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仏政府が日産・ルノーを経営統合しようとしている。
フランス政府の代表団が18日までに、共同持ち株会社方式を軸に仏ルノーと日産自動車を経営統合する意向を日本政府関係者に伝えたことが分かった。
18日まで来日していた仏政府出身のマルタン・ビアル・ルノー取締役ら同国政府の代表団が両社の統合構想を伝えた。日産とルノーが共同で持ち株会社を設け、傘下に両社をぶら下げる案などを示した。あわせてゴーン元会長の解任で空席になっている日産の会長職をルノーが指名する意向も伝達した。
( → 仏政府、日産・ルノー経営統合の意向 持ち株会社軸に (写真=ロイター) :日本経済新聞 )
では、仏政府の狙いは何か? 記事にはこうある。
ルノーは収益面や研究開発などで日産への依存度が高く、仏政府には両社の提携を後戻りできない関係にする思惑がある。
これは、よく言われることだが、真意ではあるまい。「後戻りできない関係にする」というが、別に、後戻りしようとしているわけではないのだから、こんなことのために「喧嘩を売る」ような強硬策をとる必要がない。
比喩的に言えば、恋人との関係を確立するために、「後戻りできない関係にしよう」と言うが、恭しく頭を下げてプロポーズするかわりに、相手の財産を法的に奪い取る書類にサインさせようとするものだ。「二人の愛のためだよ」と口先で言いながら、財産をむしり取る。詐欺師(というよりは強盗)も同然である。悪質極まりない。
では、「後戻りできない関係にする」というのが嘘だとしたら、真意は何か? それは、記事を読めばわかる。
持ち株会社方式で経営統合すれば、ルノーの筆頭株主である仏政府が新設する持ち株会社の大株主になる。
これが真相だ。詳しく説明すると、こうだ。
現状では、仏政府はルノーの2割弱の株式を持っている。ここで「2年保有の株式の権利を倍増する」という法律を利用して、28%の議決権をもっている。さらに、ルノーが日産の 45%の株式を持つことで、ほぼ過半数に近い議決権を保有している。(議決権を行使しない株主が多いので。)( → 参考記事 )
ここで、新たに持株会社を設立する。そこでは、うまい工夫をする。
通常の方式ならば、持株会社が日産とルノーの全株を所有する。従来の日産の株主と、ルノーの株主は、持株会社の株主となる。仏政府は、日産の株とルノーの株を持株会社の株に変換される。……この場合には、現状と大差ない。
しかし、別の方式を取ることもできる。従来の日産の株主と、ルノーの株主は、手持ちの株の半分はそのままで、残りの半分は持株会社の株に変換される。次のように。
日産 100株 → 日産 50株 + 持株会社 50株
ルノー 100株 → ルノー 50株 + 持株会社 50株
すると、どうなるか? 日産およびルノーでは、従来の株主の議決権は半減する。その一方で、持株会社の議決権は半分になる。こうして日産とルノーでは、持株会社が議決権の半分を握る。実質的には過半数を握ったも同様だ。
その一方で、仏政府は持株会社に新規出資することで、持株会社の3〜4割ぐらいの出資をする。これに「議決権は2倍」という法律を行使することで、過半数の議決権を得る。
以上をまとめると、こうだ。
「仏政府は、持株会社の少数株主であるだけで、持株会社の過半数の議決権を有し、さらには、日産とルノーの過半数の技議決権を有する」
こうやって、ペテンみたいな方法を駆使することで、日産とルノーを私物化しようとしているわけだ。それが真相だ。
※ 現状では、「議決権を2倍に」というのを、日産には適用できないので、それをうまく適用できるようにして、日産を私物化しよう、というわけだ。そのために、日本企業である日産を、持株会社を通じてフランスの会社にしてしまおう、というわけだ。
[ 付記 ]
フランス政府による私物化。
これはもう、ゴーンが会社の金を私物化したのと、そっくりだ。ゴーンが私物化したように、マクロン大統領も私物化しようとしている。似たり寄ったり。どちらも日産の金を食い物にしようとしている。何たる悪辣さ!
【 関連項目 】
フランス大統領のあこぎな狙いについては、前にも論じたことがある。
→ 日産自動車とフランス政府: Open ブログ
※ 「日産自動車にフランス政府が介入して、日産自動車を支配しようとしている」という話。
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次項に、続編がある。「日本政府はフランス政府に反撃せよ」という趣旨。
→ 外交では反撃せよ: Open ブログ