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プラスチック製のストローが不使用になったあと、生分解性プラスチックのストローを使おう、という動きがある。
三菱ケミカルホールディングス傘下の三菱ケミカルは、自社開発した生分解性プラスチックを使ったストローや容器の採用をめぐり、米スターバックスやマクドナルドなど世界展開する複数の大手飲食チェーンと協議を進めている。世界規模での採用が決まれば、プラスチックごみによる海洋汚染の問題に大きく貢献することになる。
新素材を活用した製品は見た目は従来品と同じでも価格は3〜4倍になる。
( → 三菱ケミは脱プラで代替品めぐり協議、スタバやマクドナルドなどと - Bloomberg )
これで一応、問題の解決の方向は見えたようだ。コストはかかるが。
これを後押しするような政府の動きもある。
海洋汚染が世界的に問題になっているプラスチックごみの削減に向け、環境省は 2030年までの数値目標として使い捨てプラ排出量の 25%削減を、策定中のプラスチック資源循環戦略に盛り込む。レジ袋やストロー、スプーン、皿などを想定。レジ袋については早ければ20年にも原則有料化を目指す。19日の中央環境審議会小委員会で戦略の素案を示す。国が使い捨てプラの削減目標をつくるのは初めて。
( → 使い捨てプラ30年までに25%減 レジ袋原則有料検討:朝日新聞 2018-10-17 )
ここでは、「使い捨てプラの禁止」という方針だが、ここには、生分解性プラスチックは含まれないはずだ。(たぶん)
だから、生分解性プラスチックの推進という形で、方向はまとまりそうだ。
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ところが、これに異を立てているのが、プラスチック産業だ。「生分解性プラスチックは、成分が違うので、リサイクルができにくくなる」と問題視している。
化学5団体が9月に設立した海洋プラスチック問題対応協議会の淡輪敏会長:
「生分解性プラは、一般的なプラスチックと一緒にリサイクルするのは難しい。分別して回収する体制も整っていない。生分解性があるから良いというわけではなく、回収や処理も考えたうえで、活用法を考えないといけない」
( → (聞きたい)プラごみ海洋流出、対応策は 海洋プラスチック問題対応協議会会長・三井化学社長、淡輪敏氏:朝日新聞 2018-10-17 )
しかしこれは詭弁というものだ。だまされてはいけない。
プラスチックのリサイクルには、熱として利用するサーマルリサイクルのほかに、物として再生するマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルがあるが、家庭ゴミで出されるプラスチックは、サーマルリサイクルとなる。なぜなら、プラスチック以外の汚れの成分がたくさん混じっているので、不純物が多くて、物粒として再生利用することは困難だからだ。
こんなことは常識だ。下記にも記されている。
→ 廃プラスチックのゆくえは?|廃プラスチックのゆくえ その1
→ リサイクルのゆくえ プラスチック製容器包装|一般社団法人 プラスチック循環利用協会
物として再生するマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルは、通常は同じ廃棄品が大量に出る工場が対象だ。さまざまなプラごみが混じる家庭や料理店は対象外だ。もちろん、ストローも同様だ。ストローやコップや皿は、(汚れているので)物として再生されることはなく、熱利用のために燃やされるだけだ。となれば、生分解性であるかどうかは、関係ないのだ。もちろん、生分解性のものだけを分別する必要もない。
だから、分別することがあるとしたら、(課程後身などではなく)工場生産物の廃棄品だけだ。そして、工場生産物であれば、「生分解性のものだけを分別する」のはごく簡単なのだ。生産ラインごとに生産物(= 廃棄物 )は区別されるからだ。(若干の例外はあるかもしれないが。)
たとえば、ストローの生産ならば、個々の生産ラインでは、生分解性プラスチックを使うか、普通のプラスチックを使うか、どちらかに決まっているはずだ。両者が混合生産されることはない。とすれば、そこで出る廃棄物もまた、混合されることはない。ゆえに、廃棄物の分別は簡単だ。
というわけで、工場生産物については、分別は簡単なのである。
したがって、「家庭における分別が困難だから」ということを理由に、「生分解性プラスチックは推進できない」という上記の会長の言い分は、正しくないのだ。
朝日新聞は、業界の一方的な言い分ばかりを掲載して、真実を掲載しないので、本項で是正しておいた。