2019年02月07日

◆ 横浜の給食弁当(ハマ弁)の失敗

 横浜の給食弁当(ハマ弁)は失敗したが、鎌倉の給食弁当は好評だ。同じ業者なのに、どうしてか?

 ──

 横浜の給食弁当(ハマ弁)というものがある。給食のない横浜市で、給食のかわりになるものとして、給食弁当を外部から持ち込む形で導入した。味もいいそうだ。
  → ハマ弁オフィシャルサイト
  → 横浜市 鶴見区 ハマ弁の美味しさに一同ビックリ!

 しかしこれは失敗した。利用率が2%前後しかない。そのせいで1食あたりの補助金額が6千円にもなるそうだ。
  → 給食かわり「ハマ弁」1食に市費6千円 横浜、16年度:朝日新聞
  → ハマ弁値下げでも利用低迷 使い勝手悪く、多額の公費投入|カナロコ

 利用者が少なすぎるせいで、廃棄も多いそうだ。
  → 東京新聞:「ハマ弁」苦戦続く 想定利用者数に届かず、廃棄も多く

 あまりにもひどいので、これを給食専門家が分析した。
  → 元給食営業マンが話題の1食6000円の高すぎる学校弁当「ハマ弁」を考察してみた。
 だが、解説を読んでも、ピンと来ない。まともな理由は記してない。ハマ弁がどうして失敗したのかは、謎のまま残った。
( ※ 「利用率の低さ」については何も説明されない。)

 ──

 ところが最近、新たなニュースが出た。鎌倉市では、やはり給食弁当を導入したが、こちらは成功したそうだ。とても好評だという。
  → 『食育の今』選択給食利用率81.7%の驚き。視察が殺到する鎌倉市の中学校給食。

 朝日新聞でも詳しく報道された。
 神奈川県鎌倉市が市立中学校(全9校)で 2017年11月に始めたデリバリー方式の給食が、「荷物が軽くなった」「おいしくて楽しみ」「栄養バランスも多彩な献立も期待以上」と生徒にも保護者にも好評だ。利用率は想定の6割を大きく上回り、8割を超える。
 鏡開きの日はあんこ添えの白玉、卒業式にはキンメダイを奮発するなど、市教育委員会の栄養士が作成する献立は季節感や話題作りを心がける。姉妹都市・長野県上田市の食材で作った日もあった。
( → 鎌倉の中学給食が好評…でも横浜で苦戦 同じ業者なのに

 「別の業者だから質がいいんだろ」と思うかもしれないが、さにあらず。業者は同じである。つまり、基本的には、同じ弁当だ。値段も 10円しか違わない。
 ではいったい、どうしてこういうことが起こったのか? 

 記事を注意深く読むと、事情が窺われる。
 利用率が想定より高い8割以上になり、多い日で3千食作る工場はうれしい悲鳴です」と池田徹課長は胸を張る。

 こういうふうに利用率を高めたことには、そうなる理由があったようだ。それは、(購入時に)1カ月単位で予約することだ。つまり、固定的な制度である。

 食物アレルギーに完全対応できないため家庭弁当との併用制。ネットなどで1カ月単位で予約し、7日前までに1日ごとにキャンセルもできる。
 当初、市教委は保護者の利便性を考え、1日単位の予約を想定していた。しかし、PTAから「みんな一緒に食べるのを基本に」と諭された。

 一方、ハマ弁はどうか? 利便性を考えて、1日単位の予約だ。
 横浜市教委健康教育課は説明する。「日単位で事前予約制のハマ弁は、家庭弁当、当日買える業者弁当と共に、昼食の選択肢の一つ。自由度を上げたいと考えたが、利便性が高すぎたのかもしれません」

 「利便性を高める」というが、ここでは「教育としての給食」という意義を無視している。比喩的に言えば、こうだ。
 「学校の教育で時間割を生徒に自由に任せる。国語・数学(算数)などの各科目の授業時間を、生徒が好き勝手に決める」
 こんなことをすれば、生徒は「授業時間ゼロ」を選択することもできるのだから、サボる生徒が続出する。その結果、生徒の学力は大幅に低下する。
 これと同じことを(給食で)やったのが、ハマ弁だ。そのすえに、「利用者が少ないのはどうしてだろう?」と首をひねっている。馬鹿馬鹿しい。「利用者が少なくなるように」とあえて制度設計したのだから、利用者が少なくなるのは当然だ。これじゃ、まるで、自分で自分の首を絞めた自殺者が、「どうして自分は死ぬんだろう?」と首をひねっているようなものだ。(いや、首をひねることもできないな。)

 ── 
 
 もう少し詳しく述べよう。次のグラフがある。
hamaben.jpg

 当日注文するハマ弁は「食べられない子が出るのは避けたい」(市教委)として、請負業者に多めに作るよう依頼しており、十四日間で計九百五十個が廃棄された。市教委は「試行を続けることで見込みの精度は上がる」とする一方、多くの弁当が廃棄されるのは望ましくないとして、想定を引き下げるとしている。

 大量の廃棄が出ている。その原因は明らかで、当日注文数が極端に大きく変動するからだ。
 逆に言えば、当日注文数が極端に大きく変動するような制度設計のせいで、大量の廃棄が出る。当然、莫大な無駄が生じて、コスト高となる。
 また、注文が少ない日には、製造や運搬の人員が無駄になる(遊休する)ので、その分の無駄なコストも増える。
 あれやこれやと無駄がたくさん出るので、赤字になる。赤字になる分は、給食の質を下げることでまかなうしかない。

 結局、1日単位の予約という制度のせいで、大幅赤字と質の低下を招いたのが、ハマ弁だ。
 一方、1カ月単位の予約という制度にして、その問題を回避したのが、鎌倉の給食弁当だ。

 では、どうして、鎌倉の弁当はそういうふうに成功できたのか? 実は、関係者の熱意があったようだ。朝日の記事から引用しよう。
 導入前に丁寧な説明会を重ねたことが功を奏した。
  ……
 導入目前の17年4月からは「中学校給食ニュース」をほぼ毎月発行し、情報発信を続けた。「10年に完全給食導入の検討を始め、実現まで何年もかかったが、その時間でじっくり説明できた。
 学務課給食担当の大窪宏典さんは「給食は保護者のためではなく、学校生活を充実させ、食育を盛り上げる授業の一環。そう気づかされました」。

 関係者の熱意があって、十分な事前準備をしたので、開始時の利用率を高めた。最初からみんなが給食弁当を食べるようになったので、同調効果もあって、利用率がとても高まった。食べた生徒も、おいしくて、温かくて、大喜び。家庭の母親も、弁当づくりの手間が省けて、大喜び。
 こうして好循環が進んで、大成功となった。

 先の給食専門家の解説では、「失敗した理由」がいろいろと書いてある。しかし、「失敗した理由」を探るよりは、「成功した理由」の方が、ずっと有益だ。
 鎌倉市の成功を見ると、横浜市の失敗の理由が見えてくる。それは、コストや人員という製造者の側にあったのではない。利用者の側にあったのだ。
 そして、その理由は、「何らかの悪いことをしたから」というような責任をともなうものではなくて、「好き勝手にすることができるから」という「自由さ」にあったのだ。

 「自由は素晴らしい」と人は思いがちだが、「自由が自分を苦しめる」ということも、あり得るのだ。それというのも、人間は個人の意思で最善の選択をすることができるとは限らないからだ。特に、未成熟な子供では、そうである。
 また、「各人のエゴイズム(最適化)が、全体の悪化(損失)を招く」という「合成の誤謬」という事例もある。

 「何でもかんでも自由にすれば解決する」
 という発想では、物事は失敗することがある。その事例が、ハマ弁の失敗に見られるのだ。



 【 関連書籍 】



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 【 追記 】
 では、どうすれば解決できるか? うまい方法を提案しよう。こうだ。
 「月ぎめ料金を導入する。1食ごとだと 340円だが、月ぎめ料金の場合には1食あたり 300円ぐらいにする。同時に、1食ごとの料金を 380円ぐらいに値上げする」
 これでほぼ全員が、月ぎめ料金に移行するだろう。(利用しないで家庭の弁当を持ち込む人を除く。)

posted by 管理人 at 21:00| Comment(8) | 一般(雑学)5 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
また懐かしいですね フロム

 もちろん 読んだことはありますがね すっかり忘れてました

 管理人さんとは 異う何かを 読んだんだろうか かぞえると50年 も 前ですね


 日高さん 懐かしいです 


Posted by k at 2019年02月08日 00:16
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2019年02月08日 07:55
>結局、1日単位の予約という制度のせいで、大幅赤字と質の低下を招いたのが、ハマ弁だ。
 一方、1カ月単位の予約という制度にして、その問題を回避したのが、鎌倉の給食弁当だ。

携帯電話における契約期間満了後の自動更新と同じ仕組みでしょうか。(二年縛り後、契約を終了するには所定の期間内に手続きが必要)

であるなら、割安な月ぎめ料金導入も効果的でしょうが、原則月ぎめでキャンセルには手続きが必要とするだけでも利用率は十分向上するのではないかと。
Posted by 作業員 at 2019年02月08日 23:10
 キャンセルは禁止が原則でしょう。食べたくなければ食べなくてもいいが、料金は必ず徴収する。学校給食はたいていそうです。
 ※ アレルギーの人を除く。
Posted by 管理人 at 2019年02月08日 23:40
>7日前までに1日ごとにキャンセルもできる。

鎌倉の事例でもキャンセルの機会は与えられているようです。
で、デフォルトで自動予約、キャンセルには手続きが必要、
という仕組みと、
デフォルトでは自動に予約されず、予約には手続きが必要、
という仕組みでは同じ条件下でも利用率に差が出るだろうという見立てで、前者の仕組みの方が効果的では、ということです。

キャンセルの余地がないと、強制性が伝わって反発があったり、最初の契約率が上がらない懸念があります。
Posted by 作業員 at 2019年02月09日 00:03
 横浜では給食時間が 15分しかないので、時間不足で食べきれない、という話。2月15日の記事。
  → https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190212-00000006-withnews-l14&p=3


 これが報道されたあとで、時間を延長するという方向で(部分的に)是正されるそうだ。本日の記事。
  → https://www.asahi.com/articles/ASM2M4J0KM2MULOB016.html
Posted by 管理人 at 2019年02月20日 13:00
 横浜の昼食時間が 15分だ、という記事はあちこちに見られるが、誤報であるようだ。本日の朝日の記事(地方版)もまたしかり。

 ネットには横浜市在住の人々のナマの声があるが、それによると、「15分で打ち切り」ということはないそうだ。
  → https://togetter.com/li/1135562

 実際は、「時間割に書いてある時間が15分」ということだけらしい。その時間は着席が義務づけられているようだ。そのあと 30分ぐらいの昼休みが続くが、その間もずっと食べ続けていいそうだ。食べてもいいし、遊んでもいいし、何をしてもいい。昼休みの時間まで管理されるということはないそうだ。ま、当り前ですね。
 マスコミは取材不足であるようだ。
Posted by 管理人 at 2019年02月20日 21:54
 本日の朝日新聞記事。以下、抜粋。

 ──

 横浜市立中学校で給食代わりに使われている配達弁当「ハマ弁」に投じられた市費が、2017年度は1食あたり2673円だったことが21日わかった。16年度にハマ弁の業者と協定を結んだ当初、市は同113円を想定していた。

https://www.asahi.com/articles/ASM2N73MPM2NULOB01M.html
Posted by 管理人 at 2019年02月22日 13:00
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