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前項では、「ヘリ空母を空母に改造する」という案を否定した。
本項では、別案ないし代案として、「ヘリ空母を近代化する」という案を出す。ただし、母艦の方を変えるのではなく、母艦に搭載するヘリコプターの方を変える。
ヘリコプターを、従来型のヘリコプターから、ティルトローター機の V-280 に変える。
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ティルトローター機の V-280 というのは、前に紹介したことがある。そちらを参照。
→ オスプレイに代わる小型機 V-280: Open ブログ
→ オスプレイと石破茂: Open ブログ
他サイトでは、下記のページもある。
→ 「オスプレイ」の進化形「V-280」の試作機が完成|WIRED.jp
この機種は、現在は開発中だが、いいことずくめだ。メーカー公式は下記。
→ Bell V-280 Valor - 現在のヘリコプターの 2 倍の速度、2 倍の航続距離(公式)
ティルトローター機なので、オスプレイと同様に、巡航中は飛行機(プロペラ機)のように飛ぶ。そのおかげで、速度も航続距離も、ヘリコプターの2倍だ。
ヘリコプターが高速であるということは、オスプレイのような輸送用途では、あまり意味がない。なぜなら飛行機の方が優れているからだ。実際、オスプレイなんて、ほとんど無用の長物である。
※ 日本のように自国防衛に限るのならば、ほとんど無用である、という意味。ただし、敵地に上陸する侵略用には有効だ。中国に侵攻するというような用途であれば、有効だ。(それ以外には無効。)
一方、ヘリ空母の艦載機としては、ヘリコプターが高速であるということは非常に有効である。高速であれば、到達時間が短い。そのことで、(敵の潜水艦の発見までの)到達半径が広がるのだ。
たとえば、敵の潜水艦を発見してから、20分以内にその地域に到達することが必要だとする。その場合、20分以内に到達できる距離というのは、ヘリコプターの速度に比例する。速度が2倍になれば、到達できる行動半径も2倍になる。行動半径が2倍になれば、対象の面積は(2の2乗にあたる)4倍になる。
つまり、速度が2倍になると、扱える面積は4倍になるから、機数が4倍になったのと同じ効果がある。ヘリ空母に搭載するヘリの機数が 10機だとすると、ヘリコプターを V-280 に置き換えることで、4倍の 40機を搭載したのと同じ効果がある。
それほどにもめざましい効果が生じるのだ。これはいわば、ヘリ空母の数(艦船数)が4倍になったのと同じぐらい効果だ。
※ 単純に4倍とまでは言えないが。
ヘリ空母を4倍配備するためには、4倍の金がかかる。ヘリ空母1艦が 1200億円(いずもの場合)もするから、これが4艦だと 4800億円。3艦増やすためには、3600億円もかかる。
一方、現在のヘリコプターを V-280 に置き換えるだけなら、はるかに小額で済む。 V-280 が仮に 50億円だとしても、10機で 500億円だ。3600億円に比べれば、はるかに小額で済む。格安だ。これほどの格安価格で、能力を4倍増にできるのだ。コスパは最高と言えるだろう。
というわけで、「ヘリ空母のヘリコプターを V-280 にする」という案を提案しておこう。
※ ただし現在は開発中。実際に配備されるのは数年後。そのときのために、貯金しておけばいい。
[ 付記1 ]
「ヘリコプターのかわりにドローンにせよ」
という案もある。なるほど、ドローンは無人機なので、格安で済む。それはメリットだ。
しかしドローンは遅すぎるので駄目だ。本項でも述べたように、ヘリ空母ではヘリコプターの高速性が何よりも重要となる。グズグズしていたら、敵の潜水艦を見つけても、追いつく前に逃げられてしまう。これではまったく無意味だ。
[ 付記2 ]
「対潜哨戒機もあるぞ」
という声もありそうだ。しかし対潜哨戒機は、本土の基地から、遠い海上の現場まで届くのに、長い時間がかかる。尖閣諸島のあたりに敵の潜水艦を見つけても、九州や沖縄などから、えっちらこっちら対潜哨戒機を飛ばしても、現場に届くころには、敵の潜水艦は逃げ去っている。
海で浮いているヘリ空母ならば、ヘリ空母のそばで見つけた潜水艦を、すぐに攻撃できるのだが。
要するに、対潜哨戒機は、本土防衛には向いているが、離島や前線の防衛には向いていないのだ。
[ 付記3 ]
「どうせティルトローター機を使うのなら、オスプレイを使えばいいんじゃないの?」
と思う人もいるかもしれないが、オスプレイは駄目だ。あまりにもデカすぎるし高価すぎるからだ。牛刀をもって鶏を割くがごとし。
大きすぎると艦載の搭載数が減るし、必要な価格も急上昇。大量の荷物を運べるが、哨戒用途では、ほぼ空荷のままで飛ばすしかない。まったくの無駄。
[ 補足 ]
前項の補足ふうの話。
空母というのは、そもそも必要ない。前線で敵の艦隊をたたくのであれば、日本には「不沈空母」があるからだ。それは、離島である。たとえば、下記だ。
与那国島・石垣島・宮古島・沖縄本島
離島は、そこに基地を建設することで、前線の不沈空母として利用できる。だから、いちいち空母を建造するよりは、これらの島に飛行場を建設して、対空ミサイルを設置すればいいのだ。その方がはるかに低コストで有効な兵力となる。
自国防衛を目的とする限り、離島を不沈空母とするのが最も有効なのだ。
ただし、遠隔地への攻撃のためには、空母が必要だ。アメリカの空母はすべてそういう目的のためにある。自国防衛のためではなく、東アジアや中東や欧州に出向いて攻撃するためにある。
日本が空母を建造するとしたら、まずはどの地域を攻撃するかを決めた方がいい。たとえば、中東でアメリカの空母を守るために、いっしょに攻撃活動をするとか。
ただしそのときは、日本を守る戦力が疎かになるから、日本という本体は攻撃されてしまう。
空母を配備するというのは、そういうふうに、亡国のための軍事政策なのである。
航空機自体はハンガー等で被害を免れても、滑走路に穴をいくつも空けられればしばらくは航空基地としての機能は使用不能になります。
そうなった時の反撃の起点や中継点として、位置の特定の難しい空母は有力な候補になるかと思われます。
それはないでしょう。衛星写真だってあるんだし、哨戒機だってあるんだし、空母は丸見えです。たぶん24時間、追尾するはずです。一刻も見失わないはず。
> 短距離や中距離の弾道弾、巡航ミサイル
空母はいったん場所がバレたあとでは、防御力が弱い。
上記攻撃を浴びたとき、地上基地ならば、強大な防御力で何とかなりますが、空母にそれらを浴びせられたら、ひとたまりもないかも。
漫画の「空母いぶき」でも、敵の航空機や潜水艦や空母に対しては、優勢気味に戦っていますが、「敵の高速弾道ミサイルが来たら、空母いぶきはこっぱ微塵になるぞ」という前提で話が進んでいます。
空母にはミサイル防衛網が積んでないから、仕方ないですね。また、たとえ積んであっても( or イージス艦がそばにいても)、弾の数に限りがあって、弾切れになるから、高速弾道ミサイルの集中攻撃を浴びたら、回避しきれません。
空母が一つよりは、複数の不沈空母(= 島の飛行場)の方が、ずっと戦力的に優位です。
> 滑走路に穴をいくつも空けられればしばらくは航空基地としての機能は使用不能になります。
短期間で修復できます。
一方、空母だと、修復はほとんど不可能。それどころか、本体を損傷すれば、沈没したり、航行不能になる。下手をすれば炎上する。
対潜哨戒は下手にスピード出すと還って探査精度が落ちる
むしろスピードよりも低速で長時間哨戒出来る機体の方が理想的
そしてティルトローター機は「低速」で「長時間」可動させるには不向きな特性の機体
なるほど。そういう面もありますね。
一長一短かな。
> 空母にそれらを浴びせられたら、ひとたまりもないかも。
だとしたら「いぶき」はとっくに沈没していないとおかしいですね。
なぜ今でも東シナ海にいられるんでしょう?
空母の正確な現在位置を特定するのはそれだけ難しいからではないですか?
> なぜ今でも東シナ海にいられるんでしょう?
それは漫画で現在進行中です。その謎が示されたのは、前回の分。続きを知りたければ、次回以降をお読みください。私に質問するのではなく、漫画を読みましょう。今まさにその話題を扱っているんだから。
> 空母の正確な現在位置を特定するのはそれだけ難しいからではないですか?
きちんと正確な現在位置を特定する必要はありません。おおまかに正確であれば、あとはミサイルが自動追尾して、自動的に目標にぶつかります。
また、多数の同時発射なら、多数を一帯にぶち込むので、そのうちの一つがぶつかればいい。回避することも不可能。(回避しても、回避先にミサイルが来る。)
空母は、(地上基地に比べて)防御力が小さいので、飽和攻撃には弱いんです。
なお、中国が飽和攻撃を取ると、話は一瞬で終わってしまうので、漫画にはならないでしょう。
だいたい、空母が一つだけあったって、勝負にはならないんですよ。戦争で重要なのは物量です。先の大戦で判明したとおり。戦艦大和と武蔵の二つだけがあっても、敵の圧倒的な物量の前には、なすすべもない。