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ゴーンの弁護側は、「ゴーンへの将来報酬は確定していない」と弁護する。
→ ゴーン 将来 報酬 確定 - Google 検索
しかし、「確定」なんていう曖昧な語は法律用語ではない。
契約についての用語は、次の二通りだ。
・ 契約の「締結」
・ 契約の「履行」
契約は、「締結」されるまでは、契約ではない。いったん「締結」されたあとでは、「履行」される or 「履行」されない。
ここでは、「締結」と「履行」という言葉だけが意味をなす。
一方、「確定」なんていう言葉は、意味をなさない。その言葉は「締結」を意味しているのか、「履行」を意味しているのか、はっきりしないからだ。
むしろ、その点を曖昧にすることで、概念の混同をもたらしている、と言える。つまり、用語によるペテンだ。
弁護団は、ここを曖昧な用語で混同させることで、犯罪を曖昧にしてゴマ化そうとしている、と言える。論理のペテンで犯罪者を無罪にしようとしているわけだ。まったく、ひどい。(というより、悪賢い。)
で、多くの人は、この点をゴマ化されて、だまされてしまう。かくて「ゴーンは無実だ」なんて言う人が出てくる。だまされやすい人というのは、そういうものだ。(だから私が「だまされるな」と指摘するわけだが。)
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事実はどうか? 調べたところでは、「覚書に会社の最高責任者(= ゴーン)がサインした」という形で、契約は締結されたらしい。ただし、この件については、ゴーン自身は「サインしていない」と否定しているそうだ。
ゴーン容疑者が、退任後に過少記載分の報酬を受け取ることを記した覚書にサインしていたことが28日、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部はこの覚書を入手しており、ゴーン容疑者が過少記載分を報酬と認識していたことを示す重要な証拠とみているもようだ。一方、ゴーン容疑者は覚書の存在を認めた上で「サインはしていない」とし、容疑を否認しているという。
( → ゴーン容疑者 退任後報酬の覚書に署名 過少記載90億円に - 産経 2018.11.28 )
とはいえ、続報によると、その現物があるそうだ。
ゴーン容疑者が退任後に受け取る報酬額を記した覚書は、ゴーン容疑者の最側近の幹部社員が個人で保管していたことが30日、関係者への取材で分かった。覚書は複数の種類があり、ゴーン容疑者のサインがあったほか、幹部社員がサインしたものもあったという。
( → ゴーン容疑者の報酬覚書、最側近幹部が個人で保管 - 産経 2018.11.30 )
整理すると、こうだ。
・ 将来報酬を決めた契約書(覚書)は、存在する。
・ その存在を、ゴーンも認めた。
・ ゴーンは「サインしていない」と言い逃れをした。
(どうせバレっこないと思ったのだろう。)
・ サイン入りの現物が見つかった。
すぐにバレる嘘をつくゴーンもどうかと思うが、ともあれ、契約は締結されている。ただし、まだ履行はされていない。(まだその時期になっていないのだから、履行されていないのは当然だ。)
つまり、契約は、「締結されたが、まだ履行されていない」わけだ。以上が事実だ。
ここには「確定」なんていう用語は出てこない。そんな意味不明な用語の出る幕ではないのだ。
ここをあえて混同させようとする弁護側の論理ペテンに引っかかってはならない。
【 関連サイト 】
本日の朝日新聞の記事。
→ ゴーン前会長が様々な工作指示 報酬隠し、検察主張判明:朝日新聞
一部抜粋。
日産前会長カルロス・ゴーン被告(65)をめぐる役員報酬の虚偽記載事件について、東京地検が公判で立証を予定する内容の全容が判明した。19年間にわたる実際の報酬は計約314億500万円に上るとし、「高額報酬」批判を避けるため、様々な工作を側近に指示したと主張する方針だ。無罪を主張する弁護側は証拠を精査して反論を組み立てる。
(中略)
特捜部は、こうした仕組みは10年度決算から確立したとみて10〜17年度の8年間の有報を立件対象とした。不記載の未払い報酬は計約91億円となった。
ゴーン前会長側は「将来の支払いは確定しておらず、記載義務はない」と無罪を主張するとみられる。これに対して地検は、金融庁が個別開示制度のスタート前に公表した「改正府令等の概要」を根拠に、未払い分の記載義務を証明する方針。