2018年10月09日

◆ 炭素税と石炭発電

 ノーベル経済学賞を受賞した人の業績に、炭素税がある。これと石炭発電をからめて考える。

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 ノーベル経済学賞が報道された。ノードハウス、ローマーの二名が受賞した。そのうち前者の業績には、炭素税の提唱があるそうだ。
  → ノーベル経済学賞にノードハウス氏ら 「炭素税」提唱 :日本経済新聞
  → ノーベル賞:「経済成長と環境保護」両立訴え 経済学賞 - 毎日新聞
  → 経済学賞、気候変動や技術革新の影響研究2氏に : 読売新聞
  → 東京新聞:ノーベル経済学賞に米の2氏 気候変動と成長分析

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 炭素税については、私も前に書いたことがある。
 「石炭発電は馬鹿げているので、禁止した方がいい。そのためには炭素税を導入するべきだ」

 という話。
  → 消費税より炭素税: Open ブログ

 私が言いたいことは、上の項目で尽くされている。本項でも同じことを言いたいのだが、重ねて書いても仕方ないので、ここでは書かないでおく。知りたければ、上の項目を読んでほしい。

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 さて。それを補強する話が、本日の朝日新聞に掲載された。重要な話なので、転載しておく。
 「CO2 はあらゆる生活、産業活動から出るので削減は難しい」といわれるが、実は、少数の大口排出者が大半を出している。
 NPO法人「気候ネットワーク」が昨年7月に出した「日本の温室効果ガス排出の実態」によれば、「日本の排出量の 50%を、わずか 130の発電所と工場が排出している」という(データは 2014年度)。業種で言えば発電所で 33%、高炉製鉄所で 12%、セメント製造などが続く。なかでも大規模な石炭火力 36カ所だけで、日本全体の 17%を排出している。
( → 大半の CO2 出す「蛇口」は:朝日新聞 2018-10-09

 このデータは初めて知った。重要な数値だ。
 これらの石炭発電(36カ所)を、炭素を出さない電力(たとえば、原子力や、太陽光)に置き換えれば、それだけで日本全体の 17%を削減できるのだ。すごい。
 換言すれば、石炭発電がいかに多大な炭酸ガスの排出をしているか、よくわかる。
( ※ なかでも多いのは、北海道電力だ。発電量全体の過半数を石炭が占めている。→ 出典

 北海道電力でも、これはまずいと思っているらしくて、石狩湾新港発電所( LNG 発電)を建設しているようだ。今後はそれに置き換えるつもりらしい。

 一方、ひどいのは、新規に石炭発電所を建設しようとしている連中だ。独立系の電源業者に多い。上の朝日の記事でも、住民が、
 「神戸製鋼所など3社に対し、神戸市内に計画中の石炭火力発電所(2基で130万キロワット)の建設・稼働の差し止めを求める裁判を神戸地裁に起こした」
 という話が紹介されている。

 これらの業者は、「石炭発電は低コストだから儲かる」という発想で許可を得ようとしているのだが、いざ炭素税が導入されたら、巨額の炭素税の支払いで事業が立ちゆかなくなるのは自明である。
 「安倍首相や自民党に献金しておけば、炭素税の導入はありえない」
 と思っているのかもしれない。それはそれで正しいかもしれない。
 しかし、発電所の償却期間は 40年ぐらいある。その間に炭素税が導入される可能性は、十分にある。たとえば、政権交替があって、野党政権ができるかもしれない。また、自民党政権であっても、岸田や小泉あたりだったら、炭素税を導入するかもしれない。まして、もっと若い世代の政権では。

 それでもリスクが高い石炭発電に踏み切ろうとしているのであるとすれば、それは、スルガ銀行と同じ狙いかもしれない。つまり、
 「十年ぐらいたったら破綻するかもしれないが、少なくとも今もところは、事業を始めることで利益が出る。出資者から金を集めて、その金を使って、自分たちは短期的に利益を得る。長期的な損は、出資者たちにツケ回しすればいい。あとは野となれ山となれ」
 こういう狙いで、出資者から金を集めているのかもね。(堂々たる詐欺。額はあまりにも巨額だが。)

 ただ、調べてみたところでは、そういう単純な話ではなく、政府・電力会社などが、そろって石炭発電を推進しているようだ。
  → 石炭火力政策で溝、事業者計画に影 「脱却」図る環境省、新設急ぐ経産省
  → 関西電力は石炭火力をベースロード電源として活用する方針を変えていません

 とはいえ、石炭火力を推進してきた中国も方針転換したので、いまだに石炭発電を推進する日本は世界の潮流に取り残されている。
  → 中国も撤退する石炭火力発電、日本は推進で増設…世界的潮流と真逆、経済に致命的打撃

 現状では、両者の勢力がせめぎあっているようだ。
  → 石炭火力の新設規制、小型は事実上禁止に 経産省:日本経済新聞
  → Jパワー、石炭火力建て替え断念 採算見通せず:日本経済新聞
  → 丸紅、石炭火力の開発撤退 再生エネにシフト:日本経済新聞

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 ともあれ、現状はひどいが、解決策はある。それは「炭素税の導入」だ。これを実施すれば、消費税の増税も必要なくなる。



 [ 付記 ]
 最近の石炭発電は、IGCC というもので、従来の石炭発電よりもずっと効率がいい。しかも石炭はとても価格が安い。だから、単にコストだけで言うと、すごく低コストで発電できる。
 その一方で、いくら高効率でも、炭酸ガスの排出量は多い。従来型の石炭発電よりはマシではあるが、最悪ではなくなった、という程度だ。通信簿で言うと、最悪の1から2に上がったというぐらいだ。この件は、前にも述べた。
  → 石炭火力の論理ペテン: Open ブログ
  → 石炭発電を中国が推進: Open ブログ の 【 追記 】

 ただし、(金儲けのために)何としても石炭発電を推進したい会社側は、「石炭発電はクリーンです」と嘘八百を言う。
  → 日本の石炭火力発電所はクリーン | J-POWER(電源開発株式会社)

 しかしそれが嘘八百だということは、前に本サイトで示した通り。
  → 石炭火力の論理ペテン: Open ブログ

 また、次のページにも書いてある。
  → 石炭火力のCO2排出量はLNGの6割増

 同様の話は、あちこちでいっぱい見つかる。
  → 比較グラフ (画像一覧)
posted by 管理人 at 22:29| Comment(3) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 石炭発電の推進の動きが止まった。事業者が事業の計画を断念したという。理由は(将来の)コスト高。採算に合わない……と気づいたらしい。(将来の炭素税の危険もあるので。)
  → https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL31HCB_R30C19A1000000/
  → https://www.sankei.com/region/news/190201/rgn1902010019-n1.html
  → https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000146229.html

 それにしても、判断が出るのが遅すぎる。諸外国は何年も前に判断ができていたのに、日本の経営者ばかりが遅れる。
 日本政府に至っては、いまだに、推進の立場だ。誤りに気づかない。ひどいものだ。
 

Posted by 管理人 at 2019年02月01日 21:12
 石炭発電の禁止がようやく決まった。明白な禁止ではないが、基準を厳しくすることで、実質禁止にする。
 以下、引用。

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 地球温暖化の主な原因となる二酸化炭素(CO2)を多く排出する大型の石炭火力発電所について、原田義昭環境相は28日、今後の新設や増設の計画を原則認めない方針を明らかにした。
 環境省は今後、環境アセスを厳格化し、経済的観点のみを重視した計画やCO2削減の道筋を示せない計画については、「是認できない」として中止を求める立場で意見書をまとめる方針。石炭火力からのCO2排出は最新鋭施設でも天然ガス火力の2倍に上る。事業者が具体的なCO2削減策を描くことは技術的に困難で、計画は実質的に認められないことになる。

https://www.asahi.com/articles/ASM3W6VQ4M3WUBQU016.html

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 遅ればせながら、ようやく決まったことになる。どうせ決めるなら、もっと早く決めておけば良かったのにね。

 なお、私の考えは、本項目の本文に書いてある。関連する話題は、本項目の最後のリンクを参照。
Posted by 管理人 at 2019年03月29日 18:54
 決まったと思ったら、方針撤回になったらしい。ひどいことだが。
 以下、引用。

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 《 消えた「石炭火力全廃」 有識者懇の座長案に産業界反発 》
 (4月)23日に公表された政府の地球温暖化対策の長期戦略案のもとになった有識者懇談会の提言で、当初の座長案に盛り込まれていた石炭火力の長期的な全廃方針が、産業界の委員の反対で撤回されていたことがわかった。
 座長案では、二酸化炭素(CO2)の排出量が多い石炭火力発電について「長期的に全廃に向かっていく姿勢を明示すべきだ」と明記。さらに、「日本のレピュテーション(評判)リスク」だとして「今後、原則として、公的資金の投入、公的支援は行わない」などとした。
 これに対し、委員の中西宏明・経団連会長(日立製作所会長)が「世界で石炭火力が引き続き需要される。レピュテーションリスクがあると断言すべきでない」などと反対。産業界のほかの委員である日本製鉄の進藤孝生会長や、トヨタ自動車の内山田竹志会長も同様の意見を表明した。

 朝日新聞 2019年4月24日
 https://www.asahi.com/articles/DA3S13990265.html

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 ただし、これとは別に、環境省は規制する方針のようだ。一カ月前の記事だが。(今ではホゴにされたかもしれないが。)
 以下、引用。

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 環境省は石炭火力発電所の新増設に新たな基準を設ける。発電事業者ごとに、所有する液化天然ガス(LNG)や石油を含めた火力発電設備の全てが最新鋭に近くなければ達成できない発電効率の基準を導入する。古い設備が多い事業者は新増設が事実上困難となるが、最新施設が多くを占めれば道が残る。

 2019/3/28  日本経済新聞
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43011380Y9A320C1EAF000/

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 一方、政府は(需要の側から)石炭発電を推進したがっているようだが、供給の側からはリスクの高さを理由に撤退する動きが強まっているようだ。
 以下、引用。

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 大阪ガスは山口県宇部市で計画していた石炭火力発電所の建設計画から撤退する。……将来的な事業リスクもあり、採算を確保するのが難しいと判断した。
 
 2019/4/24 日経
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44132120U9A420C1000000/
Posted by 管理人 at 2019年04月24日 19:34
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