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北海道の停電では、酪農でも大きな被害があった。そこで政府は対策を取ろうとしている。
北海道地震と大規模停電(ブラックアウト)は全国の生乳生産量の5割強を占める北海道の酪農を揺さぶった。停電で乳を搾る機械が動かせなかったり、乳業工場の停止で生乳の廃棄を余儀なくされたりした。
( → 北海道、苦しむ酪農 地震、出荷できずに4トン捨てた 停電で搾れず乳房炎、今も影響:朝日新聞 2018-10-05 )
記事タイトルにあるように、
・ 出荷できずに4トン捨てた農家もある
・ 停電で搾れずに乳房炎が起こった
・ それが影響して今も乳量が減っている
というような被害が生じた。
そこで、被災農家は自家発電機を設置しようとしているそうだ。記事の例の農家では、9月末に設置を申し込んだそうだ。
ここまではいい。被害は甚大だっただろうし、そこで今後の対策として自家発電機を設置するのも妥当だ。
問題は、このあとだ。政府は次の方針を取った。
被災した酪農家への支援策として、農林水産省は乳房炎予防薬や、停電時に借りた発電機の費用について、半額の補助金を出すことを決定している。
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「停電時に借りた発電機の費用について、半額の補助金を出す」
という。これが問題だ。なぜか? 次のことによる。
・ 発電機を借りた人は、発電機を自分では設置していなかった人だ。
・ 発電機を借りなかった人は、発電機を自分で設置している人だ。
ここで、政府は前者の人に半額の補助金を出し、後者の人には補助金を出さない。つまり、
「設置しないことには補助金で推奨し、設置することには何の補助金も出さない」
これでは方向が逆だろう。こんな方針を取れば、先のように自力で設置を申し込んだ人は、申し込みをキャンセルするはずだ。設置するよりも設置しない方が得なのだから、設置するのをやめるのが賢明というものだ。
かくて、全員で「設置をやめる」という方向に推奨される。これでは方向性が逆だ。やればやるほど、将来の被害が増える、という逆効果の政策。悪政と言える。
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では、正しくは? もちろん、「設置を推奨すること」である。ただしそれは「自力で」という必要はない。むしろ、数軒の農家で共同購入することが好ましい。自家発電機は交替で利用できるからだ。3軒の農家で共同利用すれば、各戸が1日8時間ずつ使えるから、午前と午後で4時間ずつ利用することができる。これで十分に足りるだろう。(運搬時間を差し引いても、3時間ずつ2回は使える。)
だから、推進するべきは、「自家発電機の共同購入」なのである。
なのに、政府は、それを阻害する政策を取る。「自家発電機の共同購入」を推奨するどころか、その逆を推奨する。被害を減らすどころか、被害を増やそうとする。そのために、巨額の血税を投入しようとする。
金を出して酪農の被害を増やそうとするのだから、狂気の沙汰と言える。「何でもかんでも、金を与えれば、農家は喜ぶだろう」という自民党流のバラマキ政策の発想しかないから、自分が何をやっているか、理解できないわけだ。かくて、自家発電機の設置を阻害するために補助金を出して、北海道の酪農を破壊しようとする。呆れるしかない。
[ 付記1 ]
どうせなら、「被害受けた酪農家に、被害の額を補償する」という方が、まだマシであろう。これなら、まだわかる。しかるに、
「停電時に借りた発電機の費用について、半額の補助金を出す」
というのは、あまりにも馬鹿げている。これでは、次の人に補助金が出ない。
・ 身銭を切って自家発電機を購入したあと、まわりの農家に自家発電機を貸し出した、立派な農家。
・ 自家発電機をどこからも借りられずに、多大な乳房炎の被害を出した、大被害の農家。
このような人こそ、補助金の対象となるべきだ。なのに、このような人には補助金が出ず、借りた人だけに補助金が出る。あまりにも公平さを欠く。
( ※ 理由は? たぶん、レンタル業者から自民党に、献金があったから。レンタル業者がまたしても金儲けをしたいから、このような補助金を推進するわけだ。袖の下を使って。)
[ 付記2 ]
注釈しておくと、本項の話は、範囲が限定される。それは、「小規模の酪農家に限る」という限定だ。
一方、大規模の農家ならば、自力で自家発電機を購入できる。3軒分の規模があれば、自分で購入しても、負担の大きさは3分の1という感じだ。その自家発電機を、(1日8時間のかわりに)1日24時間、フルに使えばいい。自分の農家だけで。独占的に。
これはこれで成立するので、本項の話の対象外となる。本項の話は、あくまで小規模農家に限定される。
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