2019年03月02日

◆ 映画は不振 / 漫画は繁栄

 日本では、映画は不振だが、漫画は繁栄している。なぜか?

 ── 

 日本の映画は、観客数は近年では盛り返しているが、それはともかく、作品のレベルがひどい。演技力のないジャニタレみたいなのが出て、下手くそな演技で騒いでいるだけ、というようなものばかりが目に付く……という感じもする。
 これに類することは、下記記事でも話題になっている。とにかく、レベルが低い。
  → 「難病を出すな」「叫ばせるな」「泣けるを宣伝で使うな」邦画業界に守って欲しいルールに共感の声

 これはどうしてか? たぶん、
 「TVドラマ or 漫画を原作として、制作委員会方式で作る」
 という作品が多すぎるせいだろう。こういうのは、作品本位でもないし、監督本位でもない。適当に原作を見つけて、適当にタレントをあてる、という感じで作っている。そこでは、売れることばかりが狙いとなるので、いかにも安直な作品ばかりとなりがちだ。いかにも素人っぽい。

 ではどうしてそうなったか? それは、玄人である映画会社が駄作ばかりを作って失敗したからだ。
 日本では東映や東宝や日活という映画会社が映画を作ってきたが、いずれも失敗続き。日活は大失敗のあげく消滅してしまった。東映や東宝は、そこそこ頑張っているとはいえ、作品のレベルはとても褒められたものではない。

 近年話題になったものと言えば、「シン・ゴジラ」と「君の名は。」だが、いずれも映画会社の自主製作ではない。
 シン・ゴジラは東宝の製作だが、外にある会社の監督を借りてきて作成したものだ。詳しく言うと、監督(総監督)は庵野秀明だが、彼は自分で会社を作って、エヴァンゲリオンを制作してきた。その彼の力を借りることで、東宝はシン・ゴジラを製作した。東宝が作ったというよりは、金を出して庵野秀明に作ってもらったというような感じだ。
 「君の名は。」はもっとひどくて、東宝はあまり関与していない。せいぜい脚本と監修に関与しているぐらいで、製作の大部分は新海誠監督とその関係会社に委ねていた。
 で、それ以外となると、映画会社の独自企画の映画は、ろくなものがない、というありさまだ。(皆無ではないにせよ。)

 ──

 日本の映画はこのように不振だ。(特に作品レベルで。)
 その一方で、すこぶる繁栄している分野がある。それは、漫画だ。また、テレビドラマも同様だ。
 日本のテレビドラマは、アメリカのテレビドラマほど大金をかけているわけではないし、売上高が巨額になるわけでもないのだが、こと作品レベルで見ると、アメリカのテレビドラマに比べて遜色のないものも多い。特に、アメリカのテレビドラマがやたらとサスペンス系のものが多いのに対して、日本のテレビドラマは人情ものが多くて、涙腺に訴えるものが多い。この点では、いかにも文学的であって、アメリカのドラマの水準を大きく超えている。刑事ドラマでさえ、作人の謎解きが主題でありながら、最後は人情でほろりと泣かせるものが多くて、感動を与えてくれる。これはアメリカのドラマとはまったく違っている。

 最近でも、NHK の「トクサツガガガ」が話題となった。
  → トクサツガガガの人気: Open ブログ
  → 最終回 #トクサツガガガ 「好きな気持ちなくならない。きっと僕らはまた会おう」劇中内の特撮『エマージェイソン』が名作すぎる

 これを論じた新聞記事もある。
  → 「トクサツガガガ」作者も特撮オタク 編集者と全面対決:朝日新聞
  → 自分の「好き」は自分で肯定 「トクサツガガガ」漫画作者・丹羽庭:朝日新聞

 この記事を読んで、「なるほど」と膝をたたきたくなる記述を見出した。作者が良かったというよりは、編集者が良かった。もともとは特撮の話を書きたかった作者に対して、駄目出しをして、特撮オタクの話を書くようにさせたのだ。
 自分の「好き」を編集者に認めてもらえなかったのがきっかけで生まれた。(作者の)丹羽は当初、純粋な特撮ものを描きたかったが、「特撮好きな大人なんて聞いたことがない。青年誌の読者はそういう漫画は読まないのでは」と難色を示された。
 丹羽は……「特オタの存在が知られていないのは、周囲に明かせないからだ」と説明した。そこで編集者が特オタに興味を示し、オタクが主人公の物語が生まれたのだという。

 ここでは編集者が、作品の企画をして、作品の骨格を決めた。つまり、編集者がプロデューサーの役割を果たしたことになる。
 作者本人は、自分の当初の提案とはまったく違った形の作品が生まれたので、作品がヒットしても、あまり実感が湧かないようだ。「他人ごとと言ったらなんなんですけど、不思議な感じがしています」と思っているそうだ。(記事による。)

 ──

 以上の二つを対比して、次のように言える。
 「日本の映画産業には、まともなプロデューサーがいないので、失敗続きだ。一方、日本の漫画産業には、編集者が助言して、編集者がまともなプロデューサーとして機能している。そのおかげで、ヒット作が続出する」

 漫画産業と同じことは、テレビドラマ産業にも当てはまりそうだ。テレビドラマ界には、結構優秀なプロデューサーが多いようだ。だから近年のドラマは、出来の良いものが多い。

 ちなみに、フジテレビでは、往年の名作ドラマというのを、ときどき放送している。たとえば、
  ・ 東京ラブストーリー (織田裕二主演)
  ・ ヒーロー (キムタク主演)
 などだ。これらは当時、圧倒的に高い視聴率を取って、世間では大きな話題になった。ブームと言えるほどだった。
 しかるに、現在の時点で見直すと、「いかにも稚拙」という感じがしなくもない。脚本レベルでも、演技レベルでも、演出レベルでも、現在のテレビドラマの水準から見ると、かなりレベルが低いことがわかる。
 つまり、この 20〜30年ぐらいで、テレビドラマの作品水準は、大幅に向上したのだ。それだけ人材が集まっているとも言えるし、人材を生かすシステムができているとも言える。

 その一方で、映画専門の監督による映画作品では、昔のままの映画作法を守っていて、いかにも退屈なものが多い。テレビドラマの分野での進歩の影響が及んでいないようだ。



 [ 付記 ]
 映画会社でなくテレビ局主導の作品で、大失敗した例がある。「アマルフィ 女神の報酬」という作品だ。
 「フジテレビの映画で過去最高額の製作費が投じられた」と舞台挨拶で大多プロデューサーが発言し、2006年に製作された映画『大奥』の25億円を上回ることを明らかにした。主題歌にサラ・ブライトマンの「Time To Say Goodbye」を起用し、劇中にも出演して同歌を歌わせたり、NTTドコモを巻き込んだ大規模な宣伝を行ない、配給の東宝は当初50億円は見込めると発表していた

 とのことだが、製作は途中で分解するありさまだし、作品の出来映えは失敗作と言えるものだった。
 過剰な宣伝のおかげで、とりあえずは多くの興収を得たようだが、興収の半分ぐらいは映画館に行くことを考えると、黒字になったかは疑わしい。
 要するに、「過去最高額の製作費」をかけても、失敗作を生み出すような体質があるようだ。
 このときのプロデューサーは、かつてフジテレビでヒット作を連発した大多亮だ。それで失敗したとなると、
 「年を食った大物プロデューサーが大作を手がけて、大失敗する」
 というのが、この業界における法則なのかもしれない。

 一方、若手が存分に腕を振るえるような環境では、ヒット作が続出するのかもしれない。

 思えば、日本の映画界のプロデューサーは、「おれが一番偉いんだ」とふんぞりかえっている人が多い。一方で、「プロデューサーの仕事は、実際に作品を作る人たちが働きやすくする環境を整えることだ」と言って、謙虚にふるまう人もいる。こういう人がプロデューサーになると、成功するようだ。(日本の映画界には少ないが。)

 ちなみに、私が理想とするプロデューサーは、デヴィッド・O・セルズニック だ。(代表作は、下記。)
  → デヴィッド・O・セルズニック - Wikipedia
 


 [ 余談 ]
 セルズニックのプロデュースした作品は、驚くほどの傑作ぞろいだが、これは偶然ではない。彼が作品にうるさく口出しして、実質的に監督との二人三脚で作成した共同制作の作品になっているからだ。ヒッチコックは『レベッカ』について「あれ(アカデミー賞作品賞)はセルズニックに与えられた賞だ」と述べたほどである。
 ただしうるさく口出しする方針が嫌われて、監督からも俳優からも疎んじられるようになり、契約を拒まれ、ろくに制作もできなくなるハメになった。最後には多額の負債を抱えて破産寸前にまでなり、精神科医にかかった事もあった。
 輝かしい光と陰の二重性に満ちた人生を送った彼は、映画世界の天才だと言える。当時の彼は誰からも嫌われたのかもしれないが、彼の残した作品は燦然と輝いて今日まで残っている。
posted by 管理人 at 23:58| Comment(3) | 一般(雑学)5 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
渋いですね 管理人さんのイメージ セルズニック で更新されました

 日本のプロデューサーはヤクザとの関わり避けることが難しいですから 
Posted by k at 2019年03月03日 08:48
 最後に [ 余談 ] を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2019年03月03日 09:55
日活等の映画会社は駄作ばかり作っていたのですか…?
自分はほぼ洋画しか観ないので邦画が、今のようなひどい状況になったのか知りたいです。
Posted by 七氏 at 2019年03月13日 02:41
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