2018年09月07日

◆ 苫東厚真発電所への集中

 北海道の地震で大規模停電が起こったことの理由の一つは、苫東厚真発電所への集中があったことだ。

 ──

 このときの電力需要は 300万kW 弱。その半分ぐらいの電力を苫東厚真発電所が供給していた。最大発電能力は 165万kW だから、ほぼフル稼働していたことになる。
 これほどにも1箇所に集中していたから、そこが地震で止まったとき、全体の半分の供給が一挙に失われた。そのせいで、全域停電(ブラックアウト)が発生した。

 とすれば、こういうふうに「1箇所への過度の集中」があったことが、脆弱性をもたらして、全域停電に至った……と言えるだろう。
 ではなぜ、「1箇所への過度の集中」があったのか?

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 これに関係する記事が朝日新聞にあった。
  → 北海道ブラックアウト 最大の火力発電所からドミノ倒し:朝日新聞

 ここに、地図ふうの画像がある。転載しよう。


hokuden2.jpg


 苫東厚真発電所のすぐそばに震源がある、とわかる。
 そうとなれば、ここで地震が起これば、苫東厚真発電所がやられることは自明だし、同時に、全域停電が起こることも自明だろう。
 つまり、ここで地震が起これば全域停電が起こる……ということは、最初からわかっていた。わかっていたにもかかわらず、あえて苫東厚真発電所に供給を集中させていたわけだ。
 ではなぜ、そんな馬鹿げたことをしたのか? まるであえて危険な橋を渡るようなもので、あまりにも無謀だが。

 ──

 その理由は、いくつか推定できる。
 (1) ここの立地がとても優れていた。札幌や苫小牧という代需要地に近い上に、太平洋側のタンカーが接続できる。このような有利な土地は、他にはない。





 (2) 苫東厚真発電所には、最新鋭の発電機(4号機:2002年)があって、この発電機を使うことが、コスト的に有利である。また、札幌に近い発電所の発電機を使うことも、コスト的に有利である。
  → 火力発電所一覧 - 北海道電力
 石炭発電の発電機(1号機)もあるが、これも、他の場所の石炭発電に比べると新しいので、効率が高く、コスト的に有利である。

 (3) 北海道の西や東は、地震の危険性が知られていた。西は億時離島の地震があったし、東は北海道東方沖の地震が警告されていた。( → NHKスペシャル MEGAQUAKE の感想 ) しかるに、西と東の真ん中へんである苫東厚真のあたりは、地震の危険が警告されていなかった。まさかここで地震が起こるとは思ってもいなかった。

 (4) 実を言うと、歴史的には、西と東の真ん中へんである苫東厚真のあたりも、地震の経歴がある。
  → 北海道地方の地震活動
 この図を見ればわかるように、北海道のたいていの場所は、地震を免れていないのである。
 特に苫小牧のあたりでは、こうだ。 
  → 日高・十勝地域の地震活動の特徴
 ここに、二つの地震が記されている。
  ・ 1981年の浦河沖の地震(M6.9)
  ・ 1974年の地震    (M6.3)

 この二つの地震があったのだから、今回の地震も珍しいというほどではないわけだ。
 特に、上記ページの この図 からもわかるように、活断層(6)があるのだから、このあたりは危険性がもともと高いとも言える。
( ※ 今回の地震は、活断層の上にあったのではないので、活断層が直接的に影響したわけではないのだが、何らかの影響があったとしてもおかしくない。地表に活断層が出ていることと、深い地下の震源とは、直接的には等価ではないから、位置がいくらかズレながら関係しているということはありえそうだ。)

 ──

 ともあれ、以上のように見ると、北電が発電所の集中という方針を取ったことの理由もわかってくる。
  ・ そうすると有利だ、というコスト的な面があった。
  ・ 地震への無知と楽観があって、危険性を直視しなかった。


 後者については、朝日の記事でも示されている。
 「極めてレアなケース。すべての電源が落ちるリスクは低いとみていた」
 6日午後、札幌市の北海道電力本店。停電で薄暗い1階ロビーに設けられた会見場で、真弓明彦社長は、こわばった表情で話した。
( → 北海道ブラックアウト 最大の火力発電所からドミノ倒し:朝日新聞

 本当は十分に地震の危険性はあった。また、いったん地震が起これば全域停電になることもわかっていた。それにもかかわらず、
 「極めてレアなケース。すべての電源が落ちるリスクは低いとみていた」
 と語っているのである。まるで電力のことをまったく知らない素人のように。(恥ずかしげもなく無知をさらしているわけだ。)

 ──

 では、対策は? 
 もちろん、「電力の集中」を避けることが大切だ。その方策は、二つ取られていた。
  ・ 泊原発 ( 200万kW )
  ・ 石狩湾新港発電所( 170万kW )


 後者は、現時点では建設中で、まだ稼働していないのだが、2019年2月には稼働の予定だ。
  → 石狩湾新港発電所の建設計画 - 北海道電力





 これが稼働していれば、こちらが大半の電力供給を担っていたはずなので、苫東厚真発電所の発電量はかなり小さくなっていたかもしれない。
 例。石狩湾新港が 170万kW、苫東厚真が 60万kW、他が 50万kW (合計 280万kW)。
 この例の場合だと、地震で失われるのは 160万kW ではなく、60万kW だ。これだと、全域停電は避けられたかもしれない。(避けられなかったかもしれない。)

 なお、泊原発と石狩湾新港発電所がともに稼働している状況であれば、苫東厚真は夜間は休止していた可能性が高いので、全域停電は避けられた可能性が高いだろう。



 [ 付記1 ]
 全域停電を避けるためには、良い方法がある。電力系統を一体化しないで、分割しておくことだ。たとえば、東半分と西半分を分割する。こうすれば、一方が全域停電になっても、他方は生き残る。
 ただ、こうすると、「効率の高い発電所だけを使う」ということはできなくなる。その点で、コスト的に不利になるかもしれない。
 とはいえ、現実レベルで見ると、苫東厚真の供給は半分だけだったから、「苫東厚真の供給範囲/それ以外の供給範囲」というふうに分割しておけば、コスト的に不利になるということはない。
( ※ その場合は苫東厚真はフル稼働するから、高効率の発電所が無駄に遊休することはない。)
 このような「電力系統の分割」は、北海道電力のような電力会社では、有効な方法だろう。
( ※ 東電の場合は、その問題はない。一つの発電所がストップしたとしても、影響は大きくないだろう。もともと数多くの発電所があるからだ。たとえば、福島の発電所がいきなり止まったときも、東電の管内では全域停電は発生しなかった。)
 
 [ 付記2 ]
 全域停電が発生するのは、なぜか? 「機械の破損を防ぐために、それぞれの発電機が自動的にストップするからだ」と説明される。だが、どうしてそうなるのか? 
 これは、電気自動車の「エンジンブレーキ」ならぬ「モーターブレーキ」(回生ブレーキ)を考えるとわかる。アクセルの踏み込みを弱めると、モーターへの電力供給がなくなる。すると、モーターは発電機として機能して電力を発生し、同時に、自動車を減速するブレーキとして働く。
 同様のことは、発電所の電力供給がなくなる場合にも起こる。
 1箇所の発電所からの電力がなくなると、供給不足・需要過多になって、他の発電所への負担が増える。すると、その発電所の発電機の回転数が落ちて、周波数が落ちる。しかも、その程度は瞬間的に大幅になるので、ものすごい力が発電機にかかる。すると、発電機が破損しかねない。(電気自動車の場合にも、アクセルを急激に弱めると、モーターに巨大な力がかかる。ただしその大きさは、モーターを損壊するほどではない。……そこが発電所の場合に比べて、規模が小さいが。)
 この問題を避けるために、発電所は、電力需要を回路で切断し、かつ、発電機への燃料投入を遮断する。電力の需要も供給もゼロにすることで、発電機をフリー状態で回転させる。これだと、発電機への(力の)負担はゼロ同然となるので、発電機が破損することもない。

posted by 管理人 at 23:57| Comment(0) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
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