2018年08月19日

◆ 日産自動車とフランス政府

 日産自動車にフランス政府が介入して、日産自動車を支配しようとしている。
 
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 日産自動車にフランス政府が介入して、日産自動車を支配しようとしている。狙いは、日産の自動車をフランスの工場で生産させることで、フランスでの雇用を増やすこと。
 この件は、前から話題になっていたが、良いまとめがあるので、紹介しよう。
 ルノー・日産とマクロン氏の対立が表面化したのは2015年。フランス政府は14年に株式を2年以上保有する株主の議決権を2倍にできるフロランジュ法を制定した。長期保有株主の議決権を倍増させないためには、株主総会で3分の2以上の株主の賛成が必要だ。当事、フランス政府はルノーに15%出資する大株主。ルノー経営陣は、議決権の倍増で政府が経営に関与することを避けるため、フロランジュ法を適用しないことを株主総会で提案。
 これに対してフランス政府は、ルノーへの出資比率を約20%に引き上げて対抗、結果的に経営側の議案は否決されて、ルノーの長期株式保有者の議決権は倍増された。これを主導してきたのが当時、経済・産業・デジタル相だったマクロン氏だ。
 マクロン氏は、フランス政府のルノーの議決権を約28%に高めた上で、今度はゴーン氏に業績好調だった日産とルノーの経営統合を迫った。出資関係ではルノーが上に立つものの、業績では日産がルノーを圧倒しており、フランス政府としても雇用政策などで「小粒なルノーより、グローバル展開している日産をうまく活用したいと考えた」(自動車ジャーナリスト)のは明白だ。
 ルノーは日産に45%出資しており、日産もルノーに15%出資して持ち合っている。しかし、日産が保有するルノー株式にはフランスの法律によって議決権がない。フランス政府がルノーを通して日産の経営に関与してくれば、これを防ぐ手立てはないに等しい。
 マクロン氏の強引なやり方に警戒感を強めたゴーン氏は、日産がルノーの株式を追加取得して出資比率を25%以上にすると、ルノーの保有する日産の株式の議決権がなくなるという日本の会社法を使うことで、フランス政府が求めるルノーと日産の経営統合を阻止することを検討。お互いが議決権を持たない自動車メーカーグループとなった場合、大きな混乱に陥ることを懸念したフランス政府は矛を収めることを決断した。15年12月にルノー、日産と交渉してフランス政府は日産の経営に関与しないことを約束、関与した場合は日産がルノー株式を買い増す権利を持つことを確認した。
( → 日産、経営支配狙う仏政府との対立先鋭化(Business Journal)

 この本質は、何か? 日産はルノーの出資を受け入れて、資本関係ではルノーの子会社になった。だが、実質的には規模でも能力でも収益でも日産が圧倒しており、実質的には日産の親会社であるのも同然だ。しかるに、資本関係だけは、ルノーが日産の親会社だ。従って、ルノーが日産をうまく操作できる。
 こういうインチキみたいな形式上の利点を利用して、「日産をうまく利用してやれ。そうすればフランス国民の利益になるぞ」と考えたのがマクロンだ。
 なるほど、フランスの立場からすれば、それが最善だ。しかし、それは日本の立場からすれば、最悪だ。日本の雇用をフランスに奪われてしまうのも同然だ。ルノーと日産は、「協力して、ともに利益を得る」という原則で関係が成立しているのに、「ルノーの大株主であるフランス政府が介入することで、日産を食い物にして、日本の利益をフランスに移転する」というふうに、一方的な収奪関係に移そうとしているわけだ。

 ここには、次の二つの問題がある。
  ・ 私企業に政府が介入して、私企業の経営を操作すること。
  ・ フランスが一方的に利益を得て、日本の利益を奪うこと。

 どちらもとんでもないことだ。

 ──

 これについては、対策もある。

 (1) ルノーの株の無効化

 日産がルノーの株式を追加取得して出資比率を25%以上にすると、ルノーの保有する日産の株式の議決権がなくなるという日本の会社法を使う。
 これは行使しないという合意があったが、合意の条件をフランス政府が破棄したのだから、日産も合意を破棄して、上記の権限を行使すればいい。「フランス政府は日産の経営に関与しないことを約束、関与した場合は日産がルノー株式を買い増す権利を持つことを確認した」とあるとおり。

 (2) 日本政府の介入

 フランス政府が介入するのであれば、日本政府も逆方向に介入するべきだ。「フランス政府はこの件に介入するな」と。できれば、「もし介入するなら、日産に《 ルノーの株の無効化 》をさせるぞ」と強く申し入れるといい。
 だいたい、フランスが(政府の介入で)日本の雇用を奪うというふうに、向こうから喧嘩を売ってきたのだから、日本政府は売られた喧嘩を買うべきだ。買わずに一方的に殴られっぱなしで富を奪われるというのは、いわば、領土を奪われるようなものだ。尖閣諸島や竹島を奪われるように、日産の経営権と雇用を奪われるわけだ。ひどすぎる。
 では、実際には、どうしたか? こうだ。
 《 安倍首相と仏大統領、日産ルノー合併めぐり協議か 》 近く予定されている安倍晋三首相とエマニュエル・マクロン大統領の首脳会談で、「日産とルノーの問題」が議題のひとつになるといわれている。だが、「公式の発表では、両政府ともこの件には触れないことになっている」と永田町からは伝わってくる。
( → (Business Journal)

 これは 2018年06月12日 の記事。その後に続報が特にないことからして、やはり、特に何も協議なされなかったようだ。つまり、日本政府は何も申し入れていないようだ。これではサボっているのも同然だろう。
 正確に言うと、こうだ。これに先立つ 5月25日に、安倍首相は日仏首脳会談を行ったが、特にたいしたことはしていない。
  → 日仏首脳会談(ワーキングランチ) | 外務省

 その後、訪仏の予定が合ったが、西日本豪雨があったので、訪仏を中止。かわりに電話会談をした。そこでも、特にたいしたことはしていない。
  → 日仏首脳電話会談 - La France au Japon

 つまり、フランス政府による日産への介入については、何も論じていないようだ。
 これ以後は、特にニュースは何も見当たらないので、何も起こっていないようだ。
 ただ、フランス政府が日産への介入をやめたという報道もないので、フランス政府の方針は維持されているとも見込まれる。
 今後の推移しだいだが、フランス政府による介入については、断固拒否する旨、日本政府は申し入れるべきだ。

 ──

 最後に言っておくと、私が本項を書いたのは、フランス政府のやり口が詐欺同然だからだ。
 フランス政府が日産の雇用をフランスに移転したいのであれば、日産の株式の過半数または全部を買収して、日産を国有化すればいい。(外国企業を国有化するというのも何だか変だが。)
 しかるに、フランス政府は、そういう正々堂々たる方針を取らない。かわりに、詐欺的な方法を取る。
  ・ ルノーの株を少しだけ取得する。
  ・ 2年保有の株式の権利を倍増するという奇妙な法制度の導入。
   (あえてこのことのために法改正)
  ・ ルノーが日産の大株主であることを利用する。


 こういう形で、過半数をとることはどこにもないまま、ルノー株の2割弱を持つことだけで、日産を思うがままに支配しようとする。(まるで、わらしべ長者だ。)
 こういうのは、本人は「やり方がうまい」と思って得意なのだろうが、あまりにも姑息で不正義である。詐欺師も同然だと言える。うまく手続きをいじくって、他人の富を自分の富にしてしまおうというのだから、本質的には詐欺も同然だ。
 そこで、人をだます詐欺を蛇蝎のごとく憎む本サイトが、批判するわけだ。

 ※ 日産自動車の時価総額は 4.4兆円。
   ルノーの時価総額は 2.8兆円。
   後者の2割弱を取得することで、両者を支配しようとする。
   本来ならば、そんな権利は何もないのだが。(少数株主)



 [ 付記 ]
 こういうことが起こったのも、日産の新型マイクラがあまり売れていないせいらしい。(本来ならばマイクラが馬鹿売れして、フランスでも大量生産するはずだったが、そうならなかった。)
 実際、マイクラは販売ランキングでは圏外に落ちている。
 その一方で、ルノーのクリオは馬鹿売れしている。
  → 2018年4月欧州新車販売台数レポート - JATO

 マイクラが売れないのは、値段が馬鹿高いせいだろう。1クラス上の日産車(パルサー)と同じくらいの価格だ。
 あと、デザインもあまり人気がないようだ。当初は斬新に思えたが、クリオ(日本名:ルーテシア)の方がデザインはずっといい。





 日産はデザインを何とかしないと駄目ですね。Vモーションというのを、さっさと捨てた方がいいですね。



 【 関連サイト 】

 下記はいずれも 2015年の記事。
  → 不肖の親ルノーと別れられない… 日産自動車の深刻な焦燥感
  → 日産「切り札」が威力 仏政府から譲歩勝ち取る 「会社法308条」ルノー株買い増しで議決権消す

 最も新しい介入は、2018年の3月ごろ。
  → フランス政府が描く、日産・支配シナリオ…「日産・三菱自の経営統合+ルノー傘下入り」案も
  → 日産自動車がルノー傘下になることで仏企業化する可能性 マクロン大統領が猛烈圧力か
posted by 管理人 at 11:57 | Comment(4) | 一般(雑学)5 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>>マイクラが売れないのは、値段が馬鹿高いせいだろう

別に、ライバル社の同クラスと比べて高いということはないですよ。日産含めどこも13000〜20000ユーロ。
パルサーと比較しマイクラは5000程低価格の車ですし。
Posted by きゅうとぴ at 2018年08月20日 19:45
 私の見間違いだったかな? と思って、調べ直そうとしたが、先に見たページがどうしても見つからない。イギリスの日産のページで見たはずなんだが。(マイクラはパルサーの1割安だったはず。)

 ただ、かわりに次のページが見つかった。
  https://youtu.be/VrrjIR_D0kE

 読者の声で、「価格が高すぎる」という声がたくさんある。BMW1シリーズの方が安い、という声も。

Posted by 管理人 at 2018年08月20日 21:02
1シリーズはまったく価格ランクことなる車種です。
最低23000ユーロ、しかしこれはオプションなどが取り払われたグレードなので実質30000ユーロ前後です。
一方でマイクラは13000から19000ユーロ、パルサーは22000から24000ユーロです。
Posted by きゅうとぴ at 2018年08月20日 21:20
株式会社株式を国が保有する
そのこと自体が○○%の国営化で、
社会主義の卵であり、かつてのロシア、
今のフランスがいい例であって成功していない

ルノーや日産が成功例とするなら、
いづれ準社会主義の中国の車会社に呑まれるかと

日本も修正社会主義的なところから始まり、
旧財閥系が色濃く残る国ではありますが、
競争社会と自由主義、国益の理想なバランス、
それを今の時代は何かの閾値でもって定義、
目指すところとすべきなのかも
例えば、トランプという人が目指す帝国主義
それは実は自国民にとっては理想ではないのか?
それを否とするのが地球主義、国連の拠り所

後者を是としても日本の立ち位置は微妙です。
現地生産地産原則の時代が来たとき、
日本は何を売って食糧を買うんでしょうか

話はそれました、
旧財閥系の1事業、
時代がかわったなら淘汰されていくものかも
トヨタもオイルショックで風前の灯火でした、
ソニーの1時代も10年前、
日産も一度は解体の話があって今に残る状態

考えるは日産、だけではないと最近は思います
Posted by メルカッツ at 2018年08月20日 22:07
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