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引っ越し業界が人手不足で大変だそうだ。そのせいで料金も高騰しているという。
転勤や進学などによる「引っ越しシーズン」が、まもなくピークを迎える。ところが、転居の希望日は集中し、料金も高騰が止まらない。「引っ越し難民」が増えるのは、人手不足の深刻化に社会の変化が追いつかないためだ。
就職のため、3月下旬に東京都から静岡県に単身で転居予定の20代女性は、引っ越し業者の見積もりに驚いた。インターネットのサイトで依頼したところ、40万円を超えていたのだ。
「足元を見られている?」。10万円ほどだと思っていた。結局、宅配便を使った方が安いことが分かり、引っ越し業者への依頼は諦めた。
「大手にとんでもない見積もりを出された。何とかならないか」。軽トラックによる個人運送で単身引っ越しを手がける「赤帽」には今年、そんな依頼が舞い込む。ただ、全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会の担当者は、「対応できるドライバーには限界がある」と、依頼を断るケースも増えているという。
記事の後半では、「宅配便の急増で、業者は人手不足となり、どうにも対処できない」という趣旨の話もある。
人手を確保して事業を拡大するチャンスかというとそう簡単ではない。
力仕事のため、高齢ドライバーには厳しい。依頼主の指示を正確に聞いて作業しなければならず、日本語が未熟な外国人も難しい。
業者の側では、どうにもならないらしい。そこで対処策は、「客の側が、引っ越しの時期を(春以外に)分散させることぐらいだ」という趣旨の話もある。
しかし、学校の進学や進級などの都合で、春以外に引っ越しをするというのは難しい。そうそう業者の都合で人々が動くわけではないのだ。困った。
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どうすればいい? そこで困ったときの Openブログ。
まずは、問題を解きほぐそう。
(1) 高齢者と外国人
高齢者や外国人には無理だ、という話があったが、そうでもない。高齢者や外国人が、一人でやるのは無理だとしても、両者が協力し合えば、可能となる。
・ 運転手と応対は、高齢者
・ 力仕事は、外国人
こういうふうに二人で分担すれば、仕事は可能だ。一人前の仕事にはならないが、普通の人よりも安い給料で働くなら、分担は可能だろう。
例。若い男性ならば時給 2000円だが、高齢者や外国人は時給 1100円ぐらいで働く。
こういうふうにすれば、とりあえずは人手不足は解消する。
(2) 大型トラックからの移転
世の中には大型トラックの運転手というのがたくさんいる。物流を担う人々だ。彼らは、以前は高給を取っていたのだが、今では薄給に喘いでいる。
かつてトラックドライバーは「きついけれど稼げる」というイメージがありました。しかし新規参入や営業区域の規制を緩和する法律が1990年に施行されたのをきっかけに、過当競争が生まれ、運賃が低下しました。現在の平均賃金は、全産業の男性平均賃金の7〜8割程度です。
( → (ニッポンの宿題)物流、未来のために 首藤若菜さん、田中浩也さん:朝日新聞 )
そこで、彼らを引っこ抜いて、引っ越し業界に招けばいい。それでとりあえずは、引っ越し業界の人手不足は解消する。
そうなったら、物流業界では人手不足が発生するかもしれないが、それは仕方ない。薄給過ぎる業界で、人手不足が起こるのは当然だからだ。(自業自得というべきか。)
物流業界では、そこはそこで、きちんと給料を上げればいい。そうすれば、大型トラックの免許を取る若者が増える。それはそれで、業界の運転手不足の問題は解消する。
(3) 給与アップ
実は、引っ越し業界は、給料がものすごく安い。ちょっと調べてみたが、引っ越し業界の求人では、給与額がすごく低い。特に、「引っ越しのサ●イ」という会社は、雇用面で悪評サクサクで、勤めてもすぐにやめる人が多いようだ。
この業界は、あれこれと面倒な仕事をさせるのが普通だ。そのくせ給料は、レストランのバイトと同程度か、それ以下だ。だったら、レストランのバイトの方が、ずっといいだろう。
・ 力仕事がない。
・ 昼と夜の食事時以外は、暇である。
・ 「まかない」として、食事をもらえるので、食費が浮く。
こういうメリットがあるのがレストランだ。それがなくて仕事が大変なのが、引っ越し業界だ。それでいて給料は激安なのだから、こんな業界に人が来るはずがない。
だったら、給料を上げれば、人が来るというものだ。つまり、「給料を上げる」というのが正解だ。大正解だと言える。これで解決が付くはずだ。
結局、引っ越しの料金アップと同時に、労働者の給料も上げることで、問題は解決するのだ。
一方、朝日の記事みたいに、「利用者の側が時期をずらす」というのでは、ブラック業界のブラック状況を放置するのも同然だ。
(4) 需給の変動
別途、うまい方策もある。
「春の時期にだけ需要が急増する」
というのは事実だが、だからといって
「利用者の側が引っ越しの時期をずらす」
というのは、無理筋だ。つまり、需要の側を調整するのは、無理っぽい。
そこで、供給の側を調整すればいい。つまり、
「業者の側が供給体制を変動させる」
というふうにすればいい。具体的には、こうだ。
「春の時期だけ、期間限定のアルバイトを高給で雇用する」
こうすれば、引っ越しの時期だけに対応する労働者が急増するので、問題は解決する。
そもそも、需要は春だけに多いのだから、業者が労働者を通年雇用する必要はないのだ。需要は春だけに多いのなら、供給もまた春だけに多くすればいい。そのためには、「春だけに限定」という期間労働者を高給で雇用すればいい。
これらの労働者は、春だけは引っ越し業界で働いて、他の時期は別の業界で働けばいい。
また、「春だけに働く大学生や高校生」というのも、多くいるだろうから、そういう勤労学生を雇用してもいいだろう。
いずれにせよ、変動する需要に対しては、変動する供給で対応できる。「変動する需要がまずいから、需要の変動をやめてしまえ。そのために社会システムを変えてしまえ」というのは、業者のご都合主義であるにすぎない。そんな大がかりな社会システムの変更をするよりは、単に「給料を少し上げろ」というだけで対処する方が、ずっと賢明であろう。
(5) 結語
朝日の記事では、
「利用者の側が引っ越しの時期をずらすべきだ」
という話があった。
しかし、そもそも、薄給で重労働のブラック業界を放置しておいて、「客の側が配慮しろ」なんて言うのは、筋違いというものだ。それよりは、ブラック業界を是正するのが先だろう。
結局、朝日の記事は、物事の本質を見誤っているから、筋違いの結論になるのだ。
むしろ、経済学的に考えて、「労働者が不足するのは、業界の賃金が低すぎるからだ」という基本に立ち返るべきだ。「価格が低ければ供給不足になる」という「需給曲線」の原理を理解すれば、それで事足りるはずなのだが。
この原理は、中学生の社会科で教わるレベルだ。なのに、朝日の記者にはそれだけの知識が無いようだ。まずは「需給曲線」の原理を理解しましょう。朝日の記者には、そう言っておきたい。
そして、それを理解すれば、「賃金アップで問題は原理的に解決する」とわかるはずだ。
( ※ もちろん、賃金アップにともなって、引っ越しの料金も上がるが、しかしそれは、3〜5割のアップで済むだろう。人件費のアップもその程度だからだ。ひるがえって、賃金アップなしだと、労働者不足のまま、需給が逼迫するので、ピーク時の料金はべらぼうに高くなることもある。これが現状だ。記事では、単身者で 40万円という例が示されていた。)
[ 付記 ]
実は、この問題は、あまり大きな問題ではない。というのは、記事にもあるように、引っ越しの混雑は「3月下旬〜4月上旬」に限られているからだ。
したがって、時期を少しずらして、3月の上・中旬や、4月の中・下旬に引っ越すことにすれば、ピークの時期から はずれることができるので、問題は少なくなる。客としても頼みやすいし、業者としても受けやすい。
具体的には?
「3月の初めごろに、早めに家財を送っておいて、3月いっぱいは元の自宅で過ごす。4月になったら、身一つで転居先に移る。残った若干の荷物は宅配便で送付する」
というふうにするか、
「4月の初めは、転居先には最小限の家財だけを宅配便で送っておいて、そのまま転居先で過ごす。本格的に家財を送るのは4月の中・下旬もする」
というふうにすればいい。
4月の末だったら、もはや黄金週間になるので、そのころにじっくりと引っ越しの片付けなどをしてもいいだろう。(時間があるので、楽になる。)
引っ越しの時期を春から大幅に移す(数カ月もずらす)というのは困難だとしても、1〜3週間ぐらいのズレならば、何とかなるはずだ。机やテレビは使えないとしても、風呂だって料理場だってちゃんと使えるのだから、大きな問題はないはずだ。洗濯機がないのは、コインランドリーで済ませばいい。パソコンも、ノートパソコンで済ませればいい。
ま、ちょっとした旅行のようなものである。ただしその旅行先は、観光地でなく、(新・旧の)自宅であるが。
【 関連サイト 】
利用客の評判はどうか? 雇用面での評判と一致するか? とりあえずは、ググるとわかる。たとえば、
→ 引っ越しのサカイ 評判 - Google 検索
次の評判サイトもある。
→ サカイ引越しセンターの口コミ・評判 | みん評
繁忙期の外国人利用はこれまでも行われていましたが、今年度はトラック、倉庫、現場のリーダーあたりまで不足が生じているようです。
落ち着くまで元の住居と転居先で二重生活を送るのは一つの方策かも知れませんが、共に賃貸だと家賃負担が二世帯分になってしまいます。又、本来空室になってそこへ入居しようとする賃借人が入れなくなってしまいます。あちこちでフン詰まり状態になって身動きできなくなってしまう恐れはないでしょうか。
それを避けようとしたら、引っ越しする人が全員、3月31日に引っ越しをする必要があるが、非現実的。
3月31日に引っ越しをするのでなければ、どっちみち、3月には両方の家賃を払う必要がある。(日割りの割引を受けられるかもしれないが、その程度。)
> 本来空室になってそこへ入居しようとする賃借人が入れなくなってしまいます。あちこちでフン詰まり状態になって身動きできなくなってしまう恐れはないでしょうか。
(1) 新居が3月中に空いているのであれば、もともと空いているところに早めに移転するだけなので、新居の問題はない。現住所には3月いっぱい住むことになりそうなので、現住所では空きが遅くなるという難点は生じるが。
(2) 現住所で空きが遅くなると、4月になるまで空きが出ないので、引っ越しが遅くなってしまう……という人が出てくる。しかしまあ、その程度だ。引っ越しの時期が4月にずれ込むという人が出るだけのことであって、それも1週間で解消する。需給の逼迫が長く続くわけではない。あくまで4月初めにその問題が生じるだけだ。4月5日ごろになれば、何も問題はなくなる。ちょうどそのころ学校も始まるので、大丈夫。
引越し時期は日割計算で精算される地域もあるでしょうから経済的な負担はそれほどでもないかもしれません。
ただ、本文中の、
>4月の末だったら、もはや黄金週間になるので、そのころにじっくりと引っ越しの片付けなどをしてもいいだろう。
ではかなり厳しいのでは。
例えば大学で考えてみると、卒業して空室になった賃貸物件に新入生が入居することで需給の均衡が取れてきた状況では一時的に相当の供給不足に陥ります。逆に上手く吸収できた状況では、沈静後に空室がどっと出てきてしまいます。
不足するトラックはレンタカーで賄うということでしょうか?
ドライバーと引っ越し作業者を、兼用しないで別人にすれば、トラックを休ませることなく 24時間稼働することができます。これで、トラック不足の問題は大幅に減じます。
それでもまだ不足する分は、トラックを一般の物流用や宅配便から転用する。この時期に限り、一般の物流や宅配便などは、運搬が遅くなる。アマゾンで注文しても、翌日配達にはならない。(人やトラックなどのリソースが、引っ越しように割かれてしまうので、その分、他の分野は一時的に疎かになる。)
なぜか? 引っ越し業界だけは、この時期は高料金で、儲かるからだ。価格で調整すれば、自然に最適配分になる。
「引っ越し業者が足りない」と騒ぐ利用者は、高めの金を払えばいい。そうすれば、金を目当てに、働いてくれる人は見つかる。自然にそうなる。
逆に言えば、最適配分にならないのは、価格調整がしっかりしていないからだ。市場原理がうまく働くようにすれば、解決するのだが。
というわけで。「引っ越しのピーク時には、料金も賃金も、ともに上げればいい」となる。
で、高い料金はイヤだ、という客は、時期をずらせばいい。
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かつてトラックドライバーは「きついけれど稼げる」というイメージがありました。しかし新規参入や営業区域の規制を緩和する法律が1990年に施行されたのをきっかけに、過当競争が生まれ、運賃が低下しました。現在の平均賃金は、全産業の男性平均賃金の7〜8割程度です。
>過当競争が生まれ、運賃が低下しました。
とありますが、その後ヤマトの残業代未払い事案、運賃値上げ、ドライバー不足、働き方改革?を経て今に至っているはずです。この挿入部分は現況以前の話では?平均賃金は、依然、7〜8割程度に留まっているのかはよく判りませんけど。
「現在の平均賃金は」と書いてある通り。
以前はもっと悪かったのでしょう。
なお、最近の上昇率は5%ぐらい。たいしたことはない。
トラック運輸産業の賃金実態(http://www.unyuroren.or.jp/home/report/handbook/handbook2018.pdf)
それが、未だに7〜8割程度のままならば、残業代未払いの是正も運賃値上げも影響を及ぼしていない、ことになります。果たして是正はされたのか、又値上げ分は一体どこに振り向けられているのか、判然としません。