政府はなぜそれほどにも、法案の採決を強行しようとするのか? その謎を考える。
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前項では、政府が法案の採決を強行しつつある、と示した。しかもそれは、「民主主義の破壊」という極端な形を取っている。
→ 外国人労働者の法案: Open ブログ
しかしそれは謎である。なぜなら、この法案は、それほどにも特別なことをするような法案ではないからだ。(与野党対立をあおるような対決法案でもない。)
なるほど、昔ならば、自衛隊法とか、安保とか、集団的自衛権とか、与野党で決定的対立となる法案もあったし、そういう法案では強行もあった。
しかし、外国人労働者法案は、それほどにも大きな対立法案ではない。日本の命運を左右するような問題ではないし、国の存立を脅かすような問題でもない。そもそも、日本人の問題ですらない。たかが外国人のための問題だ。なのに、そんな些末な問題のために、民主主義を破壊するようなことをするのはおかしい。
なぜ、必要もないところで対立が起こるのか? まるで火のないところに火を起こすようなことを、どうして安倍首相はやろうとうするのか? なぜ? なぜ?
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その答えを言おう。(推察できる。)
そのわけは、前項の最後のあたりに書いてある。つまり、外国人労働者を(違法に)低賃金でこき使うような、ブラック企業をのさばらせることが目的だ。
つまり、ブラック企業の悪徳経営者が、外国人労働者を低賃金でこき使って、懐に金を入れることが目的だ。その意味では、森友や加計学園と同じである。悪質な経営者の身勝手な利益のために、安倍首相はせっせと助太刀しているのである。
では、なぜそんなことをするのか? そのわけは、別の問題と結びつけることでわかる。それは、「高度プロ」や「裁量労働制」の問題だ。
ここまで考えればわかるだろう。
外国人労働者法案は、外国人だけを対象としているように見えるが、実は、その先には、日本人労働者がいる。
つまり、日本人労働者をブラック状態に置いて、日本人労働者を雇用する企業の懐を豊かにしよう、というのが最終目的なのである。
外国人労働者法案は、あくまで先兵なのである。そして、本丸は、裁量労働制だ。先の高度プロの対象となる高所得者だけでなく、一般労働者も裁量労働制に含めることで、あらゆる残業手当をゼロにしようとしている。
つまり、日本人労働者を、今の外国人技能労働者と同様の、奴隷状態に置こうとしている。
何のために? 奴隷を酷使すること自体が目的ではない。奴隷を雇用するブラック企業が利益を増すことが目的だ。
そして、それは、経団連の目的でもある。裁量労働制による「残業手当ゼロ」は、産業界の悲願だからだ。
そして、そのための先兵となるのが、外国人労働者だ。まずは彼らをブラック環境で酷使する。それが世間常識になったあとで、日本人労働者も同様の状態に置こう、というわけだ。
そして、そういう政府の方針を、国民自身が歓迎しているのである。(高い支持率という形で。)
→ 内閣支持率、4ポイント上昇 53%…読売調査
→ 世論調査、内閣支持率なぜ上昇? - zakzak
[ 付記 ]
前々項では、次のリンクを紹介した。
→ NTTの株価総額が世界一だった時に、Microsoftに転職(はてブ)
ここに、次の話がある。
2000年の初めまで勤めました。興味がある人もいるだろうから書いておきますが、辞めた時の基本給は14万ドルでした。これにキャッシュのボーナスが10%と、ストックオプションが毎年のようにもらえていました。それも管理職ではなく、バリバリとコードを書く、純粋なソフトウェア・エンジニアとして、です。
ストックオプションによる報酬は、株価によっても大きく左右されるので、なんとも言えませんが、参考までに言うと、私が辞めると宣言した時に、会社が私を引き留めるために提示したストックオプションは $4 million 相当でした。$4 million の現物株ではなく、「$4 million の株を当時の価格で将来買う権利」です。10%値上がりして40万ドル、100%値上がりしたら $4 million のキャピタルゲインが得られる計算になります。
ストックオプションがあるため、会社が上場したり、(当時のマイクロソフトのように)業績が順調に伸び続けると、ストックオプションから得られる報酬の方が、給料よりも多くなるのが普通です。
日本では、ゴーン氏の報酬10億円が多すぎるかどうか、と言う話をしていますが、米国では、会社が上場した結果、働いていたエンジニアが持っていたストックオプションから得られるキャピタルゲインが10億円を超えてしまうことなどが、普通にあるのです。
こんな仕組みを使って、マイクロソフトは数千人のミリオネア(日本語で言うところの億り人)を生み出したのです。それは、Google、Facebook、Apple、Amazon のいずれにも当てはまる話で、業界全体では、少なくとも数万人(ひょっとすると数十万人)のミリオネアを生み出しているのです。サンフランシスコやシアトルの家の価格が高騰するのも当然です。
それぐらいソフトウェア・エンジニアは貴重で、優遇されるべき存在なのです。 それを理解せずに、せっかく採用した理系のエンジニアにコードを書かせず、早々に管理職にしてしまう日本企業が、まっとうな戦いが出来るわけがないのです。
莫大な報酬を払うことで、優秀な人材を集める米企業( Google、Facebook、Apple、Amazon)。一方、労働者を奴隷化することで企業収益を高めようとする日本。……どちらの国の企業が栄えるかは、現実を見れば明らかだ。
没落しつつある NTT に代表される、日本のIT企業。その根源には、人を生かせずに才能を無駄につぶす、という企業体質がある。そのまた根源には、裁量労働制などで人を奴隷化しようとする発想がある。経営者も首相も、そういう発想に染まっている。
だから日本は衰退する。……それが安倍首相の望む「美しい日本」だ。
※ 前々項の富士フイルムみたいな会社は、あくまで例外的だ。

本来の保守政党であればこんなことをすることはありませんので、今の自民党は、偽物保守政党ですね。
安倍の暴走を止められる良識のある自民党員はいないのでしょうか?
安倍首相の思う「美しい日本」は「全ての国民が自分に忖度する日本」ではないかと思われます。しかしそれは「衣食住足りて礼節を知る」のではなく「衣食住足りて、その時その場の己の感情だけが全て(だから店に理不尽なクレームをつけ、店員に土下座まで強要する人間が増えている)」である今の日本人の「代表」ではないかと。