2018年12月05日

◆ JIC の高額報酬の問題

 産業革新投資機構(JIC)の社長に高額報酬を認めるか、ということが問題となっている。その核心は?

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 産業革新投資機構(JIC)の社長に高額報酬を認めるか、ということが問題となっている。社長の側が「高額の成功報酬を認めよ」と言っているのに、政府の側が拒否して、社長解任を打ち出した。社長の側は徹底抗戦の構えだ。

 私がこれを最初に聞いたときの感想は、「高額報酬を認めるべきだ。さもないと良い人材が来ないので、経営で赤字を出してしまう。それでは元も子もない」というものだった。

 ところが、詳細を待つうちに、次の報道が来た。
 代表取締役4人に固定報酬と短期業績報酬を支給し、運用成果の20%を成功報酬として配分する方針を明らかにしていた。
( → 官民ファンド異例の高額報酬、経産省の白紙撤回で混乱:朝日新聞 2018-12-04

 田中正明社長は「投資収益の8割は国にお返しし、残る2割は利益を実現した人に分配する」と述べ、長期の業績報酬は投資の回収で得た利益の約20%を原資にする考えを示した。
( → 官民ファンド、外資も驚く高額報酬 問われる透明性:朝日新聞 2018-12-05

 20%の成功報酬。これには、口あんぐりだ。あまりにも過大すぎる。仮に 500億円の利益を上げたら、100億円だ。社長が分け前の半分を取るとしたら、50億円だ。ゴーンの 20億円を圧倒的に上回る。日産よりもはるかに小規模の事業体で、ろくに仕事もしないで投資をするだけで、超巨額の報酬を上げようとする。呆れるしかない。
 一般に、投資ファンドの収益は、投資資金を出した側(出資者)が収益を得る。ファンドマネージャーは、比率的には少額の運用手数料を得るだけだ。扱う額が巨額なので、それでも収入は巨額になるが、比率で言えば圧倒的に小さい。なのに、この社長は、運用益の 20%を取ろうとする。これでは「濡れ手に粟」に近いし、ほとんど泥棒だ。ゴーンも真っ青の強欲ぶり。

 また、解任に抵抗するというのもおかしい。本当に優秀な経営者であれば、自分の能力に自信を持っているはずだから、「能力にふさわしい報酬を出せ」と要求して、「出せないなら辞めさせてもらう」とケツをまくるはずだ。この社長も、「金を出さない」と言われたら、「それじゃ辞めませてもらいます」と言って、さっさと退任するのが筋だ。なのに、徹底抗戦して、辞任をイヤがる。このこと自体が、「能力を圧倒的に上回る巨額報酬」であることを自覚しているのも同然だ。

 ──

 さらに、決定的な報道があった。
 9月の設立会見で田中氏は「リターン(投資収益)の最大化で国民に報いる」と強調していた。JICの目的は、旧機構が果たせなかった産業育成だ。だが、田中氏の発想に異議を唱える経産、財務両省の幹部は少なくなかった。「田中氏はカネもうけをしようとしているだけだ」。ある経済官庁幹部は、田中氏の言う「リターンの最大化」をそう解釈する。
( → 報酬1億円超→青天井ダメ 金額内部で決定→国も関与 産業革新投資機構に経産省が一転:朝日新聞 2018-12-05

 「リターンの最大化」。ここがポイントだ。
 「リターンの最大化」というと、「利益の最大化」のように見えるので、歓迎する人が多いだろう。なるほど、通常の事業体であれば、そうだ。
 しかし、投資ファンドでは違う。投資ファンドにおける「リターンの最大化」とは、「ハイリスク・ハイリターン」のことだ。その意味は、こうだ。
  ・ 成功すれば、莫大なリターン。
  ・ 失敗すれば、スッテンテンになる。

 ここで、スッテンテンになるのは、出資者である。経営者は、びた一文も損をしない。それどころか、固定報酬(数千万円)をもらえる。

 とすれば、その本質は、こうだ。
 「他人の金で超巨額のギャンブルをする」

 自分では一文も金を出さないで、超巨額のギャンブルをする。それで儲けが出たら、自分は大儲け。それで損が出たら、出資者が損するだけで、自分は損しない。……そういうふうに、出社の金でギャンブルをする。
 つまり、「利益が出たら、おれのもの。損が出たら、出資者にツケ回し」というわけだ。それが、ハイリスクの投資をする。ということだ。つまり、超巨額のギャンブルをするわけだ。

 この社長は、根っからのギャンブラーなのだ。ギャンブルで大儲けを狙っている。そのための金を、国の税金でまかなおうというわけだ。そのことが、「ハイリターンを狙う」という宣言からわかる。
 投資ファンドのマネージャーには、こういう人が多いが、その典型だと言えるだろう。

 ──

 一方、これとは正反対のタイプの人もいる。2003年から2007年まで存在した「産業再生機構」の最高責任者( COO )だった、冨山和彦だ。

 この人は、まったく別のタイプだった。
  ・ 高額の報酬を求めない。
  ・ 身を粉にして働く。
  ・ 事業体自体を根本的に体質改善する。


 簡単に言えば、「ゴーンのような仕事を、低報酬で実行する」という人だ。そして、まさしく、ゴーンのような改革をなし遂げて、赤字企業体を黒字体質に改革した。
 そのことは数年前に朝日新聞で報道されたが、下記にも類似情報がある。
 企業とのコンサルタントにおける人間性や人間力の重要性を説き、「腹に落ちるようなコミュニケーション」をとるため、現場を重視することを唱えている。
( → 冨山和彦 - Wikipedia

 この人はもはや高齢で、経営の第一線で奮闘することは無理だろうが、こういう人もいるのだ。そして、こういう人こそが、求めるべき人材だ。自分の金儲けばかりを狙っているギャンブラーなんかは、不要なのだ。
 そもそも、どうしてこういうギャンブラーなんかに任せようとしたのだろうか? これもまた、安倍政権の失策だったのかもしれない。その失策が早めに露見したということなのだろう。間に合って良かった。

 ※ この人は、筑波大学附属駒場高等学校卒。東京大学法学部在学中の1984年に旧司法試験に合格。(上記 Wikipedia )
 ※ 田中正明も東大卒らしい。銀行ではエリートだったようだ。金融畑だから、帳簿のことしかわからないのかもね。

posted by 管理人 at 22:48| Comment(1) | 一般(雑学)5 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
> 「他人の金で超巨額のギャンブルをする」

 と本文中に書いたが、比喩でなく本当にこれをやるつもりでいることが判明した。
 以下、引用。

>  高額報酬問題をきっかけに所管官庁の経済産業省と対立を深める国内最大の官民ファンド、産業革新投資機構(JIC)が、投資資金の一部を公開株など金融商品の運用に充てる検討をしていることが7日、わかった。金融商品の運用による利ざや稼ぎは、新産業の育成というJIC設立の趣旨にそぐわないとして、経産省はJIC経営陣への不信感を強めている。
 → https://www.asahi.com/articles/ASLD756M8LD7ULFA02R.html

 呆れた。
 「投機をして、勝てば自分が、濡れ手で泡のボロ儲け。負ければ政府(国民)が、赤字の尻ぬぐい」
 というわけだ。
 図々しいにも、ほどがある。ほとんど、ヤクザな身の悪質さ。(ギャンブルをやるんだから、当然か。)

 調べたら、本当にヤクザっぽい人だった。
  → 「ケンカまさ」JIC社長 辣腕交渉「離席ぐらい普通」
 https://www.asahi.com/articles/ASLD65FXSLD6ULFA027.html

Posted by 管理人 at 2018年12月08日 13:49
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