点しないことになる。

 ──

 なお、現実には、次の処理をしてもいいだろう。
 小論文で0点や満点を取る人はほとんどいないから、上と下の差を 40点も取る必要はない。30点ぐらいで十分だ。したがって、次のようにする。
  ・ 265点以上 …… 全員が合格
  ・ 235点未満 …… 全員が不合格


 これなら、235点〜264点の範囲の受験生だけを採点対象とすればいい。このことで、採点する人数をさらに減らすことができる。
 大雑把に言って、受験者全体の2割ぐらいの受験生を採点対象とするだけで済むだろう。(小論文については)
 かくて「小論文の採点が大変だ」という問題については、解消できる。
 同時に、「採点の手間が小さいので、かなり長文の小論文の記述を課することができる」という美点も生じる。
 共通試験では、字数については、
 解答の字数が(1)30字以内(2)40字以内(3)80字以上120字以内−の3問

 であったが、上記のような小論文であるならば、800字ぐらいを書かせることも可能だろう。これでこそ、真の「記述式答案」と言える。
 共通テストのような短文の記述式答案よりは、はるかにまともで、教育効果の高い試験となるだろう。



 [ 付記1 ]
 「受験者全体の2割ぐらいの受験生を採点対象とするだけで済むだろう」
 と述べたが、そのことの根拠はこうだ。
 一般に、私大の受験倍率は4倍以上なので、受験生の大半は、得点がボーダーラインよりも下である。ボーダーライン以上にいるのは、(入学定員の2倍ぐらいだから)全体の3分の1程度。ボーダーライン近辺にいるのは、全体の2割ぐらい。

 [ 付記2 ]
 次の懸念が生じるかもしれない。
 「一部の人についてしか採点しないのだと、自分は採点対象になることは少ないと思って、記述式の勉強をしなくなる」
 しかし、これは杞憂だろう。採点されるのが一部の人であるとしても、試験が課されなくなるわけではないからだ。しかも、ボーダーラインになったら、「まさしくこれだけで決まる」というふうに決定的な重要性を帯びるからだ。とても無視できるものではない。
 比喩で言えば、サッカーの PK 戦ですね。ボーダーラインでは、 PK 戦で勝敗が決まる。とすれば、選手は PK 戦の練習をせざるを得なくなる。そういうものなのだ。

 これには、次の反論が来るかもしれない。
  → 西野監督が衝撃発言!PK戦の練習は「あまり意味がない」

 これはこれで間違いとは言えない。W杯の直前に、ちょっとだけPK戦の練習をしても、ただの付け焼き刃だから、「あまり意味がない」と言えるのだ。
 PK戦の練習というのは、普段から日常的にやるべきものだ。だから、直前にちょっとだけやっても意味がない、というぐらいのことだ。
 一方、PK戦の練習をまったくしなくていい、ということにはならない。W杯だけでなく、国内のトーナメント制でも、PK 戦はある。たとえば、ルヴァンカップがそうだ。というわけで、PK 戦の練習は、それなりに大切だ。
 同様に、記述式の勉強(小論文の勉強)も、それなりに大切になるだろう。特に、二次試験で小論文が導入されるようになれば。



 【 関連項目 】
 過去記事。
  → センター試験に記述式: Open ブログ
   ※ 記述式は2次試験だけにしろ、という話。



 【 関連サイト 】

  → 記述式、数学正答3〜10% 大学共通テスト本番へ問題見直し:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)
  → 大学共通テスト 記述式に課題 数学平均点は30点以下 - 産経ニュース

posted by 管理人 at 21:08 | Comment(2) | 一般(雑学)5 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
素人なので短文記述式か小論文がいいのかはわかりませんが、
個人点数の情報開示請求が認められている大学では、対象者全員の採点をしないといけないのでは?
Posted by こびと at 2019年04月08日 21:45
> 個人点数の情報開示請求が認められている大学

 「 ***点なので、小論文の採点前に(合格 or 不合格)が決定した」
 というふうに開示すれば十分。
 「採点データなし」というのも、立派な情報です。
Posted by 管理人 at 2019年04月08日 21:49
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