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日産のゴーンの不正については、「報酬」であるという方向で検察は立証しようとしているようだ。朝日の最新(土曜日)の記事では、そう記してある。
→ ゴーン前会長の退任後報酬、別の複数名目に隠蔽計画か:朝日新聞
一部抜粋しよう。
隠したとされる報酬を退任後に受け取る際、決算書に別の複数の名目で計上することを計画していた疑いがあることが、関係者への取材でわかった。東京地検特捜部は、退任後の受け取り分を役員報酬と分からないようにする隠蔽(いんぺい)工作とみている模様だ。
関係者によると、ゴーン前会長は約20億円の年間報酬のうち、約10億円はその年に受け取って開示し、残る約10億円の受領は退任後に繰り延べると明記した合意文書を、日産側と毎年、交わしていた。
だが、繰り延べ分は、損益計算書、貸借対照表などの財務諸表に未払い報酬や引当金として計上しておらず、経理部門や監査法人は気づけなかったという。
これを退任後に受け取る際は、財務諸表に計上する必要がある。関係者によると、ゴーン前会長への支出を役員報酬の繰り延べだと分からなくするため、コンサルタント料や、競合他社への再就職を禁止する契約料といった、別の複数の名目で紛れ込ませることを計画していたという。
特捜部は、こうした支払い計画が記された文書も押収。退任後の報酬支払いが確定していたことを補強する証拠とみている模様だ。
一方、本サイトでは少し前に、次の項目を書いた。
→ 執行猶予を廃止せよ: Open ブログ
ここでは、次のように記述した。
[ 補足 ]
ゴーンの罪名は、「横領」または「特別背任」だろう。「有価証券報告書の記載違反」は、最初の逮捕の理由であって、本丸は「横領」または「特別背任」だろう。
この件は、下記に参考記事がある。
→ 森本特捜部長は超強気!「再逮捕して業務上横領・特別背任で追い込め」 )
では、「報酬」なのか? それとも、「特別背任」(横領)なのか?
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検察は、「報酬」として立証しようとしている。その場合は、「有価証券報告書の記載違反」となる。その法定刑は、10年以下の懲役。
一方、「横領」は 5年以下の懲役。「特別背任」は 10年以下の懲役。
罪の重さで言うと、「有価証券報告書の記載違反」も「特別違反」も同等であるようだ。
ただ、「有価証券報告書の記載違反」は、ちょっと苦しい。これはただの形式犯であるし、法の本来の趣旨である「企業業績の捏造」とはまったく異なる部分的なものにすぎないからだ。数千億円の利益を上げている会社本体のなかで、80億円ぐらいの不実記載があったとしても、そのこと(誤記)でただちに巨額の損失をもたらしたということにはならないから、罪の程度は低い。仮に有罪だとしても、懲役刑になることはあるまい。せいぜい罰金刑。重くても、懲役刑に執行猶予だ。実刑になることなど、およそありえそうにない。
一方、「特別違反」はどうか? この場合、「(企業業績の)記載を偽った」というような書類上の犯罪(誤記)ではなくて、まさしく 80億円を盗んだことになる。80億円の泥棒! 日本史上最大の泥棒とも言える。(3億円事件をはるかにしのぐ。)
この場合は、長期の懲役刑(実刑)であってもおかしくない。
では、そのどちらか?
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検察は、「有価証券報告書の記載違反」をめざしているようなので、「罰金刑か執行猶予」という刑罰をめざしていることになる。
一方、私としては、「特別背任」を妥当と見なしているので、「長期の懲役刑(実刑)」となる刑罰を妥当だと見なしていることになる。
※ これまでの論理の組み立てから、刑罰も帰結される。
では、法律的には、どうか? それが本項の主題だ。
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結論を言おう。法律的には、検察の方針よりも、私の方針の方が正しい、と見なせるだろう。つまり、「有価証券報告書の記載違反」よりも、「特別背任」の方が妥当だ、と見なせるだろう。
では、なぜか? それは、(受け取るはずの)80億円という金額が「報酬」として認められるはずの道を、ゴーンがふさいでしまったからだ。
説明しよう。
80億円という金額が「報酬」として認められるためには、それが「業務の対価」であることが必要だ。つまり、「日産自動車の経営」という業務の対価だ。
しかるに、上の朝日の記事にあるように、ゴーンは「報酬」であることを隠蔽するために、別の名義にしようとした。
これを退任後に受け取る際は、財務諸表に計上する必要がある。関係者によると、ゴーン前会長への支出を役員報酬の繰り延べだと分からなくするため、コンサルタント料や、競合他社への再就職を禁止する契約料といった、別の複数の名目で紛れ込ませることを計画していたという。
正当な対価としての「報酬」ではなく、「コンサルタント料」や「契約料」という名目にしようとした。しかしそれは、将来の仕事の報酬としては、あまりにも過大である。日産の経営者としてなら 10億円の報酬は過大ではないが、「コンサルタント料」や「契約料」としては 10億円は過大である。その過大である分が、「背任」(または横領)に相当する。
ゴーンは、「報酬である」と言えば「正当な対価である」と主張できたのに、「報酬ではない」と言うことで「不当な受領」と見なされることになった。こうして、受け取る金を正当化する道を、自らふさいでしまったのだ。
かくて、自分自身の主張によって、彼の罪は「背任」(または横領)になる。
これが私の判定だ。
※ ただし、まだ実行していないので、既遂犯ではなく、未遂犯である。
※ 背任・特別背任の未遂犯は、処罰される。
→ 背任罪 - Wikipedia
→ 特別背任罪 - Wikipedia
※ 特別背任の未遂犯としては、懲役2年の実刑ぐらいが妥当だろう。
[ 付記 ]
引用した朝日の記事には、次の記述もある。
一方、関係者によると、側近の前代表取締役グレッグ・ケリー容疑者(62)は、前会長の退任後の処遇をめぐる「雇用契約書」の存在は認め、日産だけ辞めた時と、仏ルノーも合わせて辞めた時の2パターンで金額を算定し、自身が署名したと説明。
ケリーが署名(サイン)したそうだ。この点では、私が前に予想したことが当たっていたことになる。
→ ゴーン事件の続報: Open ブログ
[ 余談 ]
フランス政府は、ルノーを通じて、日産を支配したがっているようだ。日仏首脳会談でもその話が出た。一方、日産の側は、それをイヤがっているそうだ。(各種報道)
ここで日産のために、うまい方法を教えよう。
フランス政府はルノーにおいて、15%の株しかない。この 15% というのは、日産と同じだ。フランス政府がいくら「筆頭株主だ」と言っても、日産は「だったらおれと同じじゃん」と言って、フランス政府の言い分を無効化できるわけだ。
フランス政府が何かを言い出したら、日産がそれを否定する見解を出すことで、15%同士で打ち消しあうことができる。対消滅みたいなものだ。
こうして日産は、フランス政府の横暴を、無効化することができる。
一方の日産の保有する15%のルノー株は議決権を行使できません。
対等というには無理があるかと。
https://biz-journal.jp/2016/01/post_13219.html
http://blog.knak.jp/2018/11/post-2111.html
日産の打ち手としては、不当な介入という口実で、ルノー株を25%まで買い増しして、ルノーの日産に対して持つ議決権を消滅させることだけのようです。
なぜそうならないかというと、フロランジュ法の条件を満たしていないからではなくて、日産の株全体が「議決権なし」というふうに契約されているからだ。
しかしこんなのは不平等契約だから、日産は取り消そうとしているようだ。
> 日産は取締役会の構成や資本関係などに関する協定(RAMA)からの離脱をちらつかせる。離脱すれば自身より小規模な親会社ルノーの株式を自由に買うことができるようになり、ルノー支配を覆せる。
https://jp.reuters.com/article/renault-nissan-macron-idJPKCN1NY0HD
ルノー株を25%まで買い増すというのは最終手段で、それは「決裂」を意味する。それで勝利は得られるが、フランス政府との友好関係は捨てなくてはならない。
そうする前に「伝家の宝刀」を抜かないまま見せつけて、妥協に追い込む……というのが、本サイトのお薦めの方針。
> では、どうすればいいかというと、これは「伝家の宝刀」にするべきだ。つまり、「抜くぞ、抜くぞ」と見せかけて、抜かないでおくのが最善だ。
→ http://openblog.seesaa.net/article/462876829.html