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日経の記事。
《 JDI、台中勢傘下に 「日の丸液晶」が頓挫 》
経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)は3日、台湾の電子部品メーカーや中国の投資ファンドなどで構成する台中連合3社から、出資などで600億〜800億円の金融支援を受け入れることで大筋合意した。官民ファンドのINCJ(旧産業革新機構)も支援する。外資への傘下入りでJDIの再建は前進するが、液晶の国産化路線は頓挫することになり、日本の産業史にとっても大きな節目となる。
( → 日本経済新聞 )
これまでは「経営を再建しよう」ということで、国の金がどんどん投入されてきた。
そこで、「そんな馬鹿げたことはやめろ」と私はこれまで何度か述べてきた。
→ JDI の再建問題: Open ブログ (2016年08月08日)
→ JIC の高額報酬の問題 2: Open ブログ
→ 高額な成功報酬の是非: Open ブログ
私の主張から3年近く遅れる形で、ようやく既存路線が修正されることになったわけだ。
ただし、「完全売却」ではない。
台中連合の議決権比率は5割弱となり、新たに筆頭株主になる見通しだ。現在の筆頭株主のINCJの議決権比率は25.3%から半分程度になる。
何とか影響力を残そうとしているようだ。踏ん切りが付きかねているらしい。決断力不足が最後まで出ているようだ。
JDI の株価は、2014年に 800円を付けたあとで、その後は下がる一方となり、現在は 91円。せめて 2017年ごろに売っておけば、300円ぐらいで売れたのだが、今ではその3分の1だ。得るに売れない状況となったか。
決断力不足のせいで、損失は大幅に拡大した。官製ファンドの罪は重いね。(私が何度も指摘してきたとおり。)
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なお、できることなら、中国資本の混じったファンドに売り払うよりは、台湾の鴻海の傘下に入るように、シャープに売り払うべきだった。そうすれば、シャープと JDI が合体する形で、うまく再生できたかもしれない。
なのに、今回はシャープに売却しなかった。そうする気がなかったのかもしれないし、もはやシャープが買い取る気をなくしたのかもしれない。いずれにせよ、愚図愚図していたあげく、最悪の選択肢を取ったことになるね。(さっさとシャープに売っておけば良かったのに。それなら、今よりも高値で売れた。)
※ 「シャープに売れ」という話は、前に書いた。
→ JDI を倒産させよ: Open ブログ
→ JDI の存続(公金投入): Open ブログ
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まとめ。
JDI は、(赤字 2472億円 を含め)数千億円の金を溶かしてしまったあげく、中国資本の傘下に入ってしまった。そのときの売値は、株価 61円からわかるように、倒産寸前会社みいたいな価格だった。株はゴミか紙屑みたいになってしまった。巨額の金と技術と人員のすべてを、タダで与えてしまった(捨ててしまった)も同然だ。
それというのも、官製ファンドが JDI の存続にこだわって、何度も巨額資金を(無駄に)投入し続けたからだ。
これはいわば、瀕死の病人に、巨額の治療費をかけたあげく、ちょっと延命しただけだった、というようなものだ。そのせいで生きている人間の側が、瀕死になりかねない。死ぬべき人間を生かそうとしたせいで、生きるべき人間が死にそうになる。本末転倒とは、このことだ。
こういう官民ファンドの馬鹿馬鹿しさを、私は何度も指摘してきた。しかしとうとう、間に合わなかった。JDI は株価 61円という超安値で売却されることになった。時価総額は 770億円( → 出典 )。数千億円の金を投入して、これっぽっちしか残らないのだから、巨額の金を溶かしてしまったと言える。
これだけの金を無駄にした責任は大きい。しかし、官民ファンドを推進していた政府の誰も責任を取るつもりはないようだ。ひどいものだ。国民の金を使って、ギャンブルごっこをやっている。この点については、官民ファンド(産業革新投資機構)の話として、下記で論じたことがある。
→ JIC の高額報酬の問題: Open ブログ
[ 付記 ]
タイトルでは「身売り」だが、正確には「身売り」ではなくて、「出資の受け入れ」である。売り払うのとは違いますね。だけど、外資のものになってしまうのだから、実質的には「身売り」も同然だ。
どうせなら、きちんと「身売り」してしまえばよさそうなものだが、あくまで「しがみつく」という形で、持株を手放すまいとしているようだ。その価値は大幅に減じており、なかば「紙屑を持ち続ける」というのに近い状態だが。
自分たちの失敗を最後まで認めようとしない、ということらしい。株価のグラフを見れば、失敗は明白なんだが。
→ http://j.mp/2CX6k5I
※ グラフの表示は「1日」になっているが、「最大」に変えるといい。