2019年03月11日

◆ 自動ブレーキと夜間歩行者

 自動ブレーキの性能テストで、夜間の歩行者への安全性をチェックするようにしたという。
 
 ──
 
 朝日新聞の記事を紹介しよう。
 街灯のない夜道を歩く人にきちんと反応できるか――。国土交通省は今春から、車の衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)の性能評価(自動車アセスメント)にこんな項目を加える。交通死亡事故の約4分の1は夜間に車が人をはねる事故で、その撲滅を目指す。結果は点数化して公表し、メーカーに性能の向上を促す。
 新たに加わる試験は、月明かりの夜道に相当する1ルクス未満の明るさを想定。時速30〜60キロで対向車とすれ違った直後に、対向車の背後から歩行者が飛び出してくる状況で性能をはかる。
 カメラやレーダー、制動機能のほか、ライトにも高度な性能が求められるが、国交省の担当者は「これをクリアできれば間違いなく大きな効果が見込まれる」と話す。高齢運転者の事故抑止も期待される。
( → 夜道で人に反応できる?暗闇での自動ブレーキ性能評価へ:朝日新聞デジタル

 これに関して、論じるべきことが二つある。

 誤報


 まず、この記事は誤報である。記事の内容自体は正しいのだが、一点、時期を間違えている。「今春から加える」のではない。「今冬から加えた」というふうに、過去形の事実となる。
 冬の最終日である 2019.02.28 に、その報告は出た。
  → 2019.02.28 ホンダ インサイトの予防安全性能評価結果を公開しました

 ここでは、テスト結果が公開され、動画も公開された。





 朝日新聞はいったい何を取材したのだろう? 過去と未来の区別も付かないのだろうか? およそ間違えそうもない事実情報なのだが。

 テスト内容


 自動ブレーキの試験だが、これ自体が適切ではない。
 試験は、「対抗車の背後から出てきた歩行者を対象として、それに衝突しないようにする」というものだ。しかし、このような試験は、現実からはハズレている。(現実にはありそうにない状況だ。)

 まず、試験では条件がきわめて甘くなっている。
  ・ 歩行者のそばには、ちょうどうまく街路灯がある。
  ・ 歩行者のズボンは明るい青色である。(目立つ)

 このように好都合な条件は、現実には起こりにくい。交差点以外では街路灯がちょうどうまくあるとは限らないし、また、歩行者のズボンは暗い色であることが多いからだ。
 条件としては、「暗い色のズボンを はいていても、人間の顔や体を赤外線カメラで検知する」というシステムを前提とした方がいい。
 この件は、下記で述べた。
  → 自動運転と赤外線センサー: Open ブログ
 ここには、開発済みのシステムの例が紹介されている。
  → この赤外線カメラシステムは、自動運転技術を改善する
 動画を見るとわかるが、人間は発熱体として検知されるのではない。背景が発熱体として検知され、人間はそのなかで黒い物体として検知される。だから、真っ黒な服を着ていても、十分に検知可能であるわけだ。(見えるものとして検知されるのではなく、見える背景のなかで見えないものとして検知されるからだ。)
 技術的には十分に対処できるのだから、このような事例で試験することが好ましい。できれば、「ライトを点灯していない状態で」テストすることが好ましい。
( ※ 薄暮であれば、ライトを点灯していないことはしばしばある。)

 一方で、試験では、かなり特殊な事例を設定している。
  ・ 横断歩道でもないところを歩行者が歩いている。
   (歩行者自身が違法行為をしている。)
  ・ 歩行者は勝手に、危険な飛び出し行為をしている。

 このようなことは現実には起こりにくい。危険行為をする例外的な歩行者を対象とするよりは、安全な行為をしている常識的な歩行者を対象とするべきだろう。次のように。
  ・ 横断歩道を歩行中の歩行者 (直進路で)
  ・ 自動車が右折した先の横断歩道を歩行中の歩行者


 (1)

 「横断歩道を歩行中の歩行者 (直進路で)」というのは、普通の歩行者だが、これに対して自動ブレーキがきちんと対処できるとは限らない。横断歩道無視で突っ走る自動車もあるし、薄暮で西日に向かっている自動車もある。いずれにしても、事故は起こりやすい。

 「横断歩道無視で突っ走る自動車」というのに対しては、「横断歩道の前では減速する」というようなシステムが必要だろう。(特に住宅街の細い道路では。)

 また、「薄暮で西日に向かっている自動車」というのは、運転者自身がよく見えなくなっているだけでなく、自動ブレーキのカメラもまたよく見えなくなっている。そのせいで事故が多発しやすい。

 似た例で、次のこともある。
 「トンネルの出口に向かっている自動車が、トンネルの出口の光に惑わされて、カメラが認識不能となり、自動車が先行車と衝突する」
 この件は、前にも述べた。
  → 自動ブレーキの不作動: Open ブログ
 一部抜粋しよう。
 トンネル内で走行していると、ずっと先の方に明るい出口があるから、その出口が太陽のようにまぶしくなる。そのせいで、カメラに ハレーション が起こって、認識不能になるようだ。

 同様のことが、西日に向かう自動車でも起こりうる。このような悪条件でも正常にシステムが働くかどうかを、試験するべきだろう。(技術的には困難だが、別に不可能というわけではない。)

 (2)

 「自動車が右折した先の横断歩道を歩行中の歩行者」というのは、前に別項で述べたことがある。
  → 夜に黒服で歩くな: Open ブログ
 ここでは、次の動画を紹介した。



 自動車が右折したら、その先に歩行者がいた。そこでは、青信号で横断歩道を渡っていた歩行者が、自動車に はねられてしまったのである。歩行者は法規上、何の落ち度もないのに。
 このような事例では、自動ブレーキで事故を防ぐことができるだろう。ただし、そのための機能が必要だ。
  ・ カメラおよびヘッドライトが、右折時の広視野に対応する。
   (前方の狭い視野しか対応していないことが多いので。)
  ・ 黒いズボンにも対応する。(少なくとも顔は白っぽい。)
  ・ できれば自動的に速度を落とす。

 こういうことで対処可能なのだから、その対処ができているかどうかを、自動ブレーキの試験でテストするべきだろう。

 ──

 ともあれ、結論としては、「もっとまともな試験にしろ」というふうになる。その詳細は、以上で示した通り。



 【 関連項目 】

 → 自動ブレーキの認定制度: Open ブログ

  ※ 対歩行者や夜間など、自動ブレーキ試験の不備な点を指摘する。

posted by 管理人 at 23:47| Comment(0) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
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