2019年01月27日

◆ 原発よりも再生エネ?

 原発と再生エネを比較して、「原発よりも再生エネを優先するべきだ」という主張がある。

 ──

 下記の解説記事がある。冒頭でテーマを掲げている。
 太陽光など再生可能エネルギーの受け入れを一時的に制限する「出力抑制」を九州電力が行っている。昨秋に離島を除き国内で初めて踏み切って、1月3日も実施した。政府は、再生エネを主力電源にすると掲げるが、フル活用されない矛盾をどうすればいいのか。
( → 九州電力、太陽光などの「出力抑制」 再生エネ、使い切れない矛盾 山下裕志:朝日新聞

 せっかく再生エネをたくさん導入したのに、原発のせいで出力抑制がかかってしまう。何とも無駄だ。これを解決したい……という趣旨。
 で、「再生エネを増やすために、原発を減らせ」という結論になっている。
 再生エネは止めても原発を止めないのは、国のルールで原発が優先されているからだ。
 柱となる「ベースロード電源」(基幹電源)を何にするかが課題だった。それを原子力にした歴史がある。フル稼働させて優先的に使い、足りない分をほかの電源で埋めてきた。
 九大の分山達也准教授(電力システム政策)によると、欧州は電力を取引する市場と送電網が発達し、燃料費がほぼゼロの再生エネの電力が安く、優先的に使われるようになっている。
 京大特任教授でエネルギー戦略研究所の山家公雄所長は「再生エネ普及の流れはもはや止められない。日本も高い再生エネの導入目標を置き、基幹電源を持つという考え方を転換していくべきだ」と呼びかける。

 要点は次の二つだ。
  ・ 原発は、再生エネの出力変動に対応できないので、駄目だ。
  ・ 欧州ではコスト的に再生エネの方が安い。だから日本も再生エネを優先せよ。

 しかし、これは詭弁というしかない。

 (1) 出力変動

 「原発は、再生エネの出力変動に対応できない」というが、出力変動に対応できるのは、火力発電であって、再生エネではない。再生エネはむしろ、出力変動をもたらすので、逆効果だ。
 記事の主張は、比喩的には、こうだ。
 「泥棒という悪人がいるとき、警察が対応するべきだが、一般市民は警察と違って無為無策だ。ゆえに、一般市民は存在価値がないので、一般市民を排除してしまえ」
 これは筋違いだ。泥棒をなくせばいいのに、一般市民をなくそうとしている。狂気の論理。
 電力も同様だ。再生エネの出力変動があるとき、火力発電は有益で、原発は無為無策だ。ここでは「無為無策な原発をなくせ」という結論は出ない。むしろ「有害な再生エネを減らせ」(悪を減らせ)という結論になる。
 記事の趣旨は、暴論というしかない。

 (2) 再生エネのコスト

 再生エネのコストについても、話が見当違いになっている。「欧州ではコスト的に再生エネの方が安い」のは事実だが、「だから日本も再生エネを優先せよ」ということにはならない。なぜなら(欧州と違って)日本の再生エネのコストは馬鹿高いからだ。
 記事の主張は、「他人と自分とは違う」ということを理解できていない。いわば、「アラブでは石油が安いから、再生エネや原発よりも火力発電にしよう」というようなものだ。あるいは、「カナダでは水力発電が安いから、日本も水力発電を主力にしよう」というようなものだ。もっと典型的に言えば、「 ZOZO の社長はさんざん贅沢をしているから、わが家も同様に贅沢をしよう」というようなものだ。……狂気の記事。
 「欧州ではコスト的に再生エネの方が安い」ということから得られる結論は、「だから日本も再生エネを優先せよ」ではなくて、「だから日本も再生エネの買い取り価格を下げよ」(コストを下げよ)ということだ。それは「再生エネを優遇せよ」ということではなく、逆に「再生エネを冷遇せよ」ということだ。(記事の趣旨とは逆に。)

 日本の再生エネの買い取り価格は、世界的に見ても、異常に高額だ。そのせいで、九州あたりでは、異常に多くの太陽光発電が導入されている。ここに問題があるのだから、「再生エネの買い取り価格を下げよ」というのが正解だろう。
 朝日は、再生エネを優遇しようという発想のあまり、経済的なコスト計算ができなくなっている。環境優先一辺倒だと、これほどにも馬鹿げた発想になってしまうのだ。



 [ 付記 ]
 太陽光発電では、「発電の権利」だけを保有して、建設しないままでいる……という事例がすごく多い。「建設コストが安くなってから建設すればボロ儲け」というわけで、あえて建設時期を遅くしているわけだ。
 こういう悪質な業者が全体の半分近くにまでなっていて、権利だけで売買されることもあるそうだ。
 導入当初の2012〜14年度、事業用太陽光(発電能力10キロワット以上)の買い取り価格は、1キロワット時あたり40〜32円と、現在の買い取り価格(18円)を大きく上回る。この3年間に認定された施設のうち6割弱はすでに発電しているが、残る4割強、2352万キロワット(17年度末時点)分はまだ稼働していない。
 電力会社の送電線増強工事や地域での合意形成が遅れているケースもあるが、太陽光パネルなどの導入費が安くなるのを待つ事業者も少なくないとみられる。

solar-yet.gif

( → 太陽光買い取り見直し検討 未稼働は認定取り消しや減額:朝日新聞 2018年10月4日

 グラフを見ればわかるが、まともに建設されたのは、初年度(2012年度)だけだ。以後(13年度以後)は、稼働よりも未稼働の方が多くなっている。こんな連中の権利(高額買い取りの権利)は、さっさと抹消するべきなんだが、所轄官庁がそうしようとしても、そうできないようだ。(記事の後半にある。)
 なぜ? たぶん、自民党の議員に地元で圧力をかけているんだろう。自民党の利権体質。

 参考記事。悪質な事業会社。
 FITに基づく買い取り価格は当初、事業用で1キロワット時あたり40円と国際的に見ても高値で、太陽光パネルなど設置費用の値下がりを待って建設に着手しない業者も多い。買い取り価格は年々下げられており、価格が高い時期に取得された発電事業の権利「売電権」は価値が高まった。売電権を取得したのに発電せず、権利だけを売って利益を得る業者や、その取引を持ちかける仲介業者の存在も指摘されていた。
 太陽光発電の関連業者を集中的に税務調査。太陽光パネルの設置や送電に適した郊外地域の建設業者や、再生可能エネルギーの大手事業者などを調べたところ、収入の一部を除外したり、架空の支払手数料を計上したりして所得を圧縮したケースが目立った。
( → 太陽光関連業者、相次ぐ申告漏れ 200社で70億円:朝日新聞


 
posted by 管理人 at 23:54| Comment(0) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
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