2019年02月02日

◆ 小4虐待死の真犯人

 千葉県で小学4年生の女児が虐待されて死亡した。この件で市教委や父親が非難されているが、真犯人は別にいる。

 ──

 「真犯人は父親だろ」
 と思うかもしれないが、それは妥当ではない。この手の事件では、「犯行の再発を防ぐためには、虐待者を罰すればいい」ということは成立しないからだ。「こいつが悪いんだから、こいつを重く罰しろ」というようなことをいくらやったところで、事件の再発は防げない。
 むしろ、「こいつは人の心を持たない人でなしだ」と思った方がいい。道路上に転がっている爆弾のような危険物だと思った方がいい。ここでは、爆弾をいくら非難したところで、事故は防げない。むしろ、運転者が注意して、危険を回避する努力をするべきだ。

 では、今回、危険を回避する努力をするべきは誰だったか?
 その問いには、多くの人が「学校や市教委だ」と答えるだろう。しかし私はそれに異を立てる。
 なぜなら、学校は、教育をする機関だからだ。学校では生徒の学力向上のために、生徒の集団を教育する。それが学校の役割だ。

 一方、ごく少数の特別な(例外的な)生徒について、その家庭の問題を解決するのは、学校の役割か? いや、違う。
  ・ 例外的な生徒への個別対応は、教育の対象外だ。
  ・ 学校でなく家庭の問題は、学校の対象外だ。

 このように二重の意味で、学校は管轄の責任を免れているのだ。したがって、学校や市教委は、「正しい対処ができなかった」と批判されるべきではない。「親にコピーを見せた」という間違った対応をしたことは批判されるべきだが、「家庭の問題をきちんと解決しなかったのはダメだ」というふうに批判されるべきではないのだ。

 結局、父親も市教委も学校も、いずれも事件の真犯人ではない。

 ──

 では、真犯人は誰か? もちろん、この問題の責任を負うべき者、つまり、児相だ。
 実際、今回の事件では、児相がまったく仕事をしていなかったことが判明している。ほとんど無為無策だ。
  ・ 学校から連絡を受けても、まともに対処しなかった。
  ・ 一時保護をしたが、すぐに解除して、結局は父親に戻した。
  ・ その後も自宅訪問すらしなかった。
  ・ 子供が転校したとき、児相間の引き継ぎがなかった。
   (父親の隠蔽行為に対して、無為無策も同然だ。)


 以上のことは報道でわかる。たとえば、下記記事。
 市教委がアンケートの回答を渡してしまった直後、心愛さんは転校した。だがその後も、虐待に気づく機会はあった。心愛さんが新たに通っていた小学校は、今年1月7日と11日に父親から長期欠席の連絡を受けながらも自宅訪問などをせず、24日になって心愛さんが遺体で見つかった。

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( → 「怖いよー」「助けてー」届かなかった心愛さんのSOS:朝日新聞

 柏児童相談所では野田市の担当部署から虐待の疑いがあると連絡を受け、おととし 11月から 12月にかけて心愛さんを一時保護したということで、その際、心愛さんの右ほほにはあざがあり「お父さんがこわい」と話していたということです。
 また、一時保護の期間中に生活状況などを確認するため両親と8回にわたって面談し話を聞きましたが、その時、父親の栗原容疑者は「せきこんだ時に抱きかかえるなどしたことはあるが虐待は思い当たらない」と話していたほか、母親も「わからない」と話していたということです。
 心愛さんはおととし 12月に一時保護が解除された後はいったん親族の家で暮らし、去年3月からは両親らの元に戻されたということです。
 児童相談所は一時保護のあと、通っている学校に対し虐待の兆候がないか様子を観察するよう求める対応を取りましたが、両親との面談などは行っていなかったということです。
 千葉県柏児童相談所の二瓶一嗣所長は「一時保護を解除したことはその時点では妥当な判断だと思っている」(……後略 )
( → 死亡女児を一時保護の児相が会見|NHK

 明らかに児相は仕事をしていない。そのせいで、父親が「転校」という隠蔽行為をしたら、まったく何もしていないのも同然となった。(虐待の事実さえろくに認識していなかった。児相間の引き継ぎがないせいで。)
 しかも、こういう無為無策は、今回に限ったことではないのだ! これまで何度も虐待死の事件が報道されているが、そのいずれでも、「児相がろくに仕事をしていなかった」ということが判明している。
 これは、根源的な問題であって、制度的な問題だとも言える。だから、何度も再発するわけだ。そしてまた、その予防もできていないわけだ。
 こうして真犯人は見逃され続ける。

 ──

 では、どうすればいいか? 対策は、二つある。
 第1に、児相に十分な人員を割くことだ。なのに現状では、人員よりも建物の建設に金が使われている。たとえば、港区の駅前に児相のビルを建設しようとする。
  → 児相、保育所は「近所迷惑」か 住民反対相次ぐ
 これに住民が反対したことで、「住民はエゴなのでけしからん」というふうに批判する声が湧き上がった。
  → はてなブックマーク
 しかしここでは、「駅前の超一等地に児相の建物を作るということのために巨額の費用が投入される」ことの方が問題だ。児相の建物を駅前に建てても、何の意味もない。なぜなら児相は、住民がそこを訪れるためにあるのではなく、児相の職員が被害者の自宅を訪れるためにあるからだ。はっきり言って、児相の建物なんか、駅からずっと離れたところにあるオンボロビルで十分なのだ。都心の駅前の超一等地に豪華新築ビルを建てる必要などはないのだ。なのに、そんなことのために莫大な金をかけようとする。その結果、児相の職員は、豪華ビルに引きこもるようになって、被害者の自宅訪問をしなくなる。……あまりにも馬鹿げている。本末転倒とも言える。そして、そういうことを、人々は支持しているのだ。

 第2に、児相の職員が不足しているのだから、児相の職員を増やすべきだ。しかるに、そのための費用がない。タダでさえ金がないところへ、「ふるさと納税」のせいで、都会の自治体の財源は削られまくっている。横浜市では 100億円以上の金が、ふるさと納税のせいで流出している。
  → ふるさと納税で 100億円の損
 とすれば、こういうふうにして自治体の金を奪っている住民は、児相の職員を減らすことに加担しているわけであるから、小4虐待死のような事件では、共犯者であるとも言える。(真犯人のかたわれだ。)
 「いや、おれは千葉市の住民じゃないから、責任はないね」
 と弁解するかもしれないが、それは成り立たない。自治体の財源を削っていれば、どこかでこういう問題が生じるようになるのだから、確率的には、共犯の片棒なのだ。
 たとえば、「税金を負けるために、警察官を減らせ」と主張して、警察官を減らしたら、殺人や強盗が増える。そのとき、「おれは事件の発生地の住民じゃないから、責任はないね」なんていう弁解は通らない。警察官を減らしたら、殺人や強盗が増えるし、そうなれば、確率的にはどこかで犯罪が増えるに決まっているのだ。たまたま自分の地域では大犯罪が起こらなかったからといって、「おれは責任がないね」なんて責任回避することは通らないのだ。
 その意味で、ふるさと納税を利用している人々全員に、千葉の小4虐待死の共同責任はある、と言える。「父親が悪い、市教委が悪い」なんて喚いている人々こそ、真の犯人だ、とも言えるわけだ。(ふるさと納税を利用しているのならば。)
 だいたい、ふるさと納税を利用して、(合法的な)脱税をしている人々に、自治体の怠慢を批判する資格なんかないのだ。自分が(合法的な)脱税をしていながら、他人を批判するなんて、「よくまあその口で言えるもんだな」と呆れるしかない。

 第3に、児相は根本的に仕事の能率が低い。児相間の引き継ぎをするという、当然のことすらできていない。学校との連携も不十分だ。今回のアンケートで言うなら、アンケートは学校が保管するべきではなく、児相が保管するべきだった。それを学校側が保管していたということが、問題の根本原理だったとも言える。「虐待された生徒の対処は児相に一本化する」という制度が根本的に必要だと言えるだろう。
( ※ ただし、そのためには、金と人員が必要だ。)


 結論。

 この問題の真の責任は、児相にある。
 その児相は、徹底的な人員不足に喘いでいる。
 その人員を増やそうにも、自治体には金がない。
 児相や保育所を改善するために、税金を投入せよ。


 ついでだが、「だから税金を上げよ」という結論にはならない。
 税金を上げるのなら、消費税の2%アップというのが、すでに実現決定済みだ。ただし、それで上がった税金の分を、安倍首相はすべて勝手な方向で無駄遣いしてしまう。行政サービスの向上にはまったく使われない。保育園の増設も、児相の人員増加も、なされない。
 なぜ? その金は、「自民党の票稼ぎのためのバラマキ」のために使われるからだ。

 あと、もう一つ、理由がある。公務員の数が大幅に削減されている、ということだ。図書館の司書でさえ、正規職員でなく、契約職員となっている。今の自治体の職員の半分ぐらいは非常勤の職員となっている。これではまともな職員は根本的に足りない。
 なのに、世間では「公務員が多すぎるから、公務員を減らせ」という声が強い。かくて、世界的に見て日本は「公務員の数が半分しかいない」という状況で、さらに公務員減らしが進むので、児相にも職員がいなくなるのだ。
 やはり、根源的な真犯人は、住民・国民ですね。彼らはそれで利益を得たあげく、「ふるさと納税の肉はうめえ」と舌鼓を打っているのである。



 【 関連項目 】

 ふるさと納税については、下記で。
  → ふるさと納税は合法的な脱税: Open ブログ
posted by 管理人 at 10:01| Comment(11) | 一般(雑学)5 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
港区の件は「児相の建物」ではなくて「児相『も』入る建物」なので、敢えて児相だけ追い出してオンボロビルに入れなくても。
地域住民向けの部署もあるので訪れやすい場所であっても構わないかと。
Posted by けろ at 2019年02月03日 22:04
 港区のは、調べたら、
 「子ども家庭支援センター、児童相談所、母子生活支援施設の複合施設」
   https://www.city.minato.tokyo.jp/jidousoudanjunbitan/kodomokateisougoushiensenta-.html
 なので、「児相だけ」と言っても差し支えないでしょう。
 全区民のうちの 0.1% ぐらいしか利用しないと思えます。そんなものを駅前の一等地に立てるぐらいなら、貸しビルにでもして、その利益で、児相の人員を大幅に増やす方がいいです。保育所でもいい。

 
Posted by 管理人 at 2019年02月03日 22:57
今の職員が移動するだけならおんぼろビルでも
いやいや移動するだろうけど
港区の埋立地なんかにつくったら次の世代の職員がこなくなると思うよ
法務省の麻薬取締官のように虐待取締官とか特別な権限を与えて強制調査できるようにしないとダメなように思う


Posted by 老人 at 2019年02月04日 12:15
児相のパート比率を上げて運用できるシステムが必要でしょう。また、警察権限の範囲を拡充すること。母子分離の際のプログラミングの受講による解除要件を設ければ。躊躇せずに母子分離が可能になるはずです。
児相の怠慢による、教育委員会への処罰が改善しなければ同様な事件はまた起こります。
責任と権限を同じ部署で賄うべきでしょう。
Posted by 32年前は現役 at 2019年02月05日 02:11
> 児相の怠慢

 怠慢というほど、休んでいる時間はないはずです。猫の手も借りたいほど、徹底的に忙しい。100人分の仕事を 10人でやっている。90人分の仕事は、積み残し。
Posted by 管理人 at 2019年02月05日 06:53
 100人分の仕事を 10人でやっている⇒

 だから一人の正職と5人の嘱託、5人のパート、20人の児童委員の協力でチームを組んで仕事ができる体制を整えなけば、100人分の仕事をこなすことはできないし、予算の制約も突破できない。量をこなす民間の形を参考にするしかない。
Posted by 32年前は現役 at 2019年02月06日 21:47
 ふるさと納税をやめて、正職員を雇う方がいいですよ。ふるさと納税をやめれば、横浜市なら百億円の収入増。
Posted by 管理人 at 2019年02月06日 22:25
もし、税収の少ない地方において、ふるさと納税の収入を児童相談所職員の経費など、子供の教育と福祉に充当している、そんな賢明な自治体が在るならば、ふるさと納税の意義を全否定できないかもしれまん。
Posted by 作業員 at 2019年02月06日 23:25
 ふるさと納税は、他の自治体の税を盗んでいるという点で、泥棒も同然です。
  http://openblog.seesaa.net/article/451158022.html
  http://openblog.seesaa.net/article/463287861.html

 他人の金を盗んで、その金でどれほど善行をしようと、その行為は免責されません。
 仮に誰かかが、自治体の金を盗んで、そのうち 70%を善行のために使って、残りの 30%を自分の懐に入れたら、あっさり逮捕されて有罪です。
 100%を善行のために使ったとしても、自治体の金を盗んだというだけで有罪。
 鼠小僧みたいな泥棒の論理は認められません。鼠小僧は金持ちの金を再配分するだけ、まだマシだが、(ふるさと納税で)自治体の金を盗むなんて、完全な悪です。
Posted by 管理人 at 2019年02月07日 07:23
それはその通りでふるさと納税を肯定しているわけではありません。合法的脱税であることは承知しています。

ただ、現時点で”合法的”である以上その枠内で児相向け予算の拡充は有用な使途の一つと思った次第です。返戻品問題ばかりに目が向きがちですが、ふるさと納税による税収は果たして効果的に使われているのだろうか、という話です。悪銭身につかずの言葉通りなのか/否か...
Posted by 作業員 at 2019年02月07日 11:42
 児相の人員不足と予算不足がひどい……ということの実情報告。内部者から。
  → https://anond.hatelabo.jp/20190206170358
Posted by 管理人 at 2019年02月07日 12:59
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