2018年12月03日

◆ ゴーンの海外住宅は脱税か?

 ゴーンは自分の住んでいる海外住宅の費用を日産に払ってもらっていた。これは脱税にあたるか?

 ──

 一般的な社宅であれば、家賃は相場よりも低く設定されている。差額を会社が負担していることも多い。こういう場合、福利厚生と見なされることが多く、課税対象とはならない。
 では、ゴーンのような超豪華な住宅の場合はどうか? 日産はこれらのために数十億円の費用をかけて、住居を購入したそうだ。こういう豪華住宅のための会社負担も、福利厚生と見なされて、合法となるだろうか? それとも、(金銭ではなく物品で報酬を受けたことになるので)課税対象となるのだろうか?

 結論を言えば、「課税対象になる」だ。したがって、それを申告しなければ脱税となる。

 ──

 豪華社宅は、課税対象になる。このことは、ネット上をググれば、すぐにわかる。以下、二つ引用しよう。
 豪華社宅は家賃の全額が役員の負担となるので、役員社宅の節税効果は0です。
 ──
 1. 社内ルールの整備
一般的に、従業員の社宅については、福利厚生の一環として社内規定などに定められていることが多いのですが、これを役員社宅として適用する場合は、別途、内規などにルールを定める必要があります。
 ──
 3. 家賃以外の負担は課税対象
水道代、電気ガスなどの光熱費、駐車場代などは役員本人の負担となります。会社が負担すると、役員報酬として課税されてしまいます。
( → 役員社宅はどこまで経費にできるの!?

 この社宅が、社会通念上一般に貸与されている社宅と認められないいわゆる豪華社宅である場合は、次の算式の適用はなく、通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になります。
 ──
(1) 役員に無償で貸与する場合には、賃貸料相当額が、給与として課税されます。
(2) 役員から賃貸料相当額より低い家賃を受け取っている場合には、賃貸料相当額と受け取っている家賃との差額が給与として課税されます。
( → No.2600 役員に社宅などを貸したとき|国税庁

 いずれにせよ、豪華社宅は課税対象となる。
 従って、それを所得として申告していなければ、脱税となる。

 ゴーンの場合は、「将来受け取るべき 80億円」については、(まだ受け取っていないから税申告はまだ不要なので)脱税とはならないだろうが、豪華社宅の分については脱税となるだろう。

 ──

 朝日の報道によると、ゴーンの豪華社宅は、レバノンとブラジルにあるそうだ。日産はこれらのために数十億円の費用をかけて、ペーパーカンパニーをタックスヘイブンに設立してから、そこを経由する形で、費用を住居購入費にあてたそうだ。
  → 監査法人、「子会社は不透明」指摘 ゴーン前会長へ住宅提供 13年前後:朝日新聞

 「日産本体からの支払いを隠蔽する」というふうにしているのだから、所得隠しの意図は明白である。きわめて悪質な脱税だと言えるだろう。(国内の仕事についての国内での報酬であるのに、海外で支払っていることによって、納税していないからだ。)

 巨額の脱税の量刑は、懲役刑が妥当であるが、どのくらいが妥当か? 実例を見ると、次の例がある。
  → 約17億円を脱税して、懲役7年6カ月
  → 10億円を超える巨額脱税で、懲役4年

 ゴーンの場合は、数十億円の住宅だが、所有権は日産の子会社にあるので、家賃相当額だけが脱税となる。仮に 2軒で 30 億円だとして、そのうち 10年分なら、60年のうちの 10年と見なして、6分の1だから、5億円。5億円の脱税となる。
 上記の判例からすると、懲役2年ぐらいが妥当か。現金でなくて現物であるという点では情状酌量の余地があるが、会社を巻き込んだ悪質な所得隠しという点では逆に加算の余地がある。差し引きして、打ち消しあうので、懲役2年(実刑)ぐらいが妥当か。

 ゴーンの場合は、前項の「特別背任・未遂」だけでも懲役2年ぐらいが妥当となる。
 脱税の分では、別件で懲役2年ぐらいが妥当となる。
 とはいえ、全部ひっくるめて、一つの罪と見なせば、2年と2年の単純加算の4年でなく、それから少し割引した懲役3年(実刑)ぐらいが妥当か。

  ※ もう少し重くてもいい。上記では少し甘くしたので。
  ※ ただし、「刑期の半分で仮釈放」があってもいい。

 ──
 
 結論。

 ゴーンの海外社宅は、脱税になる。他の罪と合わせて、全部で懲役3年(実刑)ぐらいが妥当だ。
 これが私の判断だ。

( ※ 現実にそうなるかどうかは不明。また、現実の判決を予想しているわけでもない。私なりの見解だ。「私が裁判官だったらそうする」という話。)



 【 関連動画 】










 【 関連サイト 】
 別件だが、次のページがある。(住宅でなく、将来の 80億円の話。)
  → ゴーン氏「退任後報酬による起訴」で日産経営陣が陥る“無間地獄”(郷原信郎)

 この弁護士は、相も変わらずゴーン擁護を続けているが、論理的ではない。
 「有価証券報告書に掲載する必要があるとすれば、その報酬は確定したものだ。確定したものであるとすれば、日産は 80億円を支払う必要がある。検察側の主張が成立するとすれば、日産は 80億円を払う必要があるので、困ったことになる」
 という主張だ。(要旨)
 具体的には、次の文だ。
 検察が主張するとおり、「退任後の報酬」について合意の時点で支払いは確定しており、単に「支払時期が退任後に後送りされているだけ」だとすれば、日産側は、ゴーン氏退任の際に支払わなければならないことになる。また、退任後の役員報酬自体が「違法」とされたのではなく、開示しなかったことが違法とされているのだから、「違法な役員報酬は支払わない」という理由での支払いの拒絶もできない。日産側の経営判断で支払わないとすれば、「支払は確定していた」という前提を否定する重要な間接事実となる。
 有価証券報告書等の虚偽記載で起訴された前経営者に、巨額の退任後報酬を支払うなどということは、株主には到底理解されない。しかし、検察の主張と整合性をとろうと思えば、ゴーン氏への約80憶円の支払いを拒絶することは容易ではないのである。
( → ゴーン氏「退任後報酬による起訴」で日産経営陣が陥る“無間地獄”(郷原信郎)

 ここには二つの問題がある。

 (1)
 「日産は二律背反になる」(あちらが立てばこちらが立たずとなる)という理屈で検察と日産を批判しているが、同じことはゴーン側にも言える。
 「ゴーンは二律背反になる」(あちらが立てばこちらが立たずとなる)というふうになる。つまり、無罪と80億円のどちらかを諦めなければならない。この件は、先に述べたとおり。
 というわけで、こうなったら、ゴーンはジレンマに立たされる。
  ・ 無罪を主張すれば、80億円を受け取れなくなる。
  ・ 80億円を受け取ろうとすれば、有罪となる。

( → ゴーンの未払い金は? : Open ブログ

 (2)
 報酬の支払いが「確定している」からといって、それを払う義務があるとは限らない。「契約をキャンセルする」という道もあるのだ。この場合は、キャンセル料を払うだけで済む。
 名目が「アドバイス料」「コンサルタント料」などであれば、「アドバイスや顧問を受け取らない」ということにすれば、サービスを受け取らないのだから、サービスの対価を払う必要もないのだ。このことは、通常の「キャンセル料」と同様である。たとえば、飛行機に乗らなければ、「飛行機に乗る」というサービスを受けないのだから、全額を払う必要はない。部分的なキャンセル料を払うだけで済む。
 こんなこともわからないで、「全額を払う必要がある」なんて主張するのだから、この弁護士は、デタラメ論理もいいところだ。結論に合わせて、法律をねじ曲げて解釈しているとすら言える。三百代言だな。

 ※ 「キャンセル料で済む」という話は、下記項目のコメント欄ですでに述べた。
    → ゴーンの未払い金は? : Open ブログ
       Posted by 管理人 at 2018年11月27日 18:13

      の箇所。

 なお、名目が「報酬」であれば、日産側は支払いの義務が発生するが、「報酬」であることはゴーン自身が否定しているのだから、「報酬としての支払い義務」などはもともと存在しない。
  → ゴーンの法律的な罪名は?: Open ブログ
 上の弁護士は、話の前提からして狂っているな。(「報酬」であることを前提としているので。つまり、虚構を前提としているわけで、砂上の楼閣だ。)
 
posted by 管理人 at 23:07 | Comment(4) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
脱税に関する記事も見たことがないし、国税も動いていないようで、何を根拠に脱税って決めつけているのでしょう。
海外の子会社が購入して、海外で受けているベネフィットに対して、日本の税法が適用されるとも思いませんがね。
報酬の件についても、報酬等の開示義務違反で逮捕されているのに、弁護士が「報酬」であることを前提としてブログを書いていることを批判しているが、貴方の方が完全に論理破綻しているのですが、大丈夫ですか?
逮捕の根拠となる内閣府令では、「報酬等(報酬、賞与その他その職務執行の対価としてその会社から受ける財産上の利益であって、最近事業年度に係るもの及び最近事業年度において受け、又は受ける見込みの額が明らかとなったもの」を開示せよとなっています。
ゴーンが役員としての職務の対価として受け取るべき報酬等で、繰り延べしているものであれば、日産には支払う義務が生じます。もちろん支払いの拒否はできますが、争いになったとき、有価証券報告書に記載すべき確定的で手続きも完了したものだから、支払う義務があると言ってくる可能性は十分ありますよ。
Posted by Pora at 2018年12月05日 11:03
> 脱税に関する記事も見たことがないし、

 だから私が書いているんです。報道済みのことを書いても、ただのコピペにしかならない。本サイトは、コピペサイトではありません。お間違えなく。
 あと、理由を言うと、脱税を扱うのは国税庁なので、特捜は担当外です。検察が出るとしたら、国税庁の調査と告発があった後です。
  → https://www.datsuzei-bengo.com/flow/

> 何を根拠に脱税って決めつけているのでしょう。

 本文中にきちんと書いてあるのに、わからないのなら、日本語を学ぶため、小学校に行ってください。

 もしかしたら、文盲ではなく、ただの馬鹿かもしれないので、かわいそうだから親切に教えて上げると、「きわめて悪質な脱税だと言えるだろう」という箇所の前後に説明してある。それが読めないのかな? 

> 海外の子会社が購入して、海外で受けているベネフィットに対して、日本の税法が適用されるとも思いませんがね。

 だったら所得を海外移転して、(金塊などで)現物支給してもらえば、日本人は誰も所得税を払わなくて済みますよ。金持ちはみんなそうするでしょ。国家が脱税を許容するのも同然だ。
 このことは、本文を読めばすぐにわかるとおりなんだが。

> ゴーンが役員としての職務の対価として受け取るべき報酬等
> 日産には支払う義務が生じます。

 「報酬ではない」「義務はない」と主張しているのはゴーン側です。だから「ゴーンの主張に基づけば」というのが、私の話の展開法です。
 一方、検察は、ゴーンの主張に基づかないで、別の理屈で攻めている。
 攻め方が違うわけ。で、私は上記の攻め方を示している。こういう違いがあるんだが。
 あなたは論説文を読まない方がいいですよ。読んでも、頭には入らない。頭を素通りするだけ。
Posted by 管理人 at 2018年12月05日 12:36
だから私が書いているんです。報道済みのことを書いても、ただのコピペにしかならない。本サイトは、コピペサイトではありません。お間違えなく

そのわりに都合が悪くなると引用先の記事のせいにされますよね。
私の主張ではない、とかかいてるのはどこそこの新聞だとか。
Posted by きゅうとぴ at 2018年12月08日 00:11
 そりゃまあ、引用部分と、本サイトの主張部分とを、区別できない人なら、話が矛盾しているように思えるかもね。

 だいたい、実例も引用も示さないで、抽象的に自分の印象だけで、他人の悪口を言う人もいるしね。

 そもそも、「引用には引用符を付ける」という最低限のリテラシーさえないぐらいだし。そういうレベルの人さえ相手にしなくちゃならないんだから、大変だ。
Posted by 管理人 at 2018年12月08日 00:23
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