2018年12月19日

◆ ふるさと納税が悪である理由

 ふるさと納税が悪である理由を、根源的に説明する。

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 ふるさと納税については、前に述べた。
  → ふるさと納税は合法的な脱税: Open ブログ

 これに対して、本文を読まずにタイトルだけ読む人は、短絡的に反発しがちだ。
 ふるさと納税は、形式的には合法的なので、「合法的だから、節税であり、脱税でない」と思い込む。
 こういう短絡的な発想をする人のために、詳しく解説しておこう。

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 そもそも、この点については先の項目で簡単に説明してある。
 「合法的な脱税」は、善か悪か? 
 法律的な意味では、「善でも悪でもない」と言える。完全に合法的だからだ。
 しかしながら倫理的には「悪」と言える。地元の自治体に入るべき金を、納税者と別の都市とで、盗んでいるのも同然だからだ。泥棒と同様である。

 これを読めば、普通の人は納得できるのだろうが、頭が形式主義に凝り固まっていると、「形式的に合法なのだから、何も悪いことはしていない」というふうに主張しがちだ。法律専門家ほど、法律馬鹿みたいな面があるので、そう思いがちだ。
 そこで、物事を根源的に考え直そう。

 ──

 なるほど、ふるさと納税は、法的にはたしかに合法的だから、脱税とはいいがたい。しかしながら、それの実態そのものは、まさしく脱税と同様の悪なのである。そのことを示そう。

 まず、法的な是非でなく、善悪を言うのであれば、合法かどうかは善悪とは一致するとは限らない。
 たとえば、森友事件で首相や国税庁長官がやったようなことは、合法かもしれないが、悪であると見なせるだろう。政治家が国の財産や金を勝手に左右することや、嘘をついてゴマ化すことは、合法かどうかにかかわりなく、悪なのである。
 より典型的に言えば、殺人や強姦は悪である。ここで悪質な独裁者が、その行為を合法化しようとするまいと、殺人や強姦は悪なのである。「合法だから悪ではない」というような弁明は通用しない。

 「いや、ふるさと納税は、殺人や強姦とは違うぞ」と弁解する人もいるかもしれない。しかしそれは違う。ふるさと納税は、殺人や強姦とほぼ同じなのである。五十歩百歩だと言える。目くそ耳くそだとも言える。
 では、なぜか? 

 ──

 ふるさと納税の代案として、次のような制度を考えることができる。
 「豊かな財政のある東京都のような大都市圏から税収を奪い、それを貧しい地域に再配分する」
 このような制度であれば、公平性も保たれているので、それはただの社会的な再配分制度だと言えるだろう。東京都にとっては踏んだり蹴ったりだが、「金持ちから貧乏人に金を渡す」というのは、社会的な再配分なのだから、特に批判されるようなことではない。善か悪かは別として、これは政治の裁量の範囲内のことだろう。ことさら善悪で批判されるようなことではない。

 また、本来のふるさと納税として、次のような制度を考えることができる。
 「地方出身者が、都会で納税しているとき、納税先を、現在の居住地でなく、出身の自治体で納税する」
 これは、本来の「ふるさと納税」だ。「住民税」という趣旨からすれば、これは明らかにおかしい。なぜなら、地元で教育や福祉などの地域サービスを受けていながら、地元とは別の自治体に納税することになるからだ。これでは住民サービスのただ乗りであって、原理的にはおかしい。

 とはいえ、釈明も成立する。次のように。
 「その人が教育のサービスを受けたのは、出身地でだ。出身地で教育サービスを受けたのだから、成人して都会に出たあとで、都会にばかり納税するのでは、出身地が損をする。成人して都会に出たとしても、かつて出身地で得た教育などのサービスの分を、出身地に払うべきだ。だから、出身地で納税するべきだ」
 これはこれで成立する。そこで、「半分は現在地に払い、半分は出身地に払う」というような方針があったとしても、それはそれで合理性がある。
 これは、「本来のふるさと納税」だ。

 ──

 以上の二つは、ふるさと納税の代案だった。
  ・ 地方の全体に公平に社会的再配分する。
  ・ 出身地と現在地で、半々ぐらいで納税する。

 そのいずれも、それなりに合理性がある。

 一方、現在のふるさと納税は、そのいずれでもない。次のようなものだ。
 「その税金を受け取る権利をまったくもたない無関係の自治体が、よそから手を突っ込んで、勝手に金を奪う」


 たとえば、地方にあるA県のB市という自治体が、東京都や世田谷区の財源に勝手に手を突っ込んで、勝手に金を奪い取る。奪われる方は「イヤだ、イヤだ」と言っているのに、否応なしに、勝手に金を奪い取る。これは、強奪しているのも同然であり、泥棒と同じであろう。
 殺人犯は命を奪う。強姦犯は貞節を奪う。強盗犯は金を奪う。そのいずれも、被害者の意思を無視して、勝手に奪い取るのである。そういうことは、明らかに「悪」だと言える。
 ここで、この行為が合法化されているかどうかは関係ない。被害者の意思を無視して、否応なしに相手の大切なものを奪うのであれば、その行為は、奪うものが 命・貞節・金 のいずれであるかにかかわらず、根源的に悪なのである。
 この意味で、ふるさと納税は、殺人や強姦や強盗と同様の悪であるとわかる。
( ※ 合法かどうかは関係ない。根源的に悪なのである。)

 ──

 ただし、この「奪い方」は、ちょっと巧妙だ。よその自治体が単独で奪うのではない。よその自治体と納税者が共犯になることで、奪うのである。
  ・ 3割は、納税者が奪う。
  ・ 7割は、よその自治体が奪う。

 こういうふうに「分け前の配分」を決めた上で、よその自治体と納税者が共犯になって、金を奪い取る。
 もちろん、奪われる方の自治体は、10割をまるまる奪われる。大損だ。
 ここでは、被害は激甚だが、奪う方は、その痛みがわからない。納税者に至っては、反省するどころか、善行をしているつもりだ。
 「3割しか受け取っていないのだから、泥棒をしているわけじゃない。むしろ、よその自治体は、7割も金儲けをしているんだ。よその自治体に金を恵んで上げる自分は善行をしているのだ。自分は何て善人なんだろう。その上、3割の儲けも得られる。儲けが出て、善行ができるのだから、ふるさと納税は素晴らしいシステムだな」
 と思い込む。その分、現在地の自治体は大損しているのだが、そっちについてはまるきり目をつむっている。

 ──

 ふるさと納税は、基本的には、
 「よその自治体と納税者が共犯をして、現在地の自治体から金を盗むこと」
 である。その意味では、泥棒の一種だと言える。
 とはいえ、ここで盗むものは、税金である。税金を盗むというのは、「泥棒」に分類するよりは、「脱税」に分類する方が妥当であろう。「脱税」とは「税金泥棒」なのだから、「税金泥棒」のことを「脱税」と呼ぶのも妥当であろう。
 その意味で、ふるさと納税を「脱税」と呼ぶのは、おかしくない。(広い意味の「脱税」だと思えばいい。)
 というわけで、「ふるさと納税は合法的な脱税だ」という表現は、十分に妥当なのである。
 一読しただけでは、「合法的な脱税」というのは、「合法的な違法行為」とか「合法的な犯罪」みたいで、矛盾した表現に思える。だが、比喩的表現としては、正しく核心を突いているわけだ。(拡張された意味で)
 少なくとも、ふるさと納税を「節税」と呼ぶよりは、はるかに正確な表現だと言える。ふるさと納税を「節税」と呼ぶのは、強姦を「和姦」と呼ぶようなものだろう。イヤがる女性から貞節を奪っておいて、「これは合法だから和姦さ」と言い張るようなものだ。とんでもないことだ。
 ふるさと納税をするのは、たしかに合法的だから、処罰はされない。しかしそれはまさしく現在地の自治体から金を強引に奪うことであり、現在地の自治体に大きな被害を負わせることだ。(保育所や教育費などの財源が奪われてしまう。)
 こういうことをやっておいて、「悪ではない」と思うのは、もともと脱税意欲が強い人だろう。それはいわば、強姦願望のある人のようなものだ。そういう人は、強姦が合法化されれば、喜んで強姦をするようになるのだろう。強盗が合法化されれば、喜んで強盗をするように。脱税が合法化されれば、喜んで脱税をするように。……そして、そのとき、被害者の側がどれほど苦しめられようと、平気で無視してしまうのである。
 そういう人間が、ふるさと納税を歓迎するわけだ。



 [ 付記1 ]
 金を奪われる側が悲鳴を上げている、という話がある。下記記事。
  → 住民税312億円が流出!?ふるさと納税で悲鳴を上げる東京23区

 [ 付記2 ]
 奪われる額自体は、無視できないほどの巨額ではあるが、全体における比率は、あまり大きくはない。税収の半分ぐらいがなくなってしまう、というようなことはなくて、全体のうちの一部が奪われるだけだ。
 その意味では、奪われる自治体の被害額は甚大ではない。
 しかし、これは、換言すれば、「ふるさと納税で利益を得ている住民は、全体のうちのごく一部にすぎない」ということになる。
 具体的に調べた数値では、2016年で 10%程度。
  → ふるさと納税の利用率が知りたい!どれくらいの人が使っている?
 2017年でも、その3割増し程度であるようだ。
  → 総務省発表(ふるさと納税に関する現況調査結果)について

 要するに、この制度で恩恵を受けているのは、ごく一部だけだ。基本的には、金持ちほど大きく得をする。中低所得者は、手間が面倒なので、この制度を利用しないことが多い。また、中低所得者は、ITのリテラシーが低いことも多いので、この制度を利用したくでも利用できないことも多い。
 こうして、「一部の人だけが得をする」「金持ちだけが得をする」「頭のいい人だけが得をする」というような、非常に不公平な制度となっている。

 原理的に言えば、「政府が金の盗み方を教えて、その盗み方を理解した人だけが、金を盗める」という制度だ。これでは、普通の「均等の納税」という原理を著しく逸脱した、不公平な税制となっている。
 要するにこれは、「正直者ほど損をする」という税制であり、「ズルをした人ほど得をする」という税制である。納税意識の高い善人は損をして、脱税意識の高い悪人ばかりが金を得る。これでは、「税の公平さ」を著しく損なっており、国民の納税意欲を毀損している。
 のみならず、悪人ほど得をするというわけで、泥棒の推奨みたいなものになっている。反社会的な制度だと言える。
 これじゃまるで、政府が殺人や強姦を推奨するのと、五十歩百歩だろう。狂気の沙汰だと言える。



 【 関連サイト 】
 本項とは直接の関係はないが、次の記事もある。ふるさと納税の改定の話。
  → ふるさと納税見直しへ 高額返礼は優遇除外:日本経済新聞
  → 総務省による「返礼品の法規制」が決まり、「返礼品の見直し」が本格化

 ──

 別途、次の記事もある。
  → ふるさと納税のウラ側A従業員寄付で企業に“キックバック”も - FNN

posted by 管理人 at 23:43| Comment(6) | 一般(雑学)5 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
年金生活者ですら枠がありますからねぇ。可能な限り節約したい身としては「身銭を切ってまでは買わないちょっと贅沢なモノ」を手に入れるには素晴らしい制度です。と書いていると乞食根性丸出しでお恥ずかしい限りですが、できるだけ以前暮らしていた市町村を選ぶことで罪悪感を減らしています(汗
Posted by 暇な人 at 2018年12月20日 08:20
正当に選挙された国会で定められた法律に基づいて納税する行為を脱税とかドロボー呼ばわりのはバランスを失していると思いますよ。
地方交付税を受け取れないお金に余裕のある一部自治体以外は75%の交付税の補填もある訳で、地方活性化のための多少歪な減税制度と考えれば良いのではないかと。
自治体がサイト運営者に10%も払って、業者にバブルが生じてるのは如何なものかと思いますが、そこは競争原理が働いて徐々に沈静化していくでしょう。
Posted by ななし at 2018年12月20日 11:20
> 法律に基づいて納税する行為

 法律に基づいて脱税する行為、ですよ。納税するのが悪いのではなく、納税しないのが悪い。ちゃんと正しく読みましょう。話を正反対に読み取っているようでは困ります。

> 地方活性化のための多少歪な減税制度

 金を盗まれた者の痛みがわからない人ですね。あなたの理屈に従えば、金持ちを殺してその財産を奪って、地方自治体に配ればいい。どうせ被害者の痛みなんかわからないんだから。
 本項では「被害者の痛み」を述べているのに、そういうものをまるきり理解できない人が制度に賛成している……と述べている。そのサンプルを提供してくださって、ありがとうございます。
Posted by 管理人 at 2018年12月20日 12:00
現在の寄付の見返りが「返礼品」だから多少分かりにくくなっているだけで、返礼品=現金であれば明らかですよね。
今でも金券や返礼品の転売などもされているわけですし、まさに合法的な脱税ですね。
こんな脱税制度を設けるくらいなら、いっそのこと最初から住民税を減税してくれと思います。
と書きつつ、もちろんふるさと納税は活用させていただいていますが。

しかし、管理人さんのコメントではないですが、、、「地方活性化のための多少歪な減税制度」なんて考えている人がいることにむしろビックリです。
自治体のやり方次第では東京23区がふるさと納税でガッツリ税収アップすることもあり得るわけで、地方活性化のための減税制度とはとても思えないですね。。。
Posted by K2 at 2018年12月20日 15:43
管理人様、更新お疲れ様です。

そういえば、音喜多議員が「理不尽な税の偏在是正措置にNo!」と、ブログで言ってますね…
あと、地方へ税金のばら撒きをすればするほど地方は楽することを覚え、産業振興への努力が減り、若者が定着することが不可能になっています。(対策をすればするほど、東京一極集中が更に加速)優秀な企業もそう簡単には出来ません。(数十年単位の理念や計画が必要)
Posted by 名無し at 2018年12月20日 16:55
今住んでいる自治体を応援したいから、ふるさと納税などせずにしっかり住民税を払っているけれど、当たり前だけれど「返礼品」などもらえません。
住民サービスで帰ってきているという理解なので不満はありませんが、やはり「ふるさと納税」はおかしな制度です。「ふるさと」でも何でもない場所に払える時点で、名称詐欺でもあります。
Posted by けろ at 2018年12月21日 14:29
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