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先に、「全域停電を回避する方法」というのを示した。
→ 全域停電の回避システム: Open ブログ
ここでは、次のように示した。
「需給を均衡させるために、需要を遮断すればいい」
このことは、実は、(現実に)部分的になされていたことが判明した。
広域機関や北電によると、6日午前3時7分の地震発生直後、震源に近い苫東厚真火力発電所(厚真町)2号機と4号機が自動停止し、130万キロワット分の供給力が一気に失われた。すぐに本州側から60万キロワットの融通を受けたほか、北電が一部地域を強制的に停電して需要を減らす措置を取り、3時11分までに電力の需給バランスは回復したとみられるという。
需給バランスが崩れたままだと、各地の発電所の機器が故障を防ぐために自動停止し、大停電につながる。これを防ぐための措置が地震直後に一時的に機能したもようだ。
だが、この後に再び均衡が崩れ、午前3時25分、苫東厚真1号機を含め道内の火力発電所などが停止してブラックアウトした。
( → 北海道の大停電防止、一時は機能 本州から電力融通受け:朝日新聞 )
6日午前3時7分 最大震度7の激震が胆振管内厚真町を襲った。
午前3時8分 厚真町内にある道内最大の火力発電所、苫東厚真火力発電所(3基=3号機は廃止)の2号機と4号機(合計出力130万キロワット)では、高温の水蒸気を運ぶ細長いボイラー管が縦揺れに耐えきれず損傷。直後に停止し、北電は全道の電源の4割を一瞬にして失った。
当時社員ら27人がいたが、ブラックアウトを防ぐため、手動でなく自動的に二つの作業が進んだ。
一つが「負荷遮断」。ブラックアウトで道内の電源がゼロになると、発電機を動かすのに必要な電気もなくなり、復旧に時間がかかる。停止した電源に見合うだけの需要を一時的に切り離し、停電から回復しやすくしようとした。一瞬にして、道北、函館などの地域の多くで停電。残されたのは札幌など道央が中心だった。
午前3時11分 二つ目の自動システム「北本連系線」がフル稼働。北海道と本州を結ぶ送電線で、どちらかの地域で需給バランスが崩れると、自動的に電気が送られる仕組みになっている。最大量である60万キロワットが本州から北海道に向けて送られ始めた。
この時点で、道内の需給バランスは不安定ながらも、保つことができていた。
釧路ではいったん送電再開
午前3時15分 同3時9分に停電した市立釧路総合病院で送電が再開された。
午前3時17分 同じく釧路地方向けの送電網で釧路赤十字病院で電力がいったん復旧。高橋令総務係長は「自宅でもいったん電気が戻った記憶がある」。
午前3時25分 北電「ブラックアウト」
午前3時25分 苫東厚真火発で唯一運転を続けていた1号機(出力35万キロワット)のボイラー管損傷が深刻化。「穴が開いており、何百度もの高温の水蒸気が噴き出し、すさまじい音だったに違いない」(東京工業大の奈良林直特任教授)と推測され、他の2基停止による電力の周波数低下にも耐えきれず自動停止した。
1号機停止で、道内の他の発電所が連鎖的に停止。道内で電源が失われたため、本州からの送電もできなくなった。北電はこの時刻を「ブラックアウト」としている。
( → 全道停電まで緊迫の18分間 泊原発への電力供給維持に手を尽くす? )
電力はためることができず、需要と供給を常に一致させる必要がある。需給バランスが崩れると、他の発電所は設備の故障を避けようと自動停止するため、大規模な停電につながる。
このため、一部の顧客や地域への電力供給を止めて需給バランスを整える「負荷遮断」という手法がある。東京電力は東日本大震災の発生時に供給力が急減したが、この手法を用いてブラックアウトを免れた。北電も今回、負荷遮断を試みた。
こうした対応でいったんは需給バランスを取り戻したが、何らかの原因で需給バランスが再び崩れ、3時25分に1号機(35万キロワット)が停止。道内で他に動いていた3基の火力もほぼ同時に停止し、本州からの送電もできなくなり全域停電に至った。
交流の電気は一定の周期で流れが変わり、その周期を1秒間に繰り返す回数が周波数。関係者によると、周波数の波形をみると、需給バランスは「地震発生直後に大きく乱れ、その後にほぼ元に戻ったが、再びふらつき、最終的にブラックアウトに至った」という。
需給バランスがなぜ再び崩壊したのか、現段階では判然としない。経済産業省は「速やかに検証プロセスの準備に着手したい」(幹部)として、北電と全国の需給調整を担う電力広域的運営推進機関に周波数などのデータ提出を指示。専門家を交えた解析を進める。
( → 北海道地震1週間 緊急策実施も謎残る全域停電 検証に時間- SankeiBiz )
というわけで、当初は「需要を切り離す」という形で、需給を均衡させて、ブラックアウトを避けることに成功していたわけだ。
つまり、私が提唱していたことが、まさしく実現していたわけだ。
ところが、それは長くは続かなかった。しばらくして、かろうじて稼働していた1号機が、とうとう停止した。ここで供給が奪われたことで、ブラックアウトが起こった。その時点は、3時25分。地震発生から 18分後のことである。
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以上をまとめれば、次のように言える。
・ 地震発生直後には、需要の遮断に成功した。
・ 18分後には、需要の遮断をしなかったせいで、全域停電。
18分も余裕があったのだから、この時点で需要を遮断することができたはずだ。ところが、そうしなかった。(無為無策)
道北、函館などの地域の多くで停電。残されたのは札幌など道央が中心だった。
ということであるから、道北、函館などの地域では遮断ができたのに、札幌などの道央では遮断ができなかった。このせいで、札幌だけでなく、北海道全体でブラックアウトが生じてしまった。
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以上をまとめて評価すると、こうだ。
「道北、函館などで遮断したのは、マニュアル通りであり、きちんと遮断に成功した。グッドジョブ」
「札幌などの道央では遮断ができなかった。これは、マニュアル通りではなく、職務怠慢だった。やるべきことをやらなかったことになる。大失態!」
では、どうしてこうなったか? 推定できることは、こうだ。
「札幌などの道央で遮断するべきだとわかっていたが、怖くて、できなかった。札幌という北海道の中心部を全部停電にするなんて、とんでもない被害が生じるし、苦情が殺到するだろうから、遮断するべきだとわかっていても、遮断できなかった。あえてマニュアルに反することをした」
これは要するに、(電力の遮断という勇断を発揮するべきときに)「臆病風に吹かれた」「びびった」ということだ。小さな被害を生み出すことで怒られることを恐れるあまり、大きな被害を止める措置を取れなかったのだ。
これはまあ、病気の人が、「治療薬を飲むべきなのに、副作用が怖くて、治療薬を飲まない」(そのせいで病気が治らない)というようなものだ。本末転倒ふう。
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そして、これに似たことは、あらゆる災害予防で見られる。たとえば、ダムの水位調節だ。ダムの水を放流すると、下流で被害が出たという文句が来そうだ。だから、最後の最後まで、放流を控えて、我慢する。そして、どうにも我慢できなくなったところで、一挙に放流する。……ここでも、「小さな被害を恐れるあまり、大きな被害をもたらす」ということが起こっている。
西日本豪雨のときもそうで、気象庁は、「避難してください」という言葉を出さなかった。「気象庁の仕事は予報することだけであって、避難の推奨というのは自治体の仕事だから、気象庁は(他人の領域で)余計な口出しをしない」という方針を取った。そのせいで、ものすごく多大な人命が奪われた。(死者 200人以上。)
これはまあ、気象庁の肝っ玉が小さいせいで莫大な被害が出た、という例だ。(さすがにこれに懲りたので、次の台風 21号のときには、「早めに避難してください」と盛んに繰り返していた。)
こういうことはよくある例だ。
そして、北海道電力のブラックアウトでも、同様のことが起こった、と推定できる。
つまり、このことは、システム(制度・設備・人員)の問題ではなくて、「人の心の弱さのせいで、システムが機能しなかった」という例なのだ。いくらシステムが正しく整備されていても、肝心の人間がびびっていたら、システムを正しく発動することができないわけだ。
このことが今回のブラックアウトの真相であろう……と私は推測する。 (私見であるが。)
- ( ※ 本項は「名探偵の名推理」という形の推理です。事実がそうであるかどうかは、調査して判定できます。)
( ※ だけど、こういう問題があるかどうかということすら知らないと、調査すること自体がなさそうです。)
【 追記 】
なお、正しい施策は、次の通り。
「大地震を検知した時点で、機器の破損を疑い、発電機をすべて強制的に停止する。同時に、需要の側を同等の量で遮断する」
この方法ならば、次のようにできる。
・ 需要と供給の削減量をきっちり同量にできる。
・ 需要と供給の削減時刻をきっちり同時刻にできる。
こうして安定的に、電力の均衡を維持できる。
※ なお、すべての遮断を同時刻でやると、変動が大きすぎてまずい。そこで、少しずつ時間をずらして実行すると良さそうだ。たとえば、0.5秒ずつ ずらして実施する。(供給と需要の同時遮断を。)
タイムスタンプは 下記 ↓
とはいうものの、日本人は責任を取らないように物事を動かすので、トカゲの尻尾切りができるように、つまりは、上層部の責任問題に発展しないような仕組みが構築されている、ということですね。
平社員クラスは、マニュアルに従うものだが、課長クラスだと、マニュアルよりも社長や重役の覚えの方を重視する。最優先は出世であって、そのためにはゴマスリが必要。平社員クラスだと、そういうことは起こりにくい。