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(私大入試で)大学入学の定員厳格化という方針が取られた。これまでは大幅な定員超過が認められていたが、今年度から認められなくなったからだ。
大学入試の「定員厳格化」が、受験生や大学に大きな影響を及ぼしている。大学は入学定員充足率(入学定員に対する入学者数の割合)を1.2倍までに抑えれば私学助成金が交付されていたのだが、この基準が16年度は1.17倍、17年度は1.14倍、今年度は1.1倍と年々厳しくなっているのだ。基準を超えると助成金は全額カットとなるため、各大学は基準内に収めるべく、奮闘している。
( → 入試の「定員厳格化」で大学側が悲鳴 「『志願者数』と『入りたい大学』の不一致が起きている気が…」〈AERA〉 )
しかし、定員厳守で、定員割れになると、私大の経営を直撃する。収入減は困る。そこで、これまでは「大雑把に合格者を出す」というずさんな方式で済んだのだが、今後は「定員管理をきちんと精密にやる」(ほぼ定員きっかりにする)ことが必要となる。その事務が大変なので、大学の現場では混乱が起こっているそうだ。
歩留まりが読めないため、各大学は合格者数を絞って様子をみたうえで、「追加合格」を出して調整を図るしかない。3月末に追加合格を出す大学もあり、受験生にとっては、ぎりぎりまで入学先が決まらないという事態にもなりかねない。
( → 同上 )
進学先などが決まって新生活が始まる直前に、希望していた大学から「追加合格」の連絡を受けるケースが増えている。学生数が大幅に超過しないようにした国の規制強化を受け、各大学は合格者数を少なめにしたものの辞退が多く、欠員を避けようと追加合格を出しているためだ。土壇場で進路変更を迫られ、学生側は入学金など金銭面の負担が増している。
「従来の10倍以上。こんなに追加合格が出たのは初めて」。3月下旬だけでほぼ全ての学部学科で計数百人規模の追加合格を出した関西地方の中規模大学の入試担当者は驚く。受験生に1人ずつ電話で追加合格を伝えて入学の意向を確認しており、3月末は対応に忙殺された。
2、3月の入試では、一定の入学辞退者を想定して定員を超えた学生に合格を出したが、例年以上に辞退が多く、欠員を避けるため大量の追加合格を出す羽目になったという。
( → 大学の「駆け込み合格」増える 受験者、喜びと困惑:日本経済新聞 )
この電話連絡が大変だ、という話もある。
→ 私大入試、混乱 合格者絞り込み、データ通用せず 首都圏:朝日新聞
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さて。以上は現状である。ここで、
「では、どうしたらいいか?」
という問題提起が生じる。さあ、どうしましょう。
こういうときには、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「この問題は、経済学におけるマッチングの問題である。だから、マッチング理論を使えば、うまく解決できる」
マッチング理論については、前に解説した。
→ 2012年ノーベル経済学賞:マッチング理論: Open ブログ
ここでは具体的な成功例も示されている。再掲しよう。
ロス氏は、ニューヨーク市の公立学校が使う学校選択制度の改革に寄与した。同アカデミーによれば、ロス氏が考案したアルゴリズムによって、自分が全く希望しない学校に割り当てられた生徒数は90%減少したという。
( → ウォール・ストリート・ジャーナル )
説明としては、上記項目を読めばわかるのだが、面倒臭い人が多いだろうかから、以下で簡単に説明しよう。
恋人のマッチング理論では、男女がそれぞれ「好みの相手」のリストを提出する。たとえば、こうだ。
第1希望は Kさん
第2希望は Sさん
第3希望は Mさん
第4希望は Rさん
こういうのを、男女のそれぞれに提出させる。そのあとで、
・ 重複がなければ、双方合意で、そのままカップル成立
・ 重複があれば、人気のある人の希望を生かしてカップル成立
こういうふうにすれば、全体として最適な組み合わせが得られる。
例。男女とも人気が1位の男と女のカップルが「相思相愛」で成立する。残っているのは2位以下のみ。そこで、2位の男と女同士でそれぞれが第2希望で残っていて相思相愛ならば、その男女でカップル成立。そうでなければ、2位の人の第2希望を生かす形でカップル成立。以下、同様。
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これと同様のことを、大学入試でもやればいい。そのポイントは、こうだ。
まず、「合否判定センター」を設立する。ここに対して、
・ 受験者全員が、受験先の希望順位をあらかじめ提出させる。(A)
・ 各大学は、合格予定者の順位を提出する。(B)
以後は、合否判定センターにおいて、(A)(B)の二つのデータを照合することで、コンピュータでマッチングすればいい。これで、コンピュータによる自動判定が可能となる。
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で、こうすると、現状と比べて、何が変わるか? 結果を見るだけなら、特に何も変わらない。ただし、手続きの手間が大幅に変わる。
現状では、電話連絡に人手をかけるので、すごく手間がかかる。大学職員は猛烈に忙しくなるし、父母の側もあたふたとする。連絡の食い違いで、トラブルが発生することもあるる。たとえば、九州歯科大学の事例。
《 大学合格、30分電話つながらず辞退扱い 抗議で撤回 》
追加合格者について、保護者に30分間連絡がつかなかったため辞退者と見なしていたことが、大学への取材でわかった。内規によるものだが募集要項に説明はなく、大学は保護者の抗議を受け、「受験生の不利にならないようにすべきだ」として追加合格にした。
( → 朝日新聞 2019年4月4日 )
こういうトラブルは、人手をかけることから起こる。一方、コンピュータによる自動判別ならば、このような問題は発生しない。この事例で言えば、「合格すれば入学する」ということが、もともと意思表示されていたからだ。
( ※ 「必ず入学する」というのではなく、「上位の希望大学に不合格であるならば、ここに入学する」というふうに示していた。その後、「上位の希望大学に不合格」という情報を合否判定センターが入手するので、「合格すればここに入学する」という意思が自動判定されるわけだ。)
というわけで、マッチング理論を使うことで、すべてが機械処理される。こうして、人手による手間やトラブルを回避できる。
かくて、問題は解決する。「うまい方法」の回答、完了。
[ 付記1 ]
受験生が途中で気が変わることがあるかもしれない。
「K大学を第1志望にしていたけど、やっぱ、W大学の方がいいな。順位を変更したい」
というふうに。そういう場合には、合否判定センターに届け出た順位を、途中で変更してもいいかもしれない。
とはいえ、そんなことをすると面倒だから、そういう変更は一切受け付けないとしても、それはそれで構わないだろう。
一方、すごく高額の料金を受け取って変更を受け付けるというのなら、それはそれで「あり」だろう。(すごく高額なら、無闇と利用者が増えることはないので、制限される。特別に必要度の高い例外的な場合に柔軟に対処するだけ、となる。)
[ 付記2 ]
合否判定の日付は、一定である必要はない。各大学は、自分で「合否判定日」を設定できる。たとえば、3月25日とか、3月30日とか。
それを受けて、合否判定センターは、その日に「合否の結果」を通知すればいい。合否判定センターの通知する内容が、最終的な結果となる。それで問題ない。
[ 付記3 ]
合否判定の日付は、1次補欠と2次補欠で、日付を変えてもいい。
たとえば、1次補欠は 3月25日(手続きは 27日まで)。2次補欠は 3月28日(手続きは 30日まで)。
この場合、3月25日と3月28日の間に、時間が2日間の余裕があるので、その間に、小論文試験の採点数を増やすこともできる。
たとえば、230点未満は不合格(小論文試験の採点せず)としていたが、220点〜229点までの受験生の小論文を採点して、合否を決める。
詳しくは次項を参照。