だが、EV(電気自動車)にするべきではないのか?
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燃料電池車を動かすには水素が必要だが、EV(電気自動車)ならば、太陽光発電による電力で済む。地球から水素を補給する必要はなく、月面で太陽光を受けるだけで電気エネルギーを得る。
こういう利点があるから、米国の NASA は EV の探査車を火星では使った。当初、90日で稼働を停止すると予想されていたが、10年間に渡って稼働し続けた。
→ なぜ90日で止まるはずの火星無人探査機は10年間動き続けているのか?
「厳しい環境下で稼働できる技術的な設計と、人知を超えた幸運によって想像もできない長寿を可能にしました」
探査機は、現在までの走行距離は約39kmに達し、17万枚にのぼる写真イメージを地球に送信し続けていますが、カラス氏によると「探査機の10の計器のうち2つは故障しており、ロボットアームは『関節炎』にかかるなど、機体の老朽化が進んでいます」と話しています。
この記事が出たあとで、つい最近になって、探査車は息絶えた。(2019年2月)
米航空宇宙局(NASA)は13日、15年にわたって火星の地表を探査してきた「オポチュニティー」のミッションが終わったと発表した。オポチュニティーは昨年6月に火星を襲った砂嵐で通信が途絶え、12日に最後の接触を試みたが、反応はなかった。
太陽光発電で稼働していたオポチュニティーは、砂嵐で太陽光が遮られたために、昨年6月10日以来、通信が途絶えていた。11月から1月にかけて予想された風も、センサーやパネルの砂を払う助けにはならなかった。NASAでは何度も信号や命令を送って復旧を試みたが、835回以上も送信した復旧命令に応答はなかった。
( → NASAの火星探査機、15年の任務終了 懸命の呼びかけにも応答なし )
こういう実績があるので、探査車は EV にするのが常道だ。ではなぜ、JAXA は燃料電池車を選んだのか?
記事を見よう。
開発を検討するのは「有人与圧ローバ」という探査車。全長が6メートル、幅が5メートル強の大きさで、宇宙服を脱いで過ごせる4畳半ほどの居住空間も備える。FCVの技術を活用し、地球から運んだカートリッジに入った水素と酸素を交換しながら、合計で1万キロメートル以上の月面走行が可能だ。
JAXAの構想では2029〜34年に5回に分けて実施予定の有人探査で、探査車を使いたい考え。
( → トヨタとJAXA、国際宇宙探査で協業 有人探査車開発 :日本経済新聞 )
火星の探査車に比べると、次のことがわかる。
・ 有人である。
・ 大型である。(重量もとても重い。)
・ 走行距離はとても長い。
つまり、相当に大パワーで、エネルギー消費が大きい。これだと、太陽光の電力ではとても足りない、ということなのだろう。
ちなみに、プリウスには「屋根にソーラーパネルを付けた」というタイプの車がある。しかし、これで走れる距離はどれくらいかというと、1日の充電で 2.9km 走れるだけだという。ガソリンで 0.1リットル分ぐらい。
→ 屋根にソーラーパネルを積んだ「プリウスPHV」は夢のあるクルマだ
→ 世界初!プリウスPHV屋根のソーラー充電システムで何キロ走れる?
というわけで、太陽光発電をする方式では、パワー不足になってしまうようだ。特に、有人探査車を使うのであれば、短期間に大量のエネルギーを消費するので、太陽光発電をする方式では力不足なのだろう。
しかし、である。有人でなく無人であれば、話は別だ。無人ならば、長い時間をかけて、少しずつ太陽光のエネルギー(電力)を貯めることができる。したがって、無人探査車(ロボット方式)であれば、太陽光発電の探査車も「あり」だろう。
月面に大型探査車を送るのには、いろいろと技術的な問題がある。
・ 日本はいまだに有人打ち上げに成功していない。
・ 大型の重量物を月面に送るのは、技術的に大変だ。
(大型ロケットの開発などが必要となる。)
これらの問題を解決するには、長い時間がかかる。それよりは、無人探査車でさっさと月面探査をする方がいいだろう。それなら、比較的短期間で実現できる。
というか、中国がそれをやりそうだね。中国が無人探査車で月面探査をやり尽くしたあとで、あとから日本が有人で同じことを調査する……という無駄をやりそうだ。
中国が 2025年ごろに(無人車で)成果を発表したあとで、日本は 2029〜34年に5回に分けて有人探査をするのだろう。10年遅れで。
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数年後に、中国が発表しそうだ。
「わが国は、ロボット技術が優れているので、無人探査車でさっさと月面探査をしました。有人で探査するしかない某国にはできない、素晴らしい成果です」
以下、質疑応答。
記者 「電気自動車では走行距離が短い、という問題は、どうやって解決したんですか?」
当局 「その問題は、Openブログを見て解決しました」
「 Openブログには何て書いてあったんですか?」
「ソーラーパネルを大量に並べたソーラー発電所を作って、そこで充電池に充電しておけばいい、と。これで電力不足の問題は解決しました」
「なるほど。ソーラー発電所ですか。EV ならではですね。燃料電池車には真似のできないことですね」
「いやいや。燃料電池車でも真似ができますよ。ソーラー発電所があれば、その電力を使うことで、燃料電池車の出した水を、電気分解できます。それによって水素と酸素を得ることができます。だから月面上でエネルギーを自給できるんです。いちいち地球から水素と酸素を運ぶ必要はないんです。これもまた、 Openブログに書いてありました。……だけど、これ、内緒にしてね。JAXA とトヨタには教えないでくださいね」
「え、どうしてですか?」
「 Openブログを読んで利口になるのは、中国だけでいいんです。JAXA とトヨタは、馬鹿みたいな真似をして、えっちらこっちらと地球から水素と酸素を運んでいればいいんです。そうやって5年間もかけて、のんびり燃料補給をしていればいいんです。その間に、中国は月面をすっかり探査し尽くして、その情報を内緒に隠しながら、さっさと月面基地を作るんです。そうやって月面を中国の支配下に置くんです。月はすべて中国のもの。そのためにも、Openブログの情報を JAXA とトヨタには教えないでくださいね」
「え。Openブログは、中国の味方なんですか?」
「さあ。知らんけど、たぶん、地球人の味方なんじゃないですか? われわれは地球人だから、地球人としてその成果を利用します」
「で、JAXA とトヨタは、地球人じゃないんですか?」
「さあ。猿なんじゃないの?」
[ 付記1 ]
水の電気分解は可能だが、水素と酸素を液化する( or 圧縮する)のは、面倒かもしれない。それだったら、最初から EV にしておけば、何も問題ない。高密度タイプの充電池を使うのがベストだと思える。(5年もたてば、全固体型の充電池もできるだろう。)
[ 付記2 ]
実は、燃料電池車から出た水は、人間が引用に使うことができそうだ。そこで、こう思ったのかもしれない。
「これはうまい! 一石二鳥だ! どうせ有人の探査機にして、人間のための飲用水を運ぶのであれば、液体の水を運ぶよりは、水素と酸素で運んでから、燃料電池で使った方がいい」
しかし、「これはうまい」と思ったアイデアも、うまくないのだ。なぜか?
たとえ有人探査機であるにしても、そこは閉鎖系なのだから、水が宇宙空間に逃げてしまうわけではない。人間用の水は、回収する形で使えるはずだ。一石二鳥なんてことをしなくても、もともと水は足りているのである。特に外部(の燃料電池)から補給しなくてもいいのだ。
[ 付記4 ]
液体酸素や液体水素は、ボンベの重量がメチャクチャに重たい。これが最大の難点だ。
( ※ その場合、探査車に「燃料切れ」の問題が起きる問題も大きい。)
どうせなら、ただの水のまま運んで、月面で電気分解する方が、ずっと効率的なのだが。
( ※ それなら、電気分解した水は再利用できるから、いちいち地球から運ぶ必要すらもない。)