( ※ ゴーンには執行猶予を付けたくない、という話も。)
※ 最後に 【 追記 】 あり。
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執行猶予が付くと、有罪でも無罪と同様の結果になる。これは著しく不正義なので、執行猶予というものは原則的に廃止した方がいい。
この話を思いついたきっかけは、ゴーンの不正だ。巨額の不正をしても、最終的には執行猶予になりそうな雲行きだ。
ただ、話のきっかけは別として、この話題には、もっと典型的な例があるだろう。それで思いついたのが、本日の別の記事だ。
→ 吉澤ひとみ被告に懲役2年 執行猶予5年の有罪判決
→ 吉澤ひとみ、飲酒ひき逃げ事件後も飲酒継続
事故後も断酒していないどころか、逮捕されるまでは毎日自宅のキッチンで酒を飲んでいたという。
インターネット上ではさまざまな意見が飛び交っている。特に、事故後も酒を飲んでいることについては「被害者とすれば怒りしか込み上げてこないと思う」「もはやアルコール依存症を疑ったほうがいいのでは」「ひき逃げ犯が毎日家で酒飲んでるって怖すぎる」と批判が殺到している。
轢き逃げをしても、執行猶予が付く。実質、無罪である。そして、その理由はこうだ。
吉澤被告が反省と後悔している姿勢を認め、被害者との示談が成立していることも考慮した。
しかし、これは筋が通らない。単に交通事故で相手に被害を与えただけであるならば、相手に弁済して、相手の赦しを得たことで、「被害者との示談が成立している」ことを減免の理由としてもいい。
しかし、この犯人は、轢き逃げをしたのだ。そして、轢き逃げの影響を受けるのは、轢き逃げの被害者だけではない。社会全体だ。言い換えれば、轢き逃げとは、社会全体への犯罪なのである。なのに、「被害者の赦しを得たこと」を執行猶予の理由とするのは、根本的におかしい。この裁判官は、「轢き逃げとは誰に対する罪であるか」ということを、まったく理解できていない。
これは現場の動画だ。証拠となる。
これを見ても明らかなように、被害者の状況を見ることもなく、すたこらさっさと逃げ出している。そして、その理由は、自分が酔っ払っていたことだ。大酒を飲んで飲酒運転をしていたことがバレるとまずいから、さっさと逃げ出したわけだ。悪質極まりない。
→ 基準値0.15ミリグラムの4倍近い0.58ミリグラムのアルコールが検出された
飲酒運転だけでも重罪が妥当なのに、轢き逃げまで加わっている。それでいて、「被害者への弁済が済んでいるから」という理由で、執行猶予という実質無罪。これでは、
「金持ちは、金を払えば、重罪が無罪になる」
というのも同然だ。不公正極まりない。
※ ついでだが、金持ちでなくとも、保険に入っていれば、被害者弁済は可能である。したがって、この判決は、「保険に入っていれば、飲酒運転と轢き逃げをしても実質無罪」と言っているのも同然だ。
というわけで、執行猶予は妥当ではない。
──
ただし、その一方で、実刑は重すぎるとも言える。今回は、被害者は軽いケガをしたぐらいで済んでいるので、それに比して、懲役2年の実刑というのは、厳しすぎると言えなくもない。(特に、初犯であるならば。)
では、軽すぎる執行猶予と、重すぎる実刑との、中間的な処分はないのか?
日本では、「ない」と言っていいようだ。実刑でもないし執行猶予でもない、という判決は、ありえないようだ。
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ところが、英国では、その中間となる処分があるようだ。それは、「刑期の半分で仮釈放」というものだ。
飛行機のパイロットが泥酔していて、搭乗の直前に逮捕された、ということがあった。このパイロットには、有罪の判決が出たが、「刑期の半分で仮釈放」というふうになっているらしい。(英国では実刑はみんなそうなっているのかも。)
被告が早い段階で罪を認め、反省していることなどを減刑理由に挙げた。刑期を半分終えれば条件付きで仮釈放される。
( → JAL副操縦士に禁錮10カ月 検察「まっすぐ立てず」:朝日新聞 )
ひるがえって、日本ではどうかというと、仮釈放は刑期の3分の2以降だそうだ。
実際に仮釈放が許される時期については、有期刑は最近ではほとんどの場合、執行刑期の3分の2以上であり、……
( → 仮釈放 - Wikipedia )
日本では3分の2以上だ。半分ということはないし、それ以下ということもない。かわりに、一挙に(刑期は)「ゼロ」となる。それが執行猶予だ。
──
そこで、本項では新たに提案しよう。こうだ。
「仮釈放という制度は、(ほぼ)廃止する。有罪になったからには、少なくとも短期間は服役するようにするべきだ。最低でも、1割ぐらい。もうちょっと長くて、3分の1ぐらいであってもいい。半分であってもいい。しかもそれを、判決の時点で決めるべきだ」
現状ではどうか? 実刑の人を対象に、服役態度のいい人に限って、刑期満了よりも短めに仮釈放が可能となる。それを決定するのは、仮釈放の決定の担当部門(法務省所管の地方更生保護委員会)だ。
そこで、かわりに裁判所が(判決の時点で)決めるべきだ……というのが、本項の提案だ。
そして、そのことで、「重罰がふさわしい有罪なのに、なぜか軽微な軽犯罪法違反の人よりも軽い罰(実質無罪)で済む」という不正義を排除できる。
現状では、ちょっとした軽い犯罪ぐらいでも、短めの禁固刑になることがある。なのに、先の女性タレントは、重い罪を犯しても、実質無罪だ。これではあまりにもアンバランスすぎる。重い罪を犯したものの方が罰が軽くなるわけだ。ひどい。
こういう不正義をなくすべきだ、というのが、本項の趣旨だ。
[ 付記 ]
ゴーンはどうか? 先は見通せないが、執行猶予になりそうな感じだ。飲酒運転で轢き逃げをしてさえ執行猶予なのだから、40億円の不正とはいえ、人命には影響を及ぼさない罪には執行猶予となる可能性は十分にある。(本人の名声もある。)
それでも、本項の提案が実現すれば、2カ月ぐらいの服役(以後は仮釈放)はあってもよさそうだ。それならば、まともな罰となるので、社会的正義にも適う。(実質無罪ではなくなるからだ。)
ゴーンについては、「実際には(まだ)金を受け取っていなかった」というような理屈で、無罪を唱える弁護士もいる。
しかしこんな理屈が通れば、テロリストでさえ無罪になる。
「時限爆弾を仕掛けて、大量テロ殺人を狙った。だが、タイマーが時刻になる前に、警視庁の爆発物処理班が不発処理に成功したので、爆発を防いだ」
という場合がそうだ。ここでは、
「たまたま被害が発生しなかったから」
という理由で、無罪する……というようなものだ。理屈がメチャクチャすぎる。
つまり、「実際には(まだ)金を受け取っていなかった」というような理屈は、無罪の根拠にはならない。
とはいえ、執行猶予の理由にはなりそうだ。
だが、80億円もの不正で、執行猶予となるのは、著しく社会的不正義だろう。そこで、「執行猶予と実刑との中間的な制度を作るべし」というのが、本項の提案だ。
[ 補足 ]
ゴーンの罪名は、「横領」または「特別背任」だろう。「有価証券報告書の記載違反」は、最初の逮捕の理由であって、本丸は「横領」または「特別背任」だろう。
この件は、下記に参考記事がある。
→ 森本特捜部長は超強気!「再逮捕して業務上横領・特別背任で追い込め」
「有価証券報告書の記載違反」を最初の逮捕の口実にしたのは、もしかしたら、すごい罠が仕掛けられていたのかもしれない。
「有価証券報告書の記載違反」を逮捕の理由にすると、ゴーンの側は「これは報酬じゃないから、有価証券報告書の記載違反にはならない」と弁解する。
しかし、報酬でないとしたら、支払いの義務はないだろう……と先に述べた。
→ ゴーンの未払い金は? : Open ブログ
一方で、報酬でないとしたら、「何も仕事をしないで金を受け取る」ということになる。とすれば、これは、「横領」または「特別背任」となる。
つまり、「報酬です」と言えば、「横領」または「特別背任」とならないのだが、あえてその道をふさぐために、「報酬ではありません」と言わせた。そのために、「有価証券報告書の記載違反」を最初の逮捕の口実にした。そして、「報酬ではありません」と言わせたことで、最終的には、「横領」または「特別背任」に追い込む……というわけだ。
これは、巧妙な「罠」(トラップ)だ、と言える。
そこまで狙ったのだろうか? もしそうだとしたら、特捜はものすごく頭がいいね。
( ※ 実際には「たまたまそうなった」というだけだと思えるが。「うまいことをやったな」という私の分析が特別に切れているだけで、特捜の頭はそれほど切れていないのかもね。)
【 追記 】
実は、本項の提案はすでに実現済みだという。コメント欄で教わったが、
・ 改正刑法27条の2(刑の一部の執行猶予)
・ 平成25年6月19日改正
・ 平成28年6月1日施行
という形で、実現している。
となると、あとはこれを普及させることが重要だ、ということになる。制度は作ったものの使われずじまいということであれば、仏作って魂入れずになってしまうからだ。
今の裁判では、「有罪か無罪か」ということばかりが問われて、「量刑はどのくらいか」ということは議論されにくい。議論されるのは「量刑が不当だ」として控訴された控訴審ぐらいだ。
そこで一審の段階から、「量刑はどのくらいか」「執行猶予の期間はどのくらいか」を議論した方がいい。(現状ではほとんど議論されていない感じだ。有罪か無罪かが決まっていないせいだろうが。)
※ なお、これはこれとして、「執行猶予を廃止せよ」という話は成立する。せっかく制度上では可能になったのから、その制度に則って、執行猶予の判決をなくしていくべきだ。
飲酒運転の場合、保険会社側の免責事由となりうるので、可能とは限りません。被害者保護の観点からおりることもあるようですが。
今回の場合、相場の慰謝料にイロをつけたのは間違いないでしょう。それと引き換えに「処分を望まない」という上申を被害者にさせたのです。(被害者本人もそれを望むようなことをSNSに書いていましたからね。削除済ですが)
裁判所とて、直接の被害者への害+社会への害を考えていないわけではないですが、
被害者への害+社会への害=実刑でも
被害者への害+社会への害>社会への害のみ=執行猶予
ということです。
交通事故の性格上被害者の処分感情はとくに近年非常に重視されますので。
普通のサラリーマンなら間違いなく一発実刑事案だと思いますよ。
→ https://www.bang.co.jp/cont/drunk-driving/
と逃げをちゃんとうっていますよ。(笑)
三井ダイレクトは制限されると書いています。
https://www.mitsui-direct.co.jp/car/guide/explanation/accident/12.html
読んでみたけど制限されるのは飲酒運転側だけ
飲酒運転の被害者側には保険の補償がフル適用となってる
管理人さんの記述どおりでは
そこから先は自分で金を積んでいくしかないかと。
横領なんかもカネを返したら実質無罪とかそんなの多すぎませんかね
某掲示板では上級無罪とか言われてたりしますしカネで解決できるようになっていると何かと便利なんでしょうね
改正刑法27条の2(刑の一部の執行猶予)
平成25年6月19日改正
平成28年6月1日施行
これを受けて、最後に 【 追記 】 を加筆しました。
「軽すぎる執行猶予と、重すぎる実刑との、中間的な処分はないのか?」
というのが話題なのに、あなたは日本語が読めないのだろうか? たぶん、タイトルの1行だけしか読んでいないのだろう。
「白をやめよ」(灰色を認めよ)という文章を読んで、「すべて黒にしろ」と誤読するわけですね。
あなた、法学生なら、真面目に文章を読む訓練をした方がいいですよ。文章を読めない法学生なんて、存在意義がない。ま、どうせ Fランなんだろうけど。