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(1) 東芝
東芝は去年の今ごろは「破綻」の可能性が噂され、お先は真っ暗だったが、現在では、破綻を免れたようだ。
・ 東芝メモリを高額で売却できた。
・ WH は新規損失なしで済んだ。( → 損失引当金で手当て済み )
・ LNG 事業の赤字は 2000億円以下で済みそう。( → 記事 )
・ 英国の原発事業売却は、何とかなりそう。
結局、あれこれと赤字要因はあるのだが、東芝メモリの売却益9700億円の寄与が圧倒的に大きいので、大幅な黒字決算になるようだ。
→ 東芝、破綻危機→一転し「空前の過去最高益」の内実
まともな事業が残っていないので、この先どうやって会社を継続していくかという方向性ははっきりとはしないのだが、少なくとも、東芝メモリという孝行息子が残してくれた置き土産によって、倒産の危機は免れたようだ。
危機脱出。(ただし先は不明。)
(2) 三菱重工
造船部門で大赤字を出したあとで、MRJ は事業化の見通しが立たないありさま。その間に、エアバスとボーイングが MRJ のライバル社を買収したので、今後は MRJ はエアバスやボーイングと競争することになる。ま、勝ち目は皆無ですね。さっさと撤収した方がいいんだが。
今後、赤字はどんどん増えていく見込み。雪だるま式に赤字は大幅に拡大するだろう。倒産の可能性は十分にある。
日本の防衛産業の一翼を担う役割はどうなることやら。とりあえずは F-35 の組み立て生産を実行していくようだが、機数は少ないし、経営に寄与するほどでもない。
現実的なところでは、戦闘機部門だけを事業独立して売却し、残りの三菱重工は倒産・会社整理というところか。
私の言うことを聞いて、MRJ の開発をやめておけば良かったのにね。(私は最初からそう言っていたので。)
→ MRJ の量産化が無期限延期: Open ブログ
→ MRJ は失敗するだろう: Open ブログ
(3) 日立
東芝と三菱重工はひどいが、日立だけはまともだ……と思っていたが、とうとう日立も駄目会社の仲間入りをすることになったようだ。原発にのめりこんでいるからだ。
日立製作所が日本政府の後押しを受けて進める英国での原発計画が、より厳しくなってきた。建設工事の中核になるとみられていた米建設大手ベクテルが建設を直接担わず、助言のみの関与にとどまる方向になったためだ。
日立は海外の原発向けに発電用タービンなどの機器を納めた実績はあるが、原発を丸ごとつくる形の輸出は初めて。国内での原発全体の建設も、統括は東京電力などの電力会社が担い、日立はその電力会社に原子炉を納める側だった。
だが、英国での原発計画では、自ら発注者として建設をとりまとめ、現地の建設作業員にも目配りして工程を管理する立場になった。
( → ノウハウ乏しい日立、苦境に 英原発工事の中核消える:朝日新聞 )
「自分で工事をしなくてはならなくなった」という趣旨だが、問題はそこではない。「有力なパートナーが事業成立の見込みをなくして撤退した」ということだ。赤字確実だからパートナーは撤退したわけだ。
だったら日立も撤退すれば問題ないのだが、パートナーが撤退した事業を自力で遂行しようとしているらしい。相手が「ババを引きたくない」と逃げたときに、「じゃあ、私がババをもらいます」というわけだ。頭がおかしいとしか思えない。
日立製作所は、英国での原発計画をめぐり、現時点で中止すれば最大約2700億円の損失が生じるとの見通しを示した。着工の可否は来年中に判断する。着工への手続きや調査にも費用がかかり、中止決定が遅くなれば、損失はさらにふくらむとみられる。
日立は子会社を通じて英国に原発2基をつくる計画。安全基準の厳格化などで事業費が高騰する見通しで、最大3兆円程度になるとみられている。
( → 日立英原発、即時中止なら損失は最大約2700億円に:朝日新聞 )
現時点で撤退すれば最大約2700億円の損失。それを恐れているわけだ。しかし、それだけで済むとも言える。一方、このまま事業継続の方針で進めば、三菱重工の二の舞で、莫大な損失を出して、経営破綻するしかあるまい。「この事業は成立しない」というのが、パートナーの見通しなのだ。日立はそれに気づかないだけだ。いつになったら気づくのか。たぶん、気づいたときには「もう手遅れ」となるのだろう。三菱重工のように。
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まとめ。
最も破綻に近づいた東芝は、一転して、破綻から脱した。
一方、三菱重工は、破綻がほぼ確実だ。
日立は、今なら 2700億円の損失を出すだけで切り抜けられるが、このままグズグズしていれば、破綻しかねない。
[ 付記1 ]
日立は英国の鉄道事業でうまく成功していたが、ライバルのシーメンスが切り返してきたので、一転して、お先が暗くなってきた。下手をすると、英国の鉄道事業でもしっぱしかねない。特に、英国が EU 離脱をすると、非常に不利な立場になる。
→ ロンドン地下鉄新車両、日立勢は受注逃す シーメンスに:朝日新聞
[ 付記2 ]
三菱の飛行機は、三菱重工本体が開発しているのではなく、子会社の三菱航空機が開発している。三菱航空機は、第三者の出資があるので、その分、負担は第三者に移る。
では三菱重工は安泰か、というと、そんなことはない。三菱重工は 64% を出資する大株主だし、あれやこれやと支援する義務を負っている。債務保証みたいなこともしていそうだ。他人のフリをして知らぬ顔はできまい。
→ MRJ重荷、債務超過1千億円 三菱重工が支援強化へ:朝日新聞
というわけで、あくまで三菱重工が、ほぼ全面的に責任を負うしかないだろう。第三者の株主も、いくらか責任を負いそうだが。
MRJ にはすでに 6000億円を投じている。今後も量産にともなって 2000億円ぐらいは必要だろう。 それでいて、売上げはごく少しになりそうだ。(ライバルに負けるので。)
5000億円以上の赤字負担に耐えきれるか。これだけならばまだしも、造船部門での大赤字もあるのだ。倒産の可能性は十分にある。
[ 付記3 ]
三菱重工はどうするべきか? 私のお薦めは、こうだ。
・ MRJ は開発中止する。赤字は損金として計上する。
・ 各部門はバラバラにして、同業他社に売却する。
最も好ましい例は、三菱自動車だ。三菱重工から独立させた上で、独立経営のあとで、日産・ルノーの傘下に入った。かくて経営権は他社が握った。三菱自動車の従業員はそのまま継続したが、経営体質が抜本的に改革され、無駄をなくして効率化した。そのせいで黒字体質になった。
→ 三菱自動車が営業利益19倍で黒字転換
自動車部門以外(航空機部門など)も、同様にして、他社の傘下に入るのがベストだろう。現在の経営陣は無能なので、退出してもらうしかない。
MRJの債務を切り離すという条件で。
日立自身は、原発輸出にはあまり乗り気で内容だ。しかし安倍首相が国策として原発輸出にひどく乗り気なので、日立としては安倍首相の方針に逆らいがたいようだ。
となると、安倍首相のせいで日立が倒産する……というシナリオも、なくはない。というか、その可能性は十分にある。
会社の切り売りをするのは、あくまで会社清算の時点の話です。
下記に記事がある。
> 三菱スペースジェット(旧MRJ)、未完のまま撤退の可能性も
https://biz-journal.jp/2020/07/post_165861_3.html