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ゴーンがビデオメッセージを公開した。
見るのが面倒ならば、全文文字起こしもある。
→ ゴーン容疑者の発言全文 - zakzak
読めば明らかなとおり、ゴーンはあくまで「無実だ」と主張しており、自己正当化をしている。つまり、自分の不正を認めようとしない。
このことは、少し前のニュースで、妻の発言からもわかる。
→ ゴーン容疑者、自身を逮捕に追い込んだ人物らの実名暴露へ 妻が明かす
インタビューの中でキャロルさんは、「(ゴーン容疑者)自身に起きたことに対して責任がある人々の実名で挙げている。弁護士が持っており、まもなく公開される」と話した。
つまり、「自分を不当に貶めた裏切り者を告発する」というようなことらしい。ここには、「自分を正当視して、決して犯行を認めない」という強い意図が見られる。
しかし、このような自己正当化の方針を取れば、徹底的に抗戦するしかないので、「犯行を認めた上で情状酌量を求める」という道は取れなくなる。そして、その場合は、「反省の意図が見られない」ということで、重罰を科せられる可能性が高まる。
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これと似た例があった。ライブドア事件のホリエモンだ。
あの事件では、私は次のように認識した。
「この事件では小さな悪(形式犯のようなもの)があったが、大きな悪(巨額の泥棒)はなかった」
これが真相だと思う。
→ ライブドア 二重の虚構
一方、ホリエモンは、次の方針を取った。
「自分はまったく悪くない。自分はあくまで正義だ。悪い点など皆無である」
こういう方針を取った結果は、どうなったか? 「実際に悪をなしたのに、反省の色は皆無」と見なされた。そのあげく、罪の全体を「クロ」と見なされ、最大限の罰を受けた。懲役2年6ヶ月の実刑判決(求刑懲役4年)。
仮に、私の方針(小さな悪を認めること)を取っていたならば、「罪はあるが、小さな罪なので、執行猶予」となっていた可能性は十分にある。なのに、「罪をまったく認めない」という方針を取ったあげく、「反省が皆無」と見なされ、最大限の罰を受けた。
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ゴーンはどうなるだろう? おそらく、ホリエモンの場合と同様だろう。しかも、罪の程度は、はるかに大きい。ホリエモンの場合は、金を盗んだわけではないが、ゴーンの場合は、あの手この手で金を盗んだ。しかも、超巨額である。常識的に言って、懲役5年ぐらいが妥当だ。(未決勾留の1カ月分ぐらいは免除となるが。)
ゴーンが「徹底抗戦」の方針を取る限りは、こうなる可能性がきわめて大きいのだ。(ホリエモンよりも、はるかに罪は明確で、はるかに罪の規模が大きいからだ。)
一方、小さな罪を認める、という道もある。こうだ。
「本件は事実ですが、これは合法だとばかり思っていました。悪をなそうとする意思はありませんでした。法的知識の不足が理由です。法的に問題があるのであるとすれば、得るべき金を返上します。退職後に受け取るはずだったコンサルタント料の契約は解除して、将来の報酬を受け取りません」
このようにすれば、罪はかなり減じられるだろう。懲役5年が懲役4年ぐらいにまで減りそうだ。
さらに、中東経由の迂回資金(2件)で受け取った金額についても、事実を認めた上で、全額を返上すると言えば、罪はさらに減じられるだろう。ゴーンはこれまで正規の報酬で莫大な金を得てきたのだから、中東経由の迂回資金の分も返却が可能であるはずだ。(なお、初期の投機失敗の補填分は、ここに含まれる。)
この分でも金を返上すれば、罪はさらに減じられるだろう。懲役3年ぐらいにまで軽減されるか。
さらに、海外住宅の不正という問題もある。
→ ゴーンの海外住宅は脱税か?: Open ブログ
だが、この件も、金を返済すれば、さらに罪は軽減されそうだ。
それでもまだ、金額の記載が不正だったという問題は残る。(有価証券報告書の記載違反)
→ ゴーンの不正は有罪に値するか?: Open ブログ
→ ゴーンの法律的な罪名は?: Open ブログ
この分は、どうしても残る。懲役2〜3年が妥当だろう。ただし、これは「形式犯」であるから、執行猶予になる可能性もある。特に、巨額の金を返済するならば、執行猶予になる可能性は高まる。
仮にゴーンが 50億円以上の金を日産に返済したならば、最終的には「懲役3年。ただし執行猶予」という形で決着する可能性はある。ゴーンとしては、この道を選ぶのが最善だろう。
しかし、ゴーンはその道を取りそうにない。あくまでも「自分は絶対に正しい」と主張する。
その場合には、「巨額の金を不正に取得した」という事実だけが残る。ホリエモンの場合よりもはるかにひどいので、懲役5年ぐらいの実刑は避けられないだろう。
それにしても、弁護士というのは、おいしい商売だ。最終に負けたとしても、被告人の馬鹿な主張に「ハイハイ」と従うことで、巨額の弁護士報酬を受け取れる。
「小さな罪を認めれば、執行猶予で済みますよ」
という真実を教えて、被告人の利益を守るようなことはしない。お馬鹿な独裁者に従うことで、独裁者に最大の罪をもたらすようにする。
独裁者にとっては、「おのれの独裁的体質が招いたことで、自業自得だ」ということになるのだが、それにしても、馬鹿げたことだ。あえて自分から落とし穴にはまるようなものだ。そして弁護士は、その落とし穴を知っていても、教えて上げない。落とし穴にむかって進む独裁者に、「ハイハイ」と言って阿諛追従するだけだ。そのことで巨額の手数料をもらう。
ホリエモンにせよ、ゴーンにせよ、本サイトの意見を読めば、「小さな罪を認めることで、執行猶予を勝ち取る」ということができるのに、そういう道は取らないようだ。
独裁者はその体質ゆえに、自らを傷つける。
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ついでだが、次の話もある。
日産自動車の株主総会。
総会に出席した神戸市の堀田高司さん(60)は、ゴーン前会長への損害賠償請求の有無をただした。「請求するだろう」との西川氏の発言を「真摯(しんし)に答えていたとは思う」と評価し ……(以下略)
( → (時時刻刻)日産「ゴーン後」多難 「権限集中許した」批判 株主、西川氏らに辞任迫る:朝日新聞 )
会社側から、損害賠償請求があるようだ。それをこの場で予告したのは、「首を洗って待っていろ」ということかな。
[ 付記1 ]
新たな資金流用が発覚した。
《 前会長のクルーザー「SHACHOU号」日産資金還流で購入か 》
特別背任の疑いで再逮捕された日産自動車のゴーン前会長は、ペーパーカンパニーを使って日産の資金を還流させ、その一部が前会長らが使用するイタリア製のクルーザーなどの購入費に充てられていた疑いが持たれています。
関係者によりますとゴーン前会長らが使用するクルーザーはイタリア製で、「SHACHOU(しゃちょう)号」と名付けられ、前会長の妻が代表を務めるペーパーカンパニーがおよそ15億円で購入しています。
( → NHKニュース )
15億円のクルーザーを買うのに、会社の金を流用した。ま、横領・泥棒も同然だ。こういう金を、日産に返済するのならともかく、その気はなさそうだ。
となると、5年以上は監獄に入ってもらうのが当然かもね。
→ クルーザー“オマーン資金”で購入か ゴーン容疑者(テレ朝)
→ ゴーン前会長の妻に検察が聴取要請 応じず仏に出国 [ゴーン前会長]:朝日新聞
[ 付記2 ]
さらに続報が出た。資金流用は2ルートだけでないようだ。何と 40社のペーパーカンパニーが設立されていたそうだ。
日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者(65)が日産資金を自らに還流させ、私的に流用したとされる特別背任事件で、還流先の中東レバノンの投資会社「GFI」の所在地に、およそ40社が登記されていたことがわかった。首都ベイルートにある前会長の高級住宅を所有する会社も含まれていた。いずれも実体のないペーパーカンパニーとみられ、東京地検特捜部は、前会長による不正の「拠点」となっていたとみて調べている模様だ。
……
ゴーン前会長の側近だったこの弁護士とSBAのインド人幹部が設立者として登記されている。 弁護士は17年8月に死亡。今年2月、朝日新聞記者が訪ねると、同じビルで働く女性は「弁護士が死亡した3カ月ほど後に事務所は閉じた」と語った。さらに取材すると、この部屋に約40の会社が登記されていたことがわかった。
( → ビルの1室に40社登記、実態なしか 日産資金の還流先 [ゴーン前会長]:朝日新聞 ,無料版 )
次から次へと悪事が発覚する。この分だと、懲役7年以上が妥当かな。
【 関連項目 】
ゴーンはこの金を「自分の偉大な業績に対する、正当な報酬」とでも思っているのだろう。
しかし、正当な報酬ならば、「株主総会における承認」を得る必要がある。この件は、下記で述べた。
経営者の報酬についても、株主総会に報告して、株主総会の承認を得る必要がある。なのに、ここで報告にゴマ化しがあれば、株主総会の承認を得ずに金を勝手に得ていることになる。それは、横領も同然である。
要するに、ゴーンは会社の金を私物化していたわけで、それは横領も同然であるわけだ。ゴーンは「会社はおれのものだ」とでも思っていたのだろう。しかし本当は、「会社は株主のもの」なのである。そして、株主に隠して金を得ていたからには、それは泥棒・横領も同然なのだ。
( → スルガ銀・レオパレス/ゴーン: Open ブログ )