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( ※ 本項の実際の掲載日は 2019-02-05 です。)
日米貿易交渉が停滞している。
米国のハガティ駐日大使は4日、朝日新聞のインタビューに応じた。日米貿易交渉に進展がないことに不快感を示し、早期の交渉開始が望ましいとの認識を示した。
日米の交渉では農産物の関税引き下げなどが焦点だ。米国を除く 11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)では、日本の輸入牛肉にかかる関税は現在の 38.5%から段階的に下がり、16年目には9%になる。日本側はTPP以上の合意は難しいとみられるが、ハガティ氏は「いくつかの分野で異なる認識がある」と述べ、日本に譲歩を迫る可能性も示唆した。
( → ハガティ米大使、進まぬ貿易交渉に不快感「すみやかに」:朝日新聞 )
なかなか進まないが、どうするべきか? この問題について、私の考えを述べよう。(いろいろ調べたので。)
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基本的・原理的には、次のように言える。
「貿易交渉は、多国間で行うべきであり、二国間交渉で行うべきではない」
これが本筋だ。しかし、この方針をトランプ大統領は拒否している。だから、上の方針を取るだけでは、話が進まない。次のようにするしかなくなる。
・ 米国が TTP に加入するように説得する。
・ そのときまでは何もしないで待つ。
この方針を取った場合には、 win-win の逆で、lose-lose になる。それは最悪だ。どうしても避けたい。
となると、解決策はただ一つ。「妥協」である.その場合には、日本は TPP のときよりも、もっと譲歩する必要が生じる。
では、それでいいのか?
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これについて調べたところ、「それでいい」という結論に至った。理屈ではおかしいのだが、現実的にはそれで問題ないのだ。理由は下記の通り。
・ もともと日米間では、日本が圧倒的な黒字である。
・ 日本は中国に部品を輸出して、完成品が米国に輸出される。
ゆえに間接的な対米黒字はさらに増える。(クルーグマン)
・ 日本と豪州では豪州が圧倒的に黒字である。ゆえに、
米国を豪州よりも有利にしても、問題ない。
(米国−豪州 間の配分比率の差にすぎない。)
・ 日本の輸入食品の関税率はもともと高すぎる。
牛肉の関税はもっと下げた方がいい。消費者のため。
さらに、次の見通しがある。
・ 米国では今後、シェールガスの生産・輸出が急増する。
・ そのシェールガスを日本が輸入すれば、輸入額が増える。
・ だから、対米黒字が巨額なのは、今後の数年間だけだ。
以上の諸点を考えたすえに、私の提案は次のようになる。
・ 二国間交渉で、米国を(TPPのときより)有利に扱っていい。
・ 牛肉の対米関税は、(TPPの豪州よりも)低くしていい。
・ その期間は、シェールガスの輸入が増えるまでの数年間だけだ。
・ 数年よりも先については、未定とする。(長期決定でない。)
つまり、今後の数年間に限って、牛肉(など)の関税を TPP の場合よりも引き下げる。米国を豪州よりも有利に扱う。そのことで、米国からの輸入が増えて、豪州からの輸入が減るが、それで困るのは豪州だけだから、問題ない。豪州はもともと対日黒字が巨額なのだから、豪州の文句をいちいち聞く必要はない。
日本の牛肉生産業者は、少し文句を言うかもしれない。そこで、関税を下げるのは、低価格品に限り、高額品は除外する。国産の牛肉は、もともと高額のものが多いので、低価格の輸入品はライバルにはならない。だから、低価格の品物に限って関税を引き下げるのならば、国産品への影響は小さい。
また、引き下げの期間は、今後の数年間だけだ。その後は、TPP と同じになるはずなので、特に問題ない。
数年間に限定すると、トランプが文句を言うかもしれないが、数年間よりも先のことは、トランプの業績は関係ないので、その点を指摘すればいい。トランプの任期はあと2年。トランプが再選したとしても、4年間が追加されて、6年間。だから、6年間の「対米関税の引き下げ」を決めるだけで、トランプとしては満足できるはずだ。
( ※ 新条約の施行が今から1年後であるなら、6年間でなく5年間で済む。たったの5年間なら、たいして問題にはならない。)
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基本原則としては、「対米輸入を増やす」というのは、「日本の輸入額全体を増やす」ことを意味しない。むしろ、「他国からの輸入を、米国からの輸入に切り替える」だけでいい。LNG であれ、牛肉であれ、別の国から輸入しているのを、米国からの輸入に切り替えるだけでいいのだ。
このくらいのことであるならば、日本としても対応できなくはあるまい。必要もないオスプレイ・陸上イージス・F-35(百機)なんていう、余計なもののために巨額を支出するぐらいなら、必要なものの輸入先を米国に変更する方が、よほど国益にかなうのだ。
しかも、牛肉などの関税を引き下げれば、消費者は大きな利益を得ることができる。日本全体でも、大いに有益なのだ。TPP では、もともと日本の農産物課税が高めに決められたので、もっと低く誘導する方が、日本全体にとって有益なのだ。( ※ 農家だけは反発するだろうが、その農家の数はごく小さい。)
そもそも、TPP における牛肉などの関税引き下げが、もともと不足していたのである。米国との交渉を名分に、輸入関税をもっと引き下げれば、国民全体(消費者)としては利益を得る。
ま、関税を引き下げて、かわりに農家に所得補償でもした方が、日本全体では大きな利益を得るだろう。
【 関連サイト 】
→ 「米国産LNG」輸入始まる。一番恩恵を受けるのは誰だ!
※ 米国シェールガス輸入の話。
→ 米国産シェールガス、ガス大手が相次いで輸入に踏み切るそのワケは【エネルギー自由化コラム】
※ 米国シェールガス輸入の話。
→ 訂正:カタール危機で変わるLNG取引、日本有利の展開か | ロイター
※ 中東 LNG 輸入の話。
→ 日本のおカネはここへ吸い込まれている! カタールの繁栄 - Market Hack
※ 中東 LNG 輸入の話。
→ “ジャパンプレミアム”を解消せよ 〜密着 LNG獲得交渉〜 - NHK クローズアップ現代+
※ 中東 LNG 輸入の話。価格が高いわけ。
→ 対米通商交渉、切り札として日本が輸入拡大するLNGは「国内需要先細り」 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
※ 日本の LNG 輸入は減りそうだ、という話。
しかし前提は原発の再稼働なので、根拠不足。
石炭発電が中止になったことも同様。( → コメント欄 )
