【 訂正 】 ドーパミンについての記述を、大幅に書き換えました。
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「脳内麻薬は快楽を得るためだ」という説を先に紹介した。
→ 対人攻撃は快楽が目的?: Open ブログ
そのあと、それを否定したが、その否定は、「快楽のためでだけではない」(他の要素もある)という部分否定だった。
→ 心はどこにあるか?/快感とは何か? : Open ブログ
→ 目的論と結果論: Open ブログ
本項では、もっと核心部を否定しよう。「快楽を得るため」というのを否定して、「苦痛を消すため」と主張する。
この二つは、似ているが、異なる。
・ 快楽を得る …… プラスを得る
・ 苦痛を消す …… マイナスを消す
結果的にプラスの変動を起こすという点では、両者は似ているが、座標軸が異なる。比喩で言えば、次の差だ。
・ 宝くじで百万円を獲得する
・ 借金の 百万円を帳消しにしてもらう
これらは明らかに異なる。
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脳内麻薬も同様だろう。何らかの快楽を得るというよりは、何らかの苦痛を消すだけだ。そう考えると、わかりやすい。
たとえば、ジョギングでは、β-エンドルフィンが出る。これで、ジョギングすることに快感を感じるかというと、そんなことはない。ただし、それまでの苦痛が薄らぐ。ジョギングを始めた当初は苦しいのだが、20分ぐらい続けると、苦痛が薄らぐ。ここでは、「苦痛が薄らぐ」という効果をもたらすために、β-エンドルフィンが出るのだろう。
( ※ そういう仕組みがあると、生物学的に有利だから、そういう仕組みが備わった……と考えられる。)
なお、β-エンドルフィンは、麻薬のうちの「鎮静薬」(神経を麻痺させる薬)の効果がある。
悪口を言うとドーパミンが出るのは、なぜか? 悪口を言うと快感を得るからか? しかし、そんなことで快感を得ても、生物学的には何の有利点もない。むしろ、無駄なことをやらされる分、生物には不利だ。生物がわざわざ不利な形質を獲得したとは思えない。(だから、「快感を得るため」という説は妥当ではない。)
ドーパミンは、神経への興奮作用・覚醒作用があることがわかっている。その意味では、麻薬のうちの「覚醒剤」(神経を鋭敏にする薬)の効果がある。(「鎮静薬」とは逆だ。)
悪口を言うときにドーパミンが出るのは、「気分をハイにするため」(興奮させるため)だと考えるといい。
さらに、別のこともある。次のことだ。
アドレナリンは緊張・興奮系ホルモンの代表格ですが、快楽ホルモンとも呼ばれる「ドーパミン」からノルアドレナリンが生成され、そして、ノルアドレナリンからアドレナリンが生成されています。
つまり「ドーパミン」が、ノルアドレナリンとアドレナリンの前駆体(化学反応の過程である物質が生成される前の段階にある物質)なのです。
勉強や仕事、運動をするときなど、適度なストレス状態になるとアドレナリンが分泌され、運動能力を高める、脳を覚醒して集中力を上げる…といった働きをします。
( → 「アドレナリンがでる」 アドレナリンとは?何が起こっているの? )
他人の悪口を言うというような攻撃活動をするときには、神経の興奮が起こる。そのとき、(興奮効果のある)ノルアドレナリンとアドレナリンが出るが、そのノルアドレナリンとアドレナリンを形成するための物質がドーパミンなのだ。だからこそ、悪口を言うときにはドーパミンが出る。
結局、ドーパミンが出るのは、次の二つの意味合いがあるのだろう。
・ それ自体で興奮・覚醒をもたらす効果
・ 興奮をもたらす別のホルモンの前駆体
これが「悪口を言うときにはドーパミンが出ること」の真相だと思える。
※ 以下は、うるさい人向けの注釈。
特に有益ではないので、読まなくてもいい。
疑問に感じた人だけが、読めばいい。
[ 余談 ]
本項では「〜〜 のため」という趣旨で示している。
これは前項で示した「目的論」ふうの話なので、「自己矛盾だろ」と疑問に思う人もいるだろう。そこで説明しておく。
前項と本項では、「〜〜 のために**する」というときの、主語が異なる。
・ 前項 …… 行為をする人が主語
・ 本項 …… 生理現象としてのホルモン分泌
人が主語のときは、「〜〜 のため」という目的論はおかしい。なぜなら、人は自由意志によって自分の行動を決めることができるからだ。そのとき、自由意志に影響することはいろいろとあるが、「〜〜 のため」というのは、そのうちの一要素にすぎない。
ホルモン分泌が主語であるときには、目的論はおかしくない。なぜなら、それはただの生理作用だからだ。生理作用には自由意志なんかはない。ただの反応だ。だとすれば、生理現象に何らかの目的があると見なしても、別におかしくはない。(それは一種の機械的・物質的な機構だからだ。)

[ 余談 ]も、書き換えて、整理しました。