2019年03月29日

◆ 北本連系(線)は無駄だ

 北海道と本州の電力を結ぶ 北本連系(きたほんれんけい)は、新たに設備が拡充されたが、ただの無駄であろう。(壮大な浪費。)
 
 ──
 
 北本連系(線)が新たに拡充された。
 北海道電力は28日、本州と北海道をつなぐ新たな送電線「北本連系線」の運用を始めた。本州から受け取れる電力量は従来の60万キロワットから計90万キロワットに拡大。緊急時の「命綱」とも言える設備が増強され、昨年9月のブラックアウト(全域停電)の再発防止につながるとしている。
( → 北海道)全域停電の再発防止へ北本連系線を増強:朝日新聞デジタル

 良いことをやっているように見えるが、これには莫大なコストがかかる。記事の続きには、こうある。
 この日運用を始めた連系線(30万キロワット)は、青森県から青函トンネルを経由して北斗市に至るルートで、全長122キロ。北電が2014年4月から約600億円かけて工事を進めていた。これまで本州と北海道を結んでいたのは、電源開発(Jパワー、東京都)が所有する連系線(60万キロワット)だけだった。

 たったの 30万キロワットのために、600億円だ。とんでもない巨額だ。
 しかも、これだけでは済みそうにないらしい。
 電力広域的運営推進機関(広域機関、東京)は27日の有識者委員会で、北海道と本州を結ぶ送電線「北本連系線」の増強について、関連の工事費が430億〜3190億円かかるとの概算を示した。
( → 北海道と本州結ぶ送電線「北本連系線」増強に最大3000億円 - 毎日新聞
 電力の需給バランスを調整する「電力広域的運営推進機関」は27日、「北本連系線」の増強について、新たな送電ルートを建設した場合、最大で約3185億円の工事費がかかるとの試算を発表しました。
( → さらなる電力増強に 最大約3185億円 「北本連系線」の工事費 きょうから90万kwに - FNN

 途轍もない巨額だと言えるだろう。
 では、どうしてこういう巨額になるのか? それは、「海底や青函トンネルを通る電力線」というのが、もともと高コストだからだろう。
 ケーブルを敷設することとなった北海道側海域は、コンブやホッケの好漁場であり、漁具により破損しないよう海岸から水深50mの間は、ケーブルを海底下1.5mに埋設する必要が生じたこと。また、函館交直変換所の敷地において縄文時代晩期の遺跡が発掘されたことなどにより、工事完成には時間を要した。
( → 北海道・本州間連系設備 - Wikipedia
 青函トンネル内(作業坑)にケーブルを敷設しています。
( → 新北本連系設備の特徴 - 北海道電力

 別に、下手なことをやって無駄を出しているわけじゃない。このような設備そのものが根本的に高コストなのである。

 ──

 では、どうすればいい? ここは、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
 「北海道と本州との間で電力を融通するのではなく、北海道の内部で電力を融通する。そのための電力網は、既存の電力網をそのまま利用すればいいので、コストはゼロで済む。
 一方で、電源(発電所)は、各地に分散させる。どこか一箇所で地震被害が起こっても、他の箇所でバックアップすることで、ブラックアウトを回避する」


 これはどういうことか? 実は、このまえの苫東の地震でブラックアウトが発生したのは、苫東の発電所に発電が集中していたからだった。北海道の発電力の全体のうち、ほぼ半分ぐらいが苫東の発電所に集中していた。だから、苫東の発電所が地震でストップすると、一挙に半分の電力が失われて、北海道全体でブラックアウトが発生した。このことは、前に述べたとおり。
  → 苫東厚真発電所への集中: Open ブログ

 発電力を一箇所に頼るというのは、とても危険なことなのである。
 では、なぜ、そんな危険なことをしたのか? それも、上記で推定されている。
  ・ 苫東の設備は最新だったので、コストが低い。
   つまり、コスト優先で、安全性を二の次にしたこと。
  ・ もっと新しい石狩湾新港発電所が未稼働であったこと。


 後者の点については、「2019年2月には稼働の予定」と記した。そこで調べると、これはすでに正常に稼働している。
  → 北海道電力株式会社 石狩湾新港発電所1号機が営業運転を開始

 ──

 結局、発電力を北海道各地に分散させれば、ブラックアウトの危険は著しく下がるのだ。そのことは、石狩湾新港発電所が稼働したことで、部分的には実現している。
 しかしながら、苫東の発電所に過剰に頼っているという状況は、根本的に是正されたわけではない。釧路に新発電所が建設されているが、未稼働である。また、発電力も小さい。
 釧路火力発電所(北海道釧路市)は26日、釧路市内で建設している火力発電所の稼働を延期すると発表した。当初は2019年12月の稼働を予定していたが、20年11月にずれ込む。寒冷地の事情を踏まえ、想定していた資材運搬の時期や工事の作業工程を見直して、延期を決めた。新火力発電所は17年12月に着工。石炭や木質バイオマスを燃料にして、出力は11万2000キロワット。
( → 釧路の火力発電、稼働を20年11月に延期:日本経済新聞

 では、どうすればいいか? 基本的には、次の二つだ。
  ・ 高効率の LNG 発電所を、各地に分散建設する。
  ・ それまでは、低効率の古い発電所を分散稼働させる。


 特に、後者が大事だ。低効率の古い発電所を分散稼働させると、コストはいくらか上昇する。しかし、そのことでブラックアウトの危険は大幅に低下するのだ。
 なのに、そのコストを惜しんで、かわりに 3000億円もかけて北本連系線を増強する、というのが現状だ。あまりにも馬鹿げているとしか言いようがない。これじゃ、
 「分散稼働させるための費用 100億円を惜しむために、3000億円を浪費する」
 というのも同然だ。狂気の沙汰と言える。「一文惜しみの百失い」というのを地で行くわけだ。それも、超大規模で。

 日本の電力関係者には、算数の計算ができないのだろうか? あまりにも計算力がないとしか言いようがない。

( ※ たぶん、エコ論者の算術なんだろうが。エコ論者というのはやたらと、「エコのためなら莫大な浪費をしてもいい」と思い込む。)

( ※ 北海道は非常に広域なので、北海道の内部で、ブラックアウト対策ができるわけだ。別に、本州との間で電力融通をする必要はないのだ。特に、それに超高額のコストがかかるのであれば。)












 【 関連項目 】

 → 苫東厚真発電所への集中: Open ブログ
 → 北海道:全域停電への対策: Open ブログ



 【 関連サイト 】
 北海道の再生エネ(特に風力発電の電力)を本州に融通するために青函トンネルは有効だ……という説もある。
 それはそうかもしれないが、そのために 3000億円をかけるというのは、あまりにも馬鹿げている。
 「風力発電や太陽光発電を推進するためであれば、どれほど巨額の金を浪費しても構わない」
 というふうに主張する人もいる。特に、朝日新聞はそうで、最近はそういう話ばかりをシリーズで連載している。
  → (てんでんこ)電気のあした:14 県土再生:朝日新聞
 エコ論者というのは、あまりにもコスト虫の議論をするので、呆れるしかない。「エコのためであれば、金は天から降ってくる」とでも思っているのだろうか?
 あるいは、新聞記者というのは、何も物を生産しないから、「働いて金を稼ぐ」という意識が皆無なのだろうか? 
 とにかく、その「コスト感覚の欠落」には、呆れるしかない。ゴーンとは対極ですね。片や、コストカッター。片や、無限のコスト浪費主義者。

 ( 注 )
 「それでも自然電力を本州に送ることは有効だ」と思うかもしれないが、自然電力は北海道内部で十分に利用できる。別に本州に送付が必要なほど大量に余っているわけじゃない。
 そもそも、自然電力を、本州で消費しようが、北海道内部で消費しようが、どっちでも同じことだ。あえて本州に送付する必要はないのである。そんなことのために莫大な金を費やすのは、ただの無駄だ。



 【 追記1 】
 実は、北本連系線には、致命的な問題がある。50万kW とか、100万kW とか、その程度では量が少なすぎて、ブラックアウト対策としては根本的に不足している、ということだ。
 苫東厚真には 165万kW の発電力がある。これが一挙に消えたことで、このまえのブラックアウトが起こった。
 ここで、北本連系線で 100万kW ぐらいを得ても、問題の解決には至らないのだ。
 問題の解決をするには、どうしても、発電力の分散が必要となる。たとえば、石狩湾新港の 57万kW 。しかしこれでも、165万kW の分を十分に分担することはできない。
 基本方針としては、やはり、新規の LNG 発電所をどこかに作るしかない。それまでは、他の発電所で分担して、苫東厚真の一極集中を防ぐべきだ。北本連系線のさらなる拡充は、まったく必要ない。そもそも今回の分さえ、必要ない。(できてしまった分は、捨てるわけにも行かないので、使うべきだが。)



 【 追記2 】
 重要な話を述べる。北本連系線に今後かかる費用が「 3000億円」だ、という数字は、まったく正しくない。実は、1兆円とか、2兆円とか、3兆円とか、そのくらいの規模が必要となる。
 なぜか? 北海道の電力を、大需要地である関東まで持ってくるには、青森から関東までの送電網を拡充する必要があるからだ。
 現状では青森の原発が休んでいるので、空いている送電網を使うことで、青森から関東まで低コストで送電することができる。しかし、いつまでもそうなるとは限らない。青森の原発は再稼働する可能性が高い。そうでなくても、東北では太陽光発電が今後大幅に増えるので、太陽光発電の分だけで送電網が満杯になるのが確実視されている。北海道の風力発電を関東にまでもってくるための送電網など、ないのだ。とすれば、そのための送電網を新設する必要がある。それには、1兆円とか、2兆円とか、3兆円とか、そのくらいの規模が必要となる。
 北本連系線では、そのための数字が考慮されていない。北海道から本州まで電力を持ってくれば、それで済むと思っている。しかしそれは大いなる勘違いなのである。

 その勘違いは、どうして生じたか? 北海道から関東までの送電網について、次の重複を用いた。
  ・ 原発の電力に使う。
  ・ 太陽光発電の電力に使う。
  ・ 風力発電の電力に使う。

 同じ一つのもの(送電網)について、三通りの方式で使おうとしている。はっきり言って、ここには論理ペテンがある。

 比喩。
 磯野家に 10万円があった。これを見て、三人が思った。
 サザエ。「わたしが 10万円を使える」
 カツオ。「おいらが 10万円を使える」
 ワカメ。「あたしが 10万円を使える」
 こうして三人が 30万円を使えることになりました。10万円の金しかないのに、30万円を使えます。

 各人が勝手に夢を見ているわけだ。馬鹿げている。そして、これと同じことを考えているのが、自然電力の推進者だ。だからこそ、「3000億円で済む」と思い込んで、「実際には何兆円もかかる」ということを理解できない。「捕らぬタヌキの皮算用」よりも、もっとひどいね。「夢の重複」というインチキ算術。「小学校で足し算を勉強しろ」と言いたくなるレベル。
 これが、エコ論者の算法だ。
 
 ──

 《 加筆 》

 北海道から関東まで送電するのは、現実的には困難だ。電力損失(送電ロス)が大きくなるからだ。
 可能だとしたら、超伝導直流送電というのを使った場合。これならば可能となる。
 逆に言えば、今の段階で(北本連系線を含む)送電網を整備しても、近い将来にはゴミ同然となる。送電ロスが大きいせいで、使われないからだ。使われるのは、超伝導直流送電の方だけだ。
 北海道から関東まで送電網を整備したら、「**のピラミッド」みたいに、巨大遺物の象徴となるだろう。
  ※ 「**」の箇所には、新元号が入る。
posted by 管理人 at 21:03| Comment(9) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
北本連系線は、そもそも北海道の泊原発の電力を本州に送ることが目的だったはずで……。
311以降、たったの30万kWでは足りなかったので海底ケーブルを増強して60万kWにして、さらなる増強のため、北電独自に青函トンネルを利用した30万kWを措置したはず。
このまえのブラックアウトはたまたまだし、北本連系線の容量不足が原因ではないし、自然エネルギー云々は「それも可能」というだけの話です。
北海道内の電力需要は札幌周辺だけが極端に多いので、あんまり遠隔に分散してしまうと送電ロスが増えるということでなるべく避けたいのでしょうね。
管理人様のご批判も外れているわけではありませんが、もうちょっといろいろな事情を見ると多少見え方が変わってくるかもしれません。
Posted by けろ at 2019年03月29日 22:46
> 北海道内の電力需要は札幌周辺だけが極端に多いので

 なるほど。だけど、そういうわけだから、もともと札幌周辺に発電所がたくさんあります。
 → http://j.mp/2CEM1JZ
 → http://www.hepco.co.jp/energy/fire_power/fire_ps_list.html
Posted by 管理人 at 2019年03月29日 23:15
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2019年03月29日 23:28
北海道は再エネポテンシャルが大きいが、需要が小さいために北海道電力が受け入れを渋っている。本州に送れれば北海道の再エネを増やせて、それは日本の温暖化ガス低減や自給率アップに貢献する。送電線は一度作ってしまえばいくらでも電気を通せるから電力価格上昇にはほとんどつながらない。今後も誰の負担でつくるかはもめるだろうが、送電線増強は続くと思う。
Posted by vaceba at 2019年03月30日 20:08
> 需要が小さいために北海道電力が受け入れを渋っている。

 それ、ときどき報道されていますが、私は誤報だと思います。正しくは、
 「風力発電のポテンシャルは大きいが、僻地にあるため、それを基幹送電網に結びつけるための送電線が必要となる。その送電線の建設費を払うことができないので、風力発電が進まない」

 同様のことは東北でも成立していますが、朝日の特集記事によると、それを東電などの負担でまかなっているようだ。つまり、LNG 発電の購入者の負担で、風力発電のための建設費をまかなっている。

> 送電線は一度作ってしまえばいくらでも電気を通せるから電力価格上昇にはほとんどつながらない。

 3000億円の負担をするのに、価格上昇につながらないとは、これいかに? 固定費負担をまったく考えていないんだろうか? 
 ランニングコストだけを考えても、風力発電のコストは LNG 発電を上回る。(だから、買い取り価格がすごく高い。)
 固定費が 3000億円も高くて、ランニングコストが LNG 発電を上回る。なのに「電力価格上昇にはほとんどつながらない」という計算をするようだと、もうペテンのやり放題。
 ※ たぶん、燃料費だけを見ているんだろう。その理屈で言うと、「自動車は日産リーフが最も経済的です。ガソリン代がゼロです」という理屈になるので、リーフは馬鹿売れしていいはずだが。実際には、全然売れない。「自動車は日産リーフが最も経済的です。ガソリン代がゼロです」という嘘にだまされる人は少ないせいかな。

Posted by 管理人 at 2019年03月30日 20:37
 最後に 《 加筆 》 の箇所を書き足しました。
 超伝導直流送電の話。
Posted by 管理人 at 2019年03月31日 22:10
北本連携線は、東北震災のような非常時に互いにわずかな電力融通をするためだけの目的だったのですから、「北海道の自然エネルギーを東京に送る」なんて大それたことをするつもりもないし、ご指摘の通り出来ないことです。
今回の増強は、ブラックスタートできるように自励式にするとか点検停止時に使える容量のアップとか、目的としては理にかなっているようにも思います。
送電ロスを抑えるため直流送電にしていますし、そんなに非難するようなものでもないのでは。
むしろ東電の原発を新潟や福島や東通に造る送電ロスのほうを何とかすべきでしょう。どうしても原発が必要で、なおかつ安全性を担保できるならば、やっぱり東京湾が適地では。

北電で再エネ受入を渋るのは、ゼロ〜100%で極端に変動する発電量に追従して周波数調整をできるだけの発電所や蓄電装置が無いからです。早来の蓄電池みたいなやつが大量に必要になります。いろんな努力の形跡も見てあげていただけませんかね。電力関係者に対して馬鹿馬鹿言い過ぎないほうが良いかと。管理人様のご理解も必ずしも十分ではないようですし。

> 札幌周辺に発電所がたくさん

「周辺」に「たくさん」は、ありませんね。泊原発ありきの電源構成としてしまっていたから、泊&苫小牧で良しとしていたわけで。揚水発電所も造っちゃったし。中央の都合で国策でいろいろ進めざるを得なかったから、今苦労しているわけです。石狩湾新港は、努力の一環ですよね。
Posted by けろ at 2019年04月01日 02:22
> そんなに非難するようなものでもないのでは。

 非難ばかりしているわけじゃなくて、ちゃんと建設的な提案をしていますよ。
 「高効率の LNG 発電所を、各地に分散建設する」
 です。これならば安定した電力を低コストで使えます。電気料金も値下げになる。

 一方、現状の案だと、
 「3000億円でわずかな余力を得るが、緊急時のみ」
 です。
 再生エネについては、
 「風力発電は、僻地から函館までもってくるための送電網を、さらに兆円レベルで整備し、バックアップも整備する」
 というのもあるが、これだと、北海道の電力も大幅値上げの必要がある。

 私の案とどっちがいいと思いますか? 現状でいい? それなら、3000億円の分、電気料金は値上げになります。
Posted by 管理人 at 2019年04月01日 08:00
> 高効率の LNG 発電所を、各地に分散建設する

はい。それが一番いいと思います。だから、管理人様に言われるまでもなく石狩湾新港の事業を進めてきていたわけで。2号機・3号機も順次できていきます。また、他の立地も模索していくことでしょう。
奈井江の水利権がどうなるかとか、詳しい内部事情は公表されていないようですが。

それとは別に、今回増設の北本連系線は整備した意味はあると思います。理由は上記の通り。

更なる増強というのは、北海道の都合じゃなくて本州側(というか東電・政府)の都合なので、やらなくて済むならやりたくないですよね。電気事業や原発政策などの影響をモロに受けるので、僻地の北電単体ではどうにも抗えないことでしょう。

北海道内の送電網増強は、果たしてどうなることやら。発送電分離になっていくと、事業主体やらカネの出処やらわけがわからなくなりそう。
そして、どこかの誰かの懐だけが潤うことになりそう。困ったものです。
Posted by けろ at 2019年04月02日 16:57
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ