2019年02月21日

◆ はり治療の科学(ガッテン)

 NHK のガッテンで、はり治療(鍼灸)について科学的に解明していた。驚くべき事実。

 ──

 鍼灸(はり治療)については「効果がある」いう体験者の声が多くある一方で、「鍼灸なんて非科学的だ」と否定する科学者も多い。特に、いわゆるトンデモマニアとかニセ科学マニアとかは、「鍼灸なんて迷信だ」「ただのプラセボ効果にすぎない」などと、頭ごなしに否定する。
 彼らは普段は、「エビデンスを出せ」と口々に言うのだが、いざエビデンスを出すと(鍼灸の体験者が「有効だった」という体験を示すと)、とたんにそのエビデンスを頭ごなしに否定する。
 ま、非科学の極みですね。「西洋科学は万能」「西洋科学以外は無効」と信じる宗教みたいなものだ。(「科学教」ですかね。「幸福の科学」みたいなものか。)

 こういう風潮に対して、私は、次のように述べた。
 「東洋医学は、効果に個人差がある。効果がある人もいるし、効果がない人もいる。そこで、効果のある人だけが実行すればいい。これなら、効果は 100% なので、どんな西洋医学よりも有効だ」

 これは、次のような態度を否定している。
 プラセボ効果。これは別に代替医療に限らず、標準医療であっても判断を誤る原因となる。だからこそ、二重盲検法などのしっかりとした臨床試験が必要なのだ。
( → 「代替医療のトリック」 - NATROMのブログ

 二重盲検法は、対象者が無差別的に選定される。それは、西洋医学で「薬剤が有効であるか否か」を知るためには有効だ。しかるに、東洋医学は、対象者が無差別的に選定されることはない。あくまで個別に選ばれる。(原則的には、個人の体質差である「証」で区別される。)
 だから、東洋医学における(個人別の)効果を判定するには、西洋医学における(無差別的な)効果を判定する方法は、不適切なのだ。この違いを理解しないのが、ニセ科学批判者であった。
 以上のことは、私が前に指摘した。(上記ではごく簡単に説明したが、詳しい説明を知りたければ下記を読んでほしい。)
  → ツボと鍼灸: Open ブログ
  → 鍼と漢方薬の例: Open ブログ
  → 鍼灸はトンデモ?: Open ブログ
  → 医学は科学か?: Open ブログ

 ただし、私が以上に述べたことは、あくまで経験談や体験談に基づくものだ。西洋科学の方法(機械による細胞レベルでの測定)によって判明したことではない。
 ところが今回、NHK のガッテンが、その科学的な解明をなしてしまった。ただし、NHK が独自にやったのではなくて、最近の(鍼灸の分野の)科学的発展にともなって解明されたことを、「最先端の科学」という形で紹介している。

 ──

 番組の内容を紹介しよう。以下、要旨。

 (1) 鍼灸というものは、「効果あり」という体験者もいるが、一方で、信じない人もいる。(信じないという人は、実際に体験して否定したのではなく、聞きかじりで否定する。)

 (2) 体験者の声を聞くと、「効果あり」という人もいるが、「あまり効果なし」という人もいる。つまり、個人差がある。
 番組では、たまたま行った鍼灸院で見た患者が、ハリをちょっと打っただけで、状況が劇的に改善した。目の前でそういう例があった。(つまり、肯定的なエビデンスがあった。)
 
 (3) 大事なのは、ツボの位置だ。これについては、国際的な標準化がなされた。この件は、本サイトでも述べたことがある。
  → ツボと鍼灸: Open ブログ

 (4) ツボの位置は決まっているが、ツボの有無は決まっていない。ツボの有無は、人それぞれだ。(つまり、個別的だ。) 健康な人では、ツボがないが、不健康な人には、特有のツボが生じる。
( ※ ツボの数は 361箇所もあるが、どのツボがあるかは、人それぞれだ。そのツボがすべてある[できている]ような人は、万病にかかっているのも同然で、体調が最悪なので、死んでいるはずだという。つまり、そんな人はおらんで。)

 (5) ツボとは何か? 疲労などで筋肉が凝ると、その部分で血流が悪くなり、筋肉を覆う筋膜が剥離してシワ状になる。一種の病気状態だ。
 そこで、皮膚表面から鍼を深く刺して、体内のその部分に突き刺すと、その部分が刺激を受けて、血流がよくなる。そのおかげで、剥離した筋膜が元に戻って、健康状態になる。さらに、筋膜だけでなく筋肉も健康状態になる。こうして問題が解決する。
 これをエコー(超音波画像診断)で見ると、悪化していた筋膜の状態が改善されることがはっきりと見て取れる。つまり、鍼による治療効果が科学的に判明する。(悪化を示す白線の有無という形で。)
 こうして、鍼による治療効果が、科学的に解明された。

 ──

 番組ではさらに、次の疑問を扱った。
 「鍼による治療効果が出る部分と、鍼を指す場所とが、遠く離れていることがある。これはどうしてか?」

 たとえば、掌に鍼を刺すことで、心臓への効果が出る。
 また、足に鍼を刺すことで、子宮内への効果が出る。(番組では、逆子を直す治療が鍼でなされていた。西洋医学では、逆子には帝王切開するしかないらしいが、東洋医学では、鍼を刺すだけで逆子を直すことができるという。
( ※ 常に可能だというわけではないが、可能であることが多い。仮に失敗しても、単に効果がないだけであって、被害は何もないので、低リスクである。)

 これに対しては、「決定的な回答はないが、説明する仮説はいろいろと考えられるようになった。今は科学的に解明することを研究している途上だ」ということらしい。
 例では、次のように説明されていた。
 「足と子宮とは、同じ神経(脊髄)で結ばれているので、その神経を通じで、神経の末端同士で相互に影響が起こる」
 図で示すと、 Y という文字の一番下に脳があり、左上と右上には、足と子宮がある。「脳から足へ」「脳から子宮へ」という神経の作用はすでに知られていたが、それとは別に、「足と子宮で」という形で結びつきがあるらしい。支線(の末端)同士が影響しあう、という形で。……そういう仮説があるそうだ。(未証明)

 また、首の後ろから足首まで、ツボの通じる道が走っているそうだが、その道は、ちょうど筋膜がつながっている道と同じ場所にあるという。そのことから、ツボとは筋膜と密接な関係がある、とも推定されているそうだ。(未証明)

 ともあれ、こういうふうに、少しずつ科学的に解明されつつある。人体というのは、非常に複雑に絡み合っている(相互作用がある)ものなので、それぞれの各部分を単純に独立的に分析すればそれで済むというようなものではないらしい。
 西洋医学は、20世紀の遅れた科学を基盤として、自分たちの知っている範囲で理解するだけだった。それは東洋医学を理解できなかった。その上で、「自分たちの理解できないものは存在しない」というふうにして、東洋医学を否定してきた。
 しかし、21世紀になると、科学の発達にともなって、東洋医学が少しずつ科学的に解明されるようになってきたのだ。そのことで、これまでの未発達な西洋医学の限界が、しだいに暴露されてきたと言えるだろう。
 それが、最先端の科学の成果だ。NHK はそれを紹介した。



 [ 付記1 ]
 西洋医学の限界という点では、NHK の「メッセージ物質」を扱う医学特集の番組(シリーズ)も興味深い。
 体内の各部がたがいに情報を伝達し合って複雑なシステムとして機能している……という新事実を報道している。
 これは、「脳が体の各部を支配する」という従来の西洋医学の味方を根本的に覆すもので、画期的な視点であるそうだ。iPS細胞で有名な山中伸弥さんが、番組のコメンテーターとして解説していた。
  → NHKスペシャル「人体」 命を支える“神秘の巨大ネットワーク” | NHK健康チャンネル

 人体というのはこのように複雑でシステマティックなものなのだ。しかるに今の西洋医学は、「なるべく細かく分割して分析する」というような、小さな視点の見方に慣れてしまっている。そこで、最新の科学には追いつけない医学関係者が多いようだ。
 一方、東洋医学(中国医学)は、人体の総合的な調子を調整する方法を、何百年も前から知っていたのだ。科学ではなく、経験によって。

 [ 付記2 ]
 番組の最後では、「 5000年前の人類(アイスマン)も、ツボを知っていた(らしい)。刺青でそれがわかる」という話も出ていた。
  → [ガッテン! 【「慢性痛しびれが改善!逆子も治る!?東洋の神秘“はり治療”SP」】 - gooテレビ番組(関西版)

 何百年どころか何千年も前から、その知識はあったわけだ。西洋医学はようやく、そこに追いつきつつある。(つまり、何千年も前の知識に追いつく。)



 【 関連サイト 】

 → 慢性痛しびれが改善!逆子も治る!?東洋の神秘「はり治療」SP - NHK ガッテン!(公式)
 → 「ためしてガッテン」で検証していた「針治療の効果」についてのまとめと感想 ? 壊れた大人のマインドノート
 → 【ガッテン】「ツボ」は本当に存在する! はり治療の効果と東洋医学の科学的根拠… 知られざる歴史も!

 いずれも、たいしたことは書いてないですね。
 本記事( Openブログのこの記事)の方がずっと詳しい。

 と思ったのだが、新たに、次の記事が公開された。これは詳しい解説。
  → 【内容まとめ】ガッテン慢性痛しびれが改善!逆子も治る!?東洋の神秘「はり治療」SP



 【 関連項目 】
 前々項も参照のこと。鍼で肩こりを治すという話がある。
  → 肩こり・首こり(ガッテン): Open ブログ
posted by 管理人 at 20:22| Comment(5) | 医学・薬学 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
鍼灸行為そのものに懐疑的ということもあるのでしょうが、施術者の信頼性という部分も鍼灸に対する印象を左右するような気がします。

番組中、”「慢性的な痛み」が主な症状で、医師が必要と判断したものについては、保険が適用できる場合があります。”
とありますが、どの程度の医師が鍼灸への同意書を出してくれるのか、気になるところです。

鍼灸の効果を認めた医師が紹介状を出す鍼灸院ならばある程度信頼性が担保されていると考えられますが、ただ、果たしてそういった医師は容易に見つかるものなのだろうか、と。
Posted by 作業員 at 2019年02月21日 22:35
> どの程度の医師が鍼灸への同意書を出してくれるのか

 番組では言及が不十分だと思えました。上記のような誤解が生じそうだと思えました。

 医師が必要と認めるかどうかは、医師の裁量しだいだ、というふうに受け止められそうですが、違います。正しくは、
 「それが正式に病気であると認定されて、その病気への治療法として鍼灸が有効であると認定される場合」
 に限定されるはずです。
 したがって、単に「痛みの軽減」ぐらいのことでは、まず認定されないでしょう。そのくらいのことなら、たいていの人が利用できてしまいますから。
 
 認定されるには、手足がまともに動かないというふうに、はっきりとした病気であると認定される場合に限定されそうです。
 番組の冒頭では、首がまともに動かないという患者が出ましたが、この人なら、大丈夫かも。この人の場合、あれこれと西洋医学を試すより、ハリ一発で治療する方が、コストも安くなりそうだから、認めてもよさそうですね。(ただし、ダメかも。境界線という感じ。)
 単に痛みが出るから、というぐらいでは、ダメでしょう。
 
 実際の判断は、医師の認定しだいとなります。ただしそれは、医師の気分次第ということではなくて、医学的に鍼灸の効果があるかどうか、という事実によるはずです。
 その意味でも、実際に医師の意見を聞いてみるしかありません。ただし、医師の気分次第というわけではないので、医師を代えれば判断も異なる、というふうにはならないでしょう。たいていの医師で、同等の認定となるはずです。
Posted by 管理人 at 2019年02月21日 23:06
>「それが正式に病気であると認定されて、その病気への治療法として鍼灸が有効であると認定される場合」

となると、ハードルの高さは否めないかも。詳しくはありませんが、交通事故によるムチウチ症、腰痛、膝痛では検査に異常がなくとも痛みが続くこともあるようです。こういった場合では同意は得られないことになります。

>たいていの医師で、同等の認定となるはずです。

東洋医学への評価が医師によってかなり差があるような印象を持っています。それこそ理解のある医師からアンチ東洋医学という医師もいるのではと。

西洋医学に携わる医師は、総じて東洋医学を認めているものなのでしょうか、よく判りません。
Posted by 作業員 at 2019年02月22日 00:02
 鍼灸の原理は、凝り固まった筋肉の緩和なので、それが原因となるような症状であれば、鍼灸が有効です。(検査はあまり関係ありません。)

> 交通事故によるムチウチ症、腰痛、

 これらは鍼灸が有効である場合がかなり多くあります。事例しだい。
  http://j.mp/2BMEk4h

 膝痛は、ちょっと違って、「場合によっては」となるでしょう。これも事例しだい。
  http://j.mp/2BOXeaK
Posted by 管理人 at 2019年02月22日 06:32
二重盲検法というのは医師も患者もどちらが本当の薬かを知らずに投与する方法ですが、少し考えればわかるように、鍼灸のような物理療法では、術者も患者も知らずに打つというのは不可能です。これは二重盲検法側の問題であって、鍼灸の問題ではありません。
また、近年は不完全ながら偽針という技術があり、これを使ったエビデンスも出てきています。
遠くに効果が出ることに関しては、例えば眼心臓反射のような現象は西洋医学でもすでに知られており、神経の反射反応を経験的に体系化していると考えればなんの不思議もないですね。
Posted by さまりあ at 2019年02月25日 13:15
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