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ジュラシック・パークという映画で、最大の問題点は、「恐竜があんなに敏捷に動くはずはない」ということだ。
この点はもちろん映画制作者もわかっていたので、映画中で「最新の研究では、恐竜も哺乳類のように敏捷に動いていたことがわかった」というような話を登場人物に語らせている。これで、もっともらしく根拠を付けたが、この「最新の研究」というのが、まったくのデマカセだ。「恐竜も哺乳類のように敏捷に動いていた」ということは、ありえない。
これはどうしてかというと、爬虫類の代謝は哺乳類に比べて著しく低いからだ。そのことは、「爬虫類は変温動物である」ということからわかる。変温動物であるということは、自ら体温維持のために発熱をしないということであり、それは「代謝が低い」ということだ。そして、代謝が低い生物は、敏捷に動くことはできない。(敏捷に動かすためのエンジンが備わっていないからだ。)
比喩的に言えば、高性能の自動車は高出力のエンジンを持つが、高出力のエンジンは高い熱を発生する。逆に言えば、高い熱を発生しない自動車は、高出力を持たない。(内燃機関の自動車である限りはそうなっている。)
結局、爬虫類は、変温動物であり、代謝が低いがゆえに、高出力のエンジン[発熱源]を持つことができず、敏捷に動くことはできないのだ。
実例としては、ワニや亀がある。どちらも爬虫類の中では巨大な肉体を持つが、動きはきわめて緩慢である。同様のことが、恐竜にも成立するはずだ。
ついでに言うと、トカゲは敏捷に語句が、これはサイズがきわめて小さいからだ。こんなに小さなサイズの哺乳類はいないから、哺乳類とは比較にならない。
哺乳類の中で最小サイズは、ネズミぐらいだが、ネズミぐらいの爬虫類というと、カメレオンや、イグアナ(の子供)がいる。どちらも、ある程度は動けるが、とうていネズミのように敏捷に動くことはできない。(そのためのエンジン[発熱源]を持たないからだ。)
そもそも、爬虫類である恐竜が非常に巨大化できたのは、代謝が低いからだ。食べたものを、熱に回さず、体の巨大化のために費やした。
人間で言うと、食べるだけ食べて動かないでいると、巨大な肥満体になるが、それと同様だ。
恐竜が巨大化したのは、食べるだけ食べて動かないからだ。つまり、代謝が低いからだ。それはつまり、「動きが鈍い」ということと等価なのである。
ゆえに、巨大な恐竜が敏捷に動くということはありえない。たとえば、ティラノザウルスがあんなに速く走れるはずがない。また、ヴェロキラプトルがあんなに敏捷に襲いかかることもありえない。あれはまるで哺乳類の動きだが、そんなに敏捷に動けるはずがないのだ。そのためのエンジン(発熱源)をもたないのだから。
これらの動画で示されているような「怪獣らしい動き」「ゴジラみたいな動き」は、現実には、ありえない。現実にあるのは、もっとずっと緩慢な動きだろう。ワニや亀のような。
[ 付記 ]
肉食恐竜の動きがたいしたことがないから、草食恐竜は十分に逃げることができる。かくて、「草食恐竜が肉食恐竜に食い尽くされて絶滅する」ということは ないわけだ。
この点は、現在の哺乳類と同様である。たとえば、ライオンやチーターやジャガーなどは、たいていは草食獣に逃げられて、狩りに失敗する。
ネコ科の生物で最も個体数が多いのは、豹(ヒョウ)である。この手の肉食獣では、最も小型なので、樹上に上ることができる。樹上から、遠くの獲物を見つけたあとは、風下からこっそり忍び寄って、一挙に襲いかかる。狩りの名手。( NHK の「ダーウィンが来た」による。)
→ NHK の「ダーウィンが来た」
→ ダーウィンが来た!#550「ネコNo.1の成功者!ヒョウの秘密」 - 動画 Dailymotion
ヒョウは狩りが上手だが、それでも草食獣の方が圧倒的に多い。草食獣の逃げる能力の方が上回ることが多いわけだ。
恐竜も同様だっただろう。ティラノサウルスは、映画に出たような強力な破壊力をもっていたはずがない。たいていは、のんびりとした動きをするだけで、草食恐竜には逃げられてしまったはずだ。
【 追記 】
恐竜の速度については、「かなり高速だった」という推測が多い。では、その根拠は?
足跡の化石から、歩く速度を計算する方法が確立されています。
足跡の大きさから腰の高さ・脚の長さを算出して、これと歩幅を考慮して歩く速度を推測します。
この算出は、現生の哺乳類や鳥類が基になっていますが、研究者によって大きく数値が異なっています。
( → 恐竜の歩いたスピード | 恐竜のしっぽ -恐竜のお勉強- )
つまり、「恐竜は哺乳類や鳥類と同様の歩行能力がある」ということを前提とした上で、哺乳類や鳥類の算式を当てはめているわけだ。
ここでは、「恐竜は爬虫類である」という前提を捨てて、「恐竜は哺乳類や鳥類と同様の恒温動物である」という前提を取っている。こういうのを、砂上の楼閣という。
これはまるで、戦車の速度を推定するために、F1 の算式を用いるようなものだ。
実際には、恐竜は、筋肉構造も、血液・心臓などの循環器システムも、まったく異なる生物だ。そのいずれも低速向けとなっている。なのに、哺乳類や鳥類のための算式を適用できるはずがない。
そのことが、本項の指摘からわかるはずだ。(代謝の差がある、ということ。)
※ どちらかと言えば、カメレオンやイグアナの数値を用いるべきだった。
なお、速く走ると骨が砕けてしまうので、速く走ることは原理的に不可能だ、という研究もある。
→ ティラノサウルスから走って逃げることは可能 | 恐竜映画のシーンほど速くなかった、新研究で判明
【 関連項目 】
似た話を前に述べたことがある。やはり恐竜映画批判で、敏捷な動きを問題視している。
→ 恐竜映画の嘘(ウォーキング with ダイナソー)
敏捷になりませんでしたっけ?
敏捷の基準が
草食獣というのなら緩慢かもしれませんが。
ティラノサウルスは23km/hで人間と同じ。w
「恐竜はどのくらいの速さで走ったの?」
https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/kids/nazenani/nazenani_05.html
https://matome.naver.jp/odai/2137890196338251201
なお、どうして短距離かというと、貯まっている ATP を使うだけで、代謝は関係ないからです。
走る距離が長くなると、ATP を使い果たしたあとで代謝の量が影響するので、爬虫類は不利です。
恐竜の速度(の推定方式)についての話。
あのサイズまで行くと熱が逃げきらなくてもはや恒温だって聞いた
https://dinoandrabbittopics.blogspot.com/2017/03/34.html
◎恐竜
〇竜盤類
・竜脚形類…ディプロドクス
・ヘレラサウリダエ…ヘレラサウルス
〇オルニソスケリダ
・鳥盤類…イグアノドン、トリケラトプス、ステゴザウルス
・獣脚類…ティラノサウルス、ヴェロキラプトル、スズメ
あまり変動しないというだけであって、自ら発熱する能力はありません。だから、外気温が急に低下すると、一挙に絶滅しました。
一方、鳥類は自ら発熱するという意味の恒温性があったので、外気温が急激に低下しても生き延びることができました。
これが恐竜絶滅の当時に起こったことです。
サイト内検索で「半恒温性」を検索してください。
> 恐竜が爬虫類である
これは当り前です。問題になっているのは鳥類が爬虫類であるかどうかということ。下記で論じています。
→ http://openblog.seesaa.net/article/435848174.html
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なお、鳥類が爬虫類であると断言するためには、恐竜から鳥類への進化の道筋をきちんと明示する必要がある。だが、それができているのは、私の説だけ。下記。
→ https://nando.up.seesaa.net/docs/pre_bird.htm
この図を用いない場合は、恐竜と巨鳥類とダチョウとの関係が不明なので、学説として未熟となる。(というか、矛盾だらけで破綻してしまう。)
「恐竜は爬虫類である」という前提が砂上の楼閣でないのはなぜでしょうか?
>>恐竜は、筋肉構造も、血液・心臓などの循環器システムも、まったく異なる生物だ
なぜわかるんでしょう。
そういいきれる人はこの世に居ないと思いますが。
> なぜわかるんでしょう。
体温が違うので、そこで働く酵素が違うからです。爬虫類が生きているときの体温は、人間などの哺乳類では「低体温症」で死んでしまう温度です。体温が一定程度に下がると、酵素が働かなくなり、細胞活動がストップしてしまいます。つまり、死ぬ。
なお、ここでは酵素による「代謝」が異なっていることを意味します。臓器の形などが違うというより、臓器を働かせる分子レベルの機能の違い。
反論になってないですよね。
現存する生物の性質を恐竜がそのまま持つということを示さなければならない。
>>体温が違うので、そこで働く酵素が違うからです。爬虫類が生きているときの体温は、人間などの哺乳類では「低体温症」で死んでしまう温度です。体温が一定程度に下がると、酵素が働かなくなり、細胞活動がストップしてしまいます。つまり、死ぬ。
砂上の楼閣とはいわないまでも、「前提」が正しい限りにおいてそうなるだけですよね。
一説に過ぎない。
現存する生物の筋肉と恐竜の筋肉の性能にそんなに差がないと仮定すると、筋肉の出せる力は大きさの2乗で大きくなる断面積に比例しますので、大きさの3乗で重くなる体重を動かすには、相当量の幅の筋肉が必要となりますので。
これだけの期間繁栄し、哺乳類とも長い期間競合しながらも、多様性を保って生存競争に打ち勝ってきたということは重要な事実である。
哺乳類と比較して俊敏性に劣るのならば、哺乳類の台頭を大量絶滅までのこれだけの期間抑えることができたであろうか?
又恐竜は原生鳥類が持つ気嚢システムを既に獲得しており、呼吸効率が哺乳類より格段に良かったとする説が近年有力である。
哺乳類の代謝効率を基準に考察できない可能性も高い。一般に代謝が高い生き物は寿命が短いとされるが、
あれだけ巨体を誇ったティラノサウルスであっても、寿命はおよそ30年と体格に比べてかなり短い。
なお、参考に
原生鳥類の最速はダチョウであり、最高時速70km。
体長およそ1.8メートルに成長するグリーンイグアナは最高時速35kmで走れる。
哺乳類の中で一般的に代謝の遅いとされるアフリカゾウは時速40kmで走ることができる。
ワニやカメを恐竜の比較として挙げるのは、系統樹の遠さからして適切ではない。ワニやカメよりも鳥類の方が恐竜に近縁である。
恐竜の中で最速だったと目されるのはオルニトミムス科の恐竜グループ。このグループはマニラプトル形類から共にに分化した鳥類により近いグループ。
なお、ジュラシックパークに登場するヴェロキラプトルの系統はさらに鳥類に近いドロマエオサウルス類で、
ほぼすべての種が羽毛を持ち飛行していた種も多い。
この時代には、まだ哺乳類はできていません。キノドン類があるぐらい。
進化というのは何億年もの長い時間がかかるんです。ジュラ紀末のころにはジュラマイア、さらに白亜紀にエオマイアという、いずれも原始的な哺乳類が出現しますが、能力的にはまだまだ爬虫類に負けています。だからニッチでこぢんまりと生きているだけです。
哺乳類がネズミよりも大きなサイズを獲得できるのは、恐竜が滅びたあとのことです。適応放散の形で急激に、進化と体格拡大が起こった。
恐竜時代の哺乳類は、あまりにも無能であって、見つかりしだい、鳥型恐竜に食い殺されていたでしょう。だから、ネズミサイズのものだけが、ひっそりとニッチで生きていただけ。
俊敏性で優れた中型哺乳類が歴史上に出現するのは、恐竜が滅びてから 1000〜 2000万年ぐらいたってからのことです。恐竜の時代には、まだ出現していませんでした。それらが出現するには、恐竜が滅びること(適応放散をもたらすこと)が必要だったのです。
本項では代謝のシステムを理由としているのですから、恒温動物である鳥類や哺乳類と比べて、変温動物であるワニや亀やイグアナやカメレオンの方が、代謝のシステムとしては同類です。
恐竜もワニやグリーンイグアナと同様で、瞬発力では高速で走れるでしょうが、ATP を使い切った時点で、ほとんど動けなくなるでしょう。それが代謝の差です。
ワニやグリーンイグアナが普段はゆっくりとしか動けないのは、それが代謝の限界だからです。
> 爬虫類の代謝は哺乳類に比べて著しく低いからだ。
ワニやカメなどの現生爬虫類に関しては同意します。しかし、「恐竜の一部は鳥類と同じく恒温動物であり、代謝能力が高かった」という説を聞いたことがあります。
もしも、恐竜の一部は恒温動物であったという説が正しく、ジュラシック・パークという映画の中で敏捷に動いていた恐竜が恒温動物の恐竜に含まれていたら、「ジュラシック・パークという映画は、嘘だらけ」と説は間違いということになってしまいます。
恐竜のすべてがワニやカメのような変温動物であったのか、一部の恐竜が鳥類と同じ恒温動物あったのか、これの正否を調べる必要があると思います。
その意味で、「ジュラシック・パークという映画は、嘘だらけ」という説は間違いではありません。
恐竜の一部は恒温動物であったという説が成立するのは、現生鳥類です。その当時の生き物でこれに当てはまるのは、巨鳥類と走鳥類とキジ・カモ類とだけです。これらが低温期に絶滅することなく生き残りました。
あと、半分当てはまるものとして、半恒温性のものが考えられます。鳥型恐竜の一部や恐鳥類です。ただしこれらは、十分な恒温性がないので、いずれも絶滅しました。
サイト内検索で「半恒温性|恒温性」という語を検索してみてください。
→ http://j.mp/2whVUtj
系統樹も確認のこと。
→ https://nando.up.seesaa.net/docs/pre_bird.htm
逆に言えば、トサカという冷却装置を持つ生物は、十分な発熱性と不十分な(内部)冷却能力をもつ。
これに当てはまるのは、鶏などのキジ類と、オビラプトルのような鳥型恐竜の一部。
詳しくは下記。
http://openblog.seesaa.net/article/435848157.html