2018年10月10日

◆ 就活自由化と部門採用

 就活が自由化されるとしたら、企業の部門採用が必要だろう。(全社一括採用ではなくて)
 
 ──
 
 採用時期を定めた現行の経団連の「就活ルール」が廃止される。(以下、いずれも朝日新聞)
  → 経団連会長、就活指針の廃止表明 21年春入社から
 それにともなって、ルールのない自由状態になるのかと思ったら、政府が主導して新ルールを定めようとしているそうだ。
  → 就活ルール、政府主導へ 経団連、指針を廃止 21年入社から
 これについて、学生の見解は賛否両論だという。
  → どうなる就活? 新ルール政府主導、学生の評価割れる
 その他、関係する記事。
  → 就活の面接解禁日、守らない企業6割超 前年調査より増
  → 「中西流」に異論も 就活指針の廃止で経団連内部
  → (耕論)「就活ルール」廃止? 仲暁子さん、舟戸一治さん、羽田圭介さん

 最後の記事では、「就活が集団見合いから自由恋愛に変わる」という調子で、自由化を歓迎する意見が掲載されている。一部抜粋しよう。
  就活ルールの廃止は、今の時代に適した自然な流れだと思います。
 これまでの就活は高度成長期に生まれたシステムで、いわば集団お見合いでした。一斉に履歴書を出し、学生と会社が互いに「仮面」をつけたまま面接にのぞみ、採否が決まります。
 就活ルールの廃止は、いわば自由恋愛の解禁です。4年間かけていろいろな相手とデートをし、どんな企業文化や仕事内容が自分に合っているのか、慎重に見極めることができるようになるでしょう。
 アメリカのように、夏休みなどに興味のある会社で長期間インターンシップをすることが一般的になれば、適性や専攻と合った会社を見極める時間ができます。そのまま就職する人も増えるでしょう。

 言っていることは「ごもっとも」と感じられることもあるのだが、これが成立するには、前提がある。
 「学生の就職先が、会社ではなくて、職場(つまり部門)である。採用の権限はあくまで部門にあり、採用されたらその部門で働く」
 これはアメリカ流の雇用契約だ。この場合、権限はあくまでボスにあるから、ボスが「おまえは気に食わん」と言ったら、即座にクビになる。解雇通知が出たら、その日の午後にはすぐさま退社しなくてはならない。机の荷物も放り出されてしまう。(ドライですね。)

 一方、日本の大会社では、会社で一括して雇用する。当然、職場がどうなるかは、入社したあとで決まるので、そのときまでわからない。
 先日放送された「健康で文化的な最低限度の生活」という番組では、主人公の女性が役所に採用されたのだが、採用先は生活保護担当の課だった。そこに配属されるのは、役所の入社式(?)の日にはわからず、そのあとで辞令が下ってようやくわかった。
 当然ながら、このあともどういうふうに部課の移動があるか、わかったものではない。次はまったく別の部課に移るかもしれない。これは米国式とはまったく違う。「部門に採用される」ということはないし、「採用される時点で仕事内容もわかる」ということもない。

 とすれば、日本の就活の自由化は「自由恋愛」とはまったく違う。「企業に就職する」という意味では、「夫という個人ではなく家に嫁ぐ」という形になる。( 家 ≒ 会社 )
 就活を「自由恋愛」のように「自由化」するのであれば、就職する先は、「会社」ではなく「部門」であることが必須だ。そうしてこそ、仕事の内容もわかるからだ。

 そして、そういうことは、中小企業では成立するが、大企業では成立しない。それが日本の実状だ。
 こういう実状を無視して、「就活の自由化は自由恋愛みたいだ」というふうに歓迎するのは、話の認識が狭すぎる。そこでは大切なことが見失われている。

 私としては、現在の硬直的な就活ルールが最善だというつもりはない。だが、それをやめて就活時期を自由化すれば問題は解決するかと言えば、とてもそうではない。「あちらが立てばこちらが立たず」というような弊害は必ず生じるのだ。
 そして、その前提としては、日本の独自の風土や文化がある。こういう長年の慣習を無視して、一気にアメリカ流の方式を導入すれば済む、と思うのは、あまりにも短絡的だ。
 それはいわば、「朝食は、納豆と味噌汁をやめて、トーストと牛乳にすれば、日本の健康問題はすべて解決する」というような短絡的な発想だ。
( ※ それで高血圧は改善されるかもしれないが、今度は肥満体質になってしまう。あちらが立てばこちらが立たず。)

 各国にはそれなりの文化や慣習がある。どこかのよその国の方式を部分的に取り入れればそれで済む、というような単純な問題ではないのだ。
 ここで、就活会社の経営者の巧みな弁舌に引っかかるようでは困る。だから本項では、その問題点を指摘しておいた。



 [ 付記 ]
 「就活の自由化は自由恋愛みたいだ」と述べて歓迎の意を示しているのは、就活会社の経営トップだ。(記事に書いてある通り。ウォンテッドリー社の代表取締役CEO だ。)
 こういう意見があるのは別に構わないが、そういう意見ばかりを無批判で掲載すれば、社会的な害悪がひどすぎる。
 実際、朝日の「素粒子」は、あっさり洗脳されたらしく、歓迎しているようだ。
60年以上続く就活ルールが変わる。「集団見合いから自由恋愛へ」と本紙「耕論」。自分なりの物差しを信じて。
( → 素粒子

 詐欺師の詭弁に引っかかるな、というのが本サイトの基本方針だ。その意味で本項は書かれた。
( ※ 何か素晴らしい提案をしているわけではない。)



 【 関連動画 】











 


 【 関連サイト 】 
 本文中で「健康で文化的な最低限度の生活」という番組をしたが、ここで示されているのとそっくりの話が、はてブで話題になっていた。
  → はてなブックマーク - サナギさんのツイート
  → もとのツイート
 一部抜粋。
 公務員になって最初の辞令で生活保護ケースワーカーに任命された時はショックだった

posted by 管理人 at 22:20| Comment(0) | 一般(雑学)5 | 更新情報をチェックする
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