2019年02月01日

◆ 日本車が米国で売れるわけ

 日本車が米国で売れるのは、どうしてか? 「性能がいいからだ」という説もあるが。……

 ──

 「性能がいいから売れるんだ」
 という説は、わかりやすいが、信頼しがたい。反証となることがいくつもあるからだ。
  ・ ホンダ車は、米国でよく売れるが、欧州では売れない。
  ・ トヨタ車も、同様の傾向がある。
  ・ 日産車は、米国では不人気だが、他地域ではよく売れる。
   (ただし日産車で売れるのは、大衆車と SUV だけ。)
  ・ ベンツと BMW は、米国でもよく売れる。


 いずれにせよ、売れ行きには、濃淡がある。「性能がいいから売れるんだ」という説が成立するなら、日本車はどれもが世界中でよく売れるはずだが、地域別にメーカーや車種で濃淡が生じるのだ。また、ドイツ車も、メーカー別で濃淡が生じる。(ベンツと BMW とポルシェがよく売れるのはわかるが、フォルクスワーゲンが不人気なのが説明しがたい。)
 いったいどうしてこういうことが起こるのか? 以上のすべてを説明する理由はあるのか?

 ──

 ここで、ベストカーという雑誌の最新号を読んでいたら、面白い記事を見つけた。



https://amzn.to/2UvyOtD


 趣旨は次の通り。
 自動変速機には、トルコンAT、CVT、DCT など、いろいろあるが、今日では最も高性能のものは、多段式トルコンAT である。CVT はスリップしやすくて伝達効率が悪い(燃費が悪い)し、DCT は焼き付き故障や変則段差があったりするが、トルコンAT はそういう問題がない。ただ一つ、伝達効率の悪さが問題だったが、近年、多段式の AT が開発され、これだと(ロックアップのおかげで)効率が良い。各種変速機のなかで、頭一つ抜け出している。ただし、価格が高いのが難で、中・高級車にしか使えない。

 以上の話を読んで、冒頭の問題に解決が得られた、と思った。つまり、こうだ。
 日本車が米国で人気なのは、多段式トルコン AT の技術が優れているからである。特に、トヨタとホンダは優れている。しかも最近では、カムリの8速 AT やアコードの 10速 AT みたいに、傑出した高性能のものが出ている。同様に、ベンツや BMW も多段式トルコン AT を出している。だからこれらのメーカーは、米国で売れている。
 一方、日産はダメだ。日産は FF 車ではまともな多段式トルコン AT の技術がなくて、インフィニティ・QX60 のような高級車でさえ CVT を使っているが、これでは、ドライバビリティが悪くて、評判が悪い。最新型のアルティマも、カムリやアコードよりも1年遅れで登場したのにもかかわらず、米国での評判ではカムリやアコードよりも1段下の評価しか得られていない。その理由は、変速機( CVT )だ。これが非常に質感が悪くて、安物という評価を与えられている。ただし、安物 SUV や安物小型車だと、CVT が大きなデメリットとならないので、価格の安さだけを売りにして、そこそこ売れているようだ。
 フォルクスワーゲンは、CVT のかわりに DCT を使っているが、これも評判が良くない。欧州のように高速道路が発達している国では、燃費のいい DCT がよさそうだが、米国のようにガソリンの安い国では、燃費の良さはメリットにならない。むしろ、段差の付く変速が好まれない。また、高温の地域では故障しやすい。いずれにせよ、多段式トルコン AT には負けている。

 こうして、冒頭の謎については、回答が与えられた。つまり、日本車が米国で売れているのは、トヨタとホンダの多段式トルコン AT が優れているからだ。(日産はそれに当てはまらない。)
 一方、トヨタとホンダが欧州ではあまり売れないことも、これで説明される。多段式トルコン AT が優れているということは、欧州ではたいしてメリットにならないからだ。(欧州では DCT と MT が主流であって、トルコンAT は不人気だ。)



 [ 付記1 ]
 ついでに、以上のことから各社に評価を与えると、こうだ。

 トヨタは、ほぼ盤石だ。ハイブリッドも強い。ただ、 欧州では、DCT がないのが弱点となっている。( ※ あと、デザインだけは、どうにもいただけない。スープラなどのデザインを見ると、涙が出そうなほど、情けなくなる。)

 ホンダは、米国では強いが、販売が米国一辺倒になっていて、非常に不安定だ。トランプ大統領が日本車の制限をしたら、一挙に倒産ということになりかねない。(ちなみに、曙ブレーキは、米国市場でシェアを失ったせいで、倒産した。→ ニュース

 日産は、変速機の技術が遅れている。多段式トルコン AT の技術では、トヨタやホンダの後塵を拝している。こんなことでは、中級車以上ではまともなシェアを望めない。エンジンやサスペンションなどの技術がいくら優れていても、変速機の技術が劣っていては完敗してしまうのだ。
 ま、自社の技術がダメなら、ボルグワーナーなどから技術を買うという手もあるのだが、買うだけでは済みそうにない。どうしても自社開発が必要だろう。といっても、その技術が一朝一夕に誕生するわけでもない。技術開発を惜しんだゴーン経営のツケが回ったと言える。今後は何年もかけて、多段式トルコン AT の技術を開発するしかあるまい。ただしそれには、巨額の開発費の捻出が必要だ。先はあまり明るくない。
( ※ これまでは好決算のために利益を計上してきたが、それは開発費を惜しんできたからだった。そのツケが回っている。ゴーン経営のツケ。かなりひどいね。……ただし、株価は、それを反映している。日産の株価は、利益の割には、とても安い株価だ。将来性がない、と市場に判定されているわけだ。)

( ※ 日産の技術開発がダメなのは、「技術の日産」を口にしていながら、実際には「技術軽視の日産」であったからだ。それというのも、代々の社長が、文系ばかりで、技術のことをまったく理解できないからだ。理系・技術系の社長は、久米豊ぐらいで、他のほとんどは、財務の出身だ。ゴーンもそうだし、志賀もそうだし、西川もそうだ。こういう連中が、技術開発を無視して、財務をいじって利益だけを増やそうとしたところに、日産の悲劇がある。……そこで、「日産の技術はダメだ」というふうに述べるのが、本サイトだ。つまり、「王様は裸だ」と告げる。)

 [ 付記2 ]
 もうちょっとよく調べたら、日産の変速機は、JATCO製。JATCOは、日産・三菱・スズキが共同出資で設立したトランスミッション専業メーカーだが、安物の CVT ばかりをやっていて、多段式トルコン AT の開発はほったらかしだ。日産と同じで、ゴーンによってコストカットばかりを強いられてきたせいらしい。会社は別会社だが、ゴーン経営の負の面を押しつけられた形だ。
 日産としては、あとは e-Power と電気自動車に頼るしかないのかも。これらは変速機がないから、「ダメな変速機」という問題を回避できる。
 換言すれば、日産でまともなのは、 e-Power と電気自動車と安物大衆車だけ。あとは、変速機がダメだから、まともな商品はないも同然だ。
 たとえば、エクストレイルが CVT というのは、呆れるばかり。「安いのだけが取り柄」という商品だから、それ以外を求める人には、買ってもらえないね。



 [ 余談 ]
 「下町ロケット」というドラマが、先日に放送されていたが、そこでは、「町工場がちょっと努力したら、優秀な変速機を生産できるようになった」という話があった。
 これを見て、呆れたものだ。町工場がちょっと努力したぐらいで、優秀な変速機を生産できるわけがないだろうが。日産自動車が莫大な投資をして、何年もかけても、まともな変速機を生産できないのだ。町工場がゼロから初めて、いきなりまともな生産ができるはずがない。
 しかも、ドラマでは、月産 1000台以下という少量生産。これでは、とうてい採算に乗らないだろう。
 いくら架空のドラマだとはいえ、あまりも現実離れしているので、呆れたものだ。

( ※ 別の点でも、twitter で大批判された。 → 記事

posted by 管理人 at 19:00| Comment(20) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 [ 付記2 ] を加筆しました。
 タイムスタンプは 下記 ↓
Posted by 管理人 at 2019年02月01日 22:17
以前のエントリ、”日産を脱ゴーン化せよ”のコメント欄で、
”マジレスすれば、日産の人材は世界水準で一流レベルです。(中略)
 兵は一流、将は三流。”
と記されています。この見方と、本エントリの
”「日産の技術はダメだ」というふうに述べるのが、本サイトだ。”
はなんだか整合性がとれていないように思えるのですが...全ての原因は”将は三流”に帰結する、ということなんでしょうか。兵が一流であるならば、もう少し技術に反映されていてもいいような。
Posted by 作業員 at 2019年02月01日 22:55
 技術者は優秀だけど、技術開発の投資がなされない、ということ。人が優秀でも、金をかけなければ、技術開発はなされません。人だけがあっても、技術は生まれない。人が寝ていても、技術が自動的に生まれるわけじゃない。

 逆に言えば、今後、新社長が金をかければ、人は優秀なので、技術開発は可能です。
 とはいえ、最低でも数年間はかかる。モデルチェンジは3年ぐらいはかかるので。数百億円と数年の時間をかければ、復活は可能でしょう。

 ※ 数百億円といったが、プロジェクトごとの費用だ。総額では、数年間で数千億円の投資が必要だろう。ゴーンはそれほどにも投資を渋って、日産を弱体化させた。
Posted by 管理人 at 2019年02月01日 23:26
技術者は優秀だけど、経営者の能力の問題で”日産の技術はダメだ”ということなんでしょうけど、”技術者は優秀”という証左はどこから推し量ることができますか。

”技術者は優秀だけど、技術はダメだ”は仕事をしないか、させないことによるわけですが、だからといって”技術者は優秀”が確か否かは解りません。

Posted by 作業員 at 2019年02月02日 09:45
> ”技術者は優秀”という証左

 話せば長くなるので、割愛。本項の話題ではない。
 知りたければ、自分で調べましょう。

 なお、本サイトでも何度か言及したので、サイト内検索をすれば、いくらかわかるかも。
 http://j.mp/2BeA0dy
Posted by 管理人 at 2019年02月02日 10:28
日産の米国での販売はホンダを少し下回るぐらいなんですが、なぜホンダは米国で売れていて、日産は売れていないことになるんですか?
Posted by きゅうとぴ at 2019年02月07日 20:56
> 日産は売れていない

 そんなことは書いてないでしょ。原文を引用しましょう。 文中に記したのは
 「日産車は、米国では不人気だが、他地域ではよく売れる。」
 です。「売れない」ではなく、「不人気」です。
 米国での人気ランキングなどを見るとわかります。

 あと、ホンダは米国市場で大きな利益を上げているんですが、日産は大幅値引きで台数を出しているだけで、利益がほとんど出ていないんです。
 ま、全然不人気なわけじゃないし、ローグは人気もあるんだけど、それは一部の例外ということで。
Posted by 管理人 at 2019年02月07日 21:24
不人気ってソースはどこでしょうか?
あなたがやたらとけないしているCVTを誉めているレビューもかなりありますが。
Posted by きゅうとぴ at 2019年02月07日 22:02
あと、文脈的に他の地域でよく売れる=米国で売れないでしょ。
Posted by きゅうとぴ at 2019年02月07日 22:04
ホンダは米国で売れている
日産は米国以外の地域で売れている
ホンダの販売は日産の少し上

これら3つは同時になりたたないのでは?

あとホンダの利益をいま支えているのは好調な二輪部門で、四輪部門はボロボロです。
Posted by きゅうとぴ at 2019年02月07日 22:14
 知りたいことがあったら、自分で調べましょう。私はいちいち(必要以上に)ソースを出したりしない。Wikipedia じゃないんだから。
 他人とは意見が違うこともあります。別に論争しているわけじゃないんだから、いちいち正面から否定する必要もない。異論の存在は認めます。

 ホンダの二輪と四輪の収益は
  https://response.jp/article/2018/02/02/305617.html
  https://response.jp/article/2019/02/02/318709.html

 別にボロボロというほどひどくはない。また、「世界規模でなく米国に限定すれば、そこそこ高収益である」ことと矛盾しない。(他地域で売れないだけだ。)
Posted by 管理人 at 2019年02月07日 22:30
でも、これだけ堂々と特定の企業を批判する記事を書いている訳だから、「米国において日産がトヨタやホンダと比較して不人気」という明確なソースがあるんでしょ?
興味があるので教えてほしいんですが。
なお私は日本車以外の各国の主要メーカの販売する各車種が米国、欧州、中国市場において、各月何台ずつ売れているかを知っている上で聞いております。
Posted by きゅうとぴ at 2019年02月07日 22:37
日本車以外のではなく日本車も含めてでした。
Posted by きゅうとぴ at 2019年02月07日 22:38
トヨタやホンダと比較して日産が米国で売れていないという前提にCVT批判がなされているせいで、記事全体が崩壊していますね。

フォルクスワーゲンをドイツメーカーというだけでBMWやダイムラーと同列に語ろうとしたり、トヨタが欧州で売れていないとしたり、ジャトコを知らずに日産を批判したり、自動車メーカーの力関係が見えていないようです。
Posted by きゅうとぴ at 2019年02月07日 22:50
> 米国で売れていないという前提

 売れていないじゃなくて、不人気。何度言ったらわかるんだか。人の話を読みましょう。

> 各月何台ずつ売れているかを知っている

 これも同じ。台数の話をしているんじゃない。
 この手の人は、自分の誤読を正しいと信じた上で、人の話を徹底的に聞かないんですよね。議論が成立しない。

> 明確なソース

 各種の品質評価や、ユーザーのコメントです。出典は多数の集団。
 声で圧倒的に多いのは、「日産車は品質は劣るが値段が安いから買う。値引きも多いし」というもの。
 わかった? 「売れない」んじゃないんですよ。台数の話はもともと関係ない。
Posted by 管理人 at 2019年02月07日 23:11
>  by 鳥人

 あなた、本文をまったく理解していないんですね。「日産車は不人気だけど安いから、安物を買う人に売れている」と記しているんだが。読めないの? 
 日産デイズの旧型もそうで、燃費が悪くて欠陥履歴で、すごく不人気だったが、値引きが多いので、結構売れていた。
 人気かどうかは、台数じゃなくて、値引き額を見ればわかる。商売のイロハだ。
Posted by 管理人 at 2019年05月06日 21:57
 本文記事を読みましょう。さらにできれば、最新データを見ましょう。
 日産は大幅減益で、さらにはアルティマは大幅に販売大数減です。トヨタもホンダも、それほどひどくはありません。
 あなた、本文をまったく理解しないで、自分の脳内情報だけを信じているんですね。人の話を聞いても信じないで、誤った情報ばかりを信じているのなら、他人の話を聞いても無駄じゃないの? いつまでも誤った情報にばかりこだわって、修正するつもりがないんだから。
Posted by 管理人 at 2019年05月06日 22:04
 教えて上げたのに、まだわからないのか。ググり方も知らないの? しょうがないなあ。

  https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_usa_2019

  https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-01/PM9NSXSYF01S01

 ホンダの利益率低下は、北米じゃなくて、北米以外で。主として欧州で。
Posted by 管理人 at 2019年05月06日 22:20
 リンクを見ればわかるように、トヨタと日産が減っているのにホンダは増えている。
 重要なのは、米国の自動車の評価で、ホンダのアコードの評価が圧倒的に高いこと。これはつまり、値引きしないでも売れるということ。逆に、評価が低いのがアルティマで、大幅値引きしないと売れない、ということ。

 四輪と二輪の話は、すでにコメント欄で何度か言及されたこと。
 あなたはコメント欄も読まないで、自分の説ばかりを語っている。少しは人の話を読みましょう。

> 4輪部門は好調な2輪部門に食わしてもらっている状態

 また嘘をつく。または、データを読めないのか? 二輪の方が儲けの量は多いが、四輪は決して赤字ではなく、そこそこの黒字を出している。北米に限れば、四輪も大幅な黒字を出している。他地域では赤字っぽいけど。
Posted by 管理人 at 2019年05月06日 22:36
どうみても本田の四輪は赤字とかかれているのだけど、どこがそこそこの黒字なの?

https://diamond.jp/articles/-/201710
Posted by 細波 at 2019年09月11日 21:53
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