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技能実習生が低賃金労働者として奴隷状態に置かれていることは、たびたび問題となっている。
政府はこれに対して、新たに管理された低賃金労働者の枠組みを導入しようとしているが、これもひどい状況になるのは目に見えている。
そこで私は前に、「労働者でなく外国人留学生を増やせ」というふうに主張した。その場合には、「働くだけでなく、日本語学習や勉学の時間が取れるので、単なる低賃金労働よりもずっとマシだ」という趣旨だった。
→ 外国人労働者の技能移転の問題: Open ブログ
とはいえ、こう書いたときには、懸念もしていた。
「外国人留学生の状況は、まともなのだろうか? きちんと修学の機会は与えられているのだろうか? もしかして、修学の機会は形骸化していないか?」
こういう懸念があったが、事実関係はよくわかっていなかったので、何とも判断できずにいた。
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ところがこのたび、朝日新聞がこれを精力的に取材して、記事にした。
→ 留学生バイト漬け、学級崩壊も放置 日本語学校で見た闇:朝日新聞
→ (多民社会)「学生増やせ」、留学生に狙い 「ビザ専」と呼ばれる専門学校も:朝日新聞
要するに、日本語学校の状況は、てんで駄目である。
留学生20人が学ぶ教室内で、授業に耳を傾ける学生はほとんどいない。スマホをいじったり、母国語でおしゃべりしたり。居眠りする学生もいる――。
都内のある日本語学校の光景だ。1年半前、この教室で学んでいたウズベキスタン人の男子学生(21)は言う。「日本に来て3カ月経っても、カタカナで自分の名前しか書けなかった」
「もともと勉強する気があった学生も、バイト漬けで、ぼろぼろになっていく」
弁当作りや倉庫での仕分け作業など、夜勤のアルバイトをする学生が多い。単純作業では日本語も身に付かず、授業中は眠気に襲われる――。「在留資格は『留学』ですが、彼らの目的はバイト。半分以上は、そんな学生だと思います」
というありさまだ。
これに対しては、学校教育がきちんとしているか、政府がチェックすればいい。実際、ある程度は、その方針がある。
法務省は昨年12月、日本語学校に日本語能力試験の合格率などの公表を義務づけ、基準に満たなければ学校の認定を抹消するという規制強化を打ち出した。
この方針がきちんと(強化されて)実施されれば、問題は縮小に向かうはずだ。
ところが日本語学校の側が大反対している。
「日本語学校ネットワーク」は「漢字圏からの受け入ればかりになってしまう」「留学の目的は試験合格だけではない」といった懸念を表明している。
しかるに、「漢字圏からの受け入ればかりになってしまう」とはいうが、現実は逆だ。記事によれば、こうだ。
中国や韓国など「漢字圏」の学生が、震災を機に日本を敬遠。危機感を持った日本語学校などが東南アジアに注目し、ベトナムやネパールといった「非漢字圏」の学生が増える契機となった。
震災のせいで、「漢字圏」の学生は急減しているのだ。なのに、「漢字圏からの受け入ればかりになってしまう」という日本語学校の言い分は、嘘ないし詭弁にすぎない。そのことが事実から明らかなのだ。
( ※ 記事を読めば嘘だとわかるぞ、と本項は指摘するわけだ。例によって詐欺師の嘘を見抜く。)
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要するに、日本語学校の側は、「非漢字圏の留学生を、無制限に受け入れたい」ということだ。その目的は、「留学生から授業料を得たい」ということだ。そして、その授業料を得るために、やたらとアルバイトを斡旋する。そのせいで、留学生は眠る時間もなくなって、授業中は居眠りばかり。それを見込んで、学校側は授業で徹底的に手抜きして、利益を高い水準で得る。……すべては金儲けのためだ。
そして、それというのも、日本語学校が「学校法人」でなく「株式会社」で運営されていることが多いからだ。
日本語学校は参入の壁が低い。学校法人だけでなく、株式会社でも設立が可能だ。「日本語教育機関の告示基準」を満たすことが条件だが、審査を所管するのは入国管理局。文部科学省の意見も参考にするが、「教育」の観点が欠けているとの批判も根強い。
まったく、ひどいものである。留学生を金儲けの手段としてしか考えていない。ま、自民党政権というのは、もともとそういう方針の政権であるが、まったく情けなくなるね。国家自体が奴隷商人になっているのも同然だ。
「恥を知れ」と言ってやりたくなる。貧すれば鈍す、かな。
それにしても、今回の朝日の記事は、立派だった。問題点をうまくえぐりだしていた。非常に立派な記事だったので、称賛しておく。(と同時に、ここに記事内容を書き留めておく。)
日本語学校が「学校法人」でなく「株式会社」で運営されていることが多い
今報道されている東京福祉大学でも同様な問題が起こっていますから学校法人でも似たようなものです。
で、(学生のためではなく、)利益の追求、法人の存続のための学生確保という視点に立てば、以前のエントリ、”Fラン大学の無償化”中にある政府の施策もあながち間違いではないといえます。
一義の目的が、
”低中所得世帯の子弟に対し大学教育の門戸を拡充する”
ではなく”私立大学の学生確保”にあるとすれば頷けてしまいます。
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大量の留学生が行方不明となった東京福祉大学(東京都豊島区)。同大学の教授だった田嶋清一氏は4月10日に記者会見を開き、元総長である中島恒雄氏が「金儲け」のために留学生を大量に受け入れていたと告発した。
https://hbol.jp/189873