2019年03月28日

◆ 地方の外国人労働者が流出?

 地方の外国人労働者が流出するので、地方の産業が成り立たなくなる……という心配があるそうだ。
 
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 外国人労働者を規制する法律が変更され、外国人労働者は(ほぼ同じ分野なら)自由に転職することができるようになった。そこで、低賃金の地方を脱出して、都会に行くようになる。結果として、地方では低賃金の外国人労働者がいなくなるので、それに頼っていた地元の産業は成り立たなくなる……という心配があるそうだ。
 本日の朝日新聞の記事。
 外国人の受け入れを増やそうと出入国管理法が改正され、4月に施行される。人手不足が深刻な東北の被災地では、地場産業の「外国人頼み」が強まっているが、法改正がかえって流出を招きかねない、との声が出ている。なぜなのか。
 被災地の主要産業の一つは水産加工だ。法改正の業者向け説明会が3月上旬、仙台市であった。水産庁の官僚は人手不足の解消をめざすと説明した後、こう述べた。「新しい制度では転職や転居が自由。地方に住む外国人労働者が都会に行きたいと転職する場合、法的に止める手段はない」
 参加者たちは「外国人がいなくなったら、何もできない」と不安を募らせた。
 その一人、森下幹生さん(69)は、イカやサンマなどの加工を岩手県大船渡市で手がける。素材は季節ごとに変わる。加工の機械をそのつどは導入できず、人手に頼る。だが、日本人を新卒で採ることは厳しく、地元の人口が急減した震災からしばらくして、あきらめた。
 一方、1993年に受け入れ始めた中国人は、工場の被災に伴う一時帰国を乗り越え、いまや28人。従業員の2割を超えた。程度の差こそあれ、被災地の中小企業では珍しくない。在留資格はみな、技術を学ぶ名目の「技能実習生」だが、主力産業を支えているのが現状だ。動向は被災地の将来を左右する。
( → 被災地、募る危機感「外国人に選ばれないと街が消える」:朝日新聞

 ここでは、「あちらが立てば、こちらが立たず」という具合だし、どうにもうまく解決ができないようだ。
 では、これを、どう判断するべきか? 「困ったときの Openブログ」という感じで、うまい名案を出すべきか? 

 ──

 実は、これは、何も問題がない。むしろ、好ましい状況である。だから、「何もしない」というのが最善だ。(どちらかと言えば、この状況をもっと強化して、外国人労働者をすべて追放してしまうぐらいの方が好ましい。)

 なぜか? 「地方で人手不足」なんていう状況はまったく存在しないからだ。むしろ、地方では人がありあまっている。実際、まともに就職できずに、都会に出るしかない若者が多い。
 ではなぜ、地方の会社は人手不足なのか? 地方に人がいないからではない。払う金が安すぎるからだ。それだけだ。
 上の記事でも、「地方では人が集まらない」と記しているが、そんな事実はない。「都会と同じ賃金を払えば人は来るのだが、都会よりもずっと安い賃金しか払わないので、人が来ない」というだけだ。要するに、「奴隷募集」と言ったら、奴隷が来ないだけのことだ。そこでは「奴隷不足」があるだけであって、「人手不足」なんてものは存在しない。「人手不足」と瑛太いいのであれば、都会と同じ賃金を払ってからにしろ、と言いたい。

 では、どうすればいいか? 次の二者択一だ。
  ・ 高賃金を払って、事業を維持する。商品は値上げする。
  ・ 低賃金のまま、奴隷不足で、生産停止。事業停止。


 「人手不足だ」とギャーギャー喚くしか能がない会社は、さっさとつぶれてしまえばいい。それが正解だ。こういう無能な会社は、存在自体が害悪なので、さっさとつぶれるのが世のためだ。つぶれて困るのは、労働者を搾取する悪徳経営者だけだ。自業自得で、つぶれてしまえ。
 さて。こういう会社がつぶれれば、生産量が減るので、市場における供給が減って、市場の価格は上昇する。水産物の加工品も、市場の供給量が減って、市場の価格が上がる。
 そうなったら、残った会社が、高い価格で販売して、かつ、高い賃金を払えばいい。高い賃金を払っても、高い価格で販売できるので、十分にペイする。

 結局、「転職の自由」があれば、地方の労働者の賃金は十分に上昇する。上昇することが不可能な産業や会社は、つぶれてしまっていい。つぶれなかったものだけが残ればいいのだ。
 常識的には、地方の賃金が1割ぐらい上がって、水産物の価格が1割弱ぐらい上昇する。それだけのことだ。全体の生産量は、今よりも1割ぐらい減少しそうだが、だとしても、別に問題ない。つぶれる会社があっても、やむを得ない。それが当然なのだから。
 むしろ、本来ならばつぶれる会社をつぶさずに残すために、外国人労働者なんかを導入するのが、基本的に間違っている。彼らがいるせいで、地方の日本人労働者の賃金まで低くなり、そのせいで、若者が東京に流出する。

 今回の法改正(転職の自由を認めること)は、市場原理を推進することで、状況を改善する効果がある。今までの状況の方が間違っていたのだ。
 「今までは奴隷を使えたのに、法改正のせいで奴隷を使えなくなった。奴隷を復活させよ」
 なんていう時代錯誤のことを言う方が、どうかしている。朝日の記事は、まるで、奴隷性廃止を嘆く南部の綿花農家(白人富豪)みたいなものだ。あまりにも時代錯誤すぎる。

 ※ 「かわいそうな被災者」という発想しかないから、「被災者に搾取される、もっと可哀想な外国人労働者」には、考えが及ばないわけだ。経済学的な発想がなくて、感情でばかり考えるから、こういうトンチンカンな記事となる。朝日の社会面の記事は、たいていこういう経済学音痴の記事だ。( この記事は、経済面でなくて、総合面。)



 【 関連項目 】
 実は、この件は前に言及したことがある。
 「地方の農業では、外国人技能実習生が低賃金で働いている。そのおかげで野菜は激安だが、地方の日本人労働者の賃金水準が低下してしまっている。日本人農家にとっては有害だ」
 という話。
  → 野菜が安すぎる(農業の技能実習生): Open ブログ

 安ければいい、というものではないのだ。過剰に安くなりすぎることで、一般労働者の側にはしわ寄せが来ている。



 【 関連サイト 】
 最低賃金が低すぎる(そのせいで人手不足になる)……という話。
  → 低すぎる最低賃金が人手不足の真の原因:日経
 
 これは、本項の話と部分的に重なる。
 ただ、最低賃金で雇用されるというのは、現実的には外国人労働者の場合が多い。また、外国人労働者が大量にいるせいで、相場が最低賃金よりも上がりにくくなっている。つまり、最低賃金と外国人労働者とは、切っても切れない関係にある。
 本項を読めば、この関係が理解できるだろう。

 ※ 上記サイトでは、「最低賃金が低すぎるのが問題だ」という趣旨だが、それよりも、相場が最低賃金に貼りついてしまっていることの方が問題だろう。本来ならば、賃金の相場は最低賃金よりもかなり高くなるはずなのだが、そうならない。その理由は? 「外国人労働者のせいである」というのが、本項の回答だ。特に、地方の外国人技能実習生が問題だった。
 ※ ただ、今後は、外国人労働者の転職が可能となるので、この問題はいくらか緩和されるだろう。その点では好ましい、と評価できる。(朝日の主張とは正反対だ。)
posted by 管理人 at 22:00 | Comment(0) | 一般(雑学)5 | 更新情報をチェックする
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