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朝日の記事から引用しよう。
火災保険で水害被害を補償する保険料について、どの地域も同じだったものに差をつける方向で損害保険業界が検討を始めた。相次ぐ豪雨災害で保険金支払いが増えていることが背景にある。業界は安全で料率が低い地域へ住む傾向が強まり、災害被害の減少にもつながるとするが、負担増となる地域も出るため議論を呼びそうだ。
水害では局地的な豪雨もあるほか、細かな地形も被害に影響するため、都道府県の区分けで差をつけるのは難しいとされてきた。ただ最近の災害多発で一定の差をつける必要性が出てきたと損保業界はみている。建物の新設で保険料が高い場所を避けるようになり、減災効果もあるとする。
( → 水害の保険料に地域差検討 損保業界、相次ぐ豪雨災害で:朝日新聞 )
実は、この案は、私も以前考えたことがあって、書こうとしたこともあったのだが、書かずじまいで放置しておいた。そうしている間に、業界が勝手に実現に向かっているようだ。
私としては、これを歓迎したい。では、なぜ歓迎するか?
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業界の話では、「危険な地域に住むのを避けるようになるだろう」ということだが、それはあまり意味がない。「保険料が高くなったからといって、住み慣れた土地を離れて転居する」なんてことを考える人は、ごく少数だからだ。
つまり、経済的な意味での「追い出し効果」などは、ほとんど無意味だ。
むしろ、大切なのは、次のことだ。
「危険度が高い地域では、保険料が高くなる。その地域で堤防工事などをすると、危険度が下がり、保険料が低くなる。そこで、堤防工事を行う地域では、固定資産税を高くすることができる」
常識的には、最も有効なのは、「堤防工事をすること」である。(底さらいの浚渫なども含む。)
しかし、このような工事をするのには、巨額の工費が必要となる。その工費を一般的な財源から支出するのは、道理が通らない。一部地域の住民のために利益を出すことになるからだ。
ならば、地元の住民がお金を拠出して、堤防工事をすればよさそうなものだが、住民は「そんな金は払いたくない」と言ってケチる。で、ケチったせいで、堤防工事がなされず、水害が発生して、巨額の損失が発生する。
これが、よくある例だ。2015年の鬼怒川の水害も、2018年のの倉敷市の水害も、どちらも同じようにして発生した。(堤防工事をケチったせいで、大被害。)
そこで、次の原理を取るといい。
「堤防工事をするが、その費用は、堤防工事によって利益を受ける地域住民の負担とする。そのためには、固定資産税を値上げする」
これが原理としては最善だ。しかしながら、それでも住民は「増税反対!」と言ってイヤがる。
そこで、この問題をうまく解決する案が、冒頭の「保険料の値上げ」だ。つまり、こうなる。
「もともと保険料を上げておけば、堤防工事のための固定資産税アップと、工事後の保険料のダウンとが、相殺する。だから、堤防工事が推進される」
というわけで、保険料の値上げは、「堤防工事をする」という最善の策を推進する効果があるわけだ。
ただし、それには、「堤防工事をした地域では(工事代として)固定資産税を上げる」という方式と、セットにする必要がある。
ともあれ、こうすれば、危険地域における堤防工事がどんどん進むので、水害の危険は大幅に減じるだろう。
これぞ、「うまい案」だ。困ったときの Openブログ。