2018年08月23日

◆ ダフ屋対策に AI

 ダフ屋(転売屋)によるチケット転売の問題を回避するために、AIを使う技術が開発されている。

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 ダフ屋によるチケット転売の問題がしばしば話題になる。通常は対策として、「転売禁止を規定する」とか、「顔写真などで個人認証をする」などの手法がとられている。
 しかしそれならむしろ、チケット価格を上げた方がいいだろう。とはいえ、チケット価格を上げすぎると、売れ残りが出るという問題も生じる。
 これらの問題をすべて回避するために、AIを使う技術が開発されている。
 三井物産は08年、新球場での商品販売や特別観覧席の開発などを広島カープから受託。
 人工知能(AI)を活用し、需給変動に応じてチケット価格を変動させる「ダイナミックプライシング」と呼ばれる先進的なサービスも始めた。チームの順位や天候、繁閑期などの条件をもとに座席ごとに価格を調整し、転売による高騰や空席を解消する仕組みだ。
 6月に新会社を設立し、米社が開発したシステムを提供。すでにJリーグ横浜マリノスやプロ野球ソフトバンクが導入した
( → (けいざい+)カープ躍進、裏に三井物産あり 球場内を一括運営/多彩な客席企画:朝日新聞デジタル

 価格が一定だと、人気暴騰で闇市場の価格が暴騰することがある。こういうときには、正規価格を高めにしておけば、どうしてもほしいという人は正規価格で買えるので、一部の闇価格が異常に高騰することもなくなる。逆に、人気がないときには、価格を下げることで、空席をなくすことができる。……かくて、価格調整によって需給が均衡するので、「転売による高騰や空席を解消する」ということが可能になるわけだ。

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 このことは、上記のように広島カープで実現したが、他の音楽コンサートなどでも同様にすれば、闇価格が異常に高騰することもなくなるだろう。

 また、東京五輪でも、同様のことをするといいだろう。



 【 関連サイト 】
 参考情報で、次の話もある。
 《 イープラス「チケット購入アクセスの9割がbotだった」――検知システムで判明 》
 アカマイ・テクノロジーズは8月23日、同社のbot検知システムをチケット販売サイト運営会社のイープラスに導入した結果、悪質なbotによるアクセスのブロックに成功し、チケット買い占め問題を改善できたと発表した。チケット購入のアクセスのうち9割超がbotだったという。
( → ITmedia NEWS

 これも面白いが、さらに面白いのは、その続きだ。
 これまで、難読文字や図形問題をユーザーに解かせる方法などを検討してきたが、難読文字は自動解析で突破されるためほぼ効果がなく、図形問題を提供する外部サービスも止まることがあったりと、期待する効果は得られなかった。

 これはつまり、CAPTCHA が bot対策として無効だった、ということだ。
 ただしそのことは、すでに知られていた。
  → ネットのグニャグニャ文字認証、AIが楽々突破:朝日新聞 2017年10月27日

 Google の対策
  → 変形文字の判読はもう不要、Googleが新型CAPTCHA開発

 さらに詳しい話。
  → 認証のグニャグニャ文字は時代遅れ? GoogleがCAPTCHAを使わなくなったわけ

 AIを使って突破する方法もある。
  → 機械学習を使ってCAPTCHAをわずか15分で突破するチャレンジが行われる
 このリンク先には、次の話がある。
 進歩著しい人工知能の機械学習技術を用いることで、わずか15分でCAPTCHAそのものを学習し、自動で文字を認識して突破できるようにしてしまった人がいます。


 ──

 プロ野球のチケットならば、量は豊富なので、買い占めは無意味だ。だから、転売の問題も起こりにくい。
 一方、東京五輪やコンサートは、量が少なくて限定的であり、買い占めの効果は大きい。したがって、先の「 AIによる価格調整」だけでは不十分で、「 bot による買い占めを阻む」という対策が必要となりそうだ。
 政府が最もやりそうなことは、「往復葉書による申込み」だが、それだと、この電子化の時代には時代遅れっぽい。かといって、ネット販売だけにすると、「 bot による買い占め」が起こりがちだ。
 というわけで、bot 対策は十分にやることが必要だろう。



 【 関連動画 】






 後者は bot ならぬ Robot が認証システムを打破した動画だが、あまりにも遅すぎるので、人間よりも遅い。これじゃ、無意味だね。
 解説記事にもこうある。
 厳密に言うと「Robot beats "I am not a Robot" Captcha」はCAPTCHAを突破したわけではなく、ジョークとして作られたムービー。
( → CAPTCHA認証の「私はロボットではありません」をロボットが突破するムービー - GIGAZINE





 【 追記 】
 コメント欄でも書いたが、東京五輪では、販売を4回ぐらいに分けて販売するといい。最初は S席あたりを高値販売する。売れ残りが予想される程度の高値販売。2回目はA席。3回目はB席。4回目はC席。各回、4分の1ぐらいの分量を売る。

 例。1回目にはS席を売る。4分の1ぐらい。そのうち7割が売れる。売れ残った分は、まとめて、次回に A席として売る。2回目には、1回目ではS席になるはずだった分も含んで A席となるので、ちょっとお得だ。そこで売れ残った分はB席として売る。
 最後に最上段の分がC席として安値で売られる。この分だけは、開催直前まで販売するので、買いたい人はいつでも買える。最後まで売れ残ったら、開催直前に格安で販売する。それでも売れ残ったら、小学生に無償プレゼントする。
 以上の方式なら、転売屋から高額で買う必要はない。いつでもC席を安価に買えるからだ。また、売り切れたら、大量に出回っているキャンセル分や、民間転売分を購入すればいい。
 民間で転売する量がたくさんあれば、転売屋から高額で買う人はいなくなるから、転売屋の商売は成立しなくなる。当然、最初に転売屋が買い占めることもなくなる。仮に買い占めようとすれば、転売屋は大損する。(たとえば本来はA席になるはずの席をS席として購入するので、適正価格よりもずっと高価で買うことになる。しかも、同等の席が、民間の転売で取引されているから、誰も転売屋からは高額で買わなくなる。)

 民間人同士の転売を自由化することで、転売屋の不当な高額販売を阻止できる。
 一般的には、流通量を多くすれば、価格は適正になる。
 なお、さらに市場価格を下げたければ、開催直前に、第二次販売を実施すればいい。全体の1割ぐらいを留保しておいて、それを追加で販売する。こうすれば、異常な高騰を阻止できる。また、仮に売れ残ったとしても、全体の1割であれば、たいしたことにはならない。たとえ不人気でも、値引き販売すれば、きれいに売り切れるだろう。また、ここで値引き販売することで、転売屋の不当利得を阻止できる。
posted by 管理人 at 23:34 | Comment(10) | コンピュータ_04 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
需要が供給を圧倒的に上回るばあい、正規価格を相当高めにしておいてもそれがスタート価格になったオークションやらダフ行為がありそうな気がしますが。これらの抑止にはやはり厳格な個人認証がいいのでは。

この時問題になるのは、転売目的でなくチケットを購入した人が、病気でも仕事でも正当な事由で使われないであろうチケットの取り扱いです。旅行や旅客機と同じようなキャンセル待ちと払い戻しシステムの導入でなんとかならないでしょうか。
Posted by 作業員 at 2018年08月24日 09:22
 あらかじめ需要が供給を下回るように価格設定をすればいいんです。
 具体的には、販売を4回ぐらいに分けて、1回目は売れ残りがたくさん生じるほどの高価格にする。適正価格が 5千円なら、2万円ぐらいの価格にする。売れ残ったら、次回は価格を下げて売る。また売れ残ったら、また価格を下げる。4回目で売り切る。それでもまだ残ったら、開催直前に、小学生に無料配布する。

 初回に2万円で買い占めた業者は、切符を貯め込んでも、あとで5千円ぐらいで売るしかないから、大損するだけ。

> キャンセル待ちと払い戻しシステムの導入でなんとかならないでしょうか。

 そんな面倒なことをするより、個人間の転売を認めて、認証をなくす方が賢明。
 「販売回数を増やして、だんだん価格を下げる」
 というのが最適。

 だんだん価格を下げる逆順オークションに似ている。
Posted by 管理人 at 2018年08月24日 11:55
>販売を4回ぐらいに分けて、

こっちのほうが面倒では?何枚づつ何回に分けていくらで、といった条件出しに経験の蓄積が必要でしょう。で、例えば当初ダフ屋の販売価格からスタートしても適正価格に近づいた途端一気に購入が増え、それが高値転売に廻ったら意味がないような。

>個人間の転売を認めて、認証をなくす
認証をなくす一方でダフ屋の介入を防ぐのは困難では?
Posted by 作業員 at 2018年08月24日 13:11
本当にコンサートなどでも、購入時に顔写真を登録するとか面倒なことをさせられるより、とっととダイナミックプライシングを導入してほしいものです。それとセットで公式のユーザ間売買システムも。

ただ、なぜかアーティスト側がダイナミックプライシングを嫌がっているようで、であれば一定数は安価な定額で販売するとかすればかなり転売屋対策になると思うのですけどね。(需要が圧倒的に多い場合はこの限りではないが)
Posted by K.A at 2018年08月24日 17:14
> Posted by 作業員 at 2018年08月24日 13:11

 にお答えします。

> こっちのほうが面倒では?

 回数が増えるだけで、手間は変わらない。むしろ認証などの手間がないから、大幅に楽になる。コンピュータシステムだけで済むかも。

> 何枚づつ何回に分けていくらで

 各回、4分の1ずつ。売れ残りが少し出るぐらいの価格にすればいい。売れ行きを見て、次回の量を調整する。
 なお、人気を知るには、初回の前に「先行販売の抽選回」をやって、5枚程度を安値で先行販売して、そこで人気を調べればいい。その人気によって、のちの価格を調整する。

 実は、これは(本文で述べたように)AIで調整できる。
 別記事もある。
  https://news.hoken-mammoth.jp/dynamicpricing/

> 適正価格に近づいた途端一気に購入が増え

 たとえ一挙に増えても、最大限で全体の4分の1。残りの4分の3はすでに高額で販売済み。大勢に影響しない。
 だいたい、その手のことは逆順オークションでは常に成立する。騒ぐほどではない。価格も適正価格になるから、混乱も生じない。

> 高値転売に廻ったら意味がないような。

 高値販売が成立するのは、高値でも買いたいという人がいるから。しかし、高値でも買いたい人は、1〜3回目にすでに全員が購入済み。(制限なく、必ず買えるから。)
 高値でも買いたい人(熱烈なファン)がすでに入手済みなので、あとは高値では買いたくない人だけ。従って高値販売は成立しない。例外的にごく少数だけ成立するが、そんな例外は無視してもいい。
 仮に転売業者が高値で販売したがっても、一般人のキャンセル分も出てくるから、普通に価格は下がってくる。
 場合によっては、キャンセル分の方が多いはずで、その場合、競技直前に買う人は、正規価格よりも安く買えるでしょう。

 なお、本文最後の 【 追記 】 を参照。

Posted by 管理人 at 2018年08月24日 19:05
AI とかコンピータ使うというのは、効率的な手段なだけで、中学社会で習う、需要と供給のつりあった価格にしたってだけなんだよね。スーパーなんかがあたりまえにやってることを、チケット屋がしてこなくて、その価格差を転売屋に突かれてただけなんだよね。
もういっそのことチケット屋は株式売買みたいに、完全オークションにしちゃえと、思ってました
Posted by 佐賀 at 2018年08月25日 09:47
>むしろ認証などの手間がないから、大幅に楽になる。

確かに生体認証は手間がかかりますが、webサイトのアカウントに使われる二段階認証のように携帯番号とを組み合わせて本人確認をすればそれほど手間はかからないと考えます。

で、チケットの販売方法ですが、想定している需給の状態が違うように思います。追記にある、”いつでもC席を安価に買える”状態を作り出せるような需給バランスであれば段階的なチケット販売は効果が見込まれます。

本人認証云々は、需要>>供給でC席ですら入手困難な場合を想定して、高値転売をどう抑止するかについてコメントしたものです。
Posted by 作業員 at 2018年08月25日 10:19
> 高値転売をどう抑止するか

 高値転売は別に悪いことじゃないから、抑止する必要もない、というのが、本項の趣旨。
 たとえば、2万円で買ったものを10万円で転売するのは悪いことだが、もともと8万円ぐらいで大量に販売しておけば、8万円で買ったものを8万円で売るだけで、別に悪いことではない。
 価格を上げれば需要と供給は一致するから、価格を上げることで問題を解決する、という原理的な解決案。
 8万円のものを2万円で売ることにして、そこで市場原理を拒むために認証を厳しくするというのでは、本末転倒だ、ということ。


Posted by 管理人 at 2018年08月25日 12:13
"高値転売"については言葉足らずでした。”2万円で買ったものを10万円で転売”を指しています。

ちなみに健全な市場原理に従った高値売買について異を唱えるつもりはありません。2万円で買ったものを10万円で転売でも構わないと思っています。問題にしたいのは当初から転売目的で大量にチケットを買い占め需給を逼迫させて価格高騰に誘導、転売する行為にどう対応するかということです。

株式市場ほどにも公正性が整備されているようには見受けられませんし、チケットは開催日を過ぎれば無価値の紙くずとなる、時限制のある有価物です。この取引に適正に(違法ではないものの)不正を排除して市場原理を適用するにはどういった仕組みが好ましいか、といった話です。
Posted by 作業員 at 2018年08月25日 12:41
> 当初から転売目的で大量にチケットを買い占め需給を逼迫させて価格高騰に誘導、転売する行為にどう対応するかということです。

 だからそれが本項のテーマ。それには「最初から高値販売すれば問題解決」と示している。2万円で買うことはできず、8万円で買って8万円で売るしかないのだから、買い占める阿呆はいない。売れ残りのリスクもあるし。
Posted by 管理人 at 2018年08月25日 13:06
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