2019年02月12日

◆ くら寿司と児童相談所の問題

 くら寿司の問題と、児童相談所の問題は、どちらも低賃金労働が原因となっている。(労務体制に問題がある。)

 ──

 くら寿司の問題については、前項で述べたとおり。(低賃金労働のせいで、低レベルの労働者を排除できない、ということ。特に、最低レベルの賃金であるせいで、最低レベルの労働者が来てしまう、ということ。)

 一方、児童相談所(児相)の問題も、低賃金労働が問題となっている。

 ──

 朝日新聞ではここのところ、小4女児の虐待死について、児相の問題を何度も指摘している。「児相はこれほどにも仕事をしていなかった。対処が不適切だった」という指摘だ。
 まあ、それはそうなんだが、その批判の矛先が児相自体に向いているのが不適切だ。なぜなら、その根源である「人手不足」という問題をまったく理解できていないからだ。

 児相の場合には、個々人の賃金が低すぎるというよりは、この部門の全体の賃金総額が低すぎる。そのせいで、二重の意味で労働力が低下している。
  ・ 人数が少ない (人手不足)
  ・ 正規職員が少ない(契約社員が多い)


 前者の問題(人手不足)は、しばしば指摘されている。
  → 20年間で児童虐待の相談は70倍増。(森山 誉恵)
  → 児童福祉司が足りない日本
  → 児童虐待の相談件数が急増、人手や予算の不足も。 -シノドス
  → 児童福祉司増員決定!児童相談所の現実!人手不足と過酷な業務。

 後者の問題(契約社員が多い)は、求人広告を見ればわかる。契約社員は「任期付職員」という言葉で募集される。
  → 平成30年度 【児童心理司】東京都一般任期付職員の募集について 東京都福祉保健局
 一部抜粋しよう。
 勤務実績が良好である場合は任期を更新することがあります(任期は最長で通算5年)。なお、期間を定めた任用であり、平成34年4月1日以降の任用を保障するものではありません。

 5年雇用したら解雇だ。これは先に「契約社員の雇い止め」ということで話題になったばかり。ともあれ、このせいで、継続して専門性を発揮することができない。これは職員の専門性を否定していることになるので、能力低下をもたらすわけだ。

 その一方で、次の事情がある。
 「児童相談所に配属される児童福祉司は、高い専門性とスキルが求められる」

 このことは、ググればわかる。
  → Google 検索

 こういうふうに高度な人材が求められているのに、現実には契約社員で間に合わせて、薄給の人材で対処する。それでいて、「児相の仕事が不十分だ」などと朝日新聞は批判する。
 何を言っているんだ。高度な仕事を望むのならば、高度な人材を招くべきだ。それには高給を払うことが必要だ。
 なのに現実には、薄給の契約社員で済ませる。十分なスキルを蓄積する経験を与えることもなく、短期間で職場を交代させる。給料的には低レベルの仕事を求めているだけなのに、実際の仕事は最高レベルの仕事を要求する。で、それができないと、批判する。
 朝日新聞は、こんなことを書くくらいなら、自社の記者をすべて契約社員にしてしまえばいいのだ。時給 1200円ぐらいにする。また、専門性を積むだけの経験も与えず、1年ぐらいで、あちこちの部署を転籍させればいいのだ。そうした上で、まともな記事が書けなかったら、「記者が悪い」と労働者の批判をすればいいのだ。(経営者ではなくて。)

 ──

 ともあれ、児相の問題の根源は、人手不足と給料不足の双方にある。これがいかにひどいかは、先にリンクした記事だけでは不足だ。職員による内部告発(暴露)が必要だ。それは、下記にある。
  → 今だからこそ児童相談所の現状を知ってほしい。お願いします。

 これを読んで、児相の実状を理解してもらいたいものだ。特に、児相の責任ばかりをあげつらう朝日新聞は。自分たちがいかに現実を知らないか、よく知って、反省してほしいものだ。

 ──

 なお、一部抜粋すると、下記の通り。
・児童相談所の一時保護所は常に定員オーバー(全国ほとんど)
・なぜ定員オーバーか→児童養護施設の空きがない、相談件数が増加しているのに規模が拡大していない。
・一時保護所なのにみんな長期入所になってしまう。緊急保護の受け入れ体制を確保するために、長期の子はできるだけ家庭に帰すことがあった。
・児童福祉司はみんな月80時間以上残業して勤務時間外に研修を受けさせられたりしていた。
・一人の職員が100人違い児童を担当することがよくあり、訪問や連絡の頻度も限界があった。
・虐待だけではなく、発達や障害、非行、育児相談なと様々な相談に乗っている
・新卒の若い子はみんな使命感を持って入職してくる。大学で福祉を学び、資格も取り、児童相談所で働くことを希望して採用試験を受けた人ばかり。そんな子が半年でうつ病になり休職してしまったりする。

現場は限界

 これを読んでもまだ児相の職員を批判するようなら、人でなしだね。それはいわば、東大卒美人社員を過労死させた、電通みたいなものだ。今の朝日新聞は、こういう電通と同じような体質になってしまったようだ。



 [ 付記 ]
 朝日新聞の悪口を書いたが、ちょっと度が過ぎたようだ。朝日新聞の社員に、どうしようもない悪意や愚かさがあるわけではない。彼らはたぶん、「きちんと仕事をしていない政府を批判する」というつもりで書いているのだろう。つまり、一種の政府批判であり、権力批判だ。
 しかし児相の問題は、「政府がサボっている」というような問題ではないのだ。むしろ逆に「政府職員が忙しすぎる」という問題なのだ。
 この現実を、朝日は理解していない。知識が圧倒的に不足している。そこで、その知識を提供するのが、本サイトだ。

posted by 管理人 at 19:40| Comment(12) | 一般(雑学)5 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 高給の正規職員を確保できたら全てがうまく収まるわけではありません。高級な正規職員と嘱託、パート(都合のいい時間働ける人)、地域の互酬性(経済学の解釈で)の機能中で動いている人をどのくらいの割合でチームを組めば一番経費効率がよく機能できるかを誰も考えていない。
 嘱託、パートが悪のわけではない。その基準で働きたい人は現実の社会の中で沢山いる。嘱託、パートがいなくなれば、排除すれば、社会は幸福になるなんていうことはない。
 誰しもが高い労働価値を認めてもらいたいのは当然でしょうが。
Posted by 32年前は現役 at 2019年02月13日 02:08
> いなくなれば、排除すれば

 「嘱託、パートをクビにしろ」と言っているのではない。「契約社員を正社員にしろ」という趣旨です。働く時間はパートでなくフルタイム。ただし数年後にクビになるということがない、というだけ。給料も高くなる。

 あなたの主張だと、「人は、給料が下がって、クビになると、幸福になる」ということだが、そんなマゾな人はいないでしょう。
 
 なお、児相において嘱託、パートの比率は、ごく少数です。最下級の事務職員・補助要員だから、ごく少数。必要なのは、児相の仕事をする人(子供や親に会う人)であって、事務・補助の仕事をする人ではありません。特別な資格をもって、高度な仕事をする専門家が、不足しているんです。
Posted by 管理人 at 2019年02月13日 07:18
 福祉の世界は事がそう単純ではない。
 看護師・ケアマネ・社会福祉士等の福祉の専門的な仕事をできる人の中には、8時間丸々ではなく短時間なら働いていいという人が相当数いるのです。
 児童福祉士も同様ではないかと考えています。
 社会福祉士でさえ、ヘルパー程度に賃金がよくなったのは最近です(公務員で社会福祉士資格の人が増えたから)。
Posted by 32年前は現役 at 2019年02月16日 09:47
> 8時間丸々ではなく短時間なら働いていいという人が相当数いるのです。

 根本的に誤解していますよ。

 (1) 人手不足は起こっているが、応募者が足りないわけではない。フルタイムの職の応募者は、十分に足りている。だから、あえて質の悪いパートタイマーを雇う必要はない。
 パートタイマーを雇うのはいわば、「自動車の設計技術者をパートタイマーにすれば人件費を下げられる」というような発想だ。質の悪化を招いて、会社が倒産しそうだ。

 (2) 今問題になっている契約社員は、パートタイマーではなくて、フルタイム。ただし契約年限が5年なので、5年で解雇される。そのせいで質の劣化を招いている。かくて今回のように、「正職員の足りない児相が判断を間違えて、児童が虐待死した」というような問題が起こる。
 「児相職員の働きが悪いせいで虐待死が起こった。虐待死をなくそう」
 とみんなが議論しているときに、あなた一人が「児相の人件費を下げよう。虐待死をなくすことよりも、人件費を減らすことが大切だ」と主張する。それが「正職員よりもパートの方がいい」という主張。子供の生命のことなんか、まるきり考えていない。
 コストカットのことばかり考えて、質の低下を招いたゴーンみたいだ。

 前にも述べたが、ただの事務職ならば、パートでも勤まるので、パートでもいい。しかし、高度な専門知識を必要とする専門職では、フルタイムの正職員を雇用するしかないのだ。
 それを拒めば、くら寿司みたいに「労働者の質の劣化のせいで業務がおかしくなる」という問題が発生する。
 これが本項のテーマだ。きちんと読んでください。
Posted by 管理人 at 2019年02月16日 10:31
 あなたはパートタイマーを一括りに考えています。福祉の世界では1日の内の忙しい時間4時間程度の括りで時間単価(時給2〜3千円)パートを雇い入れます.
 行政側は8時間で雇い入れなさいと指導をする。結果、時給950円で8時間拘束の嘱託職員になります。労働者側からは"自由な時間で1日4〜6時間程度の時給の高い仕事の方がいい"ですが、介護労働安全関連の雇用統計の仕組みは8時間換算の低賃金の統計値しか出さない。
Posted by 32年前は現役 at 2019年02月16日 11:14
> 福祉の世界では

 だから、福祉の世界の話じゃない。高度な専門職の話。自動車で言えば、工場作業員じゃなくて、自動車設計者みたいな高度専門職。
 工場作業員なら、パートでいいですよ。
 だけど、自動車設計者を「時給950円で8時間拘束の嘱託職員」なんかにしたら、ボロボロの設計になるでしょ。そういう話。

 本項のテーマを理解して、本項を最初から読み直してください。あなたは本項とは全然関係のない話をしている。話の分野がまったく違う。
Posted by 管理人 at 2019年02月16日 11:47
 怒らないでください。
 ベストはフルタイムの正職員でしょうが、現実的に社会保障関連の専門職員にそれほど手厚く各自治体が対応するとは思えません。1割の緊急で高度な専門領域の対応が滞るのは、軽度の9割の対応に追われているからです。国連からあんな言われようしているのに・・・。子供たちの命を守る現実的なベターな考えだと思っています。私自身、児相、子供女性センターには、仕事柄足を踏み入れていて、傍から見ていて、正規職員と虐待されている子供達、DVを受けている母親の緊急避難と少しかかわっています。起こるべくして起こっています。
Posted by 32年前は現役 at 2019年02月16日 19:44
 どうしても賃下げしたければ、現状のように契約社員にして、5年後に首切り、という形が次善でしょう。
 パートタイマーで賃下げ、というのは、ありえそうにない。
 たとえば、フルタイムで月給 20万円なら、あるかもしれない。しかしパートタイムで 月給 10万円では、暮らしていけないでしょう。たとえ子育て後の復旧ママだとしても。
 高度専門職でパートタイマーというのは、ほとんど考えられません。あるとすれば、親の介護が必要な人ぐらいかな。
Posted by 管理人 at 2019年02月16日 19:58
経費効率=賃下げではありませんよ。
今の2倍の予算枠の中で児相が一番機能する形を考えています。時間2千5百円でも半日働いて月20万円の収入で子育て中、後の女性の専門職の労働ニーズは結構あります。問題の本質は、訪問・相談系の繁閑の激しい仕事の管理を工場の労働者のように均質に働いている行政事務・財政部門が理解しようとしていないということではないかな。
Posted by 32年前は現役 at 2019年02月16日 21:44
> 時間2千5百円

 それだけ出すんだったら、契約職員や正規職員にした方が、役所も本人もハッピーですよ。あえてパートにする理由がない。
 経営原理は、「雇う人数を減らして、残業を多くする」というのが、最も効率的です。パートを増やすと、非効率になって、経営的には無駄な出費が増えます。経営者がやりたがらない。
 たとえば、現在の正規職員をすべて半休のパートにしたら、建物も机も設備も、すべてを倍増する必要がある。(人員が倍になるから。)
 そんなことをしたらコスト高なので、無理。

> 労働ニーズは結構あります。

 そりゃ労働ニーズはありますよ。労働者にとっては有利なんだから。
 しかし経営者の側がイヤがる。パートにするなら、時給を最賃ぐらいに下げるのでなくては、やっていられない。

 前にも言ったが、労働者が足りないわけじゃない。求人が足りないんだ。なのにあなたは「労働者不足への対策」ばかりを言っている。話の方向が正反対(見当違い)だ。
 私 「政府の募集人数が不足している。募集人数を増やせ」
 あなた「労働者不足の問題は、パートタイマーで解決できます」
 まったく見当違いのことを言っている。需要不足を問題視しているときに、供給不足への解決策を出している。トンチンカン。

Posted by 管理人 at 2019年02月16日 22:21
> 訪問・相談系の繁閑の激しい仕事

 あなたはもしかして、それを理由に「忙しいときだけパートタイマーに任せればいい」と思っているのかもしれませんが、根本的な誤解です。
 繁閑などはありません。常に「過剰に忙しい」状態です。そもそも相談という実務以外に、書類作成や、児童の心配や、対応策の計画など、じっくり考える時間も必要です。
 児相は仕事量が過大で、過労による疲労やうつ病や能率低下が蔓延しています。その悪影響で、正常な判断ができなくなり、虐待死も発生する。
 「暇なときに遊んでいる人員の分を削減するには、可変的なパートタイマーにすればいい」
 という発想そのものが根源的におかしい。そんなことしていたら、虐待死の問題はいつまでたっても解決しません。
 この問題は人員を圧倒的に増やすこと以外には解決策はない。
Posted by 管理人 at 2019年02月17日 08:42
"人員を圧倒的に増やすこと以外には解決策はない。その通りだと思います。あなたの意見が通れば本当にベストの児相になります。
 しかし、もう10年以上も虐待死、担当件数の異常さにもかかわらずこの状態です。労働ニーズも経営者側からではなく、労働者側からのニーズです。
 児童福祉士も自治体側からは、3年で交代すればよい高度専門職とは考えていない状態です。生保の社福主任主事と同じです。
 今の現実的なチーム(児童福祉士が機能する最良の形態)を考えています。もちろんベストではない。単位時間に圧倒的な人員を投入できる形態で労働負荷が労働者に掛からないベターな方式です。仕事の種類別に最適な職種で機能させる方式です。派遣法ができる時だって高度な専門的な仕事を、当時、想定していました。余談ですが。
Posted by 32年前は現役 at 2019年02月19日 01:28
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